人事の副業の始め方|最初の90日
人事や採用の仕事をしていると、「この経験は他社でも通じるのだろうか」と考える瞬間があります。結論から言うと通じます。ただしそのままの形では売れません。社内では当たり前にやっていたことを、外から見て分かる単位に切り出す作業が要ります。この記事は、その切り出しから最初の1件を終えるまでの90日を、順番に並べたものです。
最初の30日:経験を「業務」に分解する
社内での肩書き(採用担当、人事企画)は、外では通じません。企業が買うのは肩書きではなく、手が動く範囲です。まず自分がやってきたことを、依頼できる単位まで分解します。
たとえば「中途採用を担当していた」は、分解すると次のようになります。
- 採用要件を現場と詰めて1枚にまとめる
- 求人原稿を書き、媒体に入稿する
- スカウトの検索条件を組み、文面を書いて送る
- 返信対応と日程調整をする
- 書類選考の一次スクリーニングをする
- 面接をする
- 紹介会社と定例をやり、推薦を動かす
- 採用の数値を集計してレポートにする
このうち、自分が「他社でも初日から手が動く」と言えるものに丸をつけます。8つ全部に丸がつく人はまれです。3つでも十分に案件になります。
経験の深さより、範囲の明確さ
副業案件で求められるのは、深い専門性よりも「どこまでやってくれるかが分かること」です。「採用まわり全般できます」と書くより、「Greenとビズリーチのスカウト運用(検索条件の設計・文面作成・送信・一次返信対応まで)」と書いたほうが依頼が来ます。範囲が明確だと、発注側が見積もりを作れるからです。
次の30日:見せ方と条件を決める
プロフィールに書くこと
- できる業務(上で丸をつけたもの。3〜5個)
- 経験してきた会社の規模とフェーズ(社名は出せなくても「従業員50名のSaaS」で伝わります)
- 扱ったことのある媒体・ツール(媒体名とATS名は具体的に)
- 稼働できる時間帯と週あたりの時間
- 希望単価
社名や候補者が特定できることは書けません。規模・業種・フェーズ・職種に置き換えて書くのが基本です。「エンジニア採用を年間15名」ではなく「従業員100名規模のSIerで、エンジニア職の中途採用を通年で担当」といった書き方になります。
稼働時間を先に決める
ここを曖昧にしたまま受けると、たいてい崩れます。本業がある前提で、無理なく出せる時間の8割を上限として宣言してください。週10時間出せると思ったら、週8時間と伝える。採用は突発的な対応が発生するので、余白がないと初月で苦しくなります。
平日日中に連絡が取れない場合は、それも先に伝えます。「返信は平日夜と土日、緊急時はチャットで当日中」のように具体的に書いておくと、合わない案件が最初から来なくなります。
単価の考え方
単価は業務の性質で決まります。作業量が読めるもの(スカウト送信、日程調整)は時間単価または件数単価、判断が入るもの(要件整理、面接、制度設計)は月額または時間単価で高め、という組み方が一般的です。
最初の1件は相場より少し低くても構いませんが、無償や極端な安値では受けないでください。 単価は後から上げるより最初に決めるほうが簡単です。無償で受けると、範囲が広がっても言い出せなくなります。
エラベルの見解
「実績がないので単価を出せない」という相談をよく受けます。ここで言う実績は、副業としての実績ではなく本業での実績で構いません。発注側が知りたいのは「この人に任せて手が動くか」であって、「副業経験が何年あるか」ではありません。
むしろ差がつくのは、単価の根拠を言えるかどうかです。「週8時間、スカウト送信を月120通、文面は職種別に3パターン用意、返信一次対応まで含めて月◯万円」と分解して言える人は、初回から通ります。金額だけを提示して根拠がない人は、値切られたときに応じるしかなくなります。値段の話は、作業量の話に置き換えると強くなります。
最後の30日:最初の1件を取り、終わらせる
案件の探し方
- 副業人材のマッチングサービスに登録する
- 前職・現職のつながりから声をかけてもらう
- 人事のコミュニティやイベントで接点を作る
- 発信(X・note・LinkedIn)から相談が来る形を作る
最初の1件は紹介で決まることが多いのが実情です。ただし紹介待ちだけだと時間が読めないので、登録は並行して進めるのが現実的です。
受ける前に確認すること
| 確認項目 | なぜ見るか |
|---|---|
| 業務範囲がどこまでか | 「採用まわり全般」だと後から膨らむ |
| 稼働時間の上限と超過の扱い | 超過分が無償になる契約は避ける |
| 連絡手段と期待される返信速度 | 平日日中の即応を求められると両立できない |
| 誰が意思決定するか | 決裁者が出てこない案件は進まない |
| 契約期間と更新の条件 | 3か月更新が多い |
| 支払いサイト | 月末締め翌月末払いが一般的 |
| 秘密保持の範囲 | 本業との利益相反がないかを自分でも確認する |
本業の就業規則も先に確認してください。 副業の可否、届出の要否、競業避止の範囲。厚生労働省は副業・兼業のガイドラインを出していますが、実際の可否は各社の規程で決まります。
最初の30日で信頼を作る
初回案件で評価されるのは、成果の大きさより約束を守ることの安定感です。
- 決めた曜日に報告を出す(内容が薄い週も出す)
- 遅れそうなときは、遅れる前に連絡する
- 分からないことは早い段階で聞く
- 稼働時間を記録し、報告に添える
派手な提案より、これが効きます。継続と紹介は、ここから生まれます。
踏み込みすぎない線を持っておく
外部の立場でできることには限りがあります。合否の決定、年収の提示、退職や解雇に関わる判断は、依頼されても自分だけで動かないでください。会社の意思決定であり、外部が背負える責任の範囲を超えます。求められたら「素案は作りますが、決定は御社でお願いします」と返すのが正しい形です。
また、報酬を受けて企業に代わって候補者を募集する行為は、職業安定法上の論点になることがあります。スカウト送信の代行を受けるときは、ターゲットと文面を最終的に誰が決めるかを発注側と確認しておくと安全です。
エラベルの見解
長く続く人と続かない人の差は、スキルではなく断り方に出ます。副業は時間が有限なので、受けられない依頼がいつか出ます。ここで「なんとかします」と言い続けると、どこかで納期を落とし、そこで関係が終わります。
続いている人は、断るときに代案を出しています。「今月は週8時間が上限なので、この3つのうち2つに絞らせてください」「面接同席は難しいので、質問設計と評価シートの作成までお願いできませんか」。範囲を狭める提案は、断りではなく設計の提案として受け取られます。
エラベルでは稼働条件をご自身で決めていただく形にしていますが、これは無理のない範囲で続けてもらうほうが、企業にとっても結果が良いからです。週20時間出せると言って3か月で消える人より、週6時間を1年続ける人のほうが、採用は進みます。
まとめ
- 最初の30日は経験を「依頼できる業務」に分解する。3つ挙げられれば案件になる
- 肩書きではなく手が動く範囲を書く。媒体名・ツール名は具体的に
- 稼働時間は出せる時間の8割で宣言する。余白がないと初月で崩れる
- 単価は金額ではなく作業量に分解して根拠を言う
- 受ける前に、業務範囲・超過の扱い・決裁者・契約期間・支払いサイトを確認する
- 初回で評価されるのは成果の大きさではなく約束を守る安定感
- 合否・年収提示・退職に関わる判断は自分だけで動かさない
- 断るときは代案を出す。範囲を狭める提案は設計の提案になる
よくある質問
人事経験が3年程度でも受けられる案件はありますか
あります。特にスカウト運用・日程調整・媒体運用・応募対応といった実務系は、経験年数より「その媒体を触ったことがあるか」で判断されることが多い領域です。逆に人事制度の設計や評価制度の刷新は、経験の幅を見られます。まずは自分が実際に手を動かしていた業務から入るのが確実です。
本業の会社に知られずに始められますか
就業規則で副業が禁止されている場合、隠して始めるのは避けてください。多くの会社が届出制に移行しつつあります。まず規程を確認し、必要なら申請を出すのが結果的に近道です。競業避止の観点から、同業他社の案件は慎重に見たほうがよい場合があります。
週何時間くらいから受けられますか
案件によりますが、週5〜10時間の設定が多く見られます。スカウト送信や日程調整のように作業量が読めるものは週5時間からでも成立します。採用戦略の壁打ちや面接同席が入ると、打ち合わせの時間が固定で乗るため、もう少し必要になります。
収入はどれくらいになりますか
案件の内容・稼働時間・自分の経験で大きく変わるため、一律の金額は言えません。時間単価型か月額固定型かで考え方も変わります。確かなのは、稼働時間を無理に増やして単価を下げると続かないということです。単価と稼働のバランスは単価の決め方で別に整理しています。
本記事は 2026-09-06 時点の公開情報にもとづいて作成しています。
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