採用代行 / 費用・契約・法務
候補者に代行の利用を伝えるべきか
採用代行を使っていることを、候補者に伝える必要はあるか。個別のやりとりで毎回伝える運用は一般的ではありません。一方で、個人情報の取り扱いに関する説明の中では、委託の可能性に触れておく形が通常です。この二つは別の話なので、分けて整理します。なお、個人データの取り扱いに関する説明の要否は自社の運用によって変わるため、専門家にご確認ください。
二つの話が混ざっている
一.個人情報の取り扱いに関する説明。取得した情報を業務の委託先に取り扱わせることがある、という説明。自社の記載の中で扱う内容です。
二.個別のやりとりでの説明。この連絡は委託先の担当者が送っています、と個別に伝えるかどうか。運用の判断です。
一番目は、記載と実際の運用が合っているかを確認する話です。採用代行を入れたのに記載が更新されていない、という状態は避けます。
二番目は、伝える義務があるというより、伝えたほうがよい場面があるという話です。以下ではこちらを扱います。
個別に伝えない運用が一般的な理由
自社の窓口として連絡している場合、毎回「委託先です」と伝える運用は一般的ではありません。理由です。
業務の遂行として行われている。代行が担っているのは自社の採用業務です。自社の窓口として動いていることが建て付けに合っています。
候補者にとっての情報の価値が低い。候補者が知りたいのは、選考の状況、仕事の内容、次のステップです。誰が事務を担っているかは、判断材料になりにくい情報です。
やりとりが複雑になる。連絡のたびに委託の説明が入ると、本題が伝わりにくくなります。
ただし、これは「隠す」ということではありません。聞かれたら答える、必要な場面では伝える。この姿勢が前提になります。
エラベルの見解
判断の基準を一つ挙げるなら、「候補者が後から知ったときに、裏切られたと感じるか」です。
日程の調整をしてくれた人が委託先の担当者だった。これを後から知っても、多くの候補者は気にしません。事務の連絡だからです。
一方で、面接で自社の事業について詳しく話してくれた人が、実は外部の担当者だった。これを後から知ると、印象が変わることがあります。その人の話を、社内の人の言葉として受け取っていたからです。
つまり、候補者がその人を「社内の人」として認識して判断材料にしている場面ほど、伝えておく意味が大きいということです。
だから、面接や面談に代行の担当者が出る場合は、役割を伝えておくことをおすすめします。「まずは採用担当が要件の確認をさせていただきます。次の面接で現場の責任者がお話しします」という形で構いません。
伝え方は説明ではなく案内で足ります。委託していることを詳しく説明する必要はなく、この場で誰が何を話すかが分かれば、候補者は判断できます。面接の扱いは面接評価を代行に付けさせてよいかにまとめています。
聞かれたときの答え方
候補者から直接聞かれる場面もあります。答え方を決めておきます。
事実を答える。採用業務の一部を外部に委託していること。隠す必要はありません。
候補者の情報の扱いを説明できるようにする。どの範囲の情報を委託先が扱うのか、どう管理されているのか。この質問が来たときに答えられないと、不安を与えます。
誰が何を決めるかを伝える。選考の判断は自社が行っていること。候補者が気にするのは、たいていここです。
答える人を決めておく。代行の担当者が聞かれた場合、その場で答えてよいのか、自社に戻すのか。線を決めておかないと、答え方がばらつきます。
四番目が抜けやすい項目です。代行の担当者が「私は委託先の者です」と答えるのか、「採用業務の一部を担当しています」と答えるのか。言い方で受け取られ方が変わります。事前に文言を決めておくと安定します。
伝えたほうがよい場面
次の場面では、伝えておくほうが実務としても円滑です。
面接や面談に代行の担当者が出るとき。役割と、次に誰と話すかを案内します。
代行会社のドメインから連絡するとき。外部のドメインから届く連絡は、書いていないと不審に思われます。本文に委託の旨を書く形が一般的です。
候補者から選考の判断について質問があったとき。誰が決めているかは、伝えるべき情報です。
個人情報に関する質問があったとき。取り扱いの範囲と管理の方法を説明します。
候補者が代行の担当者に個人的な相談をしてきたとき。転職の悩み、現職の事情。この場合、聞ける範囲と自社に共有される範囲を伝えておくほうが誠実です。
記載と運用を合わせる
個人情報の取り扱いに関する記載と、実際の運用が合っているかを確認します。
- 委託の可能性について記載があるか
- 記載の内容が、実際の委託の範囲と合っているか
- 採用代行を入れた後に、記載を更新したか
- 媒体経由の応募について、媒体側の説明と食い違いがないか
- 委託先が扱う情報の範囲が、記載の想定に収まっているか
三番目が最も多い抜けです。運用を変えたときに記載の更新が漏れる。採用代行を入れた、新しい媒体を使い始めた、タレントプールを作った。運用の変更と記載の見直しをセットにしておきます。
取り扱いの整理は個人情報保護法と委託先の監督にまとめています。個別の判断は専門家にご確認ください。
エラベルの見解
伝えるかどうかを考えるとき、候補者が本当に気にしているのは何かを見てください。
相談の場でよく出るのは、「代行を使っていると知られたら、採用に力を入れていない会社だと思われないか」という懸念です。
実際のところ、候補者はそこをあまり見ていません。見ているのは、対応の質と速さです。返信が速いか、質問に具体的に答えてくれるか、選考の流れが分かるか、待たされないか。
だから、委託の事実を隠すことに気を使うより、対応の質を上げるほうが印象には効きます。むしろ、代行を入れて対応が速くなったなら、候補者から見た体験は良くなっています。
そして、質を上げるための設計は決まっています。文面の型を渡す、返信の目安時間を決める、伝えてよい情報の範囲を広げる、判断を速く返す。これらは委託の事実とは関係なく効きます。
伝えるかどうかは、誠実さの範囲で判断してください。そのうえで、エネルギーは対応の質に使うほうが結果につながります。
まとめ
- 個人情報の取り扱いに関する説明と、個別のやりとりでの説明は別の話
- 自社の窓口として連絡する場合、個別に毎回伝える運用は一般的ではない
- ただし隠すのではない。聞かれたら答える、必要な場面では伝える
- 判断の基準は「候補者が後から知ったときに裏切られたと感じるか」
- 面接に代行が出る場面は、役割と次に誰と話すかを案内する
- 聞かれたときの答える人と文言を決めておく
- 記載と運用を合わせる。運用の変更と記載の見直しをセットにする
- 候補者が見ているのは委託の事実より対応の質と速さ
よくある質問
候補者に聞かれたら正直に答えるべきですか
隠す理由はありません。採用業務の一部を委託していることを伝え、選考の判断は自社が行っていることを添えれば、多くの場合それで足ります。あわせて、個人情報の取り扱いについて質問があった場合に答えられる準備をしておいてください。
代行の担当者が面接に出る場合、事前に伝えるべきですか
伝えておくほうが円滑です。誰が何を確認する場なのか、次に誰と話すのかが分かると、候補者は準備ができます。委託の詳細を説明する必要はなく、面接の流れを案内する形で足ります。
自社の記載を更新する必要はありますか
採用代行を入れて、委託先が個人データを取り扱う状態になったなら、記載と実際の運用が合っているかを確認してください。記載が古いまま運用だけが変わっている状態は避けます。更新の要否や書き方は、自社の管理体制と照らして専門家にご確認ください。