採用代行 / 費用・契約・法務

採用代行と職業安定法|許可が要る業務・要らない業務

公開 2026-09-06

採用代行を検討するときに「これは法律的に大丈夫なのか」と止まる場面があります。論点は主に2つで、職業安定法の委託募集と、労働者派遣法まわりの偽装請負です。この記事では前者を扱います。結論から言うと、事務・運用の代行は許可なしで頼めますが、報酬を払って「募集そのもの」を代わりにやってもらうと、職業安定法上の許可が必要になる整理です。

なお以下は条文と公表資料にもとづく一般的な整理です。自社の契約が該当するかどうかの個別の判断は、社会保険労務士・弁護士または管轄の労働局にご確認ください。

条文はどうなっているか

職業安定法第36条は、委託募集について次のように定めています。

労働者を雇用しようとする者が、その被用者以外の者をして報酬を与えて労働者の募集に従事させようとするときは、厚生労働大臣の許可を受けなければならない。

第2項では報酬の額についても事前の認可が必要とされ、第3項では報酬を与えずに募集に従事させる場合は届出でよいとされています。

ここで効いてくるのが「その被用者以外の者」という言葉です。自社の社員に募集をやらせるぶんには問題になりません。外部の会社や個人に、報酬を払って募集をやってもらうときに第36条の話になります。

あわせて第39条・第40条も押さえておく必要があります。

(第39条)労働者の募集を行う者及び……募集受託者は、募集に応じた労働者から、その募集に関し、いかなる名義でも、報酬を受けてはならない。

(第40条)労働者の募集を行う者は、その被用者で当該労働者の募集に従事するもの又は募集受託者に対し、賃金、給料その他これらに準ずるものを支払う場合又は第36条第2項の認可に係る報酬を与える場合を除き、報酬を与えてはならない。

つまり、候補者側からお金を取ることは禁止され、募集受託者への報酬も第36条第2項の認可の枠内に収まる必要がある、という建て付けです。

「募集」と「募集に付随する事務」を分けて考える

実務上いちばん役に立つのは、募集そのもの募集に付随する事務を分ける見方です。

頼む内容一般的な整理
求人原稿の作成・校正事務。許可の話にはなりにくい
求人媒体への掲載作業・入稿事務
応募者への事務連絡、日程調整事務
応募書類の受付・整理、ATSへの入力事務
採用管理システムの運用、データ集計事務
面接官トレーニング、採用設計の助言コンサルティング
候補者を探して直接声をかける(スカウト送信)募集行為に当たりうる
候補者からの応募意思を受け付け、選考へ引き込む募集行為に当たりうる
説明会等で自社に代わって応募を勧誘する募集行為に当たりうる

太字の3つは、外部の事業者が自社に代わって「働きませんか」と働きかけている行為です。ここに報酬が発生すると、委託募集の枠組みで考える必要が出てきます。

スカウト代行はどう考えるか

スカウト送信の代行は、この線引きで最も判断が分かれるところです。同じ「スカウト代行」という商品名でも、実態が

では意味がまったく違います。前者は事務の色が濃く、後者は募集行為そのものに近づきます。契約書の名称ではなく、実際に誰が何を決めているかで見るというのが、この分野の一貫した考え方です。

エラベルの見解

商談で「うちは許可を持っているので大丈夫です」と言われたら、何の許可かを必ず確認してください。有料職業紹介事業の許可(厚生労働大臣許可 13-ユ-◯◯◯◯◯◯のような番号)と、委託募集の許可は別のものです。紹介の許可を持っていることと、貴社の募集を代行してよいことは、直接にはつながりません。

もうひとつ、実務でよく起きるのが「途中で範囲が広がる」パターンです。最初は日程調整と原稿修正だけの契約だったのに、成果が出ないので「スカウトも送ってもらおう」となり、契約書はそのまま、という流れです。契約時点では適法でも、運用の途中で性質が変わることがあります。半年に一度、実際に何をやってもらっているかを契約書と突き合わせるだけで、この種のずれはほとんど防げます。

有料職業紹介との違い

もうひとつ混同されやすいのが、有料職業紹介です。

人材紹介会社が「採用代行もやります」と提案してくるケースがありますが、このときどちらの立場で動くのかが混ざると、費用の性質も変わります。紹介なら成功報酬(理論年収の何%)、代行なら業務委託費です。同じ会社から両方受けること自体は問題ありませんが、契約と請求を分けておかないと、後から整理がつかなくなります

偽装請負の論点は別にある

職業安定法をクリアしても、労働者派遣法まわりの論点は残ります。外部の担当者に対して、自社の社員と同じように業務の進め方や勤務時間を指示していると、請負ではなく労働者派遣とみなされる可能性があります。判断基準は昭和61年労働省告示第37号(いわゆる37号告示)で、契約の形式ではなく実態で判断される、と明記されています。

こちらは論点が多いので、採用代行が偽装請負になる境界線で別に整理しています。

エラベルの見解

法務の確認をするときに、法律の条文から入ると止まってしまいます。おすすめは逆で、「誰が・何を・どこまで決めるか」を先に1枚に書き出すことです。ターゲットを決めるのは誰か、文面を最終決定するのは誰か、候補者に最初に接触するのは誰か、合否を決めるのは誰か。この4つを埋めると、委託募集の論点も偽装請負の論点も、たいてい同じ表の上で見えます。

エラベルでは、担当者に入ってもらう前にこの表をお客様と一緒に作っています。法務レビューが速く終わるだけでなく、担当者が何をしてよいのか迷わなくなるので、立ち上がりも早くなります。法律の話は、突き詰めると業務設計の話です。

まとめ

よくある質問

採用代行を使うこと自体が違法になることはありますか

事務や運用の代行という枠に収まっていれば、それ自体が問題になる性質のものではありません。論点になるのは、報酬を払って外部に募集行為そのものをさせる場合と、外部の担当者に直接指揮命令をしている場合です。契約の名称ではなく実態で判断される、という点だけ押さえておけば、設計の段階で避けられます。

許可が必要かどうか、どこに聞けばよいですか

管轄の都道府県労働局(職業安定部)が窓口です。契約書の案と、実際に依頼する業務の一覧を持って相談するのが早いです。代行会社側が自社の見解を持っていることも多いので、その見解の根拠になっている条文を示してもらうとすり合わせがしやすくなります。

副業の人事担当者に直接依頼する場合も同じですか

同じ枠組みで考えます。相手が会社でも個人でも、「自社の被用者以外の者に報酬を与えて募集させる」構造は変わりません。むしろ個人に直接依頼する場合は、業務の指示のしかたが自社の社員と同じになりやすく、偽装請負の論点のほうが出やすい傾向があります。稼働時間の管理を相手に委ねる、成果物で受け取る、といった設計にしておくのが安全です。

出典