採用代行 / 費用・契約・法務
海外拠点の採用を国内の代行に出せるか
海外に拠点があり、そこでの採用に手が回っていない。国内の採用代行に任せられないか、という相談があります。結論としては、工程によって分かれます。事務的な工程は任せやすく、現地の労働市場と制度に関わる工程は難しい。この記事では、切り出せる業務と、現地でなければ難しい業務を整理します。なお、現地の法制度や雇用慣行は国ごとに異なり、その解釈も個別の事情で変わるため、進める際は現地の専門家にご確認ください。
何が違うのか
日本国内の採用と、海外拠点の採用では、次の点が変わります。
労働に関する制度。雇用契約の形式、試用期間の扱い、募集時に記載できることとできないこと。国によって定めが異なります。日本の感覚で求人を書くと、現地では問題になる記載が含まれることがあります。
採用の慣行。応募書類の形式、選考の進め方、条件交渉の作法。国によって当たり前が違います。
媒体と経路。使われている求人媒体、人材紹介の商習慣、リファラルの位置づけ。日本で有効な経路が、現地では主流でないことがあります。
言語。求人原稿、スカウトの文面、候補者とのやりとり。翻訳ではなく、その言語で書ける人が要ります。
時差と稼働時間。候補者との連絡が取れる時間帯が限られます。
このうち、制度と慣行の二つが、切り分けの判断を決めます。
任せやすい工程
国内の代行に切り出しやすいのは、現地の制度と慣行に依存しない工程です。
- 応募者データの整理と一元管理
- 選考の進捗管理と、社内へのレポート
- 面接の日程調整(時差の設計ができれば)
- 採用管理システムへの入力とデータの整備
- 複数拠点の採用状況の集約
- 日本本社への報告資料の作成
これらは、事務的で判断の幅が小さい工程です。現地の制度を知らなくても遂行できます。特に、複数の拠点がある会社では、各拠点の状況を一箇所に集約する役割は国内で担えます。
日本本社が海外拠点の採用を把握できていない、という状態はよくあります。その把握を支える役割なら、国内の代行が担いやすい領域です。
現地でなければ難しい工程
一方、次の工程は現地の知見が要ります。
- 求人原稿の作成(記載してよいこと、慣行に沿った表現)
- 現地媒体の選定と運用
- 候補者の評価基準の設計(学歴や資格の意味が国によって違う)
- 条件提示と交渉(給与の相場、賞与や手当の慣行)
- 雇用契約の形式に関する判断
- 現地の人材紹介会社との関係づくり
このうち、求人原稿と条件提示は特に注意が要ります。募集時の記載について、国ごとに定めが異なります。日本での書き方をそのまま持ち込むと、現地では不適切な記載になる可能性があります。この判断は現地の専門家に確認する領域です。
エラベルの見解
海外拠点の採用で相談を受けるとき、まず切り分けるのは「現地で採るのか、日本から送るのか」です。ここで話がまったく変わります。
現地で現地の人を採るなら、現地の労働市場の話になります。媒体も、慣行も、条件の相場も現地のものです。国内の代行が担えるのは、管理と集約の部分に限られます。
日本から人を送る、あるいは日本国内で海外勤務ができる人を採るなら、日本の労働市場の話です。この場合は、国内の代行がそのまま機能します。求人は日本語で書き、日本の媒体を使い、日本の慣行で選考する。勤務地が海外というだけです。
相談の内容を聞いていくと、後者であることが少なくありません。海外拠点の採用と言われたので現地採用の話かと思うと、実は日本から駐在させる人を探している、という場合です。
だから、依頼する前に自社の中でこの切り分けをしておいてください。どちらかで、頼める相手も、必要な体制もまったく変わります。混ざったまま相談すると、提案も曖昧になります。
現地と国内を組み合わせる
現地採用を進めるなら、現地の担い手と国内の代行を組み合わせる形が現実的です。
現地に任せる。求人原稿、媒体運用、候補者との一次のやりとり、条件の相場感。現地の人材会社か、現地スタッフが担います。
国内に任せる。進捗の管理、データの一元化、本社への報告、選考プロセスの標準化。国内の代行が担います。
本社が持つ。採用の可否、要件の最終決定、条件の承認。
この三層に分けると、役割が整理できます。国内の代行に現地の実務まで求めると無理が出ますが、管理と集約に絞れば機能します。
複数の会社が関わる形になるので、情報の置き場所は一本化しておきます。分散したときの設計は集約するか業務ごとに分けるかにまとめています。
契約で確認すること
海外拠点の採用を含めて依頼する場合、次を確認します。
- 対応できる範囲(管理までか、現地の実務まで担えるか)
- 言語(どの言語で、どの工程まで対応できるか)
- 稼働の時間帯(時差のある拠点への対応をどうするか)
- 現地の制度に関する判断を誰が行うか(代行が判断しない前提を明確にする)
- 個人データの取り扱い(拠点の所在地によって、扱いに関する検討が要ります)
- 費用の建て付け(拠点ごとに分けるか、まとめるか)
四番目と五番目は、事前に整理しておく項目です。特に、海外の拠点に関わる個人データの取り扱いについては、国内とは別の検討が必要になる場合があります。進める前に専門家にご確認ください。取り扱いの一般的な整理は個人情報保護法と委託先の監督にまとめています。
エラベルの見解
海外拠点の採用で、国内の代行がいちばん価値を出せるのは本社が状況を把握できるようにすることだと考えています。
拠点ごとに採用の進め方が違い、報告の形式もばらばら。本社は数字を集めるだけで時間を使い、何が起きているかは分からない。この状態は珍しくありません。現地に権限を委ねている会社ほど、把握が薄くなります。
ここで、国内の代行が管理と集約を担うと、本社が見える状態になります。拠点ごとの進捗を同じ形式で並べ、詰まっている拠点を特定する。共通で使えるものを標準化する。この役割は、現地の実務を知らなくても担えます。
そして、把握ができるようになると、次の判断ができます。どの拠点に手を入れるか、現地の体制を強化すべきか、本社から支援を出すか。判断の材料がないと、この議論が始まりません。
現地の実務を無理に切り出すより、管理の層を作るほうが効果が出やすい。海外拠点の採用に関する相談では、まずこの整理をおすすめしています。
まとめ
- 工程によって分かれる。事務と管理は任せやすく、現地の制度と慣行に関わる工程は難しい
- 依頼の前に「現地で採るのか、日本から送るのか」を切り分ける
- 日本から送る場合は、国内の代行がそのまま機能する
- 任せやすいのは、データの一元化・進捗管理・報告資料・複数拠点の集約
- 難しいのは、求人原稿・現地媒体・評価基準・条件提示・雇用契約の形式
- 現地・国内・本社の三層に分けると役割が整理できる
- 契約では、対応範囲・言語・稼働時間帯・制度の判断を誰が行うか・データの扱いを確認する
- 国内の代行の価値は、本社が状況を把握できるようにすることにある
よくある質問
英語でのスカウト送信は国内の代行に頼めますか
対応できる会社はあります。ただし、翻訳できることと、その言語で候補者に響く文面を書けることは別です。過去にその言語で運用した実績があるかを確認してください。あわせて、現地の慣行に沿った表現になっているかを、現地の関係者に確認する体制を作っておきます。
海外拠点の求人票を日本で作ってもよいですか
作る過程は日本で進められますが、募集時の記載について国ごとに定めが異なるため、公開の前に現地で確認する工程を入れてください。年齢、性別、国籍などに関する記載の扱いは国によって違います。この確認は、現地の専門家に依頼する領域です。
海外の候補者データを日本で管理してもよいですか
拠点の所在地によって、個人データの取り扱いに関する検討が必要になる場合があります。管理の方法を決める前に、対象となる地域の制度を確認してください。判断は自社の管理体制と照らして専門家にご確認ください。運用としては、置き場所を一つに決めて権限で管理する形が基本になります。