採用代行 / データサイエンティスト
データサイエンティストの採用要件の作り方|必須と歓迎を分ける基準
データサイエンティストの求人票の必須要件には、「統計の知識」「機械学習の実務経験」「データ基盤の構築経験」「修士以上」「特定の言語と可視化ツール」「事業への貢献の実績」「経験三年以上」が並びがちです。全部を満たす人は市場にほとんどおらず、いても複数の会社から声がかかっています。結論を先に書くと、データサイエンティストの採用要件は、先に分析・モデル・基盤のどの役割を採るかを決め、必須を「入社初日に自社の問いとデータで業務が成り立つか」で三つ以内に絞り、学位と経験年数は必須にせず、経験の中身(扱ったデータの種類、解いた問い、実運用に乗ったか)で書くと、母集団が生まれ、面接で見る点も定まります。役割を決めずに要件を積むと、三つの役割の要件が混ざり、誰にも当てはまらなくなります。開発エンジニアの要件はエンジニアの採用要件の作り方に、代行に出す工程の線はデータサイエンティスト採用を代行に出す判断基準にまとめています。
データ職で要件が膨らむ理由
他の職種と共通する理由(現場の希望を全部書く、前任者を基準にする、失敗を避けたい)に加えて、データ職に特有の理由があります。
一つ目は、三つの役割を一人で求めることです。分析で意思決定を支え、モデルを作ってプロダクトに組み込み、データ基盤も整える。三つは別の職種に近く、全部を深く経験した人は少ない。一人目の採用で三つを求めると、誰もいません。
二つ目は、学位を必須にすることです。修士以上、博士。研究の経験は、モデル寄りの役割では活きますが、分析寄りや基盤寄りでは、学位より事業の課題を扱った経験のほうが効きます。学位を必須にすると、事業会社で分析をしてきた人を弾きます。
三つ目は、手法とツールを並べることです。統計の手法、機械学習の手法、言語、可視化ツール、基盤の技術。並べるほど、全部を使った人を探すことになります。手法とツールは、自社の問いとデータに必要なものだけが要り、他は入社後に覚えられます。
四つ目は、「事業への貢献の実績」を求めることです。分析の結果が事業の数字にどう結びついたかは、本人の力量だけでなく、前職の会社が結果を使う体制を持っていたかで決まります。実績を必須にすると、体制の無い会社にいた優秀な人を弾きます。
五つ目は、年数です。データ職は比較的新しく、年数で測ると母数が減り、年数と分析力は一致しません。
必須と歓迎を分ける基準
基準は「入社初日に、自社の問いとデータで業務が成り立つか」です。データ職では「自社の問いとデータで」を添えます。自社の問いが分析寄りなら、モデルの実運用の経験は初日には要りません。自社のデータが整っていないなら、整える経験が要ります。
| 項目の例 | 必須になる場合 | 歓迎になる場合 |
|---|---|---|
| 役割(分析・モデル・基盤) | 採る役割の経験は必須 | 他の二つは歓迎 |
| 扱ったデータの種類 | 自社のデータと近い種類(顧客の行動、購買、テキスト、画像など)を扱った経験が、初日から効く | 種類が違っても、手法が共通なら移行できる |
| 事業の課題から問いを立てた経験 | 分析寄りで、本人が問いを作る役割 | 問いが用意されている役割なら歓迎 |
| モデルを実運用に組み込んだ経験 | モデル寄りで、プロダクトに組み込む役割 | 分析寄りなら歓迎 |
| データ基盤の構築 | 基盤寄り、または基盤が無く整えるところから | 基盤が整っている、または別の担当が持つ |
| 経営や現場と協働した経験 | 分析寄りで、結果を経営や現場に届ける役割 | モデル寄りや基盤寄りなら歓迎 |
| 統計の知識 | 分析寄りで、統計的な判断を初日から求める | 基盤寄りなら歓迎 |
| 特定の言語・ツール | — | 必須にしない。同種のものの経験を歓迎に |
| 学位 | — | 必須にしない。研究の経験はモデル寄りで歓迎に |
| 事業への貢献の実績 | — | 必須にしない。「結果が使われた経験」として歓迎に |
| 経験年数 | — | 必須にしない |
基準の要点は、「学位・ツール・実績・年数を必須にしない」ことです。この四つは書きやすいので必須に入りがちですが、どれも「初日に自社の問いとデータで業務が成り立つか」とは直接関係しません。
エラベルの見解
相談で多いのは、「修士以上で、機械学習の実務があって、基盤も分かって、事業に貢献した実績がある人」というご要望です。この要件で市場を見ると、数える程度で、その人たちは既に条件の良い会社にいます。要件を一つずつ「初日に自社の問いとデータで成り立つか」で問うと、学位は要らず、基盤は別に持て、実績は前職の体制の問題で、残るのは「自社のデータと近い種類を扱った経験」と「自社の問いに近い問いを解いた経験」の二つくらいです。
見ていて差がつくのは、「自社の最初の問いから、必須を逆算しているか」です。「解約の予兆を見つけたい」なら、顧客の行動データを扱った経験と、予兆や予測の問いを解いた経験が必須で、それ以外は歓迎。問いから逆算すると、必須は自然に二〜三つになります。問いが無い状態で要件を議論すると、データ職の概念に含まれる全部が並びます。エラベルでは、データ職の要件を整理するとき、依頼側に最初の問いを先に決めていただき、そこから必須を逆算しています。
必須を三つに絞る手順
データ職向けに、絞る手順を番号付きで整理します。
- 役割を決める。 分析・モデル・基盤のどれか。一人目なら、最も困っていることに近い役割。
- 最初の問いを決める。 「何を知りたいか」を一つ。データサイエンティスト採用を代行に出す判断基準で扱った問い。
- 問いに使うデータの種類と状態を書き出す。 顧客の行動か、購買か、テキストか。整っているか、整えるところからか。
- 現場(結果を使う事業責任者、分析の分かる人がいればその人)の希望を全部書き出す。 ここでは絞らない。
- 一つずつ、「初日に自社の問いとデータで業務が成り立つか」を問う。 成り立たないものだけ残す。
- 残ったものが三つを超えたら、「入社後に自社で覚えられるか」「別の担当や外部が持てるか」を問う。 ツール、言語、基盤の一部、他の役割は歓迎へ。
- 学位・ツール・実績・年数を、経験の中身に書き換える。 「修士以上」ではなく「〇〇の種類のデータで〇〇の問いを解いた経験」。「実績」ではなく「分析の結果が判断に使われた経験」。
- 歓迎に回したものを、優先順位を付けて三〜五つ書く。 面接で見る点になる。
- 事業責任者・分析の分かる人(外部でも)・人事・経営で確認する。 「この三つがあれば、他は入社後に補える」と言えるか。
手順の要点は、「二と三を先にやる」ことです。問いとデータが決まれば、必須はそこから逆算でき、役割も自然に定まります。
経歴で確かめられる要件と、面接でしか分からない要件
データ職では、経歴の手法の名前が実態を表さないことが多く、確かめ方の区別がとくに重要です。
| 確かめる方法 | 要件の例 | 見方 |
|---|---|---|
| 経歴で確かめられる | 扱ったデータの種類、解いた問いの種類、モデルが実運用に乗ったか、基盤の構築の有無、結果が判断に使われたか | 書類の一次絞りで。手法の名前ではなく、「何のデータで、何の問いで、結果はどうなったか」の記述があるかを見る |
| 経歴では分からない | 問いの立て方、データの限界への向き合い方、結果を非専門家に伝える力、分からないときにどうするか | 面接で、分析の分かる人と結果を使う人が聞く。自社の最初の問いを題材にする |
| 経歴でも面接でも分かりにくい | 実際の分析の質、コードの質 | 過去の成果物(公開されているもの)や、自社の問いを題材にした短い課題で見る |
分け方の要点は、「面接で、自社の最初の問いを題材に、候補者の取り組み方を見る」ことです。問いへの取り組み方(何を確かめるか、どんなデータが要るか、どう伝えるか)は、分析の分かる人がいなくても、結果を使う人が判断できる部分があります。構造化面接も参考になります。
転向層を母集団に入れる要件の書き方
データ職の経験者は少なく、転向層を母集団に入れる要件の書き方が、採用の現実性を決めます。
| 転向元 | 持っているもの | 要件の書き方 |
|---|---|---|
| 事業側の分析担当(経営企画、マーケティングなど) | 事業の課題から問いを立てる力、結果を経営や現場に伝える力 | 「事業の課題をデータで分析し、結果が判断に使われた経験」。高度な手法は歓迎に。分析寄りに向く |
| 研究者(大学院、研究機関) | 手法の深さ、モデルの構築力 | 「〇〇の種類のデータで〇〇の手法を使った研究・実務の経験」。事業の経験は歓迎に。モデル寄りに向く |
| ソフトウェアエンジニア | コードの力、基盤の構築力、実運用への組み込みの理解 | 「データパイプラインや分析基盤の構築の経験」。分析の手法は歓迎に。基盤寄り、またはモデルの組み込みに向く |
| データサイエンティストの経験者 | 役割によって上のどれか | 上の三つの書き方で、経験者も当然に入る |
書き方の要点は、「役割ごとに、合う転向元が違う」ことです。分析寄りなら事業側からの転向、モデル寄りなら研究者、基盤寄りならエンジニア。役割を決めれば、どの転向元を母集団に入れるかが決まり、要件の書き方も定まります。
要件が決まらないときの原因
| 原因 | 起きていること | 直し方 |
|---|---|---|
| 役割が決まっていない | 「データを活用できる人」 | 分析・モデル・基盤のどれかを決める |
| 最初の問いが無い | 「売上を伸ばしたい」で止まっている | 問いを一つ作る。経営と事業責任者で |
| データの状態を把握していない | どこに何があるか分からない | 社内で棚卸し。整っていないなら基盤寄りを先に |
| 三つの役割を一人で求めている | 「分析もモデルも基盤も」 | 一人目は一つの役割。他は次の採用か外部 |
| 学位や実績を基準にしている | 「修士以上」「貢献の実績」 | 経験の中身に書き換える |
| 手法とツールを並べている | 「統計、機械学習、〇〇言語、〇〇ツール」 | 問いとデータに必要なものだけ。他は歓迎 |
| 分析の分かる人が要件の議論にいない | 人事と経営だけで決めている | 外部の分析の分かる人を要件の整理に入れる |
原因の要点は、「最初の問いが無い」ことが最も多い点です。問いがあれば、役割もデータも必須も決まります。問いが無い状態で要件を議論すると、概念の全部が並びます。
代行に出せる工程
| 工程 | 社内で持つ | 代行に出せる |
|---|---|---|
| 役割の決定 | 判断 | 「三つのどれか」を問う進行 |
| 最初の問いの決定 | 経営と事業責任者が決める | 問いを作る打ち合わせの進行 |
| データの状態の棚卸し | 社内が出す | 一覧にする |
| 必須と歓迎の分離 | 「初日に成り立つか」の判断は社内 | 問いを立て、一つずつ確認する進行 |
| 学位・ツール・実績・年数の書き換え | 中身は社内が出す | 経験の中身の言葉に直す |
| 転向層を入れる要件の設計 | 判断 | 役割に合う転向元からの書き方の提案 |
| 市場の実態の確認 | 判断 | その要件での人数を示す |
| 求人票への反映 | 確認 | 書く |
| 書類の一次絞り | 分析力の妥当性 | 役割の分類。「何のデータで、何の問いで、結果はどうなったか」の記述の有無 |
| 面接で見る点の整理 | 面接官が使う | 歓迎の要件と、最初の問いを題材にした質問の案 |
分け方の要点は、「最初の問いは、経営と事業責任者が決める」ことです。代行は問いを作る打ち合わせを進行できますが、問いそのものは社内の課題からしか出ません。
エラベルの見解
担当する側から見ると、データ職の要件で最も時間がかかるのは、依頼側の最初の問いを引き出すことです。「データを活用したい」から「解約の予兆を見つけたい」まで具体化するには、経営と事業責任者が「いま勘で決めていること」を書き出す時間が要ります。この時間を取らずに要件を議論すると、「修士以上で機械学習も基盤も」という要件になり、誰もいません。
エラベルでは、データ職の案件で要件が整理されていない場合、担当者の最初の仕事を「問いを作る打ち合わせの進行」にすることをお勧めしています。募集が始まるのは数週間遅れますが、問いから逆算した要件で募集を始めると、母集団が生まれ、面接で問いを題材にした評価ができます。飛ばして「データを活用できる人」を待つと、数か月が過ぎます。
まとめ
- データ職の必須要件は、先に役割を決め、最初の問いとデータの状態から逆算し、「入社初日に自社の問いとデータで業務が成り立つか」で三つ以内に
- 要件が膨らむデータ職特有の理由は三つの役割を一人で求める・学位を必須にする・手法とツールを並べる・実績を求める・年数で書く
- 学位・ツール・実績・年数は必須にしない。経験の中身(データの種類、解いた問い、結果が使われたか)で書く
- 絞る手順は役割→最初の問い→データの状態→全部書き出す→初日に成り立つか→覚えられるか・別の担当が持てるか→中身に書き換え→歓迎に優先順位→四者で確認
- 面接では自社の最初の問いを題材に、取り組み方を見る。結果を使う人でも判断できる部分がある
- 転向層(事業側の分析担当、研究者、エンジニア)は役割ごとに合う転向元が違う。役割を決めれば要件の書き方が定まる
- 決まらない原因の多くは最初の問いが無いこと
よくある質問
修士や博士を必須にしないと、手法の深さが担保されませんか
学位は、研究の経験の目安にはなりますが、自社の問いとデータで業務が成り立つかとは直接関係しません。モデル寄りで、新しい手法の研究が必要な役割なら、研究の経験を歓迎に置き、「〇〇の手法を使った研究・実務の経験」と経験の中身で書きます。分析寄りや基盤寄りなら、学位より、事業の課題を扱った経験や基盤の構築の経験のほうが効きます。学位を必須にすると、事業会社で分析をしてきた人や、エンジニアから転向した人を弾き、母集団が狭まります。手法の深さは、面接で自社の問いを題材に、分析の分かる人が確かめます。
「事業への貢献の実績」を必須にしないと、分析だけで終わる人を採ってしまいませんか
実績は、本人の力量だけでなく、前職の会社が結果を使う体制を持っていたかで決まります。体制の無い会社にいた優秀な人は、実績が無く、体制のある会社にいた人は、周りのおかげで実績があることもあります。実績を必須にすると、前者を弾きます。「分析の結果が判断に使われた経験」を歓迎に置き、面接で「結果をどう伝え、どう使われたか」を聞けば、事業に結びつける姿勢は分かります。分析だけで終わるかどうかは、本人の姿勢と、自社が結果を使う体制を持っているかの両方で決まり、後者は自社の側の問題です。
自社の分析環境と言語を必須にしてよいですか
歓迎にとどめます。言語も環境も、同種のものを使った経験があれば、数か月で移行できます。必須にすると、別の言語や環境で同じ分析をしてきた人を弾きます。「同種の分析環境での経験」「いずれかの分析用の言語での経験」のように、種類で書き、自社の環境は「使用しているのは〇〇」と情報として求人票に書きます。候補者は、自分の経験で移行できるかを判断できます。データ職の市場は狭く、言語や環境で絞ると、さらに狭くなります。