採用代行 / 費用・契約・法務
採用代行を複数社に同時発注してよいか
採用代行を複数社に同時に頼めるか。頼めますが、分け方を決めずに並行させると、候補者の重複と情報の分散が起きます。人材紹介を複数社に依頼するのとは事情が違い、代行は自社の運用そのものを担うため、同じ領域に二社が入ると作業がぶつかります。この記事では、成立する分け方と、並行させるときに決めておくことを整理します。
紹介の複数社依頼とは事情が違う
人材紹介を複数社に依頼するのは一般的な進め方です。各社が独自の候補者を持っているので、依頼先が増えれば母集団も増えます。重複が起きても、先に推薦した会社を優先する運用が確立しています。
採用代行は違います。代行が担うのは自社の採用業務そのものです。同じ媒体の管理画面を二社が触る、同じ候補者に二社がスカウトを送る、同じ応募者に二社が連絡する。これらは母集団を増やすのではなく、単に衝突します。
だから、複数社に頼むなら重ならない形に分けることが前提になります。分け方には二つの軸があります。
職種で分ける
最も衝突が起きにくい分け方です。エンジニアの採用をA社、営業の採用をB社、といった形で職種ごとに担当を分けます。
利点は次のとおりです。
- 候補者が重複しにくい(職種が違えば母集団も違う)
- 職種ごとの専門性を持つ会社を選べる
- 成果の比較がしやすい(それぞれの職種で完結するため)
注意点もあります。職種をまたぐ候補者が出たときの扱いです。エンジニア職に応募した候補者が、実は営業寄りの経験を持っていた。この候補者をどちらが担当するかを決めておかないと、対応が止まります。
もう一つ、媒体を共有している場合の権限です。同じ媒体で二つの職種を扱うなら、両社が同じ管理画面に入ります。誰がどの求人を触るかを明確にしておきます。
工程で分ける
母集団形成をA社、応募者対応と日程調整をB社、という分け方です。職種で分けるより難易度は上がります。
成立しやすいのは、工程の間に明確な受け渡しがある場合です。スカウトの送信までをA社、返信が来てからをB社、といった形なら線が引けます。
成立しにくいのは、判断が連続している工程を分けたときです。候補者の検索条件を決める作業と、送った結果を見て条件を直す作業は連続しています。ここを分けると、結果のフィードバックが返らず、条件が改善しません。
工程で分けるなら、受け渡しの形式と、情報の共有方法を先に決めます。どのタイミングで、何を、どこに記録して渡すか。ここが決まっていないと、引き継ぎの都度やりとりが発生し、管理の手間が増えます。
エラベルの見解
複数社に発注する目的が「比較したいから」である場合、その比較はたいてい成立しません。
同じ職種に二社を入れて成果を比べようとすると、母集団が重なります。同じ媒体の同じ候補者層に、二社がアプローチすることになるからです。先に接触したほうが有利になるので、比較しているのは実力ではなく順番です。
職種を分けて比べる場合も、職種によって難易度が違うため、そのままでは比べられません。採りやすい職種を担当した会社の数字が良く出るのは当然です。
比較したいなら、同じ会社の中で担当者を替えて比べるか、期間を区切って順に試すほうが条件がそろいます。あるいは、比較そのものをやめて、商談の段階で見極める。担当者の経歴、稼働の体制、立ち上げの進め方。ここで判断できることは多くあります。
複数社に発注する理由は、比較ではなく分業であるべきです。分業として成立する分け方があるなら進め、ないなら一社に絞ったほうが管理は軽くなります。
同一職種に複数社を入れる場合
どうしても同じ職種に複数社を入れる必要があるなら、次を決めておきます。
媒体を分ける。A社はこの媒体、B社は別の媒体、という形にすると、候補者の重複はかなり減ります。ただし、同じ候補者が複数媒体に登録していることはあります。
候補者の重複判定の基準。自社の採用管理システムに記録がある候補者は、先に記録したほうの担当とする。この形が実務的です。記録の徹底が前提になります。
接触の記録を一元化する。誰がいつ、どの候補者に接触したかを一箇所に記録します。ここが分かれていると、同じ候補者に二社から連絡が行きます。候補者から見れば、同じ会社から二度連絡が来たことになります。
成果報酬の重複を防ぐ。成果報酬型で契約している場合、同じ候補者で二社に成果が発生しないよう、定義に重複の条項を入れます。成果の定義の作り方は成果の定義でもめない書き方にまとめています。
管理コストを見積もる
複数社に発注すると、社内の管理の手間が増えます。見積もっておく項目です。
- 定例会が社数分になる(時間も、準備も、宿題の管理も)
- 稼働報告の様式が会社ごとに違い、突き合わせに手間がかかる
- 契約の更新時期がずれ、それぞれで見直しが要る
- 権限の管理対象が増える
- 候補者の重複確認という作業が新たに発生する
この手間が、分業で得られる効果を上回ることがあります。特に、社内の採用担当が一人しかいない場合は、管理だけで時間が埋まります。
判断の目安として、社内に管理できる人がいるかどうかを先に見てください。複数社の運用は、社内に司令塔がいることが前提です。いないなら、一社に集約して範囲を広げるほうが回ります。
エラベルの見解
複数社に発注している会社で起きがちなのは、情報が社内に集まらないという状態です。
A社が持っている候補者の情報、B社が持っているやりとりの経緯、それぞれの会社の中に溜まっていて、自社にはそれぞれの報告だけが届く。全体像を持っている人が社内にいない状態になります。この状態だと、どの経路が効いているのかも、どの候補者が今どこにいるのかも見えません。
対処は、情報の置き場所を自社に一本化することです。採用管理システムを自社で持ち、両社にアクセス権を渡す。候補者の記録も、接触の履歴も、そこに集まる形にします。会社ごとの独自ツールに情報が溜まる形は避けます。
この設計をしておくと、複数社の運用でも全体像が保てますし、一社を止めても情報は残ります。複数社に発注するかどうかを考える前に、情報の置き場所を決める。順番としてはこちらが先です。置き場所が決まっていない状態で社数を増やすと、管理は急激に難しくなります。
まとめ
- 代行は自社の運用そのものを担うため、同じ領域に二社が入ると衝突する
- 分けるなら職種で分けるのが最も衝突しにくい
- 工程で分けるなら、受け渡しの形式と情報の共有方法を先に決める
- 比較目的の並行発注は成立しにくい。分業として成立する分け方があるかで決める
- 同一職種に複数社を入れるなら、媒体・重複判定・接触記録・成果の重複を決める
- 管理コストは社数に比例して増える。社内に司令塔がいるかを先に見る
- 社数を増やす前に、情報の置き場所を自社に一本化する
よくある質問
途中から二社目を追加してもよいですか
追加できますが、既存の一社との範囲の重なりを整理してから進めます。職種を分けるのか、工程を分けるのか。既存の会社にも新しい体制を伝えておくと、運用が混乱しにくくなります。既存の契約に排他的な条項がないかも確認しておきます。
一社目に不満があるので二社目を入れて比べたいのですが
比較としては成立しにくい進め方です。まず、一社目の不満がどの工程にあるのかを特定してください。担当者の交代や範囲の変更で解決することもあります。それでも替えると決めたなら、並行させるより順に切り替えるほうが、管理も比較も単純になります。進め方は途中解約したいときの進め方にまとめています。
代行会社に他社との併用を伝える必要はありますか
伝えておくほうが運用は円滑です。同じ媒体を使う場合や、候補者が重複する可能性がある場合は、伝えていないと衝突が起きます。あわせて、重複が発生したときの扱いを両社と決めておきます。伝えることで不利になることは、実務上ほとんどありません。