採用代行 / 比較・選び方
代行の担当者に当事者意識を持ってもらう
採用代行の担当者が、自社の採用を自分ごととして考えてくれるか。これは相手の姿勢の問題に見えて、実は発注側の設計で変わる部分が大きい。同じ担当者でも、案件によって関与の深さが違うことがあります。この記事では、当事者意識を生む要素と、削いでしまう扱い方を整理します。
当事者意識を生む四つ
一.情報の量。事業の背景、組織の課題、なぜその人が要るのか。求人票だけを渡された案件と、背景まで共有された案件では、考える深さが変わります。
二.判断への参加。要件をどうするか、条件をどう見るか。意見を求められる立場か、指示を受けるだけの立場か。
三.結果の共有。送った候補者が入社したか、どう活躍しているか。自分の仕事がどこにつながったかが見えるか。
四.扱われ方。業者として扱われるか、一緒に採用を進める相手として扱われるか。
この四つのうち、三番目が最も見落とされています。代行の担当者は、自分が探した候補者のその後を知らないことが多い。入社したかどうかすら伝わっていないことがあります。
情報の量が判断の深さを決める
求人票だけを渡された場合、担当者ができるのは条件に合う候補者を探すことです。それ以上の判断はできません。
背景まで共有された場合、判断の幅が広がります。なぜこの人が要るのか、どういう課題を解決してほしいのか。これが分かると、条件から外れた候補者でも「この人は合うかもしれない」と考えられます。
渡すのは次のあたりです。
- 事業の状況と、この採用がどこに効くか
- 組織の課題(何が足りていないか)
- 過去に採った人の活躍と、辞めた人の傾向
- 面接で意見が割れる候補者の話
四つめが特に効きます。判断の境界が見えると、担当者は自分で考えられるようになります。
エラベルの見解
当事者意識を生む要素で、実は最も効くのに最も忘れられているのが「結果を伝えること」です。
代行の担当者は、候補者を探し、文面を書き、送り、返信に対応します。ところが、その候補者が面接でどう評価されたか、入社したかどうか、入社後どうしているか。ここが伝わっていないことが多い。
自分の仕事がどこにつながったか分からないまま、次の候補者を探す。この状態が続くと、作業になります。
だから、伝えてください。「先月ご紹介いただいた方が入社しました」「面接で現場の評価が高かったです」「あの候補者は、この点で見送りになりました」。
短い連絡で構いません。定例会の冒頭で一分でも足ります。
そして、入社後の話も伝えてください。「入社した方が、こういう場面で活躍しています」。ここまで伝わると、次に探す候補者の見方が変わります。
これは相手を喜ばせるためではありません。判断の材料を渡すことです。結果が分からなければ、精度は上がりません。
判断に参加してもらう
意見を聞く。要件をどうするか、条件を緩めるべきか。「どう思いますか」と聞くだけで、関わり方が変わります。
提案を受け入れる。出てきた提案を検討し、採用するかどうかを返す。採用しない場合も理由を伝えます。
基準を一緒に作る。落とす理由を言語化する作業に、担当者を巻き込む。渡すより、一緒に作るほうが理解が深まります。
定例会で判断してもらう。数字を見て、次に何を変えるかを一緒に決める。報告を聞く場にしないでください。
この四つのうち、二番目が重要です。提案しても検討されない状態が続くと、提案は出てこなくなります。採用しない場合でも、理由を伝えてください。
当事者意識を削ぐ扱い
指示だけを出す。作業の指示を出し、結果だけを受け取る。考える余地がありません。
情報を渡さない。求人票だけを渡し、背景は共有しない。
結果を伝えない。候補者のその後が分からない。
提案を受け流す。出てきた提案に返事をしない。
業者として扱う。定例会で報告だけを求め、会話がない。
担当者の名前を覚えない。窓口としてしか見ていない。
この六つは、意図せず起きることが多い。忙しさの中で、情報を渡す時間が取れない、結果を伝える余裕がない。そして、その状態が続くと関与の深さが下がります。
具体的な運用
定例会の冒頭で結果を共有する。前月に紹介された候補者の状況。一分で足ります。
面接の評価を共有する。書類の合否だけでなく、面接でどう評価されたか。判断の基準が伝わります。
入社後の状況を伝える。四半期に一度でも、入社した人がどうしているか。
提案には返事をする。採用するかどうか、その理由。
担当者の名前で呼ぶ。「代行会社さん」ではなく、その人の名前で。
難しい案件も相談する。「この職種、どう思いますか」。相談される立場になると、関与が変わります。
六つとも、時間はかかりません。ただ、意識していないと抜けます。
エラベルの見解
当事者意識の話をするとき、「相手に求めるもの」として扱わないでください。ここが分かれ目です。
「もっと主体的に動いてほしい」「提案が少ない」。こうした要望は、相手の姿勢の問題として語られます。ところが、多くの場合は設計の問題です。
情報が渡されていない案件で、主体的な提案は出てきません。判断の材料がないからです。結果が伝わらない案件で、精度は上がりません。何が良くて何が悪かったかが分からないからです。
だから、相手に求める前に、渡しているものを確認してください。
そして、担当者は複数の案件を持っています。どの案件に手をかけるかは、日々の判断で決まる。情報が豊富で、提案が検討され、結果も返ってくる案件は、自然と優先度が上がります。
これは打算ではなく、人の動き方として自然なことです。関与を求めるなら、関与できる状態を作る。
そして、この設計は費用をかけずにできます。情報を渡す、結果を伝える、提案に返事をする。時間はかかりますが、費用はかかりません。
同じ金額でも、結果が変わる部分です。
契約の形との関係
成果報酬型では、当事者意識が生まれやすい面があります。成果が報酬に直結するためです。ただし、成果の定義から外れた部分への関与は薄くなります。
月額型では、稼働に対して払う形なので、関与の深さは設計に依存します。だからこそ、情報と結果の共有が効きます。
時間単価型では、時間が費用なので、考える時間も稼働です。提案や相談を求めるなら、その時間を見込んでおいてください。
どの形でも、渡す情報と結果の共有は効きます。契約の形が当事者意識を決めるわけではありません。
期待しすぎない範囲
当事者意識を持ってもらうことと、責任を負わせることは別です。
合否の判断、条件の決定、入社後の育成。これらは自社が持つ領域です。関与を求めても、責任は移りません。
そして、代行の担当者は自社の社員ではありません。事業の意思決定に関わる立場ではなく、業務を担う立場です。この線は保ってください。
期待しすぎると、指揮命令の整理という別の論点も出てきます。線引きは採用代行が偽装請負になる境界線にまとめています。
求めるのは、判断の材料を持って考えてもらうことです。それ以上でも以下でもありません。
まとめ
- 当事者意識は、情報の量・判断への参加・結果の共有・扱われ方で決まる
- 最も忘れられているのは「結果を伝えること」
- 情報は、事業の状況・組織の課題・過去の実例・判断の境界を渡す
- 判断への参加では、提案に返事をすることが重要
- 削ぐのは、指示だけ・情報を渡さない・結果を伝えない・提案を受け流す・業者扱い
- 運用は、定例の冒頭で結果を共有・面接の評価を伝える・提案に返事をする
- 「相手に求めるもの」ではなく、渡しているものを確認する
- 責任は移らない。判断の材料を持って考えてもらうことが目的
よくある質問
提案が出てこないのですが
渡している情報を確認してください。求人票だけを渡している状態では、提案の材料がありません。事業の背景、組織の課題、過去の実例を渡すと変わることがあります。あわせて、過去に出た提案に返事をしていたかも振り返ってみてください。
結果を伝える時間が取れません
定例会の冒頭で一分でも足ります。前月に紹介された候補者がどうなったか、面接でどう評価されたか。まとめて伝える形で構いません。四半期に一度、入社した人の状況を伝えるだけでも、判断の材料になります。
当事者意識を契約で求められますか
契約で求める性質のものではありません。書けるのは、稼働時間や報告の頻度といった条件です。関与の深さは、日々の運用で作られます。渡す情報と結果の共有を運用に組み込むほうが、実効性があります。