採用代行 / 費用・契約・法務
採用代行契約の自動更新条項で気をつけること
採用代行の契約書には、期間満了時に自動で更新される条項が入っていることがあります。この条項そのものは珍しいものではなく、継続を前提とした取引では一般的です。問題になるのは、更新を止めたいときの手続きが、契約書の中でしか定められていないという点です。気づいたときには予告期限を過ぎていた、という事態が起きやすい。この記事では、条項の読み方と、社内でどう管理するかを整理します。
条項のどこを読むか
自動更新の条項は短い文章ですが、読むべき点は決まっています。
- 更新の単位。同じ期間で更新されるのか、別の期間になるのか
- 更新拒絶の予告期限。満了の何か月前までに申し出るか
- 予告の方法。書面か、電子メールでも足りるか
- 予告の起算点。申し出た日か、到達した日か
- 更新後の条件。同一条件で更新されるのか、条件を見直せるのか
- 更新回数の上限。上限があるか、無期限に繰り返されるか
- 更新時の単価改定。改定の申し入れがある場合の手続き
このうち実務で効いてくるのは、予告期限と更新後の条件の二つです。予告期限を過ぎると次の期間が始まり、その期間中は最低契約期間と同じ拘束が生じることがあります。最低契約期間の考え方は最低契約期間はなぜ設定されるのかにまとめています。
更新後の条件については、「同一条件で更新する」と書かれている場合、単価も範囲もそのまま引き継がれます。状況が変わっていても自動的には変わりません。変えたいなら、更新の前に申し入れる必要があります。
自動更新が問題になる場面
自動更新それ自体は、双方にとって手続きの省略になります。ただ、次のような状況では不利に働くことがあります。
採用が一段落したとき。募集していた職種の採用が終わっているのに、契約だけが続きます。稼働の実態がないまま月額が発生する状態です。
社内体制が変わったとき。採用担当を採用した、人事の人員が増えた。内製に戻せる状況になっても、契約が残っていると二重の費用になります。
担当者が交代したとき。契約の相手は会社なので、担当者が替わっても契約は続きます。交代後の運用に不満があっても、更新の時期を逃すと次の期間まで動けません。
単価が実態と合わなくなったとき。依頼する業務が減っているのに単価が据え置かれている、あるいは業務が増えているのに範囲の合意が更新されていない。どちらも、更新のタイミングで見直せるはずのものです。
エラベルの見解
自動更新で損が出るのは、条項が不利だからではありません。更新の時期を誰も見ていないからです。契約を締結するのは経営か管理部門、日々の運用を回すのは現場の採用担当。この二つが分かれていると、更新の期限は誰の仕事にもならなくなります。
対処は仕組みの話になります。締結した時点で、更新拒絶の予告期限をカレンダーに入れる。しかも期限当日ではなく、その手前に「見直しの会」を置く。ここで稼働報告と支出を並べて、続けるか、範囲を変えるか、止めるかを決める。決めたうえで期限までに動く。この流れを作れば、条項の中身にかかわらず主導権は発注側に残ります。
見直しの会は長い時間を取る必要はありません。稼働報告の推移と、採用の進み方と、社内の負荷。この三つを並べれば判断はつきます。契約の管理は法務の仕事に見えて、実際には運用の仕事です。運用している人が期限を持っているかどうかで結果が変わります。
更新前に見直す項目
更新の判断をするとき、次を並べて見ます。
- 依頼している業務の実態。契約書の範囲と、実際にやってもらっている業務がずれていないか
- 稼働の推移。契約時の想定稼働量に対して、実際はどうだったか
- 成果の推移。母集団の量と質、書類通過、面談化、内定。工程ごとの数値
- 社内の負荷。外注前と比べて、社内で使っている時間が減ったか
- 担当者。契約時と同じ人か。交代しているなら、その後の運用はどうか
- 費用の妥当性。実質の時間単価を出して、自社の人件費と並べる
- 今後の採用計画。次の期間に採用する予定があるか
このうち一番と二番のずれは、更新のたびに広がっていきます。採用は状況が変わる領域なので、契約書に書かれた範囲と実務が少しずつ離れる。更新は、これをそろえ直す機会になります。
条件を変えたいときの進め方
更新のタイミングで条件を変えるなら、予告期限より前に動きます。
時期。予告期限の直前に申し入れると、交渉の時間がありません。期限のさらに手前、見直しの会を開いた直後に伝えるのが現実的です。
伝え方。「高いので下げてほしい」ではなく、実態とのずれを示します。稼働報告の推移と、依頼している業務の実態を並べて、範囲か稼働量か単価のどれを合わせたいかを伝えます。
交換材料。期間を長くする、業務範囲を広げる、支払いサイトを短くする。何かを渡すと合意しやすくなります。
合意の残し方。更新時に条件を変えたなら、覚書として書面に残します。口頭の合意は、担当者が交代すると引き継がれません。
条項の解釈や、変更の手続きについて判断に迷うときは、契約書を持って弁護士など専門家にご確認ください。
もめやすい点
予告の到達。メールで送ったが担当者が退職していた、支店に送ったが本社に届いていない。予告の宛先を契約書で確認し、到達が分かる形で送ります。
更新後の単価改定。「協議のうえ改定できる」と書かれている場合、協議が整わないとどうなるかが書かれていないことがあります。整わない場合の扱いを、締結時に確認しておくところです。
更新と最低契約期間の重なり。更新された期間にも最低契約期間の条項が及ぶのか。及ぶ場合、更新を見逃すと長い拘束が続きます。
部分的な解約。複数職種や複数業務をまとめて契約している場合、一部だけを止められるか。まとめて更新される契約だと、不要な部分も続きます。
エラベルの見解
自動更新の是非を論じるより、更新を判断の機会として使うほうが実益があります。採用代行は、契約時に決めた前提が続く前提で動いていますが、採用の状況はそれより速く変わります。職種が変わる、人数が変わる、社内に人が増える。前提が変わっているのに契約だけが同じ、という状態が積み上がると、費用と実態のずれが大きくなります。
そこで、更新の手前に置いた見直しの会で、次の期間に何を頼むかをゼロから書き直すことをおすすめします。前の期間の範囲を引き継ぐのではなく、いまの状況で必要な工程を並べ直す。結果として同じ範囲になることもありますが、書き直す作業自体が判断になります。
この作業をすると、担当者に求めるものも変わることがあります。立ち上げ期は設計ができる人、運用が回り出したら処理量を出せる人。期間ごとに必要な人が違うというのは、実務ではよく起きます。更新は、そこを見直せる数少ない機会です。
まとめ
- 自動更新条項は、予告期限と更新後の条件の二つが読みどころ
- 「同一条件で更新」と書かれていれば、状況が変わっても単価も範囲も自動では変わらない
- 損が出るのは条項が不利だからではなく、更新時期を誰も見ていないから
- 締結時に予告期限をカレンダーへ。期限の手前に見直しの会を置く
- 見直すのは、業務の実態・稼働・成果・社内負荷・担当者・費用・今後の計画
- 条件変更は予告期限より前に、実態とのずれを示して申し入れる
- 更新は、次の期間に頼む工程をゼロから書き直す機会として使う
よくある質問
自動更新条項は削除してもらえますか
交渉次第です。ただ削除すると、更新のたびに契約を結び直す手間が双方に発生します。削除より、予告期限を短くする、あるいは更新時に条件を協議する条項を足すほうが合意しやすいことがあります。目的が「状況に応じて見直したい」ことなら、後者のほうが目的に合います。
更新を止めたいと伝えたら関係が悪くなりませんか
継続の意思がないことを早く伝えるのは、代行側にとっても稼働枠の調整ができるという意味があります。むしろ期限直前に伝えるほうが、引き継ぎの準備が間に合わなくなります。止めると決めていない段階でも、見直しの会の内容は共有しておくと、相手から提案が出てくることもあります。
更新の判断材料が社内にありません
稼働報告と請求書、それに採用の進捗が分かる資料があれば足ります。これらがそろっていないなら、次の期間に向けて稼働報告の粒度を上げてもらうところから始めます。工程ごとの内訳と成果物の量が並記されていれば、次の更新時には判断できる材料になります。