採用代行 / 費用・契約・法務
採用代行の最低契約期間はなぜ設定されるのか
採用代行の契約書に最低契約期間が書かれていると、縛りに見えます。ただ、この条項は代行会社が発注側を囲い込むためだけに置かれているわけではありません。採用代行には、成果が出るまでに時間差があるという構造があり、最低契約期間はその時間差を吸収するための仕組みとして機能しています。この記事では、期間が置かれる理由と、発注側としてどう読み、どう交渉するかを整理します。
期間が置かれる三つの理由
立ち上げ工数を回収するため。契約直後には、運用が始まってからは発生しない作業がまとまって出ます。要件のヒアリング、文面の作成、媒体の設定、選考フローの整備。この工数を初期費用として別に取らず月額に薄く乗せている場合、短期で解約されると代行側は回収できません。初期費用の考え方は初期費用・オンボーディング費用は必要かにまとめています。
担当者を確保するため。代行会社は、契約が決まった時点で担当者の稼働枠を空けます。一人が持てる社数には上限があるので、枠を空けるということは他の案件を断ることでもあります。短期で解約されると、その枠が空いたまま残ります。期間の縛りは、この稼働枠の確保に対応しています。
成果が出るまでに時間がかかるため。採用は、動き出してから結果が出るまでに工程が積み重なります。スカウトを送り、返信を待ち、面談を設定し、選考が進み、内定が出る。この一連が一巡するまでに、それなりの時間が必要です。短い期間で切ると、施策の良し悪しではなく、単に一巡していないだけの状態で判断することになります。
発注側から見た妥当な長さ
期間の長さは、依頼する業務の性質で考えると判断しやすくなります。
| 依頼の性質 | 期間の考え方 |
|---|---|
| 日程調整・事務連絡などの定型業務 | 成果が即日で見えるので、長い期間を置く理由は小さい |
| スカウト運用 | 送信から面談化までの一巡が見える長さは要る |
| 母集団形成から選考支援まで | 内定が出るまでの一巡を見込む長さ |
| 要件の整理・採用設計から | 設計してから運用に移るぶん、さらに時間がかかる |
定型業務だけを頼むのに長い縛りが置かれているなら、その理由を聞く価値があります。逆に、採用設計から任せる契約で期間が極端に短いと、代行側は短期で成果になる動きに寄るため、仕込みが進みません。期間の長さは、依頼内容と噛み合っているかどうかで見ます。
エラベルの見解
最低契約期間の交渉で、期間そのものを短くしてもらうのは難しいことが多い。代行側の原価に直結しているためです。そこで有効なのは、期間は受け入れて、期間中の見直し条項を入れてもらうという進め方です。
具体的には、契約の途中に見直しの区切りを置き、そこで業務範囲・稼働量・担当者を変更できるようにします。期間の縛りは残るので代行側の回収は成立し、発注側は状況が変わったときに中身を変えられる。双方にとって現実的な落としどころになります。
この提案が通るかどうかで、相手の姿勢も見えます。すぐに応じる会社は、途中で範囲を変えることを想定した運用ができています。難色を示す会社は、体制が固定されているか、そもそも柔軟に動けない事情があります。期間の数字を削る交渉より、この一つの条項を入れる交渉のほうが、実務では効きます。
期間中に見る指標
契約期間を受け入れるなら、その期間を判断のために使います。何を見るかを最初に決めておくと、更新時期に迷いません。
- 立ち上げの進み方。最初の区切りまでに、要件定義書・文面・検索条件がそろったか
- 稼働の中身。工程ごとの内訳が出ているか。時間の使い方が月ごとに変化しているか
- 母集団の量と質。件数だけでなく、書類が通る割合が動いているか
- 社内の負荷。日程調整や事務連絡に使っていた時間が実際に減ったか
- やりとりの質。確認事項の投げ返しが減っているか。提案が出てくるか
成果として採用人数だけを見ると、期間中の判断ができません。採用は最後の工程なので、途中の月には現れないことがあります。工程の途中に置いた指標を見て、進んでいるかどうかを判断します。
指標の推移を残しておくと、更新の判断も、次の依頼先を探すときの説明も楽になります。
契約書で確認すること
- 最低契約期間の開始日(契約締結日か、業務開始日か)
- 期間内に解約する場合の違約金や残存期間の扱い
- 自動更新の有無と、更新を止める場合の予告期限
- 期間中に業務範囲や稼働量を変更できるか
- 担当者が交代した場合に、発注側から解約できる条項があるか
- 期間中に採用が完了した場合の扱い(募集が終わっても期間は残るのか)
- 代行側の債務不履行があった場合の解除条項
このうち見落とされやすいのが、採用が早く決まったときの扱いです。半年の縛りがある契約で最初の月に採用が決まると、残りの期間はどうなるのか。募集職種を差し替えて継続する、稼働を下げて延長する、といった選択肢を先に決めておくと無駄が出にくくなります。
なお、契約条項の解釈は個別の事情で変わります。気になる条項があるときは、締結前に弁護士など専門家にご確認ください。
エラベルの見解
期間の縛りが実際に問題になるのは、成果が出ないときではなく、担当者が合わないときです。成果は工程を追えば原因が分かりますし、要件の問題なら自社側で直せます。しかし担当者との相性は、時間が解決しないことがあります。
にもかかわらず、多くの契約は担当者を特定せずに結ばれます。契約の相手は会社なので、誰が動くかは会社側の裁量になる。すると、合わないと感じても、期間が残っている限り動けません。
ここに対して発注側ができるのは二つです。一つは、契約時に担当者交代を申し入れられる条項を置くこと。もう一つは、そもそも契約前に担当者を確認しておくことです。エラベルは後者を仕組みにした窓口で、担当者の経歴を見てから決められる形にしています。ただ、この形を使うかどうかとは別に、期間の長い契約を結ぶときほど、誰が動くのかを先に確かめる意味は大きくなります。
まとめ
- 最低契約期間は、立ち上げ工数の回収・担当者の稼働枠の確保・成果までの時間差に対応している
- 妥当な長さは依頼内容で決まる。定型業務に長い縛りがあるなら理由を聞く
- 期間を短くする交渉より、期間中の見直し条項を入れる交渉のほうが通りやすい
- 期間中は採用人数ではなく、立ち上げの進み方・稼働の中身・母集団の質・社内の負荷を見る
- 契約書では自動更新・違約金・担当交代・採用完了時の扱いを確認する
- 期間の縛りが効いてくるのは、成果ではなく担当者が合わないとき
よくある質問
最低契約期間がない代行会社もありますか
あります。スポットの業務委託や、時間単価で稼働に応じて精算する形では、期間を置かない契約もあります。ただし、その場合は立ち上げの作業が薄いか、初期費用として別途請求されるかのどちらかになることが多いところです。期間の有無だけでなく、立ち上げ工数をどう扱っているかとあわせて見ると全体像がつかめます。
期間の途中で解約したい場合はどうなりますか
契約書の条項によります。残存期間分の支払いが必要な契約もあれば、予告期間を置けば解約できる契約もあります。まずは条項を確認し、そのうえで解約以外の選択肢も検討します。範囲の縮小や担当者の交代で解決することもあるためです。進め方は途中解約したいときの進め方にまとめています。
期間が長いほど単価は下がりますか
下がることがあります。代行側は稼働枠を長く押さえられるぶん、原価を平準化できるためです。ただし、長い期間を受け入れる代わりに単価を下げるという交渉は、状況が変わったときに動けなくなる面もあります。期間と単価を交換するなら、見直し条項とセットで進めるほうが安全です。