採用代行 / 比較・選び方
社内の採用担当を育てる
社内の採用担当を育てたい。採用の実務は範囲が広く、一度に全部を身につけるのは難しい。だから、何を、どの順番で身につけてもらうかを決めておくと進みます。そして、代行を使っている期間は、育成の機会にもなります。この記事では、習得の順番と、代行を使いながら育てる方法を整理します。
身につけてもらう四つ
一.要件を言語化する力。現場の話を聞いて、必須と歓迎を分け、落とす理由を書く。採用の起点になる力です。
二.母集団を設計する力。どの経路で、どんな層に、どうアプローチするか。媒体の選定、検索条件、文面の設計。
三.候補者を見る力。書類から何を読み取るか、面接で何を確認するか。判断の力です。
四.運用を回す力。日程調整、応募者対応、進捗の管理、数字の集計。
四番目から身につけて、一番目に向かうのが自然な順番です。運用を回しながら全体像を掴み、候補者を見る目を養い、母集団の設計に進み、最後に要件そのものを扱えるようになる。
逆に、要件の言語化から始めると難しい。現場との対話には、採用の実務を知っていることが前提になります。
順番と期間
第一段階:運用を回す
- 日程調整、応募者への連絡、データの入力
- 選考の進捗を把握する
- 数字を集計する
この段階で、採用の全体像が見えてきます。どの工程があり、どこで詰まるか。
第二段階:候補者を見る
- 書類の一次仕分けを、基準に沿って行う
- 面接に同席する
- 判断が分かれた候補者について、理由を聞く
判断の一致率を見ながら、任せる範囲を広げます。
第三段階:母集団を設計する
- 検索条件を作る
- スカウト文面を書く
- 数字を見て、条件や文面を直す
第四段階:要件を扱う
- 現場と要件を擦り合わせる
- 落とす理由を言語化する
- 条件の妥当性を判断する
各段階に、それなりの期間が要ります。焦って進めると、判断の質が伴いません。
エラベルの見解
代行を使っている期間は、育成の機会として使えます。ここを意識するかどうかで、数年後の体制が変わります。
代行が実務を担っている間、社内の担当者は運用から離れます。このまま何もしないと、代行が抜けたときに何も残りません。
だから、代行の作業を見る機会を作ってください。
一つめ、定例会に出て判断の過程を見る。数字を見て、何を変えるかを決める場。判断の理由を聞けます。
二つめ、成果物をレビューする。文面や検索条件を読み、疑問があれば聞く。なぜそうしたかを聞くと、設計の考え方が分かります。
三つめ、並走して同じ作業をする。同じ職種の検索条件を、社内でも作ってみる。代行のものと比べると、差が具体的に見えます。
四つめ、書類の仕分けを一緒にやる。代行の判断と自社の判断を突き合わせる。一致率が見えます。
この四つは、通常の運用の中でできます。特別な時間を取らなくても、意識するだけで学びの機会になります。
代行を使うことと、社内が育たないことは同義ではありません。設計次第です。
代行を使いながら育てる
レビューする側に回す。代行が作ったものを、社内の担当者が確認する。読む側の目が育ちます。
判断を戻してもらう。迷った候補者を、社内が判断する。判断の機会が増えます。
質問できる関係を作る。「なぜこの条件にしたのですか」と聞ける場。定例会でも、個別のやりとりでも。
一部の工程を任せる。運用の一部を社内が担い、代行が確認する。移管の形と同じです。扱いはノウハウを移管してもらう進め方にまとめています。
この四つは、代行側の協力が要ります。契約の段階で、育成の意図を伝えておいてください。
力量をどう確認するか
判断の一致率。書類の仕分けで、代行や上長の判断とどれだけ一致するか。数字で見られます。
質問の内容。「これはどうすればよいですか」から「この場合はこう考えていますが、どうでしょうか」に変わっているか。理解の深さが出ます。
作った成果物。検索条件や文面を作ってもらい、質を見る。
現場との会話。要件の擦り合わせで、何を聞けているか。表面的な確認で終わっていないか。
四番目が、最も高度な力です。現場が言った要件をそのまま受け取るのではなく、背景を聞き、実態を掴む。ここまで来ると、要件を扱えるようになっています。
育成で難しい部分
候補者を見る目。数を見ないと身につきません。書類を見る機会を意図的に作る必要があります。
現場との関係。信頼がないと、本当のことを話してもらえません。時間がかかります。
市場の感覚。どの条件が通用し、どこが厳しいか。実際に運用してみないと分かりません。
判断の速さ。基準が固まっていないうちは、迷う時間が長くなります。
この四つは、教えて身につくものではありません。経験を積む機会を作ることになります。
そして、代行がいると、この経験の機会が減ります。実務を担っているからです。だから、意図的に機会を作る必要があります。
一人に集中させない
採用の業務が一人に集中すると、その人が抜けたときに止まります。
複数人で見る形にする。書類の判断を二人で行う、定例会に複数人が出る。
判断の基準を文書にする。属人化を防ぎます。マニュアルの作り方は採用マニュアルを残すにまとめています。
現場の責任者にも関わってもらう。人事だけが採用を持つ形にしない。
外部を残す。すべてを内製にせず、繁忙期の吸収や専門性の高い工程は外に残す。
四番目は、育成の観点でも意味があります。外部の視点が入ると、社内の運用が固定されにくくなります。
エラベルの見解
採用担当を育てるときに、「他社の採用を見る機会」を作れると効きます。ここは意外に見落とされます。
自社の採用だけを見ていると、それが標準だと思ってしまいます。この職種はこのくらいの母集団、この条件で採れる。ところが、それは自社の条件での話です。
代行の担当者は、複数社の採用を見ています。同じ職種でも、条件や訴求によって結果が違うことを知っています。
だから、聞いてみてください。「他社ではどうですか」「この条件は市場から見てどうですか」。具体的な社名は出せませんが、傾向としては答えられます。
そして、この会話が社内の担当者の視野を広げます。自社の条件が市場からどう見えるか。ここが分かると、要件の議論も変わります。
さらに、代行の担当者に「うちの採用で気になる点はありますか」と聞いてみてください。外から見た指摘は、社内では気づきにくい部分を突くことがあります。
代行を使うことの価値は、実務を任せることだけではありません。外の視点が入ることも、価値の一つです。
まとめ
- 身につけるのは、要件の言語化・母集団の設計・候補者を見る力・運用を回す力
- 順番は、運用 → 候補者を見る → 母集団の設計 → 要件を扱う
- 代行を使う期間は、育成の機会として使える
- 見る機会は、定例会への出席・成果物のレビュー・並走・仕分けの突き合わせ
- 育てる方法は、レビューする側に回す・判断を戻してもらう・質問できる関係・一部を任せる
- 力量は、判断の一致率・質問の内容・成果物・現場との会話で確認する
- 難しいのは、候補者を見る目・現場との関係・市場の感覚・判断の速さ。経験の機会が要る
- 他社の採用を見る機会として、代行の担当者に聞いてみる
よくある質問
代行を使っていると社内が育ちませんか
設計次第です。実務を任せたまま何もしなければ育ちませんが、レビューする側に回す、判断を戻してもらう、並走する。こうした機会を作れば、通常の運用の中で学べます。契約の段階で、育成の意図を伝えておいてください。
未経験の担当者に何から任せればよいですか
運用から始めてください。日程調整、応募者への連絡、データの入力。この工程を通じて、採用の全体像が見えてきます。そのうえで、基準に沿った書類の仕分け、面接への同席と進みます。要件の擦り合わせは、実務を知ってからのほうが噛み合います。
育成にどのくらいの期間がかかりますか
段階によって違います。運用を回せるようになるのは比較的早く、要件を扱えるようになるには相当の期間が要ります。焦って進めると判断の質が伴わないため、各段階で力量を確認しながら進めてください。