採用代行 / SRE

SREの採用要件の作り方|必須と歓迎を分ける基準

公開 2026-09-16

SREの求人票の必須要件には、「SREとしての実務経験」「開発とインフラの両方の経験」「特定のクラウド」「特定の監視ツール」「コード化の経験」「経験五年以上」が並びがちです。全部を満たす人は、市場にほとんどおらず、いても複数の会社から声がかかっています。結論を先に書くと、SREの採用要件は、先に自社のSREの役割を定義し、必須を「入社初日に自社で担う役割が成り立つか」で三つ以内に絞り、SREの肩書と経験年数は必須にせず、経験の中身(指標の設計、運用の改善、自動化、開発チームとの協力)で書くと、SREの経験者だけでなく転向の素養がある層も母集団に入り、採用が現実になります。役割の定義が無いまま要件を積むと、「何でもできるSRE」を探すことになり、誰もいません。開発エンジニアの要件はエンジニアの採用要件の作り方に、代行に出す工程の線はSRE採用を代行に出す判断基準にまとめています。

SREで要件が膨らむ理由

他の職種と共通する理由(現場の希望を全部書く、前任者を基準にする、失敗を避けたい)に加えて、SREに特有の理由があります。

一つ目は、SREの定義が広いことです。信頼性の指標の設計、監視、障害対応、運用の改善、自動化、配備の仕組み、性能、容量、開発チームとの協力。SREの概念に含まれる領域は広く、全部を書くと、全部を経験した人を求めることになります。

二つ目は、「開発とインフラの両方」を求めることです。SREは両方の素養を活かす役割ですが、両方を深く経験した人は少ない。開発が中心で運用に関心のある人、インフラが中心で改善を進めてきた人が、SREとして育つのが普通で、最初から両方を深く持つ人を必須にすると、誰もいません。

三つ目は、特定のツールを必須にすることです。監視ツール、配備のツール、クラウドの種類。ツールは移行に数か月かければ覚えられますが、必須に書くと、別のツールで同じことをしてきた人を弾きます。

四つ目は、「SREの実務経験」を必須にすることです。肩書としてのSREは、会社によって実態が違い、肩書があっても運用担当だった人と、肩書が無くてもSREの仕事をしてきた人がいます。肩書を必須にすると、後者を弾き、前者を通します。

五つ目は、年数です。SREは比較的新しい役割で、年数で測ると、経験者の母数がさらに減ります。

必須と歓迎を分ける基準

基準は「入社初日に、自社で担う役割が成り立つか」です。SREでは「自社で担う役割」が会社ごとに違うので、先に役割を定義します。役割の定義はSRE採用を代行に出す判断基準で扱った「SREに何を任せるかの一文」です。

項目の例必須になる場合歓迎になる場合
信頼性の指標の設計指標を作るところから任せる役割指標があり、運用する役割なら歓迎
運用の改善・自動化改善を主な役割にする改善は将来で、まず監視と対応を安定させる役割なら歓迎
開発チームとの協力開発チームと一緒に仕組みを作る役割インフラ側に閉じた役割なら歓迎(ただしそれはSREか、を問い直す)
監視・障害対応初日から当番に入る監視は別の担当が持つ
特定のクラウドそのクラウド固有の設計が中心別のクラウドの経験があれば移行できる
特定の監視・配備ツール必須にしない。同種のツールの経験を歓迎に
開発の経験開発チームのコードを読んで改善を提案する役割インフラ側の改善が中心なら歓迎
インフラの経験インフラの設計と運用を担う役割開発側の信頼性が中心なら歓迎
SREの肩書での経験必須にしない。経験の中身で
経験年数必須にしない

基準の要点は、「開発とインフラの両方を必須にしない」ことです。自社の役割が開発側の信頼性に寄るなら開発の経験を必須に、インフラ側の改善に寄るならインフラの経験を必須に。もう一方は歓迎にして、入社後に自社で覚えてもらいます。

エラベルの見解

相談で多いのは、「SREの経験があって、開発もインフラも分かって、うちのクラウドと監視ツールを使ったことがある人」というご要望です。この要件で市場を見ると、数える程度で、その人たちは条件の良い会社に既にいます。要件を一つずつ「初日に自社で担う役割が成り立つか」で問うと、SREの肩書は要らず、ツールは覚えられ、開発かインフラのどちらかで足りる、と分かります。残るのは「運用の改善を自ら進めた経験」と「開発チームと協力した経験」の二つくらいです。

見ていて差がつくのは、「転向層を母集団に入れる要件になっているか」です。開発エンジニアで運用の改善を進めた人、インフラ運用で自動化を進めた人は、SREの肩書は無くても、SREの仕事をしてきた人です。要件を経験の中身で書けば、この層が応募でき、母集団が生まれます。エラベルでは、SREの要件を整理するとき、依頼側に「SREの肩書を必須から外せるか」を最初に伺っています。外せる会社は母集団が生まれ、外せない会社は待ち続けることになります。

必須を三つに絞る手順

SRE向けに、絞る手順を番号付きで整理します。

  1. 自社のSREの役割を一文で定義する。 「信頼性の目標を開発チームと決め、その達成のために運用の仕組みを作る」。この一文が無ければ、ここから。
  2. 初日と一か月後に担う役割を書き出す。 指標を作るのか、監視に入るのか、改善から始めるのか、開発チームとの関係を作るのか。
  3. 現場(開発チームの責任者とインフラを見ている人)の希望を全部書き出す。 ここでは絞らない。
  4. 一つずつ、「初日に自社で担う役割が成り立つか」を問う。 成り立たないものだけ残す。
  5. 残ったものが三つを超えたら、「社内の誰かが数か月補えるか」「入社後に自社で覚えられるか」を問う。 補えるもの、覚えられるもの(ツール、クラウドの種類、もう一方の領域)は歓迎へ。
  6. SREの肩書と年数を、経験の中身に書き換える。 「SREとして〇年」ではなく「運用の負担を改善や自動化で減らした経験」「開発チームと協力して仕組みを作った経験」。
  7. 歓迎に回したものを、優先順位を付けて三〜五つ書く。 面接で見る点になる。
  8. 開発チームの責任者・インフラを見ている人・人事・経営で確認する。 「この三つがあれば、他は入社後に補える」と言えるか。

手順の要点は、「一で役割を定義する」ことです。役割が定義されていない状態で要件を議論すると、SREの概念に含まれる全部が並びます。

経歴で確かめられる要件と、面接でしか分からない要件

SREでは、肩書が実態を表さないので、確かめ方の区別がとくに重要です。

確かめる方法要件の例見方
経歴で確かめられる担当した領域(開発かインフラか)、改善や自動化の実績の有無、指標の設計に関わったか、規模、使った技術書類の一次絞りで。「SRE」の肩書ではなく、改善・自動化・指標の記述があるかを見る
経歴では分からない信頼性をどう考えるか、障害の振り返りの姿勢、開発チームとの協力の仕方、改善の優先順位の付け方面接で、開発チームの責任者とインフラを見ている人が聞く。構造化面接
経歴でも面接でも分かりにくい実際の自動化のコードの質、指標の設計の妥当性過去の成果物(社外秘でないもの)や、自社の課題を題材にした短い議論で見る

分け方の要点は、「面接で、開発チームの責任者が『一緒に働けるか』を確かめる」ことです。SREの適性の多くは、技術より、開発チームとの協力の仕方にあり、それは開発チームの責任者にしか判断できません。

転向層を母集団に入れる要件の書き方

SREの経験者が少ない以上、転向層(開発から、インフラから)を母集団に入れる要件の書き方が、採用の現実性を決めます。

転向元持っているもの要件の書き方
開発エンジニアコードを書く力、開発チームの文化の理解。運用や信頼性への関心「開発の経験があり、運用や信頼性の改善に自ら取り組んだ経験」。インフラの深い経験は歓迎に
インフラエンジニア(運用)監視、障害対応、環境の理解。改善や自動化を自ら進めた実績「インフラの運用の経験があり、改善や自動化を自ら進めた経験」。開発の深い経験は歓迎に
インフラエンジニア(構築)設計、コード化、クラウドの理解「インフラの設計をコードで管理した経験」。信頼性の指標は歓迎に
SREの経験者全部の素養上の三つの書き方で、SREの経験者も当然に入る

書き方の要点は、「三つの転向元のどれからも応募できる要件にする」ことです。「SREの経験」を必須にすると、三つの転向元が全部外れます。経験の中身で書けば、三つの転向元とSREの経験者の全部が入ります。

要件が決まらないときの原因

原因起きていること直し方
SREの役割が定義されていない「SREを採りたい」だけ役割を一文で。開発チームの責任者と決める
開発チームとインフラの担当で、求めるものが違う開発チームは「運用を持ってほしい」、インフラは「改善をしてほしい」役割の定義で調整する。両方なら優先を決める
SREの概念を全部書いている指標も監視も改善も自動化も配備も初日に担う役割だけを必須に
「SREの経験」を必須にしている肩書で探す経験の中身に書き換える。転向層を入れる
ツールを必須にしているいまのツールを使える人が欲しいツールは歓迎に。同種のツールの経験で足りる
開発とインフラの両方を必須にしている両方分かる人が理想役割が寄る側を必須に、もう一方を歓迎に
市場の実態を知らない「この要件で普通にいるはず」代行や媒体に、その要件での人数を聞く

原因の要点は、「開発チームとインフラの担当で、求めるものが違う」ことがSREに特有だという点です。この二者の要望を、役割の定義で一つにしないと、要件は両方の要望の足し算になります。

代行に出せる工程

工程社内で持つ代行に出せる
役割の定義判断(開発チームの責任者を含めて)一文にする打ち合わせの進行
初日の役割の書き出し社内が出す聞き取って一覧にする
必須と歓迎の分離「初日に成り立つか」の判断は社内問いを立て、一つずつ確認する進行
肩書と年数の書き換え中身は社内が出す経験の中身の言葉に直す
転向層を入れる要件の設計判断三つの転向元からの書き方の提案
市場の実態の確認判断その要件での人数を示す
求人票への反映確認書く
書類の一次絞りSREとしての実態の妥当性改善・自動化・指標の記述の有無での分類
面接で見る点の整理開発チームの責任者が使う歓迎の要件を質問の案に

分け方の要点は、「役割の定義は、開発チームの責任者を含めて社内で決める」ことです。代行は、その打ち合わせの進行と、決まったものの言語化を担えます。

エラベルの見解

担当する側から見ると、SREの要件で最も時間がかかるのは、開発チームの責任者とインフラの担当の要望を、一つの役割の定義にまとめることです。二者の要望は違うことが多く、足し算にすると誰もいない要件になります。役割を一文にする打ち合わせを、二者と人事と(代行がいれば代行と)で持ち、優先を決めると、必須は自然に三つに落ちます。

エラベルでは、SREの案件で要件が整理されていない場合、担当者の最初の仕事を「役割を一文にする打ち合わせの進行」にすることをお勧めしています。募集が始まるのは数週間遅れますが、役割が定義され、転向層も入る要件で募集を始めると、母集団が生まれます。飛ばして「SREの経験者」を待つと、数か月が過ぎます。

まとめ

よくある質問

SREの経験が無い人を採って、SREとして育つのですか

SREの経験者の多くは、開発かインフラのどちらかから転向して、SREの仕事をしながら育った人です。最初からSREだった人は少ない。開発の経験があって運用の改善に自ら取り組んだ人、インフラ運用で自動化や指標の導入を進めた人は、SREの仕事をすでに一部やっていて、役割と時間を与えれば育ちます。育てるには、改善に使える時間、開発チームとの協力の関係、外部のSREの経験者からの助言(あれば)が要ります。この体制が無いなら、転向層でもSREの経験者でも育たず、運用担当になります。

開発チームは「運用に強い人」、インフラの担当は「コードが書ける人」を求めています。どちらを必須にすべきですか

自社のSREの役割が、どちらに寄るかで決めます。開発チームのコードの信頼性を改善する役割なら開発の経験を必須に、インフラの運用を仕組みで改善する役割ならインフラの経験を必須に。両方を必須にすると、両方を深く持つ人を探すことになり、市場にいません。両方の要望を役割の定義の打ち合わせで出し、「まず何から」の優先を決めて、優先する側を必須に、もう一方を歓迎にします。一人目で片方を採り、二人目でもう一方を採る形もあります。

自社の監視ツールとクラウドの経験は、必須にしてよいですか

歓迎にとどめます。監視ツールもクラウドも、同種のものを使った経験があれば、数か月で移行できます。必須にすると、別のツールや別のクラウドで同じ仕事をしてきた人を弾き、市場がさらに狭くなります。「同種の監視ツールの経験」「いずれかのクラウドの設計・運用の経験」のように、種類で書き、自社のツールは「使用しているのは〇〇」と情報として求人票に書きます。候補者は、自分の経験で移行できるかを判断できます。