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メンタル不調者への対応|心の健康づくり計画から復職支援までの設計

公開 2026-09-22

副業で人事を受けていると、依頼先から「休職している人の復帰をどう進めればよいか」「最近様子がおかしい社員がいるが、どう声をかけるか」と相談されることがあります。この領域は、医学的な判断と人事の判断が混ざりやすく、副業の人事が踏み込みすぎると本人にも会社にも危険です。一方で、制度と運用の設計は人事の仕事で、ここが空いている依頼先は多くあります。この記事は、メンタル不調への対応の前提と、副業の人事が持てる範囲を整理したものです。結論を先に書くと、土台は労働安全衛生法に基づく措置(健康相談を行うことができる体制の整備、健康診断とその事後措置、長時間労働者への医師による面接指導、ストレスチェックとその事後措置、健康教育および健康相談その他健康の保持増進に必要な措置)で、事業場におけるメンタルヘルス対策の計画として「心の健康づくり計画」を策定することとされています。休業した人の復帰については、厚生労働省と労働者健康安全機構が「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を公表しています。医学的な判断は主治医と産業医、個別の法的な判断は弁護士や社会保険労務士にご確認ください。ストレスチェックはストレスチェックの義務に、安全配慮義務は安全配慮義務にまとめています。

土台になる措置と、心の健康づくり計画

労働安全衛生法に基づく措置。厚生労働省のテレワークのガイドラインでは、自宅等でテレワークを実施する場合も含め、事業者が講ずる必要がある措置として次が挙げられています。健康相談を行うことができる体制の整備(労働安全衛生法第13条の3)、雇入れ時や作業内容変更時の安全衛生教育(第59条)、必要な健康診断とその結果等を受けた措置(第66条から第66条の7まで)、過重労働による健康障害を防止するための長時間労働者に対する医師による面接指導とその結果等を受けた措置および面接指導の適切な実施のための労働時間の状況の把握(第66条の8、第66条の9、第66条の8の3)、ストレスチェックとその結果等を受けた措置(第66条の10)、労働者に対する健康教育および健康相談その他健康の保持増進を図るために必要な措置(第69条)。

心の健康づくり計画。同ガイドラインでは、事業者は、事業場におけるメンタルヘルス対策に関する計画である「心の健康づくり計画」を策定することとしており(労働者の心の健康の保持増進のための指針、平成18年公示第3号)、その策定に当たっては、テレワークにより生じやすい状況を念頭に置いたメンタルヘルス対策についても、衛生委員会等による調査審議も含め労使による話し合いを踏まえた上で記載し、計画的に取り組むことが望ましい、と説明されています。

テレワークでの留意点。ガイドラインは、テレワークでは周囲に上司や同僚がいない環境で働くことになるため、労働者が上司等とコミュニケーションを取りにくい、上司等が労働者の心身の変調に気づきにくいという状況となる場合が多い、と指摘しています。そのうえで、チェックリストを活用する等により、健康相談体制の整備や、コミュニケーションの活性化のための措置を実施することが望ましい、とされています。

ストレスチェックとの関係。ストレスチェックは、高ストレス者として選定され面接指導を受ける必要があると実施者が認めた労働者から申出があった場合に、事業者が医師による面接指導を実施し、医師から就業上の措置に関する意見を聴取して、必要に応じて適切な措置を講じる、という流れです。個人の結果は本人に直接通知され、基本的に事業者には提供されません。詳しくはストレスチェックの義務に整理しています。

副業の人事が持てる範囲と、持てない範囲

この領域は、線を先に引いておかないと事故になります。

持てる(副業の人事)持てない(専門家・社内)
心の健康づくり計画の骨子の案、衛生委員会等に諮る資料診断、医学的な判断(主治医・産業医)
相談の窓口の設計、誰に相談できるかの周知個別の事案での就業上の措置の医学的な妥当性(産業医)
上司が気づいたときに誰につなぐかの経路の設計休職の可否、復職の可否の判断(主治医・産業医・会社)
休職から復職までの手順の型、記録の様式個別の法的な判断(弁護士・社会保険労務士)
業務量や配置の調整の運用(本人と話す工程を含む)健康情報そのものの取扱い(社内の定められた担当)
管理職向けの説明資料(気づいたときの対応)個人の健康情報へのアクセス

踏み込みすぎない線。副業の人事は外部から入るので、個人の健康情報に触れる立場には原則として立ちません。「あの人は大丈夫か」という相談を受けたときも、個人の状態についての判断はせず、「誰につなぐか」の経路を示す側に立ちます。この線を契約の前に伝えておくと、依頼先も頼み方を間違えません。

エラベルの見解

担当する側から見ると、この領域で最も価値が出るのは、「休職から復職までの手順を、依頼先の中に作る」ことです。相談で見ていると、手順がない依頼先では、休職のたびに一から対応が決まります。誰が本人と連絡を取るのか、頻度はどれくらいか、主治医の診断書をどう扱うか、復帰の判断は誰がするのか、戻ってからの業務量をどう決めるのか。その都度決めるので、対応が人によって違い、本人は不安になり、上司は何をしてよいか分からず、結果として復帰がうまくいきません。

厚生労働省と労働者健康安全機構は「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を公表しています。まずこれを依頼先で共有し、自社の手順に落とす作業をします。休職中の連絡の担当と頻度、診断書の提出の窓口、復職の判断の流れ(主治医の判断、産業医等の意見、会社の決定)、復帰後の業務量の調整の期間、フォローアップの間隔。これを紙にして、休職が起きる前に置いておくことが要点です。起きてから作ると、目の前の一人の事情に引きずられた手順になります。エラベルでは、依頼側が担当者の経歴を見て選ぶ仕組みなので、復職支援の設計に関わった経験がある人は、そこを経歴に書いておくと選ばれやすくなります。

休職から復職までの設計

副業の人事が作るのは、次の形です。手引きの内容を、依頼先の実情に合わせて落とします。

段階決めること
不調に気づく上司が気づいたときに誰につなぐか、本人が相談できる先(上司以外も)
受診と休職の開始診断書の提出先、休職の手続、休職中の給与や社会保険の扱いの説明
休業中会社側の連絡の担当と頻度、本人が連絡しやすい方法、何を話すか
復職の申出主治医の判断(職場復帰可能の判断)の扱い、提出する書類
復職の可否産業医等の意見、会社としての決定の流れ、誰が決めるか
復職後業務量や勤務時間の調整の期間、上司との定期的な面談、記録
フォローアップ一定期間後の見直し、再発の兆しへの対応

主治医と産業医。主治医は本人を診ている医師で、産業医等は職場の状況を踏まえて意見を述べる立場です。主治医の「復帰可能」の判断と、職場で求められる業務の遂行との間にずれが生じることがあるので、会社が求める業務の内容を主治医に伝えられる形(本人の同意を得たうえで)を作っておきます。この設計は産業医と相談しながら決めます。

復帰後の調整。復帰の直後から元の業務量に戻すと、再発のリスクがあります。一定期間は業務量や勤務時間を調整する形を制度として持ち、期間と見直しのタイミングを決めておきます。調整の内容は本人と話して決め、記録に残します。

健康情報の扱い。診断書や産業医の意見は、健康情報として特に配慮が要ります。誰がどこまで知るか、どこに保管するか、上司にどこまで伝えるかを、依頼先の規程に沿って先に決めます。本人の同意の範囲を超えて情報が広がらない設計にします。取扱いの判断は、産業医や社会保険労務士、弁護士にご確認ください。

予防の側。復職の手順と同じくらい大事なのが、不調に至る前の設計です。長時間労働者への医師による面接指導の運用、ストレスチェックの集団分析からの職場環境改善、相談の窓口の周知。この三つが回っていると、休職に至る数そのものが変わります。安全配慮義務の考え方は安全配慮義務に整理しています。

エラベルの見解

外に出してよいのは、心の健康づくり計画の骨子の案、相談の窓口と経路の設計、休職から復職までの手順の型、記録の様式、復帰後の調整の運用、管理職向けの説明資料、予防の三つ(面接指導の運用、集団分析からの改善、窓口の周知)の設計までで、「この人は復職できる状態か」「この診断書をどう読むか」「この対応は違法か」といった判断は、主治医、産業医、弁護士、社会保険労務士の範囲です。個人の健康情報に副業の人事が触れる場面は、原則としてありません。

担当する側から見ると、この線を最初に伝えることが、結果として依頼先の役に立ちます。「個別の人のことは私は判断しません。判断する人につなぐ経路と、判断した後に動く仕組みを作ります」と言うと、依頼先は産業医や専門家に何を頼むべきかが分かります。逆に、線を引かずに個別の相談に乗ってしまうと、医学的な判断に近いことを言ってしまったり、本人の情報を必要以上に知ってしまったりします。人に関わる領域だからこそ、範囲を決めて入ることが、本人への配慮にもなります。エラベルでは、依頼側が担当者を選べるので、この線を示せる人は、健康管理の整備を任せたい依頼先から選ばれています。

まとめ

よくある質問

上司から「最近様子がおかしい部下がいる」と相談されました

個人の状態についての判断はせず、経路を示します。依頼先に産業医や健康相談の窓口があるなら、そこにつなぐ形を上司に伝えます。ない場合は、地域の産業保健の支援機関を案内します。上司にできるのは、業務上の変化(遅刻や欠勤、締切の遅れ、ミスの増加)を事実として把握し、本人と話し、必要なら相談先を案内することです。副業の人事は、この「気づいたときに誰につなぐか」の経路を設計する側に立ちます。個別の対応は産業医にご確認ください。

休職中の社員に、会社から連絡してよいですか

連絡の担当と頻度を、休職の開始時に本人と決めておく形が無難です。誰から、どれくらいの頻度で、どういう方法(メール、電話)で連絡するかを決めておくと、本人も構えずに済み、会社も連絡していいか迷いません。連絡の内容は、体調の詮索ではなく、手続の案内や事務連絡を中心にします。休職中の手続や給与・社会保険の扱いは、社会保険労務士にご確認ください。手続の全体像は入退社手続きの流れの考え方が参考になります。

主治医が「復帰可能」と書いていますが、現場は不安だと言っています

主治医は本人を診ている立場、産業医等は職場の状況を踏まえて意見を述べる立場です。会社が求める業務の内容を主治医に伝えられる形(本人の同意を得たうえで)を作り、産業医等の意見を聴いたうえで、会社として復職の可否を判断する流れにします。現場の不安の中身(業務量か、勤務時間か、特定の業務か)を具体的に聞き取り、復帰後の調整の内容に落とします。復職の可否の判断そのものは、産業医と会社が行うもので、副業の人事が決める場所ではありません。手順の設計は「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」を土台にします。

出典