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入退社手続きの流れ|期限の違いを押さえて、落ちない順番に並べる

公開 2026-09-22

副業で人事を受けると、入社と退社の手続の相談をよく受けます。依頼先に専任の人事がいない場合、手続が総務や経理の片手間になっていて、期限がばらばらなまま「気づいたら過ぎていた」ということが起きます。手続そのものは社会保険労務士の領域が大きいのですが、副業の人事が持てるのは「落ちない順番に並べる」ことです。この記事は、入退社の手続を運用に落とすための前提を、公的機関の案内に沿って整理したものです。結論を先に書くと、期限は制度ごとに違います。雇用保険の資格取得届は被保険者となった日の属する月の翌月10日まで、資格喪失届と離職証明書は被保険者でなくなった事実があった日の翌日から起算して10日以内、健康保険・厚生年金保険の資格取得届と喪失届は5日以内です。労働条件の明示は、2024年4月から就業場所・業務の変更の範囲などが追加されました。この期限の違いを一枚にして、入社と退社の流れに順番で並べるところまでが、副業の人事の仕事です。個別の判断や手続の代行は、社会保険労務士にご確認ください。マイナンバーの扱いはマイナンバーの取り扱いに、法改正の追い方は法改正の追い方と情報源にまとめています。

入社:労働条件の明示から

明示事項。厚生労働省のリーフレットでは、2024年4月から労働条件明示事項が追加されたとして、次が示されています。全ての労働契約の締結時と有期労働契約の更新時に「就業場所・業務の変更の範囲」、有期労働契約の締結時と更新時に「更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容」、無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約の更新時に「無期転換申込機会」と「無期転換後の労働条件」。

あわせて、最初の労働契約の締結より後に更新上限を新設・短縮する場合は、その理由を労働者にあらかじめ説明することが必要になること、無期転換後の労働条件を決定するに当たって就業の実態に応じて正社員等とのバランスを考慮した事項について有期契約労働者に説明するよう努めなければならないこと、が示されています。

リーフレットでは、「就業場所・業務の変更の範囲」について、全ての労働契約の締結と有期労働契約の更新のタイミングごとに、「雇い入れ直後」の就業場所・業務の内容に加えて、これらの「変更の範囲」についても明示が必要になる、と説明されています。無期転換ルールについては、同一の使用者との間で有期労働契約が通算5年を超えるときは、労働者の申込みにより期間の定めのない労働契約に転換する制度だ、と注記されています。

副業の人事がやること。依頼先の労働条件通知書や雇用契約書の様式が、追加された明示事項に対応しているかを確かめます。特に「変更の範囲」は、依頼先の異動や職務変更の実態に合わせて書く必要があるので、様式を埋めるだけでは済みません。外国人を採用する場合、就業の場所の明示にはテレワークを行う場所も関わるので、あわせて確かめます。様式の内容の適法性は、社会保険労務士にご確認ください。

入社:雇用保険と社会保険の期限

雇用保険。厚生労働省の「事業主の行う雇用保険の手続き」では、1週間の所定労働時間が20時間未満である方や、同一の事業主に継続して31日以上雇用されることが見込まれない方は雇用保険の適用除外になる、と説明されています。届出は事業所を管轄するハローワークに提出します。手続き一覧表では、雇用保険被保険者資格取得届の提出期限が「被保険者となった日の属する月の翌月10日まで」とされています。

社会保険。日本年金機構の案内では、健康保険・厚生年金保険の被保険者になるのは、常用的に使用される70歳未満の方で、雇用契約書の有無などとは関係なく、適用事業所で働き労務の対償として給与や賃金を受ける使用関係がある方だ、と説明されています。短時間労働者については、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が、同じ事業所で同様の業務に従事している通常の労働者の4分の3以上である方が該当し、特定適用事業所では4分の3未満でも、週20時間以上、月額8.8万円以上の賃金、学生でないこと、といった要件で該当しうるとされています。資格取得届は5日以内に日本年金機構(事務センターまたは年金事務所)へ提出する、とされています。

手続期限提出先
雇用保険被保険者資格取得届被保険者となった日の属する月の翌月10日まで事業所を管轄するハローワーク
健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届5日以内日本年金機構(事務センターまたは年金事務所)

この二つは期限が大きく違います。社会保険の5日以内のほうが先に来るので、入社の流れでは社会保険の手続を先に置きます。依頼先が「月末にまとめてやる」運用にしていると、社会保険の期限を過ぎます。

エラベルの見解

担当する側から見ると、この領域で価値が出るのは、手続を代わりに出すことではなく「期限の違いを見える形にする」ことです。相談で見ていると、手続が落ちる依頼先には共通点があります。入社の手続を「入社日にまとめてやる作業」だと思っていて、社会保険が5日以内、雇用保険が翌月10日まで、という期限の違いを誰も意識していない。しかも、この二つは提出先も違います。副業の人事が入って最初にやるのは、期限と提出先を並べた一枚を作って壁に貼れる形にすることです。

もう一つは、入社日が月末や連休前に集中する依頼先での逆算です。社会保険の5日以内は、入社日が連休前だと実務上とても短くなります。入社日を決める段階で、手続の担当者の予定と休みを見て決める運用にすると、無理がなくなります。これは制度の知識ではなく段取りの設計で、人事の経験がある人にしかできません。エラベルでは、依頼側が担当者の経歴を見て選ぶ仕組みなので、「手続を落とさない段取りを作れる」ことは、専任の人事がいない依頼先に効く経歴になります。

退社:期限と、渡すもの

雇用保険。手続き一覧表では、雇用保険被保険者資格喪失届・離職証明書の提出期限が「被保険者でなくなった事実があった日の翌日から起算して10日以内」とされています。離職証明書は、離職した本人が離職票を受け取るために必要になるので、本人が離職票を希望するかどうかを退職の前に確かめておきます。

社会保険。日本年金機構の案内では、被保険者資格喪失届も資格取得届と同様に5日以内とされています。

その他の届出。手続き一覧表には、雇用保険被保険者転勤届が「事実のあった日の翌日から10日以内」、雇用保険被保険者氏名変更届が「被保険者が氏名を変更したその都度」、育児休業給付関係書類が「育児休業を開始した日の翌日から10日以内」、介護休業給付金支給申請書が「介護休業を開始した日の翌日から10日以内」、高年齢雇用継続給付支給申請書が「(初回)支給対象月の初日から起算して4か月以内」と示されています。事業所に関する手続として、雇用保険適用事業所設置届が「保険関係が成立した日の翌日から10日以内」、廃止届が「事業所を廃止したときはその翌日から10日以内」、事業主事業所各種変更届が「名称・所在地等変更のあった日の翌日から10日以内」とされています。

本人に渡すもの・返してもらうもの。退職の際には、本人に返す書類と、会社に返してもらう物を一覧にしておきます。副業の人事が作れるのは、この一覧と、いつ誰が渡すかの段取りです。何をいつ交付する必要があるかの個別の判断は、社会保険労務士にご確認ください。

期限順に並べたチェックリスト

副業の人事が実際に作るのは、次の形の一枚です。依頼先の担当者が見て動ける粒度にします。

タイミングやること期限
内定〜入社前労働条件の明示(就業場所・業務の変更の範囲を含む)、雇用契約書労働契約の締結時
入社前本人確認とマイナンバーの収集の段取り(番号は依頼先の中で扱う)入社手続の開始まで
入社日〜5日健康保険・厚生年金保険の被保険者資格取得届5日以内
入社月の翌月10日まで雇用保険被保険者資格取得届翌月10日まで
入社後労働者名簿・賃金台帳などの整備、被保険者証等の本人への交付依頼先の運用で
退職の申出時離職票を希望するかの確認、返却物と交付物の一覧の共有退職日までに
退職日〜5日健康保険・厚生年金保険の被保険者資格喪失届5日以内
退職日の翌日から10日以内雇用保険被保険者資格喪失届・離職証明書10日以内
退職後源泉徴収票等の交付、マイナンバーを含む書類の保存期間の管理依頼先の運用と保存期間で

要点は、「入社日にまとめてやる」から「期限ごとに分けてやる」に変えることと、担当者を名前で決めることです。手続が落ちる依頼先は、たいてい「総務がやることになっている」までしか決まっていません。誰が、いつ、どこに出すかを名前と日付で書いた一枚があれば、担当者が替わっても回ります。

副業の人事が手続そのものを代行できる範囲には限りがあるので、依頼先に社会保険労務士がいるかを確かめ、いる場合は「私が段取りと一覧を作り、提出は先生」と役割を分けます。いない場合は、依頼先の誰が出すかを決めて、期限の一覧と様式の在りかを渡します。

エラベルの見解

外に出してよいのは、期限と提出先の一覧、入社と退社の段取り、様式が明示事項に対応しているかの確認、担当者の割り当て、返却物と交付物の一覧、保存期間の管理の仕組みまでで、「この人は被保険者に当たるか」「この明示の書き方でよいか」「この書類はいつまで保存するか」「手続の代行」は、社会保険労務士の範囲です。被保険者の該当性は、依頼先の所定労働時間や契約の実態に当てはめる判断なので、副業の人事が決め切る場所ではありません。

担当する側から見ると、この領域で信頼されるのは、知識の量ではなく「依頼先がいなくなっても回る形」を残せるかです。期限の一覧、様式の在りか、担当者の名前、提出先の連絡先を一枚にして、依頼先の共有の場所に置く。それだけで、翌年も、担当者が替わっても回ります。副業の人事が毎回呼ばれることより、回る形が残ることのほうが、結果として次の依頼につながります。エラベルでは、依頼側が担当者を選べるので、「残る形を作る人」は、他の人事の整備の案件でも選ばれています。

まとめ

よくある質問

依頼先が、入社手続を月末にまとめてやっています

社会保険の資格取得届は5日以内なので、月末にまとめる運用では期限を過ぎます。入社日から5日以内に社会保険、入社月の翌月10日までに雇用保険、という順番に分けて、担当者の予定に入れます。入社日が連休前に当たると実務上さらに短くなるので、入社日を決める段階で手続の担当者の予定を見る運用にすると無理がなくなります。期限の起算日や、遅れた場合の扱いは、社会保険労務士かハローワーク・年金事務所にご確認ください。

パートやアルバイトの手続は、正社員と何が違いますか

雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間未満の方や、同一の事業主に継続して31日以上雇用されることが見込まれない方が適用除外とされています。社会保険は、1週間の所定労働時間および1か月の所定労働日数が通常の労働者の4分の3以上である方が該当し、特定適用事業所では4分の3未満でも週20時間以上・月額8.8万円以上の賃金・学生でないことなどの要件で該当しうるとされています。該当するかどうかの個別の判断は、年金事務所やハローワーク、社会保険労務士にご確認ください。判定の結果を契約書と手続の一覧に反映する運用を作ります。

手続の代行まで受けてもよいですか

手続の代行は業として行える範囲に限りがあるので、依頼先に社会保険労務士がいるかを確かめ、いる場合は「段取りと一覧は私、提出は先生」と役割を分けます。いない場合は、依頼先の誰が出すかを名前で決めて、期限の一覧と様式の在りかを渡します。副業の人事が口頭で「出しておきます」と引き取ると、期限が来たときに誰も出していない、ということが起きます。受ける範囲に手続そのものを入れるかは、契約の前に決めておきます。受ける前に確認することは人事の副業の始め方に、マイナンバーを扱う線はマイナンバーの取り扱いに整理しています。

出典