採用代行 / 費用・契約・法務
採用代行と人材派遣の違い|指揮命令の線引き
採用の手が足りないとき、選択肢は二つあります。採用アシスタントを派遣で入れるか、業務そのものを採用代行に出すか。この二つは似た問題を解きますが、指揮命令を誰が持つかという一点で構造が違います。そしてその一点が、費用の出方、繁閑への強さ、社内に残るものまで変えます。どちらを選ぶかを判断する順番で整理します。
指揮命令をどちらが持つか
人材派遣では、派遣先である自社が、派遣スタッフに直接指示を出します。今日はこれをやってください、この順番で進めてください、というやりとりが成立します。
採用代行では、業務の進め方は受託者側が決めます。自社が伝えるのは、何をどこまでやってほしいかという範囲と、その成果です。日々の作業手順に直接指示を出す形になると、契約は業務委託でも実態が労働者派遣に近づき、論点が生じます。判断の基準は採用代行が偽装請負になる境界線で扱っています。
この違いは、実務では次のように現れます。
| 人材派遣 | 採用代行 | |
|---|---|---|
| 日々の指示 | 自社から直接出せる | 窓口を通して範囲と成果で伝える |
| 作業の手順 | 自社が決められる | 受託者が決める |
| 急な依頼 | その場で頼める | 範囲内かを確認してから |
| 求められる社内の準備 | 指示を出す人が要る | 範囲を決める人が要る |
| 業務の設計 | 自社が持つ | 受託者が持つこともある |
指示を出せることは利点でもあり、負担でもあります。指示を出す人が社内にいなければ、派遣スタッフは動けません。逆に、範囲を決められないなら、代行に出しても機能しません。どちらを選ぶかは、社内にどちらの人がいるかで決まります。
費用の出方が違う
派遣は時間に対して払います。稼働した時間に派遣料金の単価を掛けた額が請求されます。単価には、スタッフの賃金と社会保険料、派遣会社の運営費が含まれます。
採用代行は業務に対して払います。月額固定、時間単価、成果報酬のいずれかで、範囲と稼働量に応じて決まります。料金体系の違いは採用代行の費用相場にまとめています。
比べるときの注意点は二つあります。
一つめ、派遣は稼働時間がそのまま費用になる。手が空いた時間も費用が発生します。採用の業務量は選考の波で上下するので、閑散期の扱いを決めておかないと無駄が出ます。
二つめ、代行の月額には設計の費用が含まれることがある。求人の書き方、スカウトの設計、選考フローの整備。これらを自社で持つなら不要ですが、持てないなら派遣では代替できません。派遣スタッフは指示された業務を行う立場なので、設計そのものを求めるのは筋が違います。
エラベルの見解
どちらを選ぶかで迷ったら、自社に「採用の設計ができる人」がいるかどうかを先に見てください。ここが分かれ目になります。
設計ができる人がいる場合、派遣が噛み合います。要件も、母集団の作り方も、選考の進め方も社内で決まっているので、必要なのは手です。指示を出せば動く体制のほうが、細かい調整も速い。費用も時間に比例するので読みやすくなります。
設計ができる人がいない場合、派遣を入れても指示が出せません。何を頼めばよいか分からないまま時間だけが過ぎる、という状態になりがちです。ここでは代行のほうが噛み合います。範囲と成果を決めれば、進め方は相手が持つからです。
よくあるのは、設計はできるが手が足りない、という会社が代行を入れて物足りなく感じるケースです。この場合は代行の範囲を定型業務に絞り、判断が要る部分は社内に戻すと収まります。自社にどちらの不足があるのかを見分けるのが先で、サービスの比較は後です。
繁閑への強さ
採用の業務量は一定ではありません。募集開始直後は応募対応が集中し、選考が進むと日程調整が増え、内定後は落ち着きます。職種が増えれば全体が上がり、採用が止まればゼロに近づきます。
派遣は、契約した時間の枠で動きます。業務量が減っても契約時間は残り、増えても枠を超えては動けません。枠の変更には手続きが要ります。
代行は、契約の作り方によって幅を持たせられます。時間単価型なら実働で精算でき、月額型でも稼働量の上限と下限を決めておけば調整できます。ただし、こちらも無制限ではありません。稼働枠は確保されているので、大きく増やすには相談が要ります。
繁閑が激しい採用では、この差が費用に効きます。年間を通じて安定した業務量があるなら派遣の読みやすさが利点になり、波が大きいなら代行の調整幅が利点になります。
社内に何が残るか
派遣で入った人が持っている知識は、その人が持って出ていきます。契約が終われば、媒体の操作方法も、候補者の傾向も、社内には残りません。残すには、社内でマニュアル化する作業が別に必要になります。
代行の場合、契約次第で成果物が残ります。求人原稿、スカウト文面、検索条件、選考フロー、連絡テンプレート。これらを編集できる形式で受け取れる契約にしておけば、次の体制でも使えます。ただし、決めていなければ残りません。
長く続ける前提なら、この点は判断材料になります。採用を内製に戻すつもりがあるなら、残る形で外に出しておくほうが移行が楽になります。
判断の順番
- 社内に設計ができる人がいるかを見る。いるなら派遣、いないなら代行が噛み合いやすい
- 業務量の波を見る。安定しているなら派遣、波が大きいなら代行の調整幅が効く
- 指示を出せる体制があるかを見る。指示を出す時間がないなら、派遣は機能しにくい
- 社内に残したいものがあるかを決める。あるなら代行で、成果物の帰属を契約に入れる
- 費用を総額で比べる。派遣は時間×単価、代行は範囲と稼働量。同じ期間で並べる
この五つを順に見ると、たいていどちらかに寄ります。両方使うという選択もあります。定型業務を派遣で持ち、設計と運用の一部を代行に出す形です。ただし、この場合は業務の切り分けを明確にしておかないと、指揮命令の線が曖昧になります。
エラベルの見解
代行を選んだ会社が運用でつまずくのは、指示を出せないことに慣れていないときです。派遣や社員の感覚のまま、思いついたことをその都度伝えようとすると、範囲外の依頼が積み上がり、相手も動きにくくなります。
対処は、伝え方を変えるだけです。作業単位ではなく、範囲と期日と成果で伝える。「この候補者に今日中に連絡して」ではなく「返信対応は当日中を目安にしてください」と決めておく。「この条件で検索して」ではなく「この職種で週にこれくらいの母集団を作りたい」と伝える。決め方が変わるだけで、範囲外の依頼は自然に減ります。
そのうえで、定例会を判断の場として使います。範囲を変えるかどうか、稼働を増やすかどうかはここで決める。日々のやりとりは範囲内で回し、範囲の変更は定例で決める。この二層に分けると、指揮命令の線も自然に保たれ、運用も落ち着きます。
まとめ
- 派遣と代行の違いは指揮命令を誰が持つか。そこから費用も繁閑への強さも変わる
- 派遣は時間に払う。手が空いた時間も費用が出る
- 代行は業務に払う。月額には設計の費用が含まれることがある
- 社内に設計ができる人がいるなら派遣、いないなら代行が噛み合いやすい
- 業務量の波が大きいほど、代行の調整幅が効く
- 派遣で入った知識は残らない。代行は契約次第で成果物が残る
- 代行では、作業単位ではなく範囲と期日と成果で伝える
よくある質問
採用代行の担当者に直接指示を出してはいけないのですか
日々の作業手順を自社が直接管理する形になると、契約は業務委託でも実態が労働者派遣に近づき、論点が生じます。実務では、窓口を通して範囲と成果を伝える形にします。定例会での確認や、成果物へのフィードバックは通常のやりとりの範囲です。判断に迷う場面があれば専門家にご確認ください。
派遣と採用代行を同時に使うことはできますか
できます。定型業務を派遣スタッフが担い、設計や運用の一部を代行に出す形です。ただし業務の切り分けを明確にし、代行の担当者に自社が直接指示を出す形にならないよう注意します。どちらが何を担当するかを文書にしておくと、線が保たれます。
採用担当を正社員で採るのとどちらがよいですか
継続的に採用を続けるなら、社員を置くほうが総額では下がることがあります。判断の目安は、採用が事業計画の中で継続するかどうかです。一時的に増やす局面なら外部の手を使い、恒常的に採り続けるなら社内に置く。あわせて、社員を採るまでの間を外部で埋める、という使い方もあります。