法務採用の代行費用の相場|外部の弁護士に払っている費用と、契約審査の量から逆算する
法務の担当者がいない会社では、契約書の確認や法律上の相談を、顧問の弁護士や外部の法律事務所に頼んでいることがほとんどです。事業が大きくなり、契約の数が増えてくると、外部に頼む費用と、返事を待つ時間が無視できなくなり、法務の採用を検討し始めます。結論から書くと、法務の代行費用は、外部の弁護士に払っている費用と、契約の審査を待つことで止まっている事業の時間から払える額を逆算すると、判断しやすくなります。その前提として、採りたい法務の役割と、資格の要否を決めておくことが大切です。
代行の料金は会社、料金の形、依頼する範囲によって大きく異なり、公的な統計もないため、この記事では金額の相場は扱いません。
役割と、資格の要否を決める
法務の仕事は、大きく次のように分かれます。
| 役割 | 主な仕事 | 経歴で見るところ |
|---|---|---|
| 契約審査 | 取引の契約書の確認と修正、相手方との調整 | 扱ってきた契約の種類と量、事業部門との関わり方 |
| 機関法務 | 株主総会や取締役会の運営、登記、規程の整備 | 会社の機関の運営に関わった経験 |
| 紛争・コンプライアンス | 紛争への対応、社内の法令遵守の体制づくり | 外部の弁護士と連携して対応した経験 |
最初の法務の担当者には、多くの場合、契約審査が求められます。そのうえで、弁護士の資格を持つ人を採るか、企業法務の実務経験者を採るかを決めてください。資格を持つ人は法律の知識が体系的で、判断の難しい場面で頼りになりますが、候補者は限られます。企業法務の実務経験者は、事業部門と一緒に動く力を持っていることが多く、候補者も比較的見つけやすくなります。要件の決め方は法務採用の要件定義で書いています。
外部の費用と待ち時間から逆算する
払える額の手がかりは、今法務の仕事にかかっている費用と時間です。
- 外部の弁護士への費用:顧問料、契約書の確認ごとの費用、個別の相談の費用
- 事業の待ち時間:契約書の確認を外部に頼んで返事を待つ間、取引の開始が遅れている時間
- 社内での兼務の時間:管理部門の責任者や事業部門の担当者が、契約書を読み、外部とやりとりしている時間
社員として法務の担当者を採ることで、これらのうちどの部分を置き換えられるかを見積もってください。日常的な契約の確認を社内で行い、判断の難しいものだけを外部の弁護士に相談する形にすれば、外部への費用と待ち時間の両方が減ります。その差額が、採用にかけられる額の目安になります。そこに、人材紹介で採った場合の費用(紹介会社の手数料表に基づく手数料と社内の時間)を並べると、代行費用の上限が見えてきます。
エラベルの見解
法務の採用相談で多いのは、契約書の確認の量を把握していないケースです。年間にどれだけの契約書を外部に確認してもらっているか、一件あたり何日待っているか、を数えてみると、法務の担当者を採る価値がはっきりします。逆に、契約の量が少なければ、社員を採るより外部の弁護士に頼み続けるほうが合理的なこともあります。
代行に出す前に、過去の一定期間の契約書の件数と種類、外部に払った費用を数えてください。その数字があれば、候補者にも仕事の量と中身を具体的に説明できます。同じ料金・同じ業務範囲でも、この数字をもとに候補者と話せる担当者かどうかで、採用の結果は変わります。
見積もりで確かめる工程
法務の採用代行の見積もりでは、次の工程が含まれているかを確かめてください。
- 役割と資格の要否の言語化:契約審査・機関法務・紛争対応のどれを担ってもらうか、資格を求めるかを決める
- 経歴の読み解き:扱ってきた契約の種類と量、業界、事業部門や外部の弁護士との関わり方を読む
- 文面の作成:自社の事業と取引の特徴、契約の量、外部の弁護士との分担を具体的に書く
- 選考の設計:実際の契約書を題材にした意見交換など、実務に近い形で確かめる方法を決める。社外秘の契約を使う場合は、伏せる範囲を決める
- 経営者との面談の設計:法務は経営判断に関わる場面が多いため、早めに考え方が合うかを確かめる
スカウトの進め方は法務のスカウトで書いています。
期間と料金の形
法務は候補者が限られやすく、とくに資格を求める場合は採用までの期間が長くなりがちです。代行費用は、月あたりの金額ではなく、採用までの期間を通した総額で比べてください。
料金の形は、月額固定、採用決定時の支払い、両者の組み合わせなどがあります。エラベルでは、採用決定時に1名10万円(税別)という形で、担当者を選んで採用の実務を任せられる仕組みを用意しています。どの形でも、上で逆算した上限の中に収まるかで判断してください。
エラベルの見解
法務の採用で、もう一つ考えてほしいのは、事業部門との距離です。法務の担当者が「止める人」と見られてしまうと、事業部門は相談をためらい、問題が大きくなってから持ち込まれることになります。事業を前に進めるために、どう条件を整えればよいかを一緒に考えられる人が、社内の法務には向いています。
面接では、事業部門から無理な依頼が来たときにどう対応してきたかを聞いてください。断るだけでなく、代わりの方法を示してきた経験がある人は、入社後に事業部門から頼られやすくなります。
まとめ
- 法務は、契約審査・機関法務・紛争対応のどれを担ってもらうかを決め、資格の要否も決める
- 払える額は、外部の弁護士への費用、事業の待ち時間、社内の兼務の時間から逆算する
- 過去の契約書の件数と種類、外部に払った費用を数えると、採用の価値がはっきりする
- 選考では、実務に近い形で確かめる。社外秘の契約を使う場合は伏せる範囲を決める
- 事業部門と一緒に前に進める方法を考えられる人を採る
よくある質問
法務採用の代行費用の相場はいくらですか
会社や料金の形、依頼する範囲によって大きく異なり、公的な統計もないため、一律の相場はお伝えできません。外部の弁護士に払っている費用と、人材紹介で採った場合の費用から上限を逆算し、その範囲で見積もりを比べてください。
弁護士の資格は必須にすべきですか
自社の仕事の中身によります。日常的な契約の確認が中心なら、企業法務の実務経験者でも十分に担えることが多いです。判断の難しい問題が多い、外部の弁護士に頼る費用を大きく減らしたい、といった場合は、資格を持つ人を検討してください。
法務を採ったら、顧問の弁護士との契約はやめるべきですか
すぐにやめる必要はありません。日常的な契約の確認は社内で行い、紛争や判断の難しい問題は顧問の弁護士に相談する、という分担が現実的なことが多いです。社内の担当者が窓口になることで、外部への相談も効率よく進められるようになります。
本記事は 2026-10-16 時点の公開情報にもとづいて作成しています。
この記事のタグ
関連記事
- 法務の母集団形成|応募が集まらないときに見直す順番 法務の募集で応募が集まらない、自社の法務の中身と違う経験の人ばかり来る、面接で「経営者が契約書を全部見ている」「法務業務全般を一人で」と分かって辞退される、という問題は、法務の分かる人がいない会社が法務を採る構造から起きます。求人票に法務の中身・顧問弁護士との分担・資格の要否・いまの法務の状態・事業部門との関係が書かれているか、出し先が法務の経験者と転向層のいる場所か、スカウトが中身と転向元で分けられているか、面接で判断の質と事業部門との調整力を分けて確かめているか。この順で見直す理由と各段階の見方、社内で持つ工程と外に出せる工程を整理しました。 採用代行法務
- 法務採用を代行に出す判断基準|任せられる工程と残す工程 法務の採用は、「法務」の中身が契約審査・コンプライアンス・知的財産・紛争対応・株主総会や取締役会の運営で全く違い、顧問弁護士との分担で社内の法務に求めるものが変わり、弁護士資格の要否で母集団が大きく変わり、法的な判断の質を社内で確かめられず、機微な情報を扱う、という点で他の職種と違います。求人票・媒体・スカウト・一次対応・内定後は任せられ、顧問弁護士との分担・法務の中身の決定・資格の要否・要件・判断の質の評価・合否は残す。工程ごとの線と、代行に出す前に社内で決めること、法務の分かる人が社内にいない会社の組み方、代行を選ぶ確認項目、代行に出したあとに起きることを整理しました。 採用代行法務
- 法務向けスカウト文面の型|刺さる訴求と外す訴求 法務へのスカウトは、「法務担当募集」「法務業務全般をお任せ」「裁量の大きいポジション」では、契約審査かコンプライアンスか知財かが分からず、経営者が法務の判断を委ねるかも、顧問弁護士との分担も、資格の要否も分からず、返信が来ません。法務の経験者は「全般」を中身未定の印と読み、事業部門との関係を最初に確かめます。一行目で候補者が担った中身と規模の一点に触れ、自社の法務の中身・委ねる範囲・顧問弁護士との分担・資格の要否・いまの状態・事業部門との関係を先に書き、形容詞を使わず、会社の紹介は後ろに回す型と、法務に刺さる訴求・外す訴求、中身と転向元で分ける対象の決め方、返信後の運用、代行に出せる範囲を整理しました。 採用代行法務
- 法務の採用要件の作り方|必須と歓迎を分ける基準 法務の採用要件は、「契約審査・コンプライアンス・知財・機関運営の経験」「弁護士資格または法科大学院修了」「英文契約の経験」「事業を理解できる方」と膨らみがちです。法務の分かる人がいない会社が法務を採るため、法務の中身と顧問弁護士との分担を決めずに「困っていること全部」と「安心のための資格」を要件にすることが原因です。要件を「法務の中身」と「分担」から決め、必須を「その中身を回した経験」「一人か少人数で回した経験」「事業部門との調整の経験」の三つに絞り、歓迎を「他の中身」「資格」「英文契約」「業界」に回す基準と、経歴で確かめられる要件と面接でしか分からない要件、転向元ごとの書き方、要件が決まらない原因、代行に出せる工程を整理しました。 採用代行法務