採用代行 / 法務

法務採用を代行に出す判断基準|任せられる工程と残す工程

公開 2026-09-17

法務の採用を代行に出すか迷う会社は、「求人票を作って媒体に出す工程はお願いしたいが、法的な判断の質を外の人が見られるのか」「顧問弁護士がいるのに、社内に法務の人が要るのか」「弁護士資格を必須にすべきか」で止まります。結論を先に書くと、求人票の作成・媒体の運用・スカウト・応募者への一次対応・内定後の対応は代行に任せられ、顧問弁護士との分担・法務の中身の決定・資格の要否・要件の決定・判断の質の評価・合否の判断は社内に残すのが線です。ただし、法務では「法務の中身(契約審査か、コンプライアンスか、知的財産か、紛争対応か、機関運営か)」と「顧問弁護士との分担」が決まっていないと、任せる範囲も要件も決まりません。この二つを先に決めることが、代行に出す前の要点です。他の職種と共通する分け方は人事採用を代行に出す判断基準に、隣接する労務の線は労務採用を代行に出す判断基準にまとめています。

法務採用が他の職種と違う点

一つ目は、「法務」の中身が会社によって全く違うことです。契約書の審査が中心の会社、コンプライアンスや内部統制が中心の会社、知的財産の管理が中心の会社、紛争やクレームの対応が中心の会社、株主総会や取締役会の運営(機関法務)が中心の会社。それぞれ経歴も市場も違い、一人で全部を経験した人は限られます。「法務担当募集」だけでは、どれを求めているかが候補者に伝わりません。

二つ目は、顧問弁護士との分担で、社内の法務に求めるものが変わることです。契約審査を顧問弁護士に出している会社と、社内で回している会社では、求める人がまったく違います。前者は「弁護士との窓口と、事業部門との調整」、後者は「契約審査の実務」です。分担を決めずに募集すると、要件が「全部」になります。

三つ目は、弁護士資格の要否で、母集団が大きく変わることです。資格を必須にすると、法律事務所からの転向層に絞られ、事業会社の法務で経験を積んだ人(資格の無い人が多い)が外れます。資格が要るかは、社内の法務に何を求めるかで決まり、経営者の「あったほうが安心」で決めると、母集団が要らないところで減ります。

四つ目は、法的な判断の質を、社内で確かめにくいことです。法務の候補者が「この条項はこう直すべきです」と言ったとき、それが妥当かを経営者は判断できません。顧問弁護士など、法務の分かる人が面接に入る必要があります。個別の法令の解釈は、専門家にご確認ください。

五つ目は、機微な情報を扱うことです。紛争、契約の交渉、M&Aの検討、コンプライアンス上の問題。法務は会社の機微な情報の中心にいて、採用の段階から、情報の扱いに慎重さが要ります。代行に出す情報の範囲も決めておきます。

この五つから、代行に出せる工程が決まります。

工程ごとの「任せられる・残す」

工程任せられるか理由
法務の中身の決定残す契約審査・コンプライアンス・知財・紛争・機関運営のどれが中心か。経営者が決める
顧問弁護士との分担の決定残す何を弁護士に出し、何を社内で回すか。経営者と顧問弁護士が決める
弁護士資格の要否の決定残す社内の法務に求めるものから。外部は考え方を示せる
機微な情報の扱いの設計残す紛争やM&Aの情報を、採用の過程でどこまで開示するか
要件の決定残す中身と分担から。外部は整理を手伝える
求人票の作成任せられる(中身と分担が決まっていれば)決まったものを候補者に伝わる言葉にする。機微な情報は含めない
媒体の選定と運用任せられる法務に届く媒体と経路の経験があれば
スカウトの検索と送信任せられる中身と転向元に合わせた検索と、文面の個別化
応募者への一次対応任せられる連絡、日程、流れの案内
書類の一次絞り条件付き転向元と経験の種類(契約審査か、コンプライアンスか)の分類は任せられる。判断の質の妥当性は残す
法的な判断の質の評価残す顧問弁護士など、法務の分かる人が面接で聞く
事業部門との調整力の評価残す経営者や事業部門の責任者が面接で、過去の場面を聞く
合否の判断残す会社の判断
条件の決定と提示残す会社の判断。資格の有無で条件の幅が広い
内定後の対応任せられる辞退を防ぐ連絡

線の要点は、「法務の中身と、顧問弁護士との分担が、募集の前に社内で決まっているか」です。この二つが求人票とスカウトの中身になり、候補者が「自分の経験に合う法務か」を判断する材料になります。

エラベルの見解

相談で多いのは、「法務を募集しているが、応募が来ない。来ても、自社が求めている経験と違う」というご相談です。求人票を見ると、「法務担当募集。契約書審査、コンプライアンス、知的財産管理、株主総会運営、その他法務業務全般。弁護士資格歓迎」と書かれていて、法務の中身が全部並び、顧問弁護士との分担も書かれていません。実際に困っているのを聞くと、「事業部門から上がってくる契約書の審査が回らない」で、それ以外は顧問弁護士に相談していました。

見ていて差がつくのは、「法務の中身と分担を一文で言えるか」です。「当社の法務の中心は、事業部門から上がる契約書の一次審査と、事業部門への説明。難しい案件と紛争は顧問弁護士に。知財と機関運営はいまのところ経営者と顧問弁護士で回している」。一文で中身と分担が分かれば、コンプライアンス中心の人は自分向けでないと分かり、契約審査を回してきた人は自分向けだと分かります。エラベルでは、法務の案件をお受けする前に、依頼側に「法務の中身」と「顧問弁護士との分担」を伺い、一文にしていただいています。

代行に出す前に社内で確認すること

代行に出す前に、五つを社内で確認します。

一つ目:法務の中身。 契約審査、コンプライアンス、知的財産、紛争対応、機関運営のうち、社内の法務の中心はどれか。複数あるなら順番を付け、一番目を起点にします。

二つ目:顧問弁護士との分担。 契約審査の一次を社内で、難しい案件を弁護士に。紛争は弁護士に。機関運営は社内で。どれを弁護士に出していて、どれを社内で回すか。これから出すか、社内に戻すか。分担が決まると、社内の法務に求める範囲が決まります。

三つ目:弁護士資格の要否。 社内の法務に求めるのが「一次審査と事業部門との調整」なら、資格は必須ではないことが多い。「訴訟対応を社内で」「弁護士としての意見が社内で要る」なら、資格が要ることがある。「あったほうが安心」ではなく、何のために要るかで決めます。

四つ目:いまの法務の状態。 誰が何をしていて、何が属人化していて、何が止まっているか。経営者が契約書を全部見ている、事業部門が契約書を法務に通さずに結んでいる、顧問弁護士への相談が遅れて事業が止まる。正直に把握します。

五つ目:法務の分かる人が面接に入れるか。 顧問弁護士、知人の法務経験者、代行の担当者(法務の経験者なら)。法的な判断の質を面接で確かめる人が、社内にいないなら外から呼びます。

五つのうち、一つ目と二つ目が代行に出す前提です。三つ目以降は、代行と一緒に整理できます。

法務の分かる人が社内にいない会社の組み方

法務の分かる人が社内にいない会社(一人目の法務を採る会社)では、「判断の質を誰が見るか」が最大の問題です。組み方は三つあります。

一つ目は、顧問弁護士に面接に入ってもらうことです。契約審査や紛争を相談している顧問弁護士がいれば、候補者と弁護士が「分担して回せるか」を面接で確かめる意味もあります。弁護士側にとっても、社内の窓口が誰になるかは重要です。

二つ目は、法務の経験者を担当者に持つ代行に出すことです。代行の担当者が法務の経験者なら、書類の一次絞りで「契約審査の経験の深さ」「事業部門との調整の経験」を読め、面接で判断の質を聞く質問を用意できます。判断は残しますが、判断の材料を作れます。担当者の経歴の見方は担当者の経歴の見方に書いています。

三つ目は、正社員の前に、副業や業務委託の法務に回してもらうことです。契約書の一次審査と事業部門との調整を、副業の法務経験者に一時的に担ってもらいながら、自社の法務の中身と範囲を見極め、その上で正社員を採る。副業の法務に、正社員の面接に入ってもらうこともできます。人事の副業人材への委託は人事向けですが、委託で回してから正社員を採る考え方は同じです。

三つのどれを選んでも、「経営者だけで法的な判断の質を判断しない」ことが要点です。

代行を選ぶときの確認項目

法務の採用を代行に出すとき、代行に確認する項目は五つです。

五つのうち、一つ目が最も大きい。法務の経験の無い担当者は、「管理部門の採用」として回し、法務の中身が全部並んだ求人票を作ります。

代行に出したあとに起きること

代行に出したあと、法務の採用で起きやすいことを三つ挙げます。

一つ目は、代行の担当者から「法務の中身が絞れていない」と指摘されることです。代行が求人票を作ろうとして、「契約審査とコンプライアンスと知財、どれが中心ですか」と聞かれ、答えられない。これは代行に出したから起きる問題ではなく、出す前から絞れていなかったものが表に出ただけです。ここで中身を決めます。

二つ目は、応募者の転向元が分かれることです。法律事務所出身の弁護士、事業会社の法務経験者、法科大学院修了で資格の無い人、事業部門や営業から法務に転向した人、法務の副業経験者。それぞれ持っているものが違い、面接で確かめることも違います。代行の担当者に転向元の分類をしてもらい、面接の質問を変えます。

三つ目は、資格の要否を決め直すことになることです。資格を必須にして応募が少なく、資格の無い事業会社の法務経験者に良い人がいると分かる。ここで、社内の法務に本当に資格が要るのかを、顧問弁護士と決め直します。決め直しは経営者の判断で、代行はその材料を出します。

エラベルの見解

担当する側から見ると、法務の採用で最も効くのは、「法務の中身を一つに絞り、顧問弁護士との分担を求人票に書く」ことです。中身が絞られ分担が書かれた求人票は、法務の経験者に「この会社は法務を分かっている」と読まれ、全部が並んだ求人票は「法務が何をするか決まっていない会社」と読まれます。中身を絞るだけで、応募者の顔ぶれが変わります。

エラベルでは、法務の案件で担当者を紹介するとき、最初の一週間で経営者と法務の中身と分担を確認し、社内の法務に担ってほしい範囲を一文にするところまでをお願いしています。法的な判断の質の評価は担当者ではなく、顧問弁護士や法務の分かる人が面接で行い、個別の法令の解釈は専門家にご確認いただくようお伝えしています。

まとめ

よくある質問

顧問弁護士がいるので、社内に法務の人は要らないのではないですか

顧問弁護士がいても、社内に「事業部門から上がる契約書を一次で見る」「弁護士に相談すべき案件を見分けて、整理して渡す」「弁護士の回答を事業部門に分かる言葉で伝える」人は要ります。この範囲を経営者が回せる規模なら、社内の法務は要りません。事業部門が契約書を法務に通さずに結ぶようになった、弁護士への相談が遅れて事業が止まる、経営者が契約書を全部見て他が回らない、のどれかが起きているなら、社内の法務の一人目を採る時期です。その場合の要件は「法務業務全般」ではなく、「契約審査の一次と、事業部門との調整」で足ります。

弁護士資格を必須にしたほうが安心ではないですか

社内の法務に求めるのが「一次審査と事業部門との調整」なら、資格は必須ではないことが多く、必須にすると事業会社で契約審査を積んできた人(資格の無い人が多い)が外れ、母集団が大きく減ります。資格が要るのは、訴訟対応を社内で担う、弁護士としての意見を社内で出す必要がある、といった場合です。「安心」ではなく「何のために」で決め、顧問弁護士に相談して決めることをお勧めします。資格の要否に関わる判断は、専門家にご確認ください。

紛争や検討中の案件を、代行の担当者に伝えてよいのですか

採用の工程で、代行の担当者に紛争の中身や検討中の案件の詳細を渡す必要は、ほとんどありません。求人票に書くのは法務の中身と分担で、個別の案件は不要です。候補者に伝えるのも、面接の段階で経営者が判断して伝えます。代行に渡す情報の範囲を最初に決め、契約で扱いを定めます。機密情報の扱いに関わる判断は、専門家にご確認ください。