採用代行 / 人事
人事の母集団形成|応募が集まらないときに見直す順番
人事の募集で起きる母集団の問題は、応募がまったく来ない場合、応募は来るが役割が違う(採用を回してほしいのに労務の人が来る、その逆)場合、面接まで進んで「経営者が全部決める」「一人で全部を抱える」と分かって辞退される場合に分かれます。人事の採用に特有なのは、候補者が「この会社の採用の進め方」を見て、自社の人事の水準を判断することです。応募への返信が遅い、求人票が雑、面接の日程が決まらない、という状態は、人事の候補者にとって「自分が入って直す仕事」であると同時に、「この会社は人事を軽く見ている」という判断の材料になります。結論を先に書くと、人事の母集団形成は、「求人票で役割・委ねる範囲・分担・自社の人事の状態を示す」「出し先を役割に合う人のいる場所にする」「スカウトを役割で分ける」「採用の進め方そのものを整える」の順に見直し、前の段階が直る前に次に進まないことが要です。代行に出す工程の線は人事採用を代行に出す判断基準に、役割の分け方は人事担当そのものが採用できないにまとめています。
三つの症状を分ける
最初に、どの症状かを分けます。
応募がほとんど無い場合は、求人が届いていないか、届いても「一人で全部」「経営者が全部決めそう」と読まれて見送られているか、採用の進め方(返信の遅さ、求人票の質)で「人事を軽く見ている会社」と判断されているかです。
応募はあるが役割が違う場合は、求人票が役割を示していないことが原因です。「人事担当募集。人事業務全般」だと、採用、労務、制度、育成の全部の人が応募します。
面接まで進んで辞退される場合は、経営者が委ねる範囲の曖昧さ、一人で全部を抱える体制、自社の人事の状態(属人化、止まっている業務)が面接で分かり、候補者が判断を変えています。
どの症状かは、応募者を役割(採用、労務、制度、育成)で分類し、応募から一次返信までの日数を見て、面接での候補者の質問を記録すれば分かります。
見直す順番の一番目:求人票に「役割・委ねる範囲・分担・状態」があるか
求人票を開いて、次の六つが読み取れるかを確認します。
- 最初の一人の役割。 採用か、労務か、制度か、育成か。一行目で分かる形に。「人事業務全般」は書かない
- 経営が委ねる範囲。 採用の合否、労務の判断、制度の設計を、どこまで人事に。経営者が持ち続けるものは何か
- 社労士や外部との分担。 労務の手続きは社労士か社内か。就業規則、給与計算は誰が
- 自社の人事の状態。 いま誰が何をしていて、何が属人化していて、何が止まっているか。正直に
- 体制と相談相手。 一人目か、チームか。上司は誰か。経営者と人事の話をどのくらいの頻度でするか
- 人事の候補者への配慮。 応募後の連絡の目安、選考の流れ。人事の候補者は、ここを見て会社の人事の水準を判断する
六つのうち、二つ目と四つ目が最も抜けます。委ねる範囲が無い求人票は「経営者が全部決める」と読まれ、自社の人事の状態が無い求人票は「何をさせられるか分からない」と読まれます。
自社の人事の状態が整っていないことを隠さないことが要点です。「総務が兼務で採用と労務を見ていて、限界。最初の一人として、採用を回す仕組みを作るところから」と書けば、それに合う人(仕組みを作りたい人)が応募します。隠して「整った人事部門」に見せると、面接か入社後に離れます。
エラベルの見解
相談で多いのは、「人事を募集して、応募は来るのに、面接で『経営者が採用の合否も労務も全部決める』と伝えると辞退される」というご相談です。求人票を見ると、「人事担当募集。採用・労務・制度全般をお任せします」と書かれていて、実際は経営者が全部決めていて、人事は手続きと調整の役でした。「お任せします」と書いて実態が違う。人事の候補者は、この落差を最も嫌います。
見ていて差がつくのは、「経営者が委ねる範囲を、求人票の冒頭で正直に書いているか」です。「採用の要件と合否は経営者が決め、人事は募集から面接の設定、内定後の対応までを回す。労務は社労士と分担」。ここまで書けば、採用の判断を委ねられたい人は見送り、採用を回す実務に力を発揮したい人は「自分向け」と判断して応募します。委ねる範囲が狭いなら狭いと書き、「段階的に広げる」と方針を添える。エラベルでは、人事の担当者に、求人票の冒頭で役割と委ねる範囲を依頼側の経営者と決めるところから始めてもらっています。
見直す順番の二番目:出し先が役割に合う人のいる場所か
求人票が整ったら、出し先を見ます。人事は経験者の母数が比較的多いですが、役割によって、いる場所と転向の経路が違います。
| 出し先 | 向く役割 | 注意 |
|---|---|---|
| 一般の求人媒体 | 幅広い人事に届けたい | 役割が混ざる。求人票の一行目で役割を示すことが前提 |
| 管理部門・人事に強い媒体 | 人事の経験者に絞って届けたい | 媒体によって集まる役割(採用中心か、労務中心か)が違う。公式情報で確認 |
| ダイレクトリクルーティングの媒体 | 役割に合う経験の人に、こちらから届けたい | 役割で検索を分ける。委ねる範囲と自社の状態を文面に |
| 人事のコミュニティ・勉強会 | 特定の役割(採用、労務、制度)の実践者と接点を作る | 採用の場ではない。関係を作ってから。人事コミュニティの活かし方は個人向けだが、会社側の接点の作り方の参考に |
| 採用代行や人材紹介の会社からの転向層 | 採用を回す役割 | 複数の会社の採用を回してきた人。一社に腰を据えたい動機を確認 |
| 社労士事務所からの転向層 | 労務を整える役割 | 手続きに強い。事業会社の側で判断する経験は面接で確認 |
| 総務や営業事務からの転向層 | 一人目で、採用と労務の実務が中心 | 人事の経験は浅いが、社内の実務に慣れている。教える体制が要る |
| 人事の副業・業務委託 | 一人目の前に、まず委託で | 正社員の前に委託で回し、合えば正社員に。人事の副業人材への委託 |
| 社員の紹介 | 社内に管理部門の人がいる | 求人票の六つを社員に渡す。リファラルが進まない理由 |
出し先の要点は、「一人目の前に、人事の副業・業務委託で回す」経路が、人事に特有だという点です。人事がいない会社では、正社員の人事を採る前に、副業や業務委託の人事に採用や労務の一部を回してもらい、自社の人事の役割を見極めてから正社員を採る形が、現実的なことがあります。
見直す順番の三番目:スカウトが役割で分けられているか
ダイレクトリクルーティングで返信が来ない場合、検索の条件と文面を見ます。
検索の条件は、役割で分けます。採用を回す役割なら「採用の実務」「募集から内定までを回した」経験、労務なら「給与」「社会保険」「就業規則」の経験、制度なら「評価制度の設計」の経験。「人事」の肩書だけで検索すると、役割が混ざります。
文面は、一行目で候補者の経歴の一点に触れます。人事の場合、触れる一点は「担った役割と規模」「一人目として仕組みを作った経験」「経営者との距離」のどれかです。「〇〇規模の会社で、一人目の人事として採用の仕組みを作られたご経歴を拝見しました。当社も同じ状態です」。その後に、役割、委ねる範囲、分担、自社の人事の状態、体制と相談相手を書きます。文面の型はスカウト文面の構造を参照してください。
見直す順番の四番目:採用の進め方そのものを整える
人事の採用に特有なのが、この段階です。人事の候補者は、応募から面接までの進め方を「この会社の人事の水準」として見ます。返信が遅い、求人票に誤字がある、面接の日程が決まらない、面接官が求人票を読んでいない。これは、他の職種の候補者にとっては不満で済みますが、人事の候補者にとっては「この会社は人事を軽く見ている」「入っても経営者が人事を理解しない」という判断の材料になります。
見るのは、応募から一次返信までの日数、求人票の質、面接の日程が決まるまでの日数、面接で経営者が候補者の経歴を読んでいるか、内定までの速さです。人事がいない会社では、経営者か総務の兼務が回すので、遅れがちです。
直し方は、採用の工程を整えることです。一次返信はその日か翌日、求人票は人事の候補者が読む前提で見直す、面接の枠は経営者が先に固定する、面接の前に経営者が経歴を読む。社内で回せないなら、この工程を代行に出す。人事の採用では、採用の進め方を整えること自体が、母集団の質を上げます。
社内で持つ工程と、外に出せる工程
| 段階 | 社内で持つ | 外に出せる |
|---|---|---|
| 求人票の中身 | 役割、委ねる範囲、分担、自社の人事の状態、体制を経営者が出す | 聞き取って候補者に伝わる言葉にする。人事の候補者が読む前提で質を上げる |
| 出し先 | 予算と契約の判断。副業・業務委託で先に回すかの判断 | 役割に合わせた経路の提案、運用、数の整理 |
| スカウト | 役割と委ねる範囲の確定 | 役割で分けた検索、一行目の個別化、送信、一次対応 |
| 採用の進め方 | 経営者の面接の枠、経歴を読むこと、判断の質の評価 | その日か翌日の一次返信、日程調整、役割の分類、進捗の管理、内定後の連絡 |
分け方の要点は、「人事がいない会社では、採用の進め方の工程を外に出すことで、母集団の質が上がる」ことです。社内で回して遅れるより、外で速く回すほうが、人事の候補者の判断が変わります。
エラベルの見解
担当する側から見ると、人事の母集団形成で最も効くのは、求人票で委ねる範囲を正直に書くことと、採用の進め方を整えることです。前者で面接後の辞退が減り、後者で「人事を軽く見ていない会社」として候補者に見られます。人事の候補者は、自分が入って直す仕事として採用の進め方を見ると同時に、会社の姿勢として見ています。
エラベルでは、人事の案件で担当者を紹介するとき、最初の一か月は求人票の六つの項目を経営者と一緒に埋め、採用の工程(一次対応、日程、面接の枠)を整えることに使うようお伝えしています。人事がいない会社の人事の採用では、担当者が「人事の代わりに採用を回す」役になり、その進め方自体が候補者への訴求になります。
まとめ
- 人事の母集団の問題は応募が来ない・役割が違う人が来る・面接で委ねる範囲と体制の実態で辞退されるの三つ。候補者は採用の進め方を人事の水準として見る
- 見直す順番は求人票の役割・委ねる範囲・分担・状態→出し先→スカウトの役割分け→採用の進め方そのもの。前の段階が直る前に次に進まない
- 求人票には役割(一行目)・委ねる範囲(正直に)・分担・自社の人事の状態(正直に)・体制と相談相手・候補者への配慮の六つ
- 出し先は役割によって違う。一人目の前に副業・業務委託で回す経路が人事に特有
- スカウトは役割で検索を分け、一行目で担った役割と規模の一点に触れる
- 採用の進め方そのものを整える(その日の返信、求人票の質、面接の枠、経歴を読む)。社内で回せないなら外に出す
よくある質問
経営者が採用の合否も労務の判断も全部決めます。正直に書くと誰も来ませんか
判断を委ねられたい人は来ませんが、その人は入社後に「経営者が全部決める」と分かって離れる人です。「採用の要件と合否は経営者が決め、人事は募集から面接の設定、内定後の対応までを回す。労務は社労士と分担し、人事は窓口」と正直に書くと、実務を回すことに力を発揮したい人が応募します。この層は、判断より、仕組みを作って回すことに動機があり、経営者が判断する会社に合います。委ねる範囲を隠して「お任せします」と書くのが、最も離職を生みます。委ねる範囲を広げる予定があるなら、「段階的に」と添えます。
応募への返信が遅れています。人事がいないので仕方ないのでは
人事の候補者にとって、返信の遅さは「この会社は人事を軽く見ている」という判断の材料になり、他の職種より影響が大きい。人事がいなくて回せないなら、一次対応と日程調整を代行に出す価値が、人事の採用では最も大きい。経営者が「人事がいないから遅れる」と思っている間に、良い候補者は他社に決まります。採用の進め方を整えること自体が、人事の候補者への訴求です。
正社員の人事を採る前に、副業の人事に回してもらう形はどうですか
人事がいない会社では、有効なことが多い。副業や業務委託の人事に、採用の一部(募集、一次対応、日程)や労務の一部を回してもらいながら、自社の人事の役割(何が最も困っていて、何を任せるべきか)を見極め、その上で正社員を採る。副業の人事が合えば、そのまま正社員になることもあります。最初から正社員で「人事全般」を採るより、役割が見えてから採るほうが、ずれが小さい。人事の副業人材への委託を参照してください。