採用代行 / 比較・選び方
支援事例のどこを見るべきか
採用代行の提案資料には、支援事例が載っていることがあります。成果の部分に目が行きますが、判断に使えるのは前提条件のほうです。どんな状況の会社が、どの範囲を任せて、どのくらいの期間で、何が起きたのか。ここが分からないと、自社に効くかは判定できません。この記事では、事例のどこを見るか、何を聞き足すかを整理します。
事例に書かれていないこと
支援事例は、うまくいった案件が選ばれて掲載されます。構造上、そうなります。だから、次の情報は書かれないことが多い。
- 発注側の体制(専任がいたか、兼務だったか)
- 発注側の判断の速さ(書類の合否がどのくらいで返っていたか)
- 要件の固まり具合(開始時点で言語化されていたか)
- 実際の稼働量(週に何時間入っていたか)
- 担当者(誰が担当し、途中で替わったか)
- かかった費用
- うまくいかなかった部分
このうち、一番目から三番目が結果を大きく左右します。同じ運用でも、専任がいて判断が速く要件が固まっている会社と、そうでない会社では結果が違います。
つまり、事例の成果は代行の運用だけの結果ではありません。この前提を踏まえて読みます。
見るべき五つの項目
一.職種。自社が採りたい職種と近いか。技術職と営業職では、候補者の見方も文面も違います。
二.発注側の体制。専任の採用担当がいたか。自社と体制が違うなら、同じ成果は期待しにくい。
三.任せた範囲。全工程か、一部か。範囲が違えば、代行が担った役割も違います。
四.期間。立ち上げから成果までにどのくらいかかったか。自社の想定と比べます。
五.開始時点の状況。要件が固まっていたか、母集団があったか。ゼロから始めた事例と、既存の運用を引き継いだ事例では意味が違います。
書かれていない項目は、聞けば答えてもらえることが多い。企業名を伏せた形でも、この五つは共有できます。
エラベルの見解
事例を読むときに、「その事例で、発注側は何をしていたか」を聞いてください。ここが分かると、自社で再現できるかが判定できます。
うまくいった案件には、たいてい発注側の動きがあります。要件を一枚にまとめていた、書類の合否を翌日に返していた、面接の候補日をまとめて出していた、定例会に現場の責任者が出ていた。代行の運用だけで成果が出ることは、実際にはほとんどありません。
ところが、事例にはこの部分が書かれません。代行会社の資料なので、代行が何をしたかが中心になります。当然のことです。
だから、聞いてください。「この事例で、発注側の会社はどう動いていましたか」。具体的な答えが返るなら、その会社は発注側の動きまで見て運用しています。「特に何も」という答えなら、事例の再現性は読めません。
そして、返ってきた答えは自社の準備リストにもなります。成果を出した会社が何をしていたかが分かれば、自社が何を整えるべきかも分かります。
事例は、相手を評価する材料であると同時に、自社の準備を知る材料でもあります。
条件の類似性を確かめる
事例が自社に効くかは、条件の近さで判定します。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 職種 | 同じか、近い性質か |
| 採用の難易度 | 母集団の厚さが近いか |
| 会社の規模 | 応募の量、選考の体制 |
| 発注側の体制 | 専任がいるか、兼務か |
| 判断の速さ | 書類の合否、候補日の提示 |
| 開始時点 | 要件が固まっていたか |
| 時期 | 何年前の事例か |
七番目も見てください。数年前の事例は、媒体の仕様も市場も変わっています。現在も同じ手法が効くかは別の話です。
条件が違う場合、その差を埋めるために何が必要かを聞きます。「自社は専任がいないが、その場合はどう進めますか」。答え方に、その会社の応用力が出ます。
再現性を聞く質問
事例を読んだ後に聞くと、判断が進む質問です。
この事例で、うまくいった要因は何だと考えていますか
運用の工夫か、発注側の動きか、市場の状況か。要因を分解できるなら、再現の条件も分かっています。
同じ手法が効かなかった案件はありますか
効かなかった理由が語れるなら、適用の条件を理解しています。
自社の状況で同じことをすると、どうなると思いますか
自社の条件を踏まえた答えが返るかを見ます。事例をそのまま当てはめる答えなら、条件の違いを見ていません。
この事例で、発注側にお願いしていたことはありますか
判断の速さ、情報の提供、面接官の確保。発注側の動きまで設計しているかが分かります。
担当したのはどなたですか。自社にも同じ方が入りますか
事例の成果が担当者に紐づいている場合、その人が入るかどうかで期待値が変わります。
数字の扱い
事例に数字が載っている場合の見方です。
応募数や採用数。母集団の厚さと、募集期間に左右されます。自社の職種と条件が違えば、数字も違います。
返信率や通過率。職種と媒体によって水準が違います。同じ職種の数字でなければ比較になりません。
期間の短縮。何と比べて短縮したのか。開始前の状態が書かれていないと、判断できません。
費用の削減。何を含めた費用か。社内の人件費が入っているか、実費が入っているか。
数字を見たら前提を聞く。これは実績の見方と同じです。扱いは採用代行の「実績」の見方にまとめています。
エラベルの見解
事例を見せてもらえない場合もあります。守秘の事情で出せない、というのは正当な理由です。その場合は、事例の形式ではなく質問で聞いてください。
「自社と似た規模で、同じ職種の採用を担当したことはありますか。そのとき、どこが難しかったですか」。企業名を伏せた形でも、この質問には答えられます。
そして、この聞き方のほうが情報量が多いことがあります。整えられた事例資料より、難しかった点を語ってもらうほうが、実務の中身が見えるからです。
さらに、この質問は担当予定者にすると効果的です。会社の事例ではなく、その人の経験を聞くことになります。自社に入るのはその人なので、判断材料としてはこちらが直接的です。
事例資料は営業の材料として作られています。判断の材料は、会話の中にあることが多い。資料が出てこないことを理由に候補から外すより、質問に切り替えるほうが実務的です。
まとめ
- 事例はうまくいった案件が選ばれて掲載される。構造上そうなる
- 書かれないのは、発注側の体制・判断の速さ・要件の固まり具合・稼働量・担当者・費用
- 見るべきは、職種・発注側の体制・任せた範囲・期間・開始時点の状況
- 「その事例で、発注側は何をしていたか」を聞く。再現性が判定できる
- 返ってきた答えは、自社の準備リストにもなる
- 条件が違うなら、その差をどう埋めるかを聞く。答え方に応用力が出る
- 数字は前提を聞く。職種と条件が違えば水準も違う
- 事例が出ない場合は、質問に切り替える。担当予定者に聞くほうが直接的
よくある質問
事例の成果は信用してよいですか
数字そのものより、前提条件を確認してください。職種、体制、範囲、期間、開始時点の状況。これらが分かれば、自社に当てはまるかが判定できます。前提が説明できない事例は、判断材料としては弱いと考えてください。
自社と似た事例がありません
条件が違う場合、その差をどう埋めるかを聞いてください。「自社は専任がいないが、その場合はどう進めますか」といった形です。答えが具体的なら、条件の違いを踏まえた設計ができています。似た事例がないこと自体は、判断の決め手になりません。
事例に載っている担当者が自社にも入りますか
聞いてみてください。成果が担当者に紐づいている場合、その人が入るかどうかで期待値が変わります。入らない場合、同じ水準の担当者かを確認します。担当者の確認は担当者を指名できるかにまとめています。