採用代行 / 費用・契約・法務
採用代行で担当者を指名できるか
採用代行の商談に来た人が、そのまま実務を担当するとは限りません。提案は営業、実務は別のメンバーという体制は業界として一般的で、契約後に初めて担当者を知る、という流れも珍しくありません。では担当者を指名できるのか。原則としては難しいのですが、指名に近い状態を作る方法はあります。順に整理します。
指名が難しい構造的な理由
契約の相手は会社です。誰を業務に充てるかは、受託者側が自らの裁量で決めるという建て付けになっています。これは法務上の整理としても、実務上の理由としても、それなりの根拠があります。
人員の配置は会社が管理している。案件ごとの稼働量と担当者の空き状況を見て配置するので、特定の個人を固定すると調整の余地がなくなります。
特定の個人を約束すると、退職や休職で履行できなくなる。約束した以上は代替が難しくなり、会社としてのリスクになります。
直接の指示につながる懸念。特定の個人を指名して業務を進める形は、指揮命令の整理という観点でも慎重になる会社があります。線引きは採用代行が偽装請負になる境界線で扱っています。
だから、氏名で指名する形は通りにくい。ただ、発注側が本当に知りたいのは氏名ではなく、その人が何をやってきたかです。ここに手はあります。
指名の代わりに使える三つの手
一.条件で書く。氏名を約束させるのではなく、担当者が満たすべき条件を書きます。
- 週あたりの稼働時間の目安
- 同時に担当する社数の上限
- 経験している職種や業務の範囲
- 担当者を交代する場合の事前通知
この形なら応じられる会社は多くあります。氏名を固定するわけではないので、人員配置の裁量は残ります。それでいて、極端に経験の浅い担当が付くことは避けられます。
二.経歴の開示を求める。契約前に、担当予定者の経歴を書面で出してもらいます。氏名でなくても、これまで担当した職種、業務、期間が分かれば判断できます。
三.契約前に話す。実務を担う人と、商談の段階で一度話す場を作ってもらいます。三十分でも十分です。要件の話をしてみると、その人が何を聞くかで見立ての深さが分かります。
エラベルの見解
「どなたが担当されますか」と聞くだけで、会社の反応ははっきり分かれます。
すぐに経歴を出せる会社は、社内で誰がどの案件を持つかを管理できています。稼働の割り振りも、経験の把握も、仕組みとして持っている。この状態なら、担当が替わっても説明が出てきます。
「契約後に決めます」と答える会社が悪いわけではありません。案件が動き出す時期と、人員の空き状況が読めない事情はあります。ただ、その場合は交代の通知と、経歴の開示を後から求められる形にしておく必要があります。
そして、この質問には副次的な効果があります。質問した時点で、相手は担当者の配置を意識します。誰が付いても構わないと思われている案件と、担当者を見られている案件では、社内の扱いが変わることがあります。
エラベルは、この確認を仕組みにした窓口です。担当者の経歴を見てから決められる形にしています。ただ、この形を使うかどうかとは別に、発注前に一度は聞いてみる価値のある質問だと考えています。手間はほとんどかかりません。
経歴で何を見るか
経歴を出してもらったとき、見るところは決まっています。
担当した職種。自社が採りたい職種の経験があるか。技術職と営業職では、候補者の見方も文面の書き方も違います。
担当した業務の範囲。スカウトの運用が中心なのか、応募者対応が中心なのか、設計から入っているのか。自社が任せたい工程の経験があるかを見ます。
担当した期間。短い期間で多くの案件を回しているのか、一社を長く担当しているのか。どちらが良いという話ではなく、自社の依頼に合うほうを選びます。
業界の経験。同業種の採用経験があると立ち上がりは速くなりますが、必須ではありません。むしろ、要件を言語化する力のほうが効く場面が多くあります。
経歴に書かれていない部分は、話して確かめます。前の案件で何が難しかったか、どう対処したか。この質問への答えで、経験の質が見えます。
商談で確かめること
担当予定者と話す場が作れたら、次を聞いてみてください。
- 自社の採用でつまずきそうなところは、どこだと思いますか
- 立ち上げの一か月で、何をどこまで進めますか
- 返信が鈍かったとき、最初に何を疑いますか
- 要件が固まっていない状態では、どう進めますか
- いま何社を担当していますか
一つめの質問への答えが、いちばん情報量があります。要件を聞いただけで詰まりどころを指摘できる人は、似た状況を経験しています。一般論しか返ってこないなら、その職種の経験は浅いかもしれません。
五つめは、稼働の実態を知るための質問です。数そのものより、答え方を見ます。即答できる人は自分の稼働を把握しています。
交代を前提に設計する
指名に近い形を作れたとしても、交代は起こり得ます。だから、指名の交渉と並行して、交代時の取り決めも置いておきます。
- 交代する場合の事前通知
- 交代時の引き継ぎ資料を出すこと
- 交代後の担当者についても、同じ条件を満たすこと
- 交代後に運用が変わった場合の協議
この四つがあれば、氏名の指名がなくても実務は保てます。交代のリスクについては担当者が替わるときのリスクで扱っています。
エラベルの見解
担当者を確認する意味は、良い人を引き当てることだけではありません。自社の依頼内容に合う人かを見ることにあります。
たとえば、要件が固まっていない状態で依頼するなら、要件を一緒に言語化できる人が要ります。逆に、要件も文面も自社で用意できているなら、処理量を出せる人のほうが噛み合います。前者に処理型の担当が付けば要件は詰まらず、後者に設計型の担当が付けば提案ばかりで手が動かない。
つまり、担当者に良し悪しがあるというより、案件との相性があるということです。そして相性は、依頼する側が自社の状態を分かっていないと判断できません。
だから、経歴を見せてもらう前に、自社が何を任せたいのかを整理しておいてください。工程で分けて、どこを外に出すのかを決める。この一枚があると、経歴を見たときに何を確認すべきかが分かります。担当者を選ぶ作業は、自社の依頼を定義する作業と一続きです。
まとめ
- 氏名で指名する形は通りにくい。人員配置は会社の裁量という建て付けのため
- 代わりに使えるのは、条件で書く・経歴の開示・契約前に話すの三つ
- 「どなたが担当されますか」と聞くだけで、会社の管理体制が見える
- 経歴では、職種・業務範囲・期間・業界経験を見る。書かれていない部分は話して確かめる
- 商談では「つまずきそうなところ」を聞く。答えの具体性で経験の質が分かる
- 指名が通っても交代は起こる。事前通知・引き継ぎ資料・同じ条件を契約に置く
- 担当者に良し悪しがあるのではなく、案件との相性がある
よくある質問
契約書に担当者の氏名を書いてもらえますか
応じる会社は多くありません。退職や休職で履行できなくなるリスクがあるためです。氏名の代わりに、稼働時間・同時担当社数・経験の範囲・交代時の通知といった条件を別紙に書く形なら、応じられることがあります。目的が「一定の水準を担保したい」ことなら、条件で書くほうが実効性があります。
担当予定者と契約前に話せますか
依頼すれば対応する会社はあります。ただ、案件が動く時期によっては担当が未定のこともあります。その場合は、同じ業務を担当している別のメンバーと話す形でも、社内の水準は見えます。断られた場合は、経歴の書面での開示を求める形に切り替えます。
担当者が合わないと感じたらどうすればよいですか
まず、何が合わないのかを工程で特定します。連絡が遅い、提案が出てこない、指示が反映されない。症状によって対処が変わります。そのうえで、代行会社に交代を申し入れることはできます。契約に交代の条項がなくても、申し入れ自体は可能です。伝え方は、個人の評価ではなく業務上の事実で伝えるほうが進みます。