採用代行 / 比較・選び方

代行会社に渡す前提情報の整理

公開 2026-09-07

採用代行に何を渡すか。渡す情報の量が、提案の精度と立ち上がりの速さを決めます。ところが、多くの会社は求人票だけを渡して依頼します。その結果、返ってくる提案も一般的なものになり、運用が始まってから確認のやりとりが続きます。この記事では、渡す情報を整理し、契約前と契約後に分けてまとめます。

渡すと変わる四つの文書

一.採用要件。必須と歓迎を分け、落とす理由を三つ書いた一枚。求人票とは別に作ります。

二.過去の採用実績。通した候補者と落とした候補者の経歴を、理由とともに。具体例は説明より速く伝わります。

三.現場の情報。どんな人が活躍しているか、辞めた人はなぜ辞めたか、面接で意見が割れるのはどんな候補者か

四.社内の判断の流れ。誰が何を決めるか、書類の合否は何日で返るか、面接官の日程はどう確保するか。

この四つが揃っていると、ヒアリングの時間が大きく減ります。口頭で説明する時間が、読んで理解する時間に置き換わるからです。

そして、この文書は代行会社が替わっても使えます。担当者が交代したときにも渡せる。一度作れば、何度も使える資産になります。

契約前に渡すもの

選定の段階では、機密性の低い情報に絞ります

この六つで、提案の精度は十分に上がります

渡すのを控えるもの

契約前でも秘密保持の取り決めを交わせば渡せますが、選定の段階では必要な範囲にとどめるのが実務的です

契約後に渡すもの

契約が決まったら、範囲を広げます

このうち、六番目と七番目は見落とされやすい。既存のものを渡せば、ゼロから作る必要がなくなります。改稿のほうが、新規作成より速く済みます

エラベルの見解

渡す情報の中で、最も効くのに最も渡されないのが「落とした理由」です。

多くの会社は、通した候補者の話をします。こういう人を採りたい、こういう経歴の人が良い。ところが、代行側が知りたいのは境界です。どこまでなら通し、どこから落とすのか。

境界が分からないと、書類の仕分けができません。迷ったものをすべて確認に回すことになり、自社の時間を使います。

だから、落とした候補者の経歴を、理由とともに渡してください。数件で足ります。「この経験年数だが、この点で見送った」「この職種の出身だが、この部分が合わなかった」。

具体例が三つあれば、基準はかなり伝わります。説明で「主体性のある人」と言うより、実例のほうが正確です。

そして、この作業は自社にとっても価値があります。落とす理由を言語化すると、面接官ごとのばらつきも見えます。同じような経歴の候補者が、人によって評価が分かれている。これは選考設計の問題として扱えます。

渡す準備をする過程で、自社の基準が整理される。この副次的な効果は小さくありません。

渡す順番

一.要件と落とす理由。最初に渡します。これがないと、他の情報が活きません

二.過去の実績。要件を具体化する材料になります。

三.既存の成果物。求人原稿、文面、テンプレート。改稿の出発点になります

四.現場の情報。要件の背景として。現場責任者との面談を設定できるなら、そのほうが伝わります

五.社内の判断の流れ。運用が始まる前に共有します。

六.環境と権限。契約後、速やかに付与します。

この順番で渡すと、代行側の理解が積み上がります。逆に、大量の資料を一度に渡すと、読み込むだけで時間がかかります。

形式を決める

文書で渡す。口頭の説明は、担当者が交代すると失われます。文書なら引き継げます

編集できる形式で渡す。相手が加筆できる形にしておくと、要件定義書として育てられます。

置き場所を決める。共有のドライブか、採用管理システム。メールの添付で散らばらせないでください

更新のルールを決める。要件が変わったとき、誰が更新するか。文書が古いまま使われると、ずれの原因になります

四番目が抜けやすい項目です。最初に渡した要件が更新されないまま数か月経つ、ということが起きます。

機密の扱い

秘密保持の取り決めを先に交わす。契約前に情報を渡すなら、その前に交わします。

渡す範囲を決める。業務に必要な範囲にとどめます。すべてを渡す必要はありません

個人情報の扱いを整理する。候補者の情報を渡す場合、委託の建て付けと取り扱いの取り決めを確認します。扱いは個人情報保護法と委託先の監督にまとめています。

特定できる形を避ける。組織の課題や社員の状況を伝えるとき、個人が特定できる形は避けます。

渡した記録を残す。何を、いつ、誰に渡したか。契約終了時の回収でも使います

エラベルの見解

情報を渡す作業を、「相手のための作業」ではなく「自社の整理」と捉えてみてください。見え方が変わります。

要件を一枚にまとめる。落とす理由を三つ書く。判断の流れを整理する。これらは、代行に渡すためだけの作業ではありません

社内で採用を進める場合も、新しい担当者が入ったときも、同じものが要ります。面接官への説明にも使えますし、内定者への説明にも使えます。

そして、作ってみると決まっていないことが見つかります。落とす理由が書けない、判断の所要日数が答えられない、誰が決めるのかが曖昧。これらは、代行を入れるかどうかに関わらず整えるべき部分です

だから、依頼の準備として作った文書は、依頼しなかった場合でも残ります

そして、この文書があるかどうかで、選べる相手も変わります。渡す材料が揃っていれば、経験の浅い担当者でも回せる。条件を緩められるぶん、選択肢が広がります。

準備は、相手のためではなく自社のためにやってください。結果として、相手にも伝わります。

まとめ

よくある質問

どこまで情報を渡してよいか判断できません

業務に必要な範囲を基準にしてください。日程調整だけを任せるなら候補者の連絡先と日程の情報で足り、書類の仕分けまで任せるなら判断の基準が要ります。範囲を広げるときに、渡す情報も広げる形にすると整理しやすくなります。

要件がまだ固まっていません

固まっていないことを伝えたうえで、現時点で分かっている範囲を渡してください。未定であることを伝えるのと、伝えないのは違います。あわせて、要件の整理から相談できる相手かを確認してください。設計から入れる担当者かどうかで、進め方が変わります。

過去の採用実績が記録されていません

思い出せる範囲で構いません。直近で採用した人の経歴と、なぜ採ったか。落とした人の経歴と、なぜ落としたか。数件でも、基準は伝わります。あわせて、今後は記録を残す運用にしておくと、次の依頼のときに使えます。