採用代行 / 比較・選び方
代行会社に渡す前提情報の整理
採用代行に何を渡すか。渡す情報の量が、提案の精度と立ち上がりの速さを決めます。ところが、多くの会社は求人票だけを渡して依頼します。その結果、返ってくる提案も一般的なものになり、運用が始まってから確認のやりとりが続きます。この記事では、渡す情報を整理し、契約前と契約後に分けてまとめます。
渡すと変わる四つの文書
一.採用要件。必須と歓迎を分け、落とす理由を三つ書いた一枚。求人票とは別に作ります。
二.過去の採用実績。通した候補者と落とした候補者の経歴を、理由とともに。具体例は説明より速く伝わります。
三.現場の情報。どんな人が活躍しているか、辞めた人はなぜ辞めたか、面接で意見が割れるのはどんな候補者か。
四.社内の判断の流れ。誰が何を決めるか、書類の合否は何日で返るか、面接官の日程はどう確保するか。
この四つが揃っていると、ヒアリングの時間が大きく減ります。口頭で説明する時間が、読んで理解する時間に置き換わるからです。
そして、この文書は代行会社が替わっても使えます。担当者が交代したときにも渡せる。一度作れば、何度も使える資産になります。
契約前に渡すもの
選定の段階では、機密性の低い情報に絞ります。
- 職種と人数、時期
- 要件の概要(詳細は契約後でも可)
- 現在の採用の状況(応募数、採用数、詰まっているところ)
- 使っている媒体と採用管理システム
- 依頼したい工程と、社内に残す業務
- 自社側の判断の速さ
この六つで、提案の精度は十分に上がります。
渡すのを控えるもの
- 候補者の個人情報
- 給与テーブルなど内部の制度
- 特定できる形での組織の課題
- 事業計画の詳細
契約前でも秘密保持の取り決めを交わせば渡せますが、選定の段階では必要な範囲にとどめるのが実務的です。
契約後に渡すもの
契約が決まったら、範囲を広げます。
- 採用要件の詳細(落とす理由を含む)
- 過去の採用実績と、判断の理由
- 現場の状況、組織の課題
- 想定年収の幅と、条件の考え方
- 社内の意思決定の流れ
- 既存の求人原稿、文面、テンプレート
- 過去の稼働の記録や数字
このうち、六番目と七番目は見落とされやすい。既存のものを渡せば、ゼロから作る必要がなくなります。改稿のほうが、新規作成より速く済みます。
エラベルの見解
渡す情報の中で、最も効くのに最も渡されないのが「落とした理由」です。
多くの会社は、通した候補者の話をします。こういう人を採りたい、こういう経歴の人が良い。ところが、代行側が知りたいのは境界です。どこまでなら通し、どこから落とすのか。
境界が分からないと、書類の仕分けができません。迷ったものをすべて確認に回すことになり、自社の時間を使います。
だから、落とした候補者の経歴を、理由とともに渡してください。数件で足ります。「この経験年数だが、この点で見送った」「この職種の出身だが、この部分が合わなかった」。
具体例が三つあれば、基準はかなり伝わります。説明で「主体性のある人」と言うより、実例のほうが正確です。
そして、この作業は自社にとっても価値があります。落とす理由を言語化すると、面接官ごとのばらつきも見えます。同じような経歴の候補者が、人によって評価が分かれている。これは選考設計の問題として扱えます。
渡す準備をする過程で、自社の基準が整理される。この副次的な効果は小さくありません。
渡す順番
一.要件と落とす理由。最初に渡します。これがないと、他の情報が活きません。
二.過去の実績。要件を具体化する材料になります。
三.既存の成果物。求人原稿、文面、テンプレート。改稿の出発点になります。
四.現場の情報。要件の背景として。現場責任者との面談を設定できるなら、そのほうが伝わります。
五.社内の判断の流れ。運用が始まる前に共有します。
六.環境と権限。契約後、速やかに付与します。
この順番で渡すと、代行側の理解が積み上がります。逆に、大量の資料を一度に渡すと、読み込むだけで時間がかかります。
形式を決める
文書で渡す。口頭の説明は、担当者が交代すると失われます。文書なら引き継げます。
編集できる形式で渡す。相手が加筆できる形にしておくと、要件定義書として育てられます。
置き場所を決める。共有のドライブか、採用管理システム。メールの添付で散らばらせないでください。
更新のルールを決める。要件が変わったとき、誰が更新するか。文書が古いまま使われると、ずれの原因になります。
四番目が抜けやすい項目です。最初に渡した要件が更新されないまま数か月経つ、ということが起きます。
機密の扱い
秘密保持の取り決めを先に交わす。契約前に情報を渡すなら、その前に交わします。
渡す範囲を決める。業務に必要な範囲にとどめます。すべてを渡す必要はありません。
個人情報の扱いを整理する。候補者の情報を渡す場合、委託の建て付けと取り扱いの取り決めを確認します。扱いは個人情報保護法と委託先の監督にまとめています。
特定できる形を避ける。組織の課題や社員の状況を伝えるとき、個人が特定できる形は避けます。
渡した記録を残す。何を、いつ、誰に渡したか。契約終了時の回収でも使います。
エラベルの見解
情報を渡す作業を、「相手のための作業」ではなく「自社の整理」と捉えてみてください。見え方が変わります。
要件を一枚にまとめる。落とす理由を三つ書く。判断の流れを整理する。これらは、代行に渡すためだけの作業ではありません。
社内で採用を進める場合も、新しい担当者が入ったときも、同じものが要ります。面接官への説明にも使えますし、内定者への説明にも使えます。
そして、作ってみると決まっていないことが見つかります。落とす理由が書けない、判断の所要日数が答えられない、誰が決めるのかが曖昧。これらは、代行を入れるかどうかに関わらず整えるべき部分です。
だから、依頼の準備として作った文書は、依頼しなかった場合でも残ります。
そして、この文書があるかどうかで、選べる相手も変わります。渡す材料が揃っていれば、経験の浅い担当者でも回せる。条件を緩められるぶん、選択肢が広がります。
準備は、相手のためではなく自社のためにやってください。結果として、相手にも伝わります。
まとめ
- 渡すと変わるのは、要件・過去の実績・現場の情報・判断の流れの四つ
- 契約前は機密性の低い情報に絞る。六つの項目で提案の精度は十分に上がる
- 契約後は範囲を広げる。既存の成果物を渡すと、改稿で済む
- 最も効くのに渡されないのが「落とした理由」。具体例が三つあれば基準は伝わる
- 渡す順番は、要件 → 過去の実績 → 既存の成果物 → 現場の情報 → 判断の流れ → 権限
- 形式は文書で、編集できる形で。置き場所と更新のルールを決める
- 機密は、取り決めを先に・範囲を決めて・特定できる形を避け・記録を残す
- 準備は自社の整理。依頼しなかった場合でも残る
よくある質問
どこまで情報を渡してよいか判断できません
業務に必要な範囲を基準にしてください。日程調整だけを任せるなら候補者の連絡先と日程の情報で足り、書類の仕分けまで任せるなら判断の基準が要ります。範囲を広げるときに、渡す情報も広げる形にすると整理しやすくなります。
要件がまだ固まっていません
固まっていないことを伝えたうえで、現時点で分かっている範囲を渡してください。未定であることを伝えるのと、伝えないのは違います。あわせて、要件の整理から相談できる相手かを確認してください。設計から入れる担当者かどうかで、進め方が変わります。
過去の採用実績が記録されていません
思い出せる範囲で構いません。直近で採用した人の経歴と、なぜ採ったか。落とした人の経歴と、なぜ落としたか。数件でも、基準は伝わります。あわせて、今後は記録を残す運用にしておくと、次の依頼のときに使えます。