採用代行 / 費用・契約・法務
代行の稼働内容をどう可視化してもらうか
採用代行に任せていると、日々何が行われているかは見えにくくなります。見えるようにする方法は、レポートを厚くすることだけではありません。むしろ、レポートを厚くすると作成の稼働が増え、実務の時間が削られます。この記事では、報告以外の三つの経路と、負担を増やさずに見える状態を作る設計を整理します。
三つの経路がある
一.報告してもらう。稼働報告に工程ごとの内訳と成果物の量を書いてもらう形です。作成の手間はかかりますが、集計された情報が届きます。
二.同じ画面を見る。採用管理システムや媒体の管理画面に自社もアクセスし、状況を直接見る形です。報告を待たずに見られ、作成の手間も発生しません。
三.成果物を見る。作られた文面、検索条件、テンプレートを直接確認する形です。品質そのものを判断できます。
この三つは、見えるものが違います。報告からは量と時間が、画面からは進捗と状態が、成果物からは質が分かります。どれか一つでは不十分で、組み合わせて使います。
同じ画面を見る設計
いちばん負担が少ないのが、この経路です。
採用管理システムを自社で持つ。候補者の情報、選考の状況、やりとりの履歴が集約されていれば、いつでも確認できます。代行にはアクセス権を渡す形にします。
媒体の管理画面にアクセスできるようにする。送信の履歴、応募の状況、設定の内容が見えます。名義を自社にしておくと、この経路が確保できます。
作業の記録がツールに残る形にする。誰が、いつ、何をしたか。多くのシステムには操作の履歴が残ります。日常的に見る必要はありませんが、確認できる状態にしておきます。
この設計をしておくと、報告の項目を減らせます。画面で見られる情報を報告に書いてもらうのは、二重の作業です。報告には、画面から読み取れないこと(判断の理由、次の打ち手の見立て)を書いてもらいます。
権限の設計は渡すATSの権限範囲、媒体の名義は媒体アカウントを代行に渡すときの注意点にまとめています。
エラベルの見解
可視化を求めるとき、目的を「監視」ではなく「一緒に判断するため」に置いてください。この違いは、相手の動き方に出ます。
監視のための可視化は、細かい報告を求める形になります。何時から何時まで何をしたか。作成に時間がかかり、その時間は実務から削られます。しかも、細かい記録があっても判断には使えません。
判断のための可視化は、同じ情報を同じ画面で見る形になります。定例会で、双方が同じ管理画面を見ながら次を決める。報告を読み上げる会ではなく、状況を見て判断する会になります。
この形にすると、代行側も動きやすくなります。説明の負担が減り、提案がしやすくなる。発注側が状況を分かっている前提で話せるからです。
そして、この設計は担当者が替わったときにも効きます。画面を見られる状態が続いていれば、新しい担当者が入っても、自社側は何が起きているかを把握しています。可視化は、代行への信頼の問題ではなく、自社が採用を理解している状態を保つための設計です。
成果物を見る
質を判断するには、成果物そのものを見ます。
スカウトの文面。実際に送っている文面を、職種ごとに見せてもらいます。テンプレートだけでなく、実際に送信されたものを数通。
検索条件。どういう条件で候補者を探しているか。条件から外している層と、その理由も聞きます。
候補者への返信。返信が来たときに何を返しているか。ここに担当者の力量が出ます。
不採用や辞退への対応。定型文で済ませているか、状況に応じた文面になっているか。
これらは、月に一度、数点を抽出して見る程度で十分です。全部を見る必要はありません。抽出して見る運用にしておくと、質の変化に気づけます。
特に、担当者が替わった直後は見る価値があります。文面の質が変わっていれば、引き継ぎの補強を依頼できます。
報告に残すもの
画面と成果物で見られるものは、報告から外せます。報告に残すのは次のあたりです。
- 工程ごとの稼働の内訳(時間または件数)
- 成果物の量(送信件数、調整件数、処理件数)
- 判断の理由(条件を変えた理由、文面を直した理由)
- うまくいかなかったこと(試したが効果が薄かった施策)
- 次の打ち手の見立て
- 担当者名
三番目から五番目が、画面からは読み取れない部分です。数字は画面で見られますが、なぜそうしたかは書いてもらわないと分かりません。
報告の項目を絞ると、作成の稼働が減り、実務の時間が増えます。見える状態を保ちながら、報告を軽くするというのが設計の目標です。項目の決め方はレポートに入れてもらう項目にまとめています。
抜き取りで確認する
すべてを確認するのは現実的ではありません。抜き取りの設計をします。
頻度を決める。月に一度、四半期に一度。運用が安定していれば頻度は下げられます。
確認する対象を決める。文面を数通、検索条件を一つ、候補者とのやりとりを数件。
変化があったときは頻度を上げる。担当者が替わった、数字が動いた、職種が増えた。こうしたタイミングでは一時的に確認を増やします。
記録を残す。確認した日、見た内容、気づいたこと。記録があると、変化の把握ができます。
エラベルの見解
可視化の設計で見落とされやすいのが、自社側の稼働も見えるようにすることです。
代行の稼働だけが見える状態だと、詰まりの原因が代行側にあるように見え続けます。実際には、書類の合否が遅れている、面接の候補日が出ていない、要件の変更が社内で決まっていない、といった自社側の要因で止まっていることが少なくありません。
だから、同じ資料に自社側の数字も並べてください。書類の合否を返すまでの日数。候補日を提示するまでの日数。質問への回答までの日数。定例で決めた宿題の完了率。
この四つが並ぶと、会話の質が変わります。今月は面談設定が落ちたが、その前に候補日の提示が遅れていた、という因果が見えます。
そして、この形にすると代行側も指摘しやすくなります。自社側の数字が出ていない場では、判断が遅いことを言い出すのは難しい。並んでいれば、事実として話題にできます。可視化は双方向にすると機能します。片側だけを見える状態にすると、評価の道具になってしまいます。
まとめ
- 見えるようにする経路は報告・同じ画面を見る・成果物を見るの三つ
- いちばん負担が少ないのは同じ画面を見る設計。作成の手間が発生しない
- 画面で見られる情報を報告に書いてもらうのは二重の作業
- 報告に残すのは、判断の理由・うまくいかなかったこと・次の見立て・担当者名
- 質は成果物を抽出して見る。担当者が替わった直後は特に見る価値がある
- 抜き取りは頻度と対象を決め、変化があったときに増やす
- 目的を「監視」ではなく「一緒に判断するため」に置く
- 自社側の稼働も同じ資料に並べる。片側だけだと評価の道具になる
よくある質問
代行に画面のアクセス権を渡すと管理が心配です
権限を業務に必要な範囲に絞り、一覧で管理し、四半期に一度棚卸しをする運用にしておけば、把握できる状態を保てます。むしろ、必要なたびに情報を送ってもらう運用のほうが、ファイルが移動する分だけ事故の余地が増えます。設計は情報漏えいを防ぐ設計にまとめています。
報告が薄くて状況が分かりません
まず、画面で見られる状態になっているかを確認してください。なっていないなら、権限の設計から始めます。そのうえで、報告には判断の理由と次の見立てを書いてもらうよう依頼します。数字だけの報告では、次に何をすべきかが決まりません。
稼働を細かく確認すると信頼していないと思われませんか
伝え方によります。「何をしているか確認したい」ではなく「一緒に判断したいので同じ情報を見たい」と伝えると、受け取られ方が変わります。実際、状況を分かっている発注側のほうが、代行側も動きやすくなります。同じ画面を見る形は、監視ではなく協働の設計です。