採用代行 / 費用・契約・法務
媒体アカウントを代行に渡すときの注意点
採用代行に媒体の運用を任せるなら、管理画面へのアクセスが要ります。ここで多いのが、自社の担当者のIDとパスワードをそのまま共有するという形です。速いのですが、誰が何をしたかが追えなくなり、退任時の処理も曖昧になります。この記事では、渡す前に確認することと、運用に組み込む管理の実務を整理します。
渡す前に確認する四つ
一.媒体の規約でアカウントの取り扱いがどうなっているか。IDの共有や第三者への貸与について、媒体ごとに定めがあります。運用代行のためのアカウント発行に対応している媒体もあります。まず媒体側に確認するのが順番です。
二.追加アカウントを発行できるか。発行できるなら、代行の担当者ごとに個別のアカウントを作ります。誰が何をしたかが履歴に残り、退任時も個別に削除できます。
三.権限のレベルを選べるか。閲覧のみ、応募者対応まで、スカウト送信まで、設定変更まで。段階が選べる媒体なら、任せる業務に合わせて絞ります。
四.契約の名義。自社契約か、代行会社の名義か。名義が代行側だと、契約終了時にアカウントごと失われることがあります。名義と費用の関係は媒体費と代行費を分けて見るべき理由にまとめています。
このうち二番が最も効きます。個別アカウントが発行できるかどうかで、その後の管理のしやすさが決まります。
IDの共有が招くこと
自社担当者のIDをそのまま渡す形だと、次のことが起きます。
誰が操作したか分からない。送信の履歴も、設定の変更も、すべて同じアカウントの操作として記録されます。何かあったときに遡れません。
退任時の処理が重い。担当者が替わるたびにパスワードを変更し、関係者全員に伝え直すことになります。変更を忘れると、前の担当者がアクセスできる状態が続きます。
権限を絞れない。IDが一つなら、その権限がそのまま渡ります。設定変更まで含む権限だと、意図しない変更が起きる余地があります。
媒体の規約に触れる可能性がある。前述のとおり、媒体ごとに定めがあります。
個別アカウントが発行できない媒体もあります。その場合は、操作の記録を別に残す運用にする、権限の低いアカウントを一つ用意する、といった補い方を検討します。
エラベルの見解
媒体アカウントで見落とされやすいのが、スカウトの送信枠の管理です。多くの媒体では、送信できる件数に上限があるか、従量で費用が発生します。
代行にアカウントを渡すと、この枠の消費が代行側の運用に委ねられます。上限を決めていないと、月の前半で枠を使い切ってしまい、後半に動けなくなることがあります。逆に、遠慮して使い切らないまま期限が来ることもあります。
だから、月あたりの送信枠の配分を先に決めてください。職種ごとに何件を割り当てるか、週あたりのペースをどうするか。決めておけば、代行側も計画的に使えます。
そして、消費の状況を稼働報告に入れてもらいます。今月の送信件数と、枠の残り。これが見えていれば、途中で配分を変える判断もできます。
枠の管理は、費用の管理でもあります。従量課金の媒体では、送信件数がそのまま支出です。上限を決めずに渡すと、予算が振れます。契約の段階で決めておく項目です。
複数社が同じ媒体に入る場合
職種ごとに代行会社を分けている場合、同じ媒体に複数社が入ることがあります。
求人ごとの担当を明確にする。どの求人をどの会社が触るか。同じ画面に入る以上、線を引いておかないと設定が上書きされます。
送信枠を分ける。全体の枠を職種ごとに割り当てます。決めていないと、先に使ったほうが有利になります。
候補者の重複を判定する仕組み。同じ媒体内で、二社が同じ候補者にスカウトを送る可能性があります。判定の基準を決めておきます。並行発注の設計は複数社に同時発注してよいかにまとめています。
操作の履歴を確認できるようにする。個別アカウントを発行していれば、誰が何をしたかが分かります。トラブルが起きたときの確認が速くなります。
権限の棚卸しと削除
渡した後の管理は、採用管理システムと同じ考え方です。
- 一覧を作る。誰に、どのアカウントを、いつ発行したか
- 四半期に一度、突き合わせる。一覧と実際のアカウントを確認します
- 交代時に付け替える。前の担当者のアカウントを削除し、新しい担当者を追加する
- 契約終了時は、書き出し → 確認 → 削除の順。先に権限を切ると、データが取り出せなくなります
媒体に蓄積されるデータは、書き出しておきます。候補者の一覧、スカウトの送信履歴、やりとりの記録。媒体によっては契約終了後に見られなくなります。切り替えの手順は切り替えるときの引き継ぎ項目で扱っています。
候補者から見た体裁
媒体の管理画面から送るメッセージには、送信者の情報が表示されます。ここも設計の対象です。
誰の名前で送るか。自社の採用担当の名前か、部署名か。候補者から見れば自社からの連絡なので、体裁は自社のルールで決めます。
署名の内容。会社名、部署名、連絡先。候補者が返信しやすい形にします。
返信の受け取り先。媒体内のメッセージで完結するのか、メールに転送されるのか。返信を見落とさない設定にします。
代行の担当者名で送るかどうかは、判断が分かれます。自社の担当者名で送る形が一般的ですが、その場合、面談の場で名前が一致しないことがあります。運用として、どこで担当が引き継がれるかを決めておきます。
エラベルの見解
媒体アカウントを渡すときに、過去の運用データを見られる状態にしておくことをおすすめします。
新しく入る担当者にとって、過去の送信履歴と反応は貴重な情報です。どういう文面を送ってきたか、どの層に反応があったか、どの条件で母集団が薄かったか。これが見られると、立ち上げの判断が速くなります。
ところが、アカウントを新規に発行すると、過去の履歴が見えない設定になっていることがあります。あるいは、前の代行会社のアカウントに履歴が紐づいていて、削除とともに消えることもあります。
だから、代行会社を替えるときは、履歴の引き継ぎを媒体側にも確認してください。アカウントを削除すると何が失われるのか。書き出せるものは何か。媒体によって仕様が違います。
そして、日頃から送信した文面と反応を自社側にも記録しておくと、媒体の仕様に左右されなくなります。稼働報告に文面の内容と結果を含めてもらえば、それが記録になります。レポートの項目についてはレポートに入れてもらう項目にまとめています。
まとめ
- 渡す前に、規約・追加アカウントの発行・権限のレベル・契約の名義を確認する
- 個別アカウントを発行できるかが、その後の管理のしやすさを決める
- IDの共有は、操作の追跡・退任時の処理・権限の絞り込みで不利になる
- スカウトの送信枠の配分を先に決める。決めないと予算が振れる
- 複数社が入るなら、求人ごとの担当・送信枠の配分・重複判定を決める
- 棚卸しは四半期に一度。削除は書き出し → 確認 → 削除の順
- 候補者から見た送信者名と署名も設計の対象
- 過去の運用データが見られる状態にしておくと、立ち上げが速い
よくある質問
媒体のIDを代行会社と共有しても問題ありませんか
媒体ごとの規約によります。まず媒体側に確認してください。運用代行のためのアカウント発行に対応している媒体もあります。共有以外の方法があるなら、そちらを選ぶほうが管理も追跡も容易になります。
代行会社が自社の媒体契約を使って他社の採用を行うことはありますか
通常はありません。ただし、アカウントの権限が広いと、意図しない操作が起きる余地は残ります。個別アカウントを発行し、権限を業務に必要な範囲に絞り、操作の履歴を確認できる状態にしておくことで、この懸念は下げられます。契約でも取り扱いを定めておきます。
契約終了後、媒体に残った候補者データはどうなりますか
媒体の仕様と契約によって変わります。自社名義の契約なら、アカウントを維持する限りデータは残ります。代行会社の名義だと、契約終了とともにアクセスできなくなることがあります。終了の前にデータを書き出し、自社の採用管理システムに移しておくのが確実です。