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採用代行の契約にKPIを入れるべきか

公開 2026-09-07

採用代行の契約に成果指標を入れておきたい。そう考えるのは自然ですが、入れ方によっては運用が歪みます。指標は、置いた瞬間から相手の動き方を変えるからです。判断の分かれ目は、その指標を報酬に連動させるのか、見るだけにするのかという点にあります。この記事では、指標の選び方と、置いたときに起きることを整理します。

報酬に連動させるか、見るだけにするか

同じ数字でも、扱い方で意味がまったく変わります。

報酬に連動させる見るだけにする
代行側の動きその数字を上げる動きに寄る数字を説明する動きになる
向いている指標制御できる工程の量質を含む全体の推移
起きやすいこと数値合わせ数字が説明で終わる
契約への書き方成果の定義として厳密に報告項目として
見直しの頻度契約更新時定例会ごと

報酬に連動させるなら、代行が制御できる工程に限るというのが原則です。制御できない数字に報酬を紐づけると、代行側は影響を与えられない要素で報酬が決まることになり、単価が上がるか、引き受けられなくなります。成果の定義の作り方は成果の定義でもめない書き方で扱っています。

見るだけにする場合は、範囲を広く取れます。採用人数、辞退率、定着まで含めて共有し、そこから会話を作る形です。報酬に連動していないので、数字が悪いことを隠す動機が生まれません。

制御できる指標とできない指標

指標を選ぶとき、代行が影響を与えられるかどうかで分けます。

制御できる(工程の量と速さ)

部分的に制御できる(質が絡む)

制御できない(自社が持つ要素が大きい)

部分的に制御できる指標をどう扱うかが、設計の勘所です。返信率は文面と候補者選定で変わるので代行の腕が出ますが、自社の知名度や条件も効きます。ここを報酬に連動させるなら、影響する要素を切り分ける会話が要ります。

エラベルの見解

指標を報酬に連動させたときに起きることを、具体的に書いておきます。数値合わせは、悪意ではなく設計への反応として起きます

スカウトの送信件数を指標にすると、送信しやすい候補者に寄ります。条件を広げれば件数は伸びるので、精度より量が優先されます。返信率を指標にすると、逆に返信の取りやすい層だけに送るようになり、件数が落ちます。面談設定を指標にすると、実施の見込みが薄くても日程を入れる動きが出ます。

どの指標にも、その指標を上げる最短経路があります。そしてその経路は、採用の目的とは必ずしも一致しません。

だから、報酬に連動させる指標は二つ以上を組み合わせるか、質の条件を添えるほうが安全です。送信件数と返信率の両方を見る。面談設定は実施をもって成立とする。この一手間で、最短経路が採用の目的に近づきます。

そして、指標を置くこと自体が目的化しないよう、四半期に一度は指標そのものを見直す運用にしてください。採用の状況が変われば、見るべき数字も変わります。

見るだけの指標をどう使うか

報酬に連動させない指標は、定例会の材料として使います。数字を並べるだけでは会話になりません。次の形にすると使えます。

工程ごとに並べる。送信、返信、面談設定、面談実施、書類通過、内定。上から下へ数字を並べると、どこで落ちているかが見えます。

前月と比べる。絶対値より変化のほうが情報量があります。上がった月、下がった月に何をしたかを記録しておきます。

経路ごとに分ける。媒体、スカウト、紹介、自社サイト。経路ごとに数字が違うのは当たり前なので、混ぜると傾向が消えます。

担当者が替わった時点を記録する。運用の担当が交代したタイミングを数字の推移に重ねると、変化の原因が見えることがあります。

この四つで、定例会は報告の場から判断の場に変わります。数字が悪い月に何を変えるかを、その場で決められるようになります。

契約にどう書くか

指標を契約に入れる場合、書き方は目的によって変わります。

報告項目として書く。「受託者は、次の項目を含む稼働報告を毎月○日までに提出する」として、指標を列挙します。義務は報告であって、数値の達成ではありません。実務ではこの形が扱いやすいところです。

目標として書く。「両者は、次の水準を目標として運用する」という形。達成義務ではなく努力目標なので、未達でも契約違反にはなりません。方向性を共有する意味があります。

成果報酬の条件として書く。この場合は、成立の時点と確認方法と取り消し条件まで厳密に書きます。曖昧だと請求のたびに議論になります。

未達時の扱いを定める。一定期間、目標を大きく下回った場合に協議する、あるいは契約を見直す条項を置く形もあります。ただし、未達の原因が自社側にあることも多いため、原因を切り分ける手順とセットで置きます。

条項の書き方については、契約全体との整合も含めて専門家にご確認ください。契約書の確認項目は業務委託契約書で確認する10項目にまとめています。

エラベルの見解

指標の議論で抜けやすいのは、自社側の指標を置くかどうかです。採用の数字は、代行の稼働だけで決まるものではありません。

置くとしたら、次のような項目になります。書類の合否を返すまでの時間。面接の候補日を提示するまでの時間。要件の変更を伝えるまでの時間。定例会で決めた宿題を返すまでの時間。

これらは、代行側の稼働の効率を大きく左右します。書類の合否が滞れば候補者は他社に流れ、日程の提示が遅れれば面談が組めません。代行の指標だけを置いて自社の指標を置かないと、原因が代行側にあるように見え続けます

両方を並べた資料を定例会で見ると、会話の質が変わります。今月は送信件数が落ちたが、その前に要件の変更が二週間止まっていた、という因果が見える。この状態になると、指標は評価の道具ではなく、運用を直す道具になります。

指標を入れるなら、自社側にも同じ数だけ置いてみてください。それが機能する指標かどうかの試金石にもなります。

まとめ

よくある質問

KPIを達成できなかった場合、費用を減額できますか

契約に減額の定めがあれば可能ですが、置く場合は原因を切り分ける手順とセットにします。採用の数字は自社側の判断速度や条件にも左右されるため、未達だけを理由に減額する条項は、代行側が受け入れにくいところです。実務では、一定期間の未達をもって協議する形のほうが合意しやすくなります。

契約時に適切な目標値が分かりません

分からないまま置く必要はありません。最初の数か月は指標を報告項目としてだけ置き、実績が出てから目標を設定する形が現実的です。立ち上げ期の数字は運用が固まっていないため、そこを基準にすると後で合わなくなります。契約更新のタイミングで目標を入れる、という進め方もあります。

指標は多いほうがよいですか

多いと報告の作成に時間がかかり、その時間も稼働として消費されます。工程ごとに一つずつ、全体で数個に絞るほうが運用に乗ります。見たい数字が増えたときは、既存の項目と入れ替える形にすると、報告の負担が一定に保たれます。