採用代行 / 研究開発
研究開発向けスカウト文面の型|刺さる訴求と外す訴求
研究開発にスカウトを送っても返信が来ない会社の文面には、共通点があります。「研究開発を募集しています」「最先端の研究に携われます」「修士以上歓迎」「研究開発業務全般をお任せします」と書かれていて、何の分野の何のテーマか、テーマの自由度、成果の測り方と発表の可否、事業化までの距離、研究環境、学位の扱いが無い。研究者は、論文と発表で自分を示している人たちで、スカウトの一行目で自分の研究に触れられていなければ、「論文を読んでいない」と読み、閉じます。結論を先に書くと、研究開発へのスカウトは、分野とテーマと中身で対象を絞り、研究所長が候補者の論文を確認して一行目で研究の一点に触れ、自社のテーマ(守秘の範囲で)と自由度・評価と発表・事業化までの距離・環境と学位の扱い・研究所長がどういう人かを先に書き、形容詞を使わず、会社の紹介は後ろに回す型にすると、返信が変わります。母集団形成の全体は研究開発の母集団形成に、代行に出す工程の線は研究開発採用を代行に出す判断基準にまとめています。
研究者がスカウトを読まない理由
他の職種と共通する理由(定型文は読まれない、一行目が会社の話だと閉じられる)に加えて、研究者に特有の理由があります。
一つ目は、論文を読んでいない文面を最初に見抜くことです。研究者は、論文と学会発表で自分の研究を公開しています。「ご経歴を拝見し」で始まり、論文や発表に一つも触れない文面は、「肩書と学位だけを見て送っている」と読まれます。研究の内容に触れていても、分野が少しずれていれば「読んでいない」と分かります。
二つ目は、テーマが分からないと判断できないことです。研究者は、「何を研究するか」で自分の研究が活きるかを判断します。「最先端の研究」「新製品の研究開発」では、分野もテーマも分かりません。守秘があっても、対象と目的が無い文面は閉じられます。
三つ目は、「研究者として扱われるか」を確かめることです。テーマを自分で決められるか、手法は任されるか、論文と発表ができるか、成果を何で測るか、博士や修士の学位をどう扱うか。これが無い文面は、「研究者を作業者として使う会社」と読まれます。
四つ目は、「最先端」「革新的」「世界初」を信じないことです。研究者は、その言葉の裏に具体的な研究が無いことを、経験で知っています。「最先端」は、研究者には「具体的に何が最先端かを書けない会社」と読まれます。
この四つから、文面の型が決まります。研究所長が論文を確認して研究の一点に触れる一行目、テーマを守秘の範囲で具体的に、自由度と評価と発表を書く、事業化までの距離を正直に、環境と学位の扱いを書く、形容詞を使わない。
先に決めるのは対象:分野とテーマと中身で絞る
文面の前に、誰に送るかを決めます。研究開発では、「自社の分野とテーマと中身」と「それに合う経路」の決定が、対象の絞り込みです。テーマと自由度と評価の整理は研究開発採用を代行に出す判断基準に書いています。
分野とテーマで絞ります。材料の応用研究なら「〇〇材料」「〇〇特性」「〇〇への応用」、化学の開発なら「〇〇合成」「スケールアップ」「製品開発」、バイオなら「〇〇解析」「〇〇評価」と対象。「研究開発」の肩書だけで検索すると、分野が混ざります。論文の検索で、自社のテーマに近い研究をしている人を探すのが、研究者の探し方です。
中身で絞ります。要素技術を製品に近づける応用研究なら、「応用」「製品化」「事業化」に関わった経験、基礎研究なら「論文」「学会」の実績、開発や改良なら「製品開発」「性能改善」の経験。任せる中身と候補者の経験が合わないと、「自分向けでない」と読まれます。
経路で分けます。大学のポスドクや博士課程の修了者、研究機関の任期付き研究者、大手メーカーの研究所、同分野のメーカーの開発部門、修士で開発をしてきた人。それぞれ持っているものと、動く理由が違います。
| 経路 | 一行目で触れる一点 | 訴求 |
|---|---|---|
| 大学のポスドク・博士課程修了者 | 学位論文や直近の論文のテーマと手法 | 任期の無い環境で研究を続けられること、研究を製品にする経験、論文と発表を認める範囲、博士の扱い |
| 研究機関の任期付き研究者 | 研究機関でのテーマと成果 | 任期の区切りに合わせられること、テーマの連続性、共同研究の継続 |
| 大手メーカーの研究所 | 公開されている論文や特許、担当した研究の対象 | 大手では持てなかった「テーマから製品まで一貫して」、決める速さ、事業部門との距離の近さ |
| 同分野のメーカーの開発部門 | 担当した製品と、開発の対象 | 開発から研究へ、または製品化に近い研究へ。研究所長がどういう人か |
| 修士で開発をしてきた人 | 担当した製品や技術 | 研究の考え方を学べる環境、テーマを持てること、学位より経験を評価すること |
対象を絞ると、送る数は減ります。研究開発は、分野を絞ると対象が少なく、研究所長が論文を確認する工程を挟むので、送る数は元から多くありません。数ではなく、一通ずつ論文を読んで送ることが、研究者への届き方です。
エラベルの見解
相談で多いのは、「研究者にスカウトを送っているが、返信がほとんど無い」というご相談です。文面を見ると、「ご経歴を拝見し、ご連絡しました。当社は〇〇分野で最先端の研究開発を行っており、修士以上の方を募集しています。革新的な製品開発に携わっていただけます」と書かれていて、候補者の論文にも、自社のテーマにも、自由度にも、評価にも触れていない。研究者は、この文面を「論文を読んでいない、テーマも書けない会社」と読み、返信しません。
見ていて差がつくのは、「研究所長が候補者の論文を確認して、一行目で研究の一点に触れているか」です。「〇〇に関するご発表を拝見しました。〇〇の手法を〇〇に適用された点が、当社の〇〇材料の応用研究のテーマと近いと感じました。当社では〇〇の要素技術を三年で製品に近づけるテーマがあり、方向は会社が決めますが、手法と進め方は研究者にお任せしています。成果は特許と製品への搭載で測り、論文と学会発表は守秘の範囲で認めています」と書けば、論文を読んだこと、テーマ、自由度、評価、発表の可否が一度に伝わります。エラベルでは、研究開発の担当者に、送る前に研究所長に候補者の論文を一分読んでもらい、「この点が近い」を一言もらう工程を、一通ずつ挟んでもらっています。
文面の型:一行目は候補者の研究、二行目は自社のテーマと自由度
型は、上から順に六つです。
一行目:候補者の研究の一点。 公開されている論文や発表の一つ、研究テーマの対象と手法、学位論文のテーマ、その中で自社のテーマと近い点、のどれか。「〇〇に関するご発表を拝見しました。〇〇の手法を〇〇に適用された点が、当社のテーマと近いと感じました」。研究所長が候補者の論文を確認して、「この点が近い」を一言書きます。「ご経歴を拝見し」だけでは、論文を読んでいない印になります。
二行目:自社の分野とテーマ(守秘の範囲で)と、テーマの自由度。 「当社は〇〇材料の応用研究で、〇〇の要素技術を三年で製品に近づけるテーマがあります。方向は会社が決めますが、手法と進め方は研究者にお任せしています」。テーマの詳細が守秘で書けなくても、対象と目的と段階は書きます。自由度は正直に。
三行目:成果の測り方と発表の可否、事業化までの距離。 「成果は特許と製品への搭載で測ります。論文と学会発表は、特許を出した後、守秘の範囲で認めていて、去年は〇本出ています。三年で製品化を目指しており、事業部門と月に一度は話す距離です」。「による」で済まさず、実態と例を書きます。
四行目:研究環境と学位の扱い。 「設備は〇〇があり、予算は研究者が提案して所長が決めます。〇〇大学と共同研究をしています。博士には専門の深さとテーマの提案を期待し、役割と給与を修士と分けています」。学位の扱いを書くことが、博士やポスドクには「博士を評価する会社」と読まれます。
五行目:研究所長がどういう人かと、会社の紹介。 「研究所長は〇〇の研究を長く続けてきた人で、その下で担当していただきます」。会社の紹介は三行で足ります。研究者は、会社の紹介より、テーマと自由度と評価を先に読みます。
六行目:次の行動。 「任期の区切りや学位の取得の時期に合わせて話せます。まずは三十分、研究所長が当社のテーマと困っている点をお話しし、研究室も見ていただければ」。応募ではなく、研究の話をすることと研究室の見学を提案し、任期や学位の区切りに配慮します。
型の要点は、一行目に研究所長の一言があることです。採用の担当者が論文を読んでも、「この点が近い」は書けません。研究所長が一分読んで一言もらう工程を、一通ずつ挟みます。一般的な文面の構造はスカウト文面の構造に、返信率の見方も含めて書いています。
刺さる訴求と、外す訴求
研究者に刺さる訴求と、外す訴求を分けます。
刺さる訴求は、「自分の論文や発表を読んで、具体的に触れていること」「自社のテーマが対象と目的で書かれていること」「テーマの自由度(方向は会社、手法は研究者、など)が正直に書かれていること」「成果の測り方と発表の可否が実態と例で書かれていること」「事業化までの距離が書かれていること」「研究環境(設備、予算の決め方、共同研究)が書かれていること」「学位の扱いが役割と給与で書かれていること」「研究所長がどういう研究をしてきた人か分かること」「任期や学位の区切りに合わせられること」です。どれも、研究者がいまの環境で持てていないものか、確かめたいものの裏返しです。
外す訴求は、「研究開発業務全般」「最先端の研究」「革新的」「世界初」「修士以上歓迎」「やりがい」「成長できる環境」「安定した会社」です。研究者は、これらを「具体的に書けない会社」「研究者を作業者として使う会社」と読みます。とくに「最先端」「革新的」は、テーマが書かれていないまま使うと、逆効果になります。
もう一つ外すのは、「自由に研究できる」と書くことです。実態がそうでないことが多く、研究者は「実態は逆」と読みます。自由度は「方向は会社が決め、手法は研究者が決める」のように、実態の形で書きます。
送った後の運用
返信が来てからの運用で、研究者の判断が変わります。研究者は、返信後のやり取りで「研究の話ができる会社か」を確かめます。
返信への返信は、その日です。研究概要(公開できる論文や発表の一覧、研究テーマの概要)の提出の案内も、その日に出します。
最初の面談は、研究所長が出ます。候補者の論文を事前に読み、研究の話をします。候補者が最初に確かめたいのは、研究の話が通じるか、テーマが自分の研究と近いか、自由度と評価がスカウトに書かれたとおりか、です。人事だけの面談では、候補者は判断できません。研究所長が「この論文のこの点が面白い。当社のテーマではここが難しい」と話し、候補者が「自分ならこう進める」と返す。この往復が、双方の判断材料になります。
面談では、スカウトに書いた「テーマ・自由度・評価と発表・事業化までの距離・環境・学位の扱い」をそのまま話します。スカウトで正直に書き、面談で同じことを話す。ここで言うことが変わると、候補者は離れます。研究室を見せ、社内の研究者と一言話せる場を作ります。
任期の区切りや学位の取得の時期を確かめ、それに合わせた日程を組みます。ポスドクや博士課程の修了者は、区切りの時期が決まっていて、その半年前から動きます。その間、月に一度は連絡し、接点を切らしません。内定後は、現職の引き止めや学位審査の時期があるので、入社日まで連絡を続けます。
代行に出せる範囲
スカウトの工程を、社内で持つものと外に出せるものに分けます。
| 工程 | 社内で持つ | 外に出せる |
|---|---|---|
| 分野・テーマ・中身・自由度・評価と発表・環境・学位の扱いの確定 | 研究所長と経営者が決める | 聞き取って言葉にする。守秘の範囲でテーマを具体的に |
| 対象の絞り込み | 分野とテーマの方針。研究所長が候補者の論文を確認して一言 | 分野とテーマで分けた検索、候補の論文の一覧化、研究所長に渡す段取り |
| 文面 | テーマ・自由度・評価・環境・学位の扱いの中身。一行目の一言 | 研究所長の一言を一行目に置いた個別化、型に沿った文面作成 |
| 送信と一次対応 | ― | 送信、返信への当日対応、研究概要の受け取り、日程調整 |
| 最初の面談と研究室の見学 | 研究所長が論文を読んで出て、研究室を見せる | 学会や実験の合間の予定の確保、見学の段取り、事前の論文と経歴の整理、面談後の連絡 |
| 内定後 | 条件の提示 | 任期や学位の区切りに合わせた入社日の調整、入社日までの連絡 |
| 数の管理 | 判断 | 返信率の集計、文面の改善案 |
分け方の要点は、「テーマ・自由度・評価・環境・学位の扱いは研究所長が出し、候補者の論文の確認と一言も研究所長が担い、それ以外の段取りと運用は外に出せる」ことです。研究の分かる人は社内にいるので、外に出すのは「候補の論文を一覧にして研究所長に渡し、一言をもらって文面にし、当日返信し、研究概要を段取りし、研究所長の予定を押さえる人」の役です。担当者に研究開発や技術部門の経験があると、論文の一覧の作り方と研究所長との話し方が変わります。担当者の経歴の見方は担当者の経歴の見方に書いています。
エラベルの見解
担当する側から見ると、研究者へのスカウトで最も効くのは、「研究所長が候補者の論文を一分読んで、一行目に一言入れる」ことです。採用の担当者が論文を読んでも、「この手法をこの対象に適用した点が近い」は書けません。研究所長の一言があるかどうかで、研究者は「研究を分かっている会社か」を一行目で判断します。定型文で数を送るより、研究所長の一言を入れて少なく送るほうが、研究者には届きます。
エラベルでは、研究開発の案件で担当者を紹介するとき、最初に研究所長から「テーマ」「自由度」「評価と発表」「事業化までの距離」「環境と学位の扱い」を聞き取り、それを文面の二行目から四行目に置くところから始めてもらっています。候補の論文を一覧にして研究所長に渡し、一言をもらって一行目にする工程は、担当者が一通ずつ段取りします。
まとめ
- 研究者がスカウトを読まない理由は論文を読んでいない文面を見抜く・テーマが分からないと判断できない・研究者として扱われるかを確かめる・「最先端」「革新的」を信じないの四つ
- 先に分野とテーマと中身で対象を絞る。数ではなく、一通ずつ論文を読んで送る
- 文面の型は一行目で研究所長が論文を確認して研究の一点に触れる→自社のテーマ(守秘の範囲で)と自由度→評価と発表と事業化までの距離→環境と学位の扱い→研究所長がどういう人かと会社の紹介→任期や学位の区切りに合わせた次の行動と研究室の見学
- 刺さる訴求は論文への具体的な言及・テーマの対象と目的・自由度の実態・評価と発表の実態と例・事業化までの距離・環境・学位の扱い・研究所長がどういう人か・区切りに合わせる。外す訴求は業務全般・最先端・革新的・世界初・修士以上歓迎・「自由に研究できる」
- 返信後はその日の返信と研究概要の案内・研究所長が論文を読んで最初の面談に出て研究の話をし研究室を見せる・スカウトと同じことを話す・区切りに合わせた日程・内定後は入社日まで連絡
- テーマ・自由度・評価・環境・学位の扱いと、論文の確認と一言は研究所長が担い、一覧の作成と文面と送信と当日の対応と見学の段取りと予定の確保は外に出せる
よくある質問
研究所長が「一通ずつ論文を読む時間が無い」と言います
研究所長の時間を最小にする形にします。担当者が候補の論文を一覧にし、要旨と自社のテーマとの関係を一行添えて渡す。研究所長は要旨を一分見て、「この点が近い」「これは違う」を一言返す。一通あたり数分で済み、週に一度まとめて見る形にもできます。研究所長の一言が無い文面は、研究者に読まれないので、この数分は省けません。省くなら、送る数を減らして、一言を入れる数だけ送ります。
テーマが守秘で書けません。何を書けばよいですか
テーマの詳細は書かなくても、「〇〇材料の〇〇特性を〇〇に応用する」「〇〇の合成をスケールアップして製品化する」のように、対象と目的と段階は書けることが多い。研究者が知りたいのは、テーマの詳細ではなく「どの分野の、何を目的にした、どの段階の研究か」です。それが分かれば、自分の研究が活きるかを判断できます。詳細は「面談で研究所長からお話しします」と書けば、研究者は「テーマがある会社」と読みます。書ける範囲は、守秘の扱いを確かめてからです。
博士に送るとき、学位の扱いをどう書けばよいですか
博士に何を期待し、役割と給与を修士とどう分けているかを書きます。「博士には専門の深さとテーマの提案、大学との共同研究の窓口を期待し、役割と給与を修士と分けています」。博士やポスドクは、「博士を採っても修士と同じ扱い」の会社を警戒しています。期待と役割と給与が書かれていれば、判断できます。分けていないなら、分けていないと正直に書き、「博士の経験をどう評価するか」を添えます。曖昧にすると、返信が来ません。