採用代行 / 研究開発

研究開発の採用要件の作り方|必須と歓迎を分ける基準

公開 2026-09-17

研究開発の採用要件を作ると、「博士号」「〇〇分野の研究経験五年以上」「論文と特許の実績」「基礎研究と製品開発の両方の経験」「〇〇装置や〇〇解析手法の経験」「英語での論文執筆と学会発表」「事業化の経験」「コミュニケーション能力」と膨らみます。任せるテーマと中身(基礎・応用・開発・改良)と自由度を決めずに、研究所長や経営者が「理想の研究者」と「自社にある装置や手法と同じ経験」を要件にしてしまうことが原因です。膨らんだ要件は、該当する人が市場にほとんどいないか、該当しても他社や大学に決まるか、博士や特定の装置を必須にして、テーマに近い研究を修士で続けてきた人や別の装置で同じ対象を研究してきた人を外してしまうかのどれかになります。結論を先に書くと、研究開発の要件は「任せるテーマと中身」から決め、必須を「テーマに近い対象や手法の研究経験」「任せる中身の段階を担った経験」「自分で研究を進めて成果を出した経験」の三つに絞り、それ以外の学位・論文や特許の数・他の中身・特定の装置や手法・英語・事業化の経験・年数は歓迎に回すと、該当する人が現れ、面接で確かめるべきことも決まります。テーマと中身と自由度の整理は研究開発採用を代行に出す判断基準に、母集団形成は研究開発の母集団形成にまとめています。

研究開発で要件が膨らむ理由

研究開発の要件が膨らむ理由は、三つあります。

一つ目は、任せるテーマと中身を決めずに要件を作ることです。「研究者が足りない」で募集を始めると、何のテーマか、基礎か応用か開発か、自由度はどこまでかが決まっておらず、「基礎も開発も分かり、テーマを自分で立てて、事業化まで一人でできる人」が要件になります。実際には、任せるテーマと中身が決まれば、要件はそこに近い経験で足ります。

二つ目は、博士を「あったほうが安心」で必須にすることです。博士は、テーマを立てて研究を完結させた経験の証明として意味がありますが、任せる中身が製品開発や改良なら、修士で開発を続けてきた人のほうが合うことがあります。博士を必須にすると、母集団が大きく減り、博士を採っても期待と役割がずれれば離れます。

三つ目は、自社にある装置や手法、自社の実績の形(論文数、特許数)と同じものを必須にすることです。「〇〇装置を使っているから〇〇装置の経験」「特許を重視しているから特許の実績」と並べると、該当者が減ります。装置と手法は、同じ対象を研究していれば入ってから覚えられ、論文や特許の数は、テーマとの近さより効きません。

三つを合わせると、「テーマと中身を決めずに、理想の経験と博士と自社の装置と実績の形を並べ、英語と形容詞を足す」のが、膨らむ構造です。

必須と歓迎を分ける基準

基準は、「その要件が無いと、任せるテーマと中身を回せないか」です。回せないなら必須、あれば早いなら歓迎です。

要件必須か歓迎か理由
任せるテーマに近い対象や手法の研究経験必須対象も手法も遠いと、すぐには回せない。「〇〇分野の経験」ではなく対象と手法で書く
任せる中身(基礎・応用・開発・改良)の段階を担った経験必須要素技術を製品に近づけるなら応用の経験。製品開発なら開発の経験。段階で書く
自分で研究を進めて成果を出した経験必須指示された実験をこなすだけでなく、問いを立て、進め方を決め、成果(論文、特許、製品、性能)まで持っていった経験。学位や年数より効く
博士号歓迎(テーマの提案と専門の深さと共同研究の窓口を期待する場合は必須)任せる中身が開発や改良なら、修士で開発を続けてきた人が合うことがある
論文や特許の数歓迎数より、テーマとの近さと、自分で成果を出した経験のほうが効く
他の中身の経験(応用が主なら基礎、開発が主なら応用)歓迎あればテーマの幅が広がる。無くても任せる中身は回る
特定の装置や解析手法の経験歓迎同じ対象を研究していれば、装置と手法は入ってから覚えられる
英語での論文執筆と学会発表歓迎(海外との共同研究や海外の学会発表が任せる中身の中心なら必須)論文を英語で書いた経験は、多くの研究者が持っている。必須にする意味は薄い
事業化の経験歓迎(製品化が直近の目標で、事業部門との橋渡しを期待する場合は必須)応用研究なら、事業化は入ってから経験できる
経験年数歓迎年数より、テーマとの近さと、自分で成果を出した経験のほうが効く
「コミュニケーション能力」「主体性」「探究心」要件から外す経歴で確かめられず、面接で研究所長が確かめる項目。要件に書いても絞れない

表の要点は、「博士必須」「〇〇分野の経験〇年」を、任せるテーマと中身を決めずに書かないことです。年数や学位ではなく、「どの対象と手法を、どの段階で、自分で成果を出したか」で書きます。装置と手法と実績の形は歓迎に置きます。

もう一つの要点は、「自分で研究を進めて成果を出した経験」を必須に入れることです。研究開発の要件で最も効き、学位や年数の代わりになる要件です。博士はこの証明の一つですが、修士で開発を続けてきた人にも、この経験はあります。経歴では「〇〇の研究に従事」としか書かれていないことが多く、面接で「問いを自分で立てたか、進め方を自分で決めたか、成果まで持っていったか」を確かめます。

エラベルの見解

相談で多いのは、「研究開発の要件を『博士号、〇〇分野の研究経験五年以上、論文と特許の実績、〇〇装置の経験、英語での発表、事業化の経験』にしたが、応募がまったく来ない」というご相談です。任せるテーマと中身を聞くと、〇〇材料の要素技術を三年で製品に近づける応用研究で、テーマの方向は決まっていて、装置は入ってから覚えられ、海外との接点は少なく、事業化は所長が事業部門と橋渡ししているとのことでした。それなら要件は「〇〇材料の近い対象の研究経験」「応用の段階を担った経験」「自分で成果を出した経験」で足り、博士も装置も英語も事業化も、該当者を減らしているだけでした。

見ていて差がつくのは、「任せるテーマと中身を決めてから要件にしているか」です。「〇〇材料の要素技術を三年で製品に近づける応用研究を任せる」→必須は「〇〇材料か近い対象の研究経験」「応用や製品化に関わった経験」「自分で研究を進めて成果を出した経験」、博士と装置と英語と事業化は歓迎か不要。ここまで決めれば、要件は三つで済み、該当する人が現れます。エラベルでは、研究開発の担当者に、要件を書く前に「採る人に任せるテーマと中身と自由度」を研究所長に決めてもらっています。

必須を三つに絞る手順

手順は四つです。

一つ目:採る人に任せるテーマと中身と自由度を決める。 どの分野の、何の対象と目的のテーマか。基礎か応用か開発か改良か。テーマを研究者が決められるか、方向は会社が決めて手法は研究者か。決まっていなければ、直近で担当してもらうテーマを一つか二つ挙げ、対象と手法と段階を出します。

二つ目:そのテーマと中身を回すために、無いと困る経験を書き出す。 「近い対象を研究した」「近い手法を使った」「応用や製品化に関わった」「自分で問いを立てて成果まで持っていった」など。書き出したら、「これが無いと本当に回らないか」を一つずつ問います。

三つ目:学位の要否を、博士に何を期待するかで決める。 テーマの提案と専門の深さと共同研究の窓口を期待するなら博士を必須に。決まった方向で応用や開発を進めるなら、修士でも可に。研究所長と経営者が決め、学位による役割と給与の違いも決めます。

四つ目:残りを歓迎に回し、形容詞を外す。 論文や特許の数、他の中身、特定の装置や手法、英語、事業化の経験、年数は歓迎に。「コミュニケーション能力」「主体性」「探究心」は要件から外し、面接で研究所長が確かめる項目に移します。

手順の要点は、二つ目で「本当に回らないか」を問うことです。「〇〇装置の経験」は、同じ対象を研究していれば「回らない」ではありません。「英語での発表」は、海外との接点が少ないなら「回らない」ではありません。「博士」は、決まった方向で応用を進めるなら「回らない」ではないことが多い。問うたびに必須が減り、三つに近づきます。

論文と経歴で確かめられる要件と、面接で研究所長が確かめる要件

要件を、論文と経歴(論文と発表の一覧、研究概要、職務経歴書)で確かめられるものと、面接で研究所長が確かめるものに分けます。

論文と経歴で確かめられるのは、「研究した対象と手法」「担った段階(基礎・応用・開発・改良)」「論文と特許と発表の内容と数」「学位と学位論文のテーマ」「使った装置と手法」「共同研究や事業化の経験」「何年か」です。書類の段階で、必須のうち「テーマとの近さ」「段階」はここで確かめます。研究所長が論文の要旨を読めば、対象と手法の近さは分かります。ただし、「自分で研究を進めて成果を出した経験」は、論文の著者の並びや研究概要だけでは分からず、面接で確かめます。

面接で研究所長が確かめるのは、「問いを自分で立てたか(この研究で、何を明らかにしたいと自分で決めたか、指導教員や上司が決めたか)」「進め方を自分で決めたか(うまくいかなかったとき、どう方針を変えたか)」「成果まで持っていったか(論文や特許や製品のどこまでを自分が担ったか)」「研究の考え方(この結果をどう解釈したか、次に何をするか)」「自社のテーマへの関心と、事業化までの距離への理解」です。要件の「コミュニケーション能力」「主体性」「探究心」は、この五つに翻訳して、研究所長が確かめます。

確かめる方法は、候補者の論文や研究概要を前に、具体的に聞くことです。「この研究の問いは、誰がどう決めましたか」「うまくいかなかった時期はありますか。どう方針を変えましたか」「この論文で、あなたが担った部分はどこですか」「当社のテーマなら、最初に何をしますか」。答えの中身より、研究の話が通じるか、その判断を自分でしたか、を見ます。研究所長が面接に出られない場合は、経験の長い研究者が出ます。研究所長の時間の確保は現場が採用に協力してくれないに、面接の設計は面接の構造に書いています。

経路ごとの要件の書き方

研究開発の候補者は、経路によって持っているものが違います。要件の書き方も、経路を意識して変えます。

経路論文と経歴で確かめる面接で研究所長が確かめる要件に書くときの注意
大学のポスドク・博士課程修了者学位論文と直近の論文の対象と手法問いを自分で立てたか。事業化までの距離と、成果を製品で測られることを受け入れられるか。決まった方向で進められるか必須の「自分で成果を出した経験」は満たしやすい。応用や開発の段階の経験は面接で確かめる。「事業化の経験」を必須にすると外れる
研究機関の任期付き研究者研究機関でのテーマと成果テーマの連続性への期待と、自社のテーマとのずれ。任期の無い環境での動き方必須の三つが該当しやすい。テーマとの近さを重く見る
大手メーカーの研究所公開されている論文や特許、担当した研究の対象分業で一部だけを担っていた場合、テーマから成果まで一通り担当できるか。決める速さ「大手の経験」が該当するが、自分で成果を出したかを確かめる。守秘と競業の扱いを確認
同分野のメーカーの開発部門担当した製品と開発の対象研究の考え方(問いを立てる、解釈する)を持てるか、学べるか開発や改良を任せるなら合う。応用研究なら研究の考え方を面接で確かめる。「論文の実績」を必須にすると外れる
修士で開発をしてきた人担当した製品や技術、修士論文のテーマ自分で研究を進めた経験があるか。テーマを持てるか「博士」を必須にすると外れる。「自分で成果を出した経験」を面接で確かめれば、博士の代わりになる

表の要点は、「博士」と「論文の実績」を高く見すぎないことです。博士でも指導教員の決めた問いで実験をこなしただけの人はいて、修士の開発者でも自分で問いを立てて製品にした人はいます。「自分で研究を進めて成果を出した経験」を面接で確かめれば、学位と実績の数の代わりになります。

要件が決まらないときの原因

要件を作ろうとして決まらないとき、原因は要件ではなく、その前にあります。

一つ目は、任せるテーマと中身が決まっていないことです。「研究者が足りない」で止まっていると、要件は「基礎も開発も、テーマを立てて、事業化まで」になり、決まりません。直近で担当してもらうテーマを決めるか、候補のテーマの対象と手法と段階を出します。

二つ目は、博士に何を期待するかが決まっていないことです。テーマの提案と専門の深さを期待するのか、決まった方向で進めてもらうのか。決めずに「博士歓迎」と書くと、博士は「博士を採っても修士と同じ扱い」と読み、修士は「博士が優先される」と読んで、どちらも見送ります。期待と役割と給与を決め、必須か歓迎かを決めます。

三つ目は、自社の装置と手法と実績の形を、要件と混同していることです。装置と手法は環境として書き、実績の形(論文数、特許数)は成果の測り方として書きます。要件には、テーマとの近さと段階と自分で成果を出した経験を書きます。

四つ目は、研究所長が要件に関わっていないことです。人事や経営者だけで作ると、「理想の研究者」になります。研究所長に「このテーマを任せるのに、最低限何が要るか」を聞くと、「近い対象を研究していて、自分で成果を出したことがあれば、あとは一緒にやれる」のように、要件が下がることが多い。

四つのどれかが決まっていないなら、要件より先にそれを決めます。

代行に出せる工程

要件作りの工程を、社内で持つものと外に出せるものに分けます。

工程社内で持つ外に出せる
任せるテーマと中身と自由度の決定研究所長と経営者が決める候補のテーマの対象と手法と段階を整理する
学位の要否と扱いの決定博士に何を期待するかから決める考え方を示す。他社の分け方を示す
必須と歓迎の振り分け最終判断(研究所長の意見を入れる)基準に沿った振り分け案。「理想の研究者」になっている要件を指摘
論文と経歴で確かめる項目の設計研究所長が論文の要旨を読む論文と発表の一覧の作り方、研究概要の受け取りの段取り、スカウトの検索条件(対象と手法)への変換
面接で確かめる項目の設計研究所長が確かめたいこと形容詞を論文を前にした具体的な質問に翻訳。研究所長の時間を最小にする段取り
求人票・スカウト文面への反映確認要件を文面に落とす。経路ごとに書き方を変える

分け方の要点は、「テーマと中身と自由度、学位の要否、研究所長の意見と論文の確認は社内で担い、翻訳と振り分けと段取りは外に出せる」ことです。研究の分かる人は社内にいるので、外に出すのは「研究所長の意見を聞き取って要件に落とし、論文の一覧を作って研究所長に渡し、面接の段取りをする」役です。担当者に研究開発や技術部門の経験があると、論文の一覧の作り方と研究所長との話し方が変わります。担当者の経歴の見方は担当者の経歴の見方に書いています。

エラベルの見解

担当する側から見ると、研究開発の要件で最も効くのは、「博士必須」を博士に何を期待するかで見直すことと、「自分で研究を進めて成果を出した経験」を必須に入れることです。前者で母集団が変わり、後者で学位と実績の数の代わりに「研究者として自立しているか」を面接で見分けられます。研究開発の要件で最も効き、最も抜けやすいのが後者です。

エラベルでは、研究開発の案件で担当者を紹介するとき、最初の一週間で「採る人に任せるテーマと中身と自由度」と「博士に何を期待するか」を研究所長と経営者に決めてもらい、「最低限何が要るか」を聞き取り、そこから必須三つを作るところまでをお願いしています。論文の一覧を作って研究所長に要旨を読んでもらう工程は、担当者が段取りします。

まとめ

よくある質問

博士を必須にしないと、研究のレベルが担保されませんか

研究のレベルは、学位ではなく「自分で問いを立て、進め方を決め、成果まで持っていった経験」で担保します。博士はその証明の一つですが、指導教員の決めた問いで実験をこなしただけの博士もいれば、自分で問いを立てて製品にした修士の開発者もいます。任せる中身が「テーマの提案と専門の深さと共同研究の窓口」なら博士を必須に、「決まった方向で応用や開発を進める」なら修士でも可にします。博士を採るなら、期待と役割と給与を修士と分け、求人票に書きます。

自社の装置を使った経験を必須にしたいのですが

同じ対象を研究していれば、装置と手法は入ってから覚えられます。装置を必須にすると、別の装置で同じ対象を研究してきた人が外れ、少ない母集団がさらに減ります。「〇〇装置の経験があれば歓迎、無くても同じ対象の研究経験があれば、装置は入ってから」と書き、装置は研究環境として求人票に載せます。研究者は、装置の経験より「その装置がある」ことを環境として評価します。

「〇〇分野の研究経験五年以上」は書かないほうがよいのですか

年数だけの要件は、指示された実験を五年こなした人と、三年で自分の問いを立てて論文と製品にした人を、逆に評価します。書くなら「〇〇材料か近い対象の研究で、自分で問いを立てて成果を出した経験(目安として三年程度)」のように、対象と自立の経験に年数を添える形にします。年数の目安が無いと不安な場合も、「〇年」より「自分で問いを立てて成果まで持っていった研究の数」のほうが、面接で確かめやすく、該当する人に届きます。