採用代行 / 費用・契約・法務
同じ条件で見積もりに差が出る理由
同じ業務範囲を同じ条件で伝えたのに、返ってきた見積もりの金額が大きく違う。相見積もりを取ると、たいていこうなります。この差は、値付けの気まぐれではなく、原価と設計の違いから生まれています。どこから差が出ているのかが分かれば、安いほうを選ぶべきか、高いほうに理由があるのかを判断できます。この記事では、差の発生源を分解します。
差が生まれる六つの場所
一.担当者の体制。専任か兼任か、同時に何社を持つか。一人が多くの会社を持てば、一社あたりの原価は下がります。金額の差として最も大きく出る要素です。
二.担当者の経験。経験の長い担当者と、入社して間もない担当者では人件費が違います。同じ会社の同じサービスでも、付く人によって原価は変わります。
三.稼働の定義。定例会、報告書の作成、質問への回答を稼働に数えるかどうか。数えない設計にすれば、見かけの単価は下がります。
四.管理層の厚み。進行を管理する人、品質を確認する人がいるかどうか。層が厚いほど原価は上がりますが、担当者が替わったときの安定性は増します。
五.立ち上げ費用の配賦。初期費用として別建てにするか、月額に薄く乗せるか。別建てなら月額は下がって見えます。
六.利益率と営業コスト。会社の規模と販売の方法によって変わります。
このうち一番と三番が、同じ範囲でも金額が倍ほど違う理由になります。
範囲が同じでも中身は違う
差の発生源を見る前に、そもそも範囲が本当に同じかを確認します。同じ言葉を使っていても、指している中身が違うことがあります。
| 伝えた業務 | 解釈の幅 |
|---|---|
| スカウト運用 | 検索条件の設計を含むか。返信対応は入るか |
| 応募者対応 | 事務連絡だけか、書類の一次仕分けまでか |
| 日程調整 | 候補者側だけか、面接官の予定確保まで含むか |
| レポート | 集計だけか、次の打ち手の提案まで含むか |
依頼文で工程まで分解して伝えていないと、この解釈の幅がそのまま金額の差になります。伝え方の設計は見積もりの読み方にまとめています。
範囲がそろっていることを確認したうえで、次の分解に進みます。
差を分解する手順
見積もりを並べたら、次を各社に聞いて表にします。
- 担当者は専任か兼任か
- 同時に何社を担当するか
- 週あたり何時間、自社に入る想定か
- 稼働に数える範囲(定例会、報告書作成、質問への回答)
- 管理する人が別にいるか
- 初期費用は別建てか、月額に含まれるか
- 実費(媒体費など)は含まれるか
この七項目が埋まると、金額の差の理由がほぼ説明できます。説明できない差が残るなら、そこは利益率か営業コストの違いです。
そして、月額を想定稼働時間で割って実質の時間単価を出します。ここまでやると、体系の違う見積もりも同じ土俵に乗ります。
エラベルの見解
見積もりの差を分解していくと、最後に残るのは「誰が何時間入るか」の一点であることが多い。ここまで還元すると、比較は驚くほど単純になります。
たとえば、月額が大きく違う二つの提案があったとします。安いほうは兼任の担当が複数社を持ちながら週に数時間。高いほうは専任に近い担当が週に十時間以上。実質の時間単価で見ると、高いほうが下だったということが起こります。
逆のこともあります。高い提案が、管理層を厚く持っているぶんだけ高いだけで、実務に入る時間は同じ。この場合、管理層に価値を感じるかどうかが判断になります。担当者が替わったときの安定性を買うなら意味がありますし、要らないなら過剰です。
どちらの場合も、分解しないと判断できません。金額を並べただけでは、どちらが割高かは分からない。
そして、この分解を求めたときの反応も情報になります。すぐ答えられる会社は、社内で稼働を管理しています。答えが曖昧な会社は、見積もりの根拠が薄いか、体制が固まっていない可能性があります。
差が説明できない場合
七項目を聞いても差が説明できないことがあります。その場合に考えられることです。
取りに行っている案件。新しい業界や職種の実績を作りたいとき、原価を割って提案することがあります。悪いことではありませんが、その価格が継続するかは確認しておきます。更新時に大きく上がることがあります。
別の収益を見込んでいる。紹介免許も持っている会社が、代行から紹介につなげることを想定している場合など。建て付けを確認します。使い分けは有料職業紹介との違いにまとめています。
範囲外の追加を見込んでいる。基本の範囲を狭く見積もり、実際には追加が発生する設計。範囲外のルールを確認しておきます。
実績のない業務を含んでいる。その職種や媒体の経験がなく、工数を読み違えている。この場合、始まってから範囲の相談が発生します。
判断の順番
分解した後、次の順で判断します。
- 範囲が本当にそろっているかを確認する
- 実質の時間単価を出して並べる
- 単価の差が、担当者の経験と体制で説明できるかを見る
- 説明できるなら、その差に見合う価値があるかを判断する
- 説明できないなら、その理由を聞く
- 初期費用と実費を足して、総額で比べる
四番目が判断の核です。経験のある専任の担当者に高く払うか、経験は浅いが安い体制で自社が補うか。どちらも成立します。自社に補える体制があるかどうかで決まります。
社内に採用の設計ができる人がいるなら、安い体制でも回ります。いないなら、経験のある担当者に払うほうが結果的に安く付くことがあります。
エラベルの見解
見積もりの差を分解する作業は、自社が何を買おうとしているのかを決める作業でもあります。
分解の前は、「採用代行にいくら払うか」という問いです。分解の後は、「経験のある担当者の週何時間分を買うか」という問いに変わります。後者のほうが、判断はずっとしやすい。
そして、この問いの形になると、社内の説明もしやすくなります。月額の金額だけを稟議に出すと、高いか安いかの議論になります。誰が週何時間入り、社内の何時間を空けるのか、という形で出せば、判断の材料が揃います。
さらに言えば、この分解は契約後にも効きます。稼働報告を見るときに、契約時に想定した時間と実際が合っているかを確認できるからです。想定を持たずに契約すると、報告を見ても妥当かどうかが分かりません。
見積もりの比較は、選ぶための作業に見えますが、実際には運用を始めるための準備でもあります。分解した表は、そのまま契約後の物差しになります。
まとめ
- 差は担当者の体制・経験・稼働の定義・管理層・立ち上げ費用の配賦・利益率から生まれる
- 最も大きいのは担当者の体制と稼働の定義
- 分解の前に、範囲が本当にそろっているかを確認する
- 七項目を聞いて表にし、実質の時間単価を出す
- 説明できない差は、取りに行っている案件・別の収益・追加の見込み・実績不足の可能性
- 判断の核は「その差に見合う価値があるか」。自社に補える体制があるかで決まる
- 分解は、自社が何を買うのかを決める作業でもある
- 分解した表は、契約後の物差しになる
よくある質問
一番安い見積もりを選んで問題ありませんか
範囲・稼働量・担当体制がそろっていて、そのうえで安いなら合理的な選択です。問題は、そろっているように見えて実は違うときです。稼働の定義と担当者の掛け持ち社数を確認してください。差の理由が説明できるなら、安いことは判断材料になります。
見積もりの根拠を聞くのは失礼ですか
失礼にはあたりません。むしろ、根拠を聞かれることを想定している会社が多くあります。答え方に体制が表れるので、判断材料としても有効です。聞き方は「値引きしてほしい」ではなく「比較するために条件をそろえたい」という形にすると、話が進みます。
相場と比べて高いか安いかを知りたいのですが
相場の数字は、範囲も稼働量も書かれていないため物差しになりません。比べる相手は、自社の内製コストです。採用に使っている社内の時間を金額に換算し、実質の時間単価と並べてください。この比較のほうが判断に使えます。手順は採用代行の費用相場にまとめています。