採用代行 / 費用・契約・法務
採用代行と有料職業紹介の違い
採用代行と有料職業紹介は、どちらも採用を助ける外部サービスですが、買っているものが違います。代行は業務の遂行を、紹介は候補者との出会いを提供します。この違いは費用の出方だけでなく、どちらが誰のために動くのかという点にも及びます。ここを整理しないまま「どちらが安いか」を比べると、判断を誤ります。この記事では、使い分けと併用の設計を実務の視点でまとめます。
何を買っているかが違う
| 採用代行 | 有料職業紹介 | |
|---|---|---|
| 提供されるもの | 採用業務の遂行 | 候補者の紹介と成約までの調整 |
| 報酬が発生するとき | 業務に対して(月額・時間単価・成果) | 採用が決まったとき |
| 誰の側で動くか | 発注した企業の側 | 企業と求職者の双方に接する |
| 候補者との関係 | 企業の窓口として接する | 求職者を支援する立場でも接する |
| 蓄積されるもの | 自社の採用運用そのもの | その回の採用の結果 |
| 許可の要否 | 業務の内容による | 事業を行うには許可が要る |
紹介は「人」を、代行は「業務」を買っています。だから、同じ「採用一名にいくらかかったか」で見ても、費用の出方がまったく違います。紹介は決まったときに大きな額が一度に出る。代行は月々の費用が積み上がる。採用人数が多いほど代行が有利になりやすく、単発なら紹介のほうが総額で収まることがあります。
なお、採用代行に何を頼むかによって職業安定法上の扱いが変わる場面があります。線引きは採用代行と職業安定法にまとめています。
誰の側で動くかという違い
費用の話より実務に効いてくるのが、この点です。
紹介会社は、企業に候補者を紹介すると同時に、求職者の転職を支援する立場にも立ちます。求職者に複数社を提案し、より条件の良い先を勧めることもある。これは構造上そうなるもので、良し悪しの話ではありません。ただし、自社の求人が候補者にどう説明されているかを、企業側は直接は見られません。
採用代行は、発注した企業の側で動きます。候補者と接するときも、企業の窓口として接する。だから自社の言葉で語ってもらえますし、返信の内容もこちらで決められます。そのかわり、候補者を連れてくる力そのものは、代行会社が持っているわけではありません。媒体やスカウト、紹介会社への依頼といった手段を、代行が運用する形になります。
この違いは、採用の難易度が上がるほど大きくなります。母集団が薄い職種では、候補者に自社をどう説明するかが結果を分けます。そこを自社の管理下に置けるのが代行の利点です。
エラベルの見解
どちらを使うかの判断は、採用の悩みが「会えない」なのか「回らない」なのかで分けると迷いません。
会えない、つまり候補者そのものが集まらない状態なら、まず候補者を連れてくる手段が要ります。紹介会社を使うのが早いこともあれば、媒体を入れて運用するほうが合うこともあります。ここで代行だけを入れても、運用する対象がなければ動きようがありません。
回らない、つまり応募や紹介は来ているのに対応が追いつかない状態なら、代行が効きます。日程調整が滞る、書類の確認が遅れて辞退される、スカウトを送る時間が取れない。この症状は業務量の問題なので、外に出すと直ります。
紹介会社を何社も増やしても「回らない」は解決しません。むしろ推薦が増えて対応がさらに滞ります。逆に、代行を入れても「会えない」は解決しないことがあります。症状を先に見分けてから、どちらの手段を足すかを決めてください。
併用するときの設計
実際には、どちらか一方ではなく併用している会社が多くあります。併用するなら、役割を分けます。
- 紹介会社は候補者の供給元として使う。複数社に依頼し、推薦の状況を管理する
- 代行は運用の担い手として使う。紹介会社への求人依頼、推薦状況の管理、定例の実施、応募者対応、日程調整を任せる
- 候補者データは自社に集約する。どの経路から来た候補者かを一元管理する
この形にすると、代行が紹介会社の窓口になるため、社内の手間が減ります。紹介会社が増えるほど、代行を入れる効果は大きくなります。窓口業務は数に比例して増えるためです。
併用時に決めておくのは次の三点です。紹介会社への連絡を代行が行う場合の権限の範囲。同一候補者が複数経路から来たときの扱い。そして、紹介手数料と代行費用を合わせた一名あたりの総額を、どこで管理するか。
代行会社が紹介免許を持つ場合
採用代行を行う会社が、有料職業紹介の許可も持っていることがあります。この場合、同じ相手から両方のサービスを受けられるわけですが、確認しておく点があります。
どちらの立場で動いているのかが、場面ごとに分かる形になっているか。運用を代行しながら、自社の紹介候補者も推薦してくる。これ自体は問題ではありませんが、費用の建て付けと、候補者の経路が混ざらないようにしておきます。
費用の重複がないか。代行の月額の中で母集団形成を任せているのに、そこから来た候補者に紹介手数料が発生する、という設計になっていないか。契約時に、どの経路の候補者にどの費用が発生するかを整理します。
候補者の帰属。代行として運用した媒体から応募してきた候補者と、紹介として推薦された候補者を分けて管理できる状態にしておきます。ここが曖昧だと、後から手数料の議論になります。
エラベルの見解
紹介と代行を比べるとき、社内に何が残るかという観点はあまり議論されません。ここに実は差があります。
紹介で採用したとき、社内に残るのは採用された人です。それは大きな成果ですが、次の採用は同じところから始まります。求人の言葉も、候補者の反応も、選考の基準も、紹介会社の側に蓄積されます。
代行で採用したとき、進め方によっては運用そのものが社内に残ります。求人原稿、スカウト文面、検索条件、返信のテンプレート、書類の判断基準。これらを編集できる形式で自社に置いておけば、次の採用は途中から始められます。そのためには、契約時に成果物の帰属と引き渡しを決めておく必要があります。決めていないと、代行を使っても何も残りません。
どちらが良いという話ではなく、残すつもりがあるなら、残る形で契約するというだけのことです。継続的に採用する予定があるなら、この一手間の価値は大きくなります。
まとめ
- 紹介は「人」を、代行は「業務」を買う。費用の性質が違うので単純比較できない
- 紹介会社は求職者にも接する立場。代行は発注した企業の側で動く
- 悩みが「会えない」なら供給元、「回らない」なら代行。症状を先に見分ける
- 併用するなら、紹介会社は供給元、代行は運用の担い手として役割を分ける
- 紹介会社が増えるほど代行の効果は大きくなる。窓口業務は数に比例する
- 代行会社が紹介免許も持つ場合、費用の重複と候補者の帰属を整理する
- 代行は運用が社内に残り得る。ただし成果物の帰属を契約で決めた場合に限る
よくある質問
採用代行に候補者を紹介してもらうことはできますか
その会社が有料職業紹介の許可を持っているかどうかで扱いが変わります。許可を持たない代行会社に候補者の紹介を求めることはできません。頼めるのは、媒体やスカウトを使った母集団形成の運用や、紹介会社への依頼と管理といった業務です。判断に迷う場合は専門家にご確認ください。
紹介手数料と代行費用は、どちらが総額で安く済みますか
採用人数と期間で変わります。単発の採用なら紹介の一件分のほうが収まりやすく、継続的に複数名を採るなら代行の月額を人数で割ったほうが下がることがあります。判断するときは、採用予定人数と期間を先に置いて、一名あたりの総額に直して比べてください。
紹介会社との関係を代行会社に任せてもよいですか
任せている会社は多くあります。求人票の共有、推薦状況の管理、定例の実施までを代行が担う形です。その場合、条件提示や合否の決定は自社に残し、代行の権限の範囲を紹介会社にも伝えておきます。誰が何を決められるのかが分かっていないと、紹介会社側も動きにくくなります。