採用代行 / 費用・契約・法務
採用代行の初期費用・オンボーディング費用は必要か
採用代行の見積もりに初期費用やオンボーディング費用が載っていると、削れないかと考えたくなります。ただ、この費用は名目の問題ではありません。初期費用は、立ち上げ期にかかる工数を前払いにしたものです。だから見るべきは有無ではなく、その工数が実際に発生するのか、そして払った分の成果物が自社に残るのかという二点になります。判断の順番を整理します。
初期費用は何の対価か
採用代行は、契約した翌日から通常運転になるわけではありません。立ち上げ期には、運用が始まってからは発生しない作業がまとまって出ます。
- 採用要件のヒアリングと、要件定義書への落とし込み
- 既存の採用フローと社内体制の把握
- 求人原稿・スカウト文面の初稿作成
- 媒体の管理画面の設定、検索条件の作成
- 採用管理システムの設定、既存データの移行
- 選考フローと連絡テンプレートの整備
- 面接官・現場責任者への確認と、評価基準のすり合わせ
- 稼働報告の様式づくりと、定例会の設計
これらは月々の運用とは性質が違います。時間がまとまってかかり、しかも一度きりです。この工数を初期費用として分けるか、月額に薄く乗せるかが、会社ごとの設計の違いになります。どちらが良いという話ではありません。
初期費用が無料のとき、何が起きているか
初期費用がゼロと書かれている見積もりを見たら、立ち上げ工数がどこに行っているかを考えます。可能性は三つです。
月額に乗っている。最も多い形です。この場合、短期で解約すると発注側が得をし、長く続けると割高になります。総額で比べるときは、契約予定期間の月額合計に初期費用を足して並べます。
立ち上げ作業の範囲が狭い。要件のヒアリングを一度だけにする、文面はテンプレートを流用する、媒体設定は既存のまま使う。これは短期のスポット依頼なら合理的です。ただ、自社の要件が特殊な場合や、初めて使う媒体がある場合は、立ち上げの浅さが後の成果に効いてきます。
発注側が持っている。要件定義書も文面も自社で用意し、代行は実行だけを担う設計です。社内に採用の経験がある会社では、この形が一番安く付きます。
エラベルの見解
初期費用の議論で見落とされやすいのは、立ち上げ工数はどちらかが持つしかないという点です。代行会社が持たなければ、発注側が持ちます。無料になったのではなく、移っただけということが起こります。
具体的には、要件のヒアリングが浅いまま運用が始まると、社内で確認のやりとりが増えます。文面がテンプレートのままだと、返信が鈍い理由を探す時間が発生します。媒体の検索条件が既定のままだと、上がってくる候補者を仕分ける時間が増えます。これらは請求書に出ないので、費用が減ったように見えます。
だから初期費用の有無を比べるのではなく、立ち上げ期に何を誰がやるのかを工程で確認するほうが判断は早くなります。初期費用ありの提案とゼロの提案が並んだら、立ち上げの一か月に何をどこまで進めるかを両社に聞いてください。答えの差が、そのまま金額の差の説明になります。
払う価値があるかの見分け方
初期費用に価値があるかどうかは、成果物が自社に残るかで判断できます。残る形なら、代行会社を替えても使えます。残らない形なら、その会社を使い続けている間だけ有効な支出です。
| 残る成果物 | 残らないもの |
|---|---|
| 採用要件定義書(必須と歓迎、落とす理由) | 口頭でのヒアリングだけ |
| 求人原稿・スカウト文面(編集できる形式で) | 代行会社の管理画面にしかない文面 |
| 検索条件と、その設計意図のメモ | 担当者の頭の中にある条件 |
| 選考フローと連絡テンプレート | 属人的な運用 |
| 採用管理システムの設定と入力ルール | 代行側の独自ツールへの入力 |
契約前に「初期費用でお願いする作業の成果物を、どの形式で受け取れますか」と聞いてください。編集できる形式で渡せると答える会社なら、その初期費用は資産になります。渡せないと言われた場合、その費用は運用を続ける前提の費用だと理解して総額を計算します。
もう一つの見分け方は、その作業が自社でできるかです。要件定義書を自社で書けるなら、初期費用の一部は削れます。書けないなら、外部の人間に整理してもらう価値は高い。自社でできる部分とできない部分を分けて、できる部分は持ち帰る、という交渉のほうが金額交渉より噛み合います。
契約前に確認すること
- 初期費用の作業内訳(どの工程に何時間くらいを想定しているか)
- 成果物の一覧と、受け取る形式
- 成果物の権利の帰属(自社に帰属するか、代行会社に残るか)
- 初期費用の支払い時期(契約時の一括か、分割か)
- 中途解約したときの扱い(返金の有無、日割りの考え方)
- 初期費用の作業が期日までに終わらなかったときの扱い
- 職種や要件が途中で変わったとき、初期費用が再度発生するか
- 契約更新時に初期費用が再計上されないか
このうち、中途解約時の扱いと、要件変更時の再発生は聞かれないことが多い項目です。採用は途中で職種が変わることがあるので、変更時に何が起きるかは先に決めておくと後が楽になります。見積書の読み方全般は見積もりの読み方にまとめています。
もめやすい点
初期費用の作業がいつ終わったのか分からない。要件定義や文面作成には明確な終わりがないため、どこで完了とするかを決めておかないと、運用が始まっても初期作業が続いているように見えます。成果物の一覧を作り、受領をもって完了とする形が分かりやすくなります。
運用開始が遅れる。初期費用を払ったのに、社内の確認待ちで立ち上げが進まないことがあります。この場合、遅れの原因が発注側にあることも珍しくありません。立ち上げの工程表を作り、自社側の宿題にも期日を入れておきます。
要件変更に伴う再作成。職種が変われば、文面も検索条件も作り直しになります。その都度初期費用が発生するのか、月額の範囲で吸収するのかは、契約時に決められます。
解約時の成果物。権利の帰属を決めていないと、作った文面やデータを持ち出せないことがあります。初期費用を払っているなら、成果物の帰属を明記しておくのが自然な整理です。
エラベルの見解
同じ初期費用を払っても、立ち上げの質が分かれるところがあります。ヒアリングで何を聞かれたかです。
聞かれる内容が「採用したい職種、人数、想定年収、必須スキル」で終わるなら、それは求人票を書くための情報収集です。ここまでなら発注側が自分で書けます。差が出るのは、その先を聞かれたときです。前に採った人がどう活躍しているか、辞めた人はなぜ辞めたか、面接で意見が割れるのはどんな候補者か、現場の責任者は何を重視しているか。
こうした質問が出てくると、要件は自然と具体的になります。落とす理由が言葉になるのは、たいていこの会話の中です。逆にこの会話がないまま作られた要件定義書は、求人票の焼き直しにしかなりません。
だから初期費用の妥当性は、金額よりも最初のヒアリングで何を聞かれるかで判断できます。商談の段階でも片鱗は出ます。自社の採用の過去を聞いてくる相手なら、立ち上げに払う価値はあります。
まとめ
- 初期費用は立ち上げ工数の前払い。有無ではなく、その工数が誰にかかるかを見る
- 初期費用ゼロの提案は、月額に乗っている・範囲が狭い・発注側が持つのいずれか
- 価値の判断基準は成果物が自社に残るか。編集できる形式で受け取れるかを聞く
- 自社でできる作業は持ち帰る。金額交渉より範囲の交渉のほうが噛み合う
- 契約前に、中途解約時の扱いと要件変更時の再発生を確認する
- 立ち上げの質は、最初のヒアリングで何を聞かれるかに出る
よくある質問
初期費用は交渉して下げられますか
自社で用意できる部分を持ち帰る形なら、交渉の余地はあります。要件定義書がすでにある、求人原稿を自社で書ける、媒体の設定は済んでいる。こうした状況を伝えたうえで、範囲を絞った見積もりを出してもらう形が現実的です。金額だけを下げると立ち上げの作業も薄くなるため、範囲で交渉するほうが結果が読みやすくなります。
初期費用を払った後すぐに解約したらどうなりますか
契約内容によります。返金しない扱いが一般的ですが、作業の進捗に応じて精算する条項を置く会社もあります。締結前に確認し、書面に残しておくところです。あわせて、その時点までに作られた成果物を受け取れるかどうかも決めておくと、支払った分が無駄になりにくくなります。
二社目に依頼するときも初期費用はかかりますか
一社目で作った成果物が自社に残っていれば、二社目の初期費用は軽くできることがあります。要件定義書、文面、検索条件、選考フロー。これらを渡して「この前提で運用だけをお願いしたい」と伝えれば、立ち上げの工数は減ります。初期費用の成果物を編集できる形式で受け取っておく意味は、ここにも出ます。