採用代行 / 財務
財務採用を代行に出す判断基準|任せられる工程と残す工程
財務の採用を代行に出すとき、「経理と同じような職種」として頼むと、ずれます。経理が過去の取引を記録し、決算を締める役割であるのに対して、財務は将来の資金を扱う役割です。資金繰りの管理、銀行との対応、融資や増資による調達、予算と事業計画の数字、投資の判断、上場の準備。この中のどれを、いまの自社が求めているかで、経歴も市場も条件も大きく違います。結論を先に書くと、財務採用で代行に出せるのは「探す・届ける・一次対応する・進捗を回す」で、「自社の状況(資金繰り・調達・上場準備・予算管理のどれが中心か)と財務に任せる範囲の決定・経営との関係の設計・判断の質の評価・機微な情報の扱いの設計」は社内に残すのが線です。自社の状況と任せる範囲が決まっていない募集は、代行に出しても、「財務」の肩書で探すことになり、経理の人か、自社の状況と違う経験の人が来ます。経理との違いは経理採用を代行に出す判断基準に、採用代行そのものの整理は採用代行(RPO)とはにまとめています。
財務採用が他の職種と違う点
一つ目は、「財務」の名前で経理を募集している会社が多いことです。求人票に「財務経理」「経理財務」と書かれていて、実態は記帳と決算の経理であることが珍しくない。財務の経験者はこれを知っていて、「財務」の募集を見ても実態を疑います。自社が本当に財務を求めているのか、経理を求めているのかを、先に分けます。
二つ目は、会社の状況で求める人が全く違うことです。資金繰りが厳しく銀行との対応が中心の会社、成長のために調達が中心の会社、上場の準備が中心の会社、安定していて予算と投資の判断が中心の会社。それぞれ経歴も市場も違い、一人で全部を経験した人は限られます。
三つ目は、経営者との距離が最も近い職種だということです。財務は、経営者の判断(借りるか、増資か、投資するか)に直接関わり、経営者と数字の話ができないと機能しません。経営者が財務の判断を手放せるか、財務の意見を聞くかで、入社後の働き方が決まります。
四つ目は、機微な情報を扱うことです。資金繰り、調達の交渉、上場の準備。この情報の扱いは、採用の段階から慎重さが要り、代行に出す情報の範囲も決めておく必要があります。
五つ目は、転向層の経路が独特なことです。銀行、証券、監査法人、コンサルティング、投資の会社、事業会社の財務。それぞれ持っているものが違い、自社の状況に合うかは肩書では分かりません。
この五つから、代行に出せる工程が決まります。
工程ごとの「任せられる・残す」
| 工程 | 任せられるか | 理由 |
|---|---|---|
| 財務か経理かの整理 | 残す | 自社が求めているのはどちらか。社内にしか分からない |
| 自社の状況と任せる範囲の決定 | 残す | 資金繰り・調達・上場準備・予算管理のどれが中心か。経営者が決める |
| 経営との関係の設計 | 残す | 財務の判断をどこまで委ねるか、財務の意見をどう扱うか |
| 機微な情報の扱いの設計 | 残す | 資金繰りや調達の情報を、採用の過程でどこまで開示するか |
| 要件の決定 | 残す | 状況と範囲から。外部は整理を手伝える |
| 求人票の作成 | 任せられる(状況と範囲が決まっていれば) | 決まったものを候補者に伝わる言葉にする。機微な情報は含めない |
| 媒体の選定と運用 | 任せられる | 財務に届く媒体と経路の経験があれば |
| スカウトの検索と送信 | 任せられる | 状況に合わせた検索と、文面の個別化 |
| 応募者への一次対応 | 任せられる | 連絡、日程、流れの案内 |
| 書類の一次絞り | 条件付き | 転向元と経験の種類の分類は任せられる。判断の質の妥当性は残す |
| 判断の質の評価 | 残す | 経営者と、財務の分かる人(社外取締役、顧問、監査法人の担当など)が面接で聞く |
| 合否の判断 | 残す | 会社の判断 |
| 条件の決定と提示 | 残す | 会社の判断。財務は条件の幅が広い |
| 内定後の対応 | 任せられる | 辞退を防ぐ連絡 |
線の要点は、「財務か経理かの整理と、自社の状況の明確化が、募集の前に社内でできているか」です。この二つが求人票とスカウトの中身になり、候補者が「自分の経験に合う状況か」を判断する材料になります。
エラベルの見解
相談で多いのは、「財務を募集しているが、経理の人ばかり来る」というご相談です。求人票を見ると、「財務経理担当募集。決算、資金繰り、銀行対応」と書かれていて、経理と財務が混ざっています。経理の人が「決算」を見て応募し、財務の経験者は「実態は経理だろう」と見送っています。自社が本当に求めているのが、資金繰りと銀行対応を担う財務なのか、決算を締める経理なのかが、整理されていません。
見ていて差がつくのは、「自社の状況を一文で言えるか」です。「成長のための調達を進めていて、銀行との対応と資金繰りの管理、事業計画の数字を担う財務を探している。経理は別の担当がいる」。一文で状況と範囲が分かれば、経理の人は自分向けでないと分かり、調達の経験がある財務の人は自分向けだと分かります。エラベルでは、財務の案件をお受けする前に、依頼側に「財務か経理か」と「いまの状況」を伺い、一文にしていただいています。
代行に出す前に社内で確認すること
代行に出す前に、社内で揃えておくことを六つ挙げます。
- 財務か経理か。 記帳と決算を担ってほしいなら経理。資金繰り・調達・予算・投資を担ってほしいなら財務。両方なら、優先はどちらか
- 自社の状況。 資金繰りが厳しいのか、調達のフェーズか、上場準備か、安定していて予算と投資の判断か。状況で求める経験が変わる
- 財務に任せる範囲と、経営者が持つ範囲。 銀行との対応を任せるか、経営者が出るか。調達の交渉を任せるか。投資の判断に財務の意見をどう扱うか
- 経理との分担。 経理の担当がいるか、財務が経理も兼ねるか。兼ねるなら、経理の水準も要件に入る
- 機微な情報の扱い。 資金繰りや調達の状況を、求人票・スカウト・面接のどの段階でどこまで開示するか。秘密保持の扱い
- 判断の質を評価する人がいるか。 経営者と、財務の分かる人(社外取締役、顧問、監査法人や銀行の担当など)。経営者だけで判断の質を評価するのは難しい
六つのうち、一つ目と二つ目が最も重要です。財務か経理かと、自社の状況が決まれば、他は整理できます。
財務の分かる人が社内にいない会社の組み方
経営者が財務を見ていて分かる人がいない、一人目の財務を採る会社は多い。組み方を三つ示します。
一つ目は、外部の財務の分かる人(社外取締役、顧問、監査法人や銀行の担当、投資家)を、要件の整理と面接に入れることです。「自社の状況で、どの経験の財務が現実的か」を整理してもらい、面接で判断の質を聞いてもらう。経営者だけでは、財務の判断の質を評価しにくい。
二つ目は、経営者が「財務に何を委ねるか」を先に決めることです。銀行との対応を任せるのか、経営者が出るのか。調達の交渉を任せるのか。委ねる範囲を決めずに採ると、財務の経験者は「経営者が全部やる会社」と感じて離れます。
三つ目は、一人目には「経営者と一緒に財務の仕組みを作るところから」と正直に書くことです。整った財務の体制を求める人と、作りたい人は違うので、正直に書いて分けます。
どの組み方でも、「判断の質の評価を代行に任せない」ことは同じです。
代行を選ぶときの確認項目
| 確認項目 | 聞き方 | 見るポイント |
|---|---|---|
| 財務採用の経験 | 「財務の採用で、資金繰り・調達・上場準備のどの状況の募集を担当しましたか」 | 状況の違いを分かっているか |
| 財務と経理の区別 | 「財務と経理の募集の違いを、どう扱いますか」 | 区別が付いているか |
| 転向元の理解 | 「銀行出身と監査法人出身の候補者を、どう見分けますか」 | 転向元ごとの持っているものを分かっているか |
| 機微な情報の扱い | 「資金繰りや調達の情報を、求人票やスカウトにどこまで書きますか」 | 慎重に扱う前提か |
| 評価の扱い | 「判断の質の評価はどう進めますか」 | 「御社と財務の分かる方で」と答えるか |
| 担当者 | 「担当する方の経歴を教えてください」 | 財務か管理部門の採用経験があるか。担当者の経歴を確認する |
確認の要点は、「財務と経理の区別」と「機微な情報の扱い」の答え方です。区別が付かない代行は経理の人を紹介し、情報の扱いが雑な代行は自社の資金の状況を外に出します。
代行に出したあとに起きること
| 起きること | 戻し方 |
|---|---|
| 経理の人ばかり応募が来る | 求人票の一行目で財務の範囲を示し、経理との分担を書く |
| 自社の状況と違う経験の人が来る | 状況(資金繰り・調達・上場準備・予算管理)を求人票に書く。検索の条件を状況で分ける |
| 面接で「経営者は財務の判断をどこまで委ねるか」と聞かれ、答えが曖昧 | 委ねる範囲を決め、求人票とスカウトに書く |
| 機微な情報が求人票やスカウトに出てしまう | 開示の段階を決める。求人票は状況の種類まで、詳細は面接で秘密保持のもとで |
| 代行が判断の質を評価し始める | 「評価は社内と財務の分かる人で」と戻す |
戻し方の要点は、「経営者が委ねる範囲を、求人票の段階で正直に書く」ことです。財務は経営者との距離が最も近く、委ねる範囲が曖昧だと、入社後にずれます。
エラベルの見解
担当する側から見ると、財務の採用で最も難しいのは、依頼側の経営者が「財務に何を委ねるか」を決めることです。経営者は「財務を任せたい」と言いますが、銀行との対応を自分が出続けるのか、調達の交渉を財務に任せるのか、投資の判断に財務の意見を入れるのかは、決めてみないと分かりません。ここが曖昧なまま募集すると、財務の経験者が来て、入社後に「経営者が全部やる」と分かって離れます。
エラベルでは、財務の案件をお受けするとき、依頼側の経営者に「財務か経理か」「いまの状況」「委ねる範囲」を直接伺っています。決まっていれば、担当者は最初の週から状況に合う経歴を探せます。決まっていなければ、担当者の最初の仕事は、外部の財務の分かる人を交えて、この三つを整理する打ち合わせの進行になります。財務は、探し方より、経営者が何を委ねるかで、採れるかどうかが決まります。
まとめ
- 財務採用で代行に出せるのは探す・届ける・一次対応する・進捗を回す。財務か経理かの整理・状況と範囲の決定・経営との関係の設計・判断の質の評価・機微な情報の扱いの設計は社内に残す
- 他の職種と違うのは「財務」の名前で経理を募集している会社が多い・会社の状況で求める人が全く違う・経営者との距離が最も近い・機微な情報を扱う・転向元の経路が独特
- 代行に出す前に財務か経理か・自社の状況・任せる範囲と経営者が持つ範囲・経理との分担・機微な情報の扱い・評価する人を確認
- 財務の分かる人がいなければ外部の財務の分かる人を整理と面接に・経営者が委ねる範囲を先に決める・一人目には「仕組みを作るところから」と正直に
- 代行を選ぶときは財務と経理の区別と機微な情報の扱いの答え方を見る
- 経営者が委ねる範囲を求人票の段階で正直に書く
よくある質問
財務と経理を一人で担ってほしいのですが
小さな会社では、財務と経理を一人で担うことは珍しくありません。ただ、募集の書き方で来る人が変わります。「財務経理」と書くと経理の人が多く来て、財務の部分(資金繰り、銀行対応)は経験が浅いことがあります。優先を決めます。資金繰りと銀行対応が最も困っているなら、「財務を中心に、経理も担う」と書き、財務の経験を必須に、経理は歓迎に。決算が最も困っているなら、逆です。両方を深く持つ人は少なく、優先を決めて、もう一方は入社後か外部(税理士)で補います。
資金繰りが厳しい状況です。正直に書くと、誰も来ませんか
資金繰りが厳しい状況は、財務の経験者にとって「やることがある」状況で、隠すより、状況の種類として書いたほうが合う人が来ます。ただし、詳細(金額、銀行との交渉の状況)は求人票やスカウトには書かず、「資金繰りの管理と銀行との対応が中心の財務」と、状況の種類まで。詳細は面接で、秘密保持の合意のもとで示します。資金繰りの立て直しを経験した財務の人は、この状況に魅力を感じることもあります。隠して「安定した財務」に見せると、面接か入社後に分かり、信用を失います。
銀行出身と監査法人出身、どちらが自社に合いますか
自社の状況で決まります。資金繰りと銀行との対応が中心なら、銀行出身の人が銀行の考え方を知っていて合いやすい。上場準備や内部統制が中心なら、監査法人出身の人が合いやすい。調達(増資)が中心なら、投資の会社や証券の出身、または事業会社で調達を経験した人。予算と投資の判断が中心なら、事業会社の財務やコンサルティングの出身。出身で決めるのではなく、自社の状況に必要な経験の中身で見ます。出身が違っても、自社の状況に近い経験があれば合います。