文面が自社らしくない|「らしさ」を渡せる形にしてから直す
代行が作った文面を読んで、「間違ってはいないが、うちの言葉じゃない」と感じる。返信率が悪いわけでもないのに、候補者に届いているのが自社の姿ではない気がする。この違和感は正しいことが多く、放置すると会社の印象が「どこにでもある会社」で固まります。結論を先に書くと、「らしくない」は担当者のセンスの問題ではなく、らしさを渡せる形にしていないことの問題です。らしさの正体を言葉と構造と実態の三つに分け、材料を渡し、順番に直してください。トーンの指定の基本は文面のトーンをどう指定するかにまとめています。
「らしくない」の正体を三つに分ける
違和感の中身を分けないと、直す場所が分かりません。三つに分けます。
一.言葉が違う。 敬称、会社の呼び方、社内で使う用語、文末の形。「弊社」と書かれているが社内では会社名で呼んでいる。「メンバー」と呼んでいるのに「社員」と書かれている。「〜させていただきます」が多いが、社内ではそういう話し方をしない。細部の積み重ねで、読んだ瞬間に「違う」と分かります。
二.構造が違う。 話題の順番、強調する点、長さ。会社紹介から始まっているが、自社は役割から話す会社である。「急成長」を前面に出しているが、自社は落ち着いた組織である。長く丁寧に書かれているが、自社は短く言い切る文化である。
三.実態と違う。 文面に書かれた会社の姿が、実際の会社と合っていない。「裁量が大きい」と書かれているが、実際は決まった範囲を進める仕事である。「フラットな組織」と書かれているが、実際には階層がある。これは「らしくない」を超えて、入社後のずれを生みます。
三つのどれが多いかを、直近の文面を数通読んで確認してください。一と二は材料を渡せば直ります。三は、担当者に渡している情報が誤っているか、担当者が会社を知らないまま書いているかで、直し方が違います。
一が多いとき:言葉の材料を渡す
言葉が違うなら、社内で使われている言葉の材料を渡します。
採用サイト、求人票、会社紹介の資料、社内報、代表の発信。既存の文書から、担当者は敬称・呼び方・文末の形を読み取れます。加えて、「使わない言葉」の一覧を作ります。「弊社」「御社」「〜させていただく」「急成長」「裁量」など、自社が避けたい語句を挙げます。使わない言葉の一覧は、使う言葉の説明より伝わりやすいことが多くあります。
材料を渡したら、直近の文面を一通、一緒に直します。「ここは会社名で」「この文末は言い切りに」と、直す理由を言葉にします。直した結果を箇条書きにして、担当者の手元に「この会社の文面のルール」として置いてもらいます。
二が多いとき:構造を指定する
構造が違うなら、話題の順番と強調点を指定します。
多くの代行の文面は、会社紹介、事業の説明、募集の背景、役割、条件、という順です。自社がそうでないなら、順番を指定します。「一段落目は役割。二段落目は経歴のどこを見たか。会社の話は三段落目以降」のように、段落ごとに何を書くかを決めます。
強調点も指定します。「急成長」「注目の」を前面に出す文面が多いですが、自社がそれを売りにしていないなら、外します。代わりに何を前面に出すか。「この役割で何を決められるか」「いまどこで詰まっていて、それを解く人を探しているか」。自社の姿に合う強調点を、担当者と一緒に決めます。
長さも指定します。短く言い切る文化なら、文面も短くします。担当者は「丁寧に書いたほうが返信率が上がる」と考えることがありますが、自社の文化に合わない丁寧さは、入社後にずれます。
三が多いとき:実態を伝え直す
実態と違うなら、担当者に渡している情報を確認します。
担当者は、渡された情報から会社の姿を組み立てます。求人票に「裁量が大きい」と書いてあれば、文面にもそう書きます。求人票が古い、あるいは実態より良く書かれていれば、文面もそうなります。求人票の側を直すのが先です。
もう一つは、担当者が会社を知らないまま書いているケースです。文書だけを渡して、会社の人と話す機会が無ければ、担当者は文書の言葉を並べるしかありません。一度、一緒に働く側の人と担当者が話す場を設けてください。三十分あれば、担当者は文書に無い会社の姿を掴めます。「実際はこういう組織で、こういう人が合う」という話が、文面の実態を近づけます。
実態と違う文面は、返信率が良くても、面談で「聞いていた話と違う」を生みます。三つのうちで最も優先して直すべき違和感です。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、「らしさはセンスの問題で、分かる担当者と分からない担当者がいる」というものです。実際には、センスの差より材料の差が大きく出ます。同じ担当者でも、既存の文書と使わない言葉の一覧を渡された会社と、「うちらしく」とだけ言われた会社では、出てくる文面はまったく違います。
見ていて差がつくのは、担当者が「会社の人と話す時間」を求めるかどうかです。「一緒に働く方と三十分お話しさせてください」と最初に言う担当者は、文書に無い実態を掴もうとしています。文書だけで書き始める担当者は、文書の言葉を並べます。どちらも間違いではありませんが、後者は「らしくない」になりやすいです。
発注側にできるのは、その三十分を出すことです。忙しい人ほど時間を惜しみますが、その三十分を出さないと、その後の全部の文面で「らしくない」を直し続けることになります。最初に出すほうが、合計の時間は短くなります。
直しても変わらないとき
材料を渡し、構造を指定し、実態を伝えても、文面が変わらないことがあります。原因は、たいてい次のどれかです。
指摘が根拠なしで返されている。 「ここは違う」だけでは、その一通しか直りません。「うちは会社名で呼ぶ」「一段落目は役割」と、根拠を言葉にして返してください。根拠が伝われば、次から担当者が自分で適用できます。
指摘する人が複数いて、基準が割れている。 採用の担当者は柔らかい文面を望み、経営者は堅い文面を望む。両方の指摘が別々に届くと、担当者はどちらにも寄せられず、無難な中間に落ちます。指摘する人を一人に決めてください。
担当者側にルールが残っていない。 直した結果を、担当者が手元に残していないと、次の文面でまた同じ違和感が出ます。箇条書きのルールを作ってもらい、案を出す前に照らしてもらいます。
担当者が型から離れられない。 会社ごとの調整をせず、自社の標準の型で書く担当者もいます。材料を渡しても変わらないなら、担当者の交代を検討する段階です。会社を替える前に、担当者だけを替える選択肢があります。
「らしさ」を保ち続けるために
一度直っても、運用が続くうちに、少しずつ標準の型に戻ることがあります。担当者が忙しくなる、担当者が替わる、送信数を増やす、といった局面で起きます。
保つには、月に一度ほど、送った文面を数通読む機会を持ちます。定例会の議題に組み込めば、忘れずに続きます。読むのは、文面に関わっていない社内の人が向いています。「これ、うちの文面に見える?」と聞くだけで、ずれが分かります。
担当者が替わるときは、材料・根拠・ルールの一式を新しい担当者に渡します。一式が発注側の手元にあれば、引き継ぎは初日で済みます。代行会社側にしか無いと、担当者の交代でゼロに戻ります。
らしさは、一度作れば終わりではなく、運用の中で保つものです。保つ仕組みが無いと、半年後に「また、らしくない」が始まります。
エラベルの見解
担当する側から見ると、「らしくない」と言われて最も困るのは、「らしさ」が社内で共有されていないときです。採用の担当者が言う「うちらしさ」と、現場の責任者が言う「うちらしさ」が違う。どちらに合わせても、もう片方から「らしくない」と言われます。
これは文面の問題ではなく、会社が自分たちをどう語るかが決まっていない問題です。採用サイトと求人票と代表の発信で、言葉づかいが揃っていない会社は、スカウトの文面だけを揃えることはできません。
発注側にできるのは、「らしさ」を決める人を一人にすることです。その人の判断を最終とし、他の人の意見はその人が集約します。担当者が「誰の判断が最終か」を知っていれば、往復は減り、文面は揃います。決める人がいない会社では、どれだけ良い担当者でも、文面は無難な中間に落ちます。担当者を選ぶ前に、社内でその一人を決めてください。
まとめ
- 「らしくない」は言葉・構造・実態の三つに分ける
- 言葉は既存の文書と使わない言葉の一覧を渡し、直す理由を言葉にして返す
- 構造は段落ごとに何を書くかと強調点と長さを指定する
- 実態は求人票を直し、担当者と一緒に働く側が三十分話す場を設ける。最優先
- 直っても変わらないなら、根拠なしの指摘・指摘する人の複数・ルールの不在・担当者の型を疑う
- 保つには月に一度、文面を数通読む。担当者交代時は一式を渡す
- らしさを決める人を社内で一人にする
よくある質問
担当者に「もっとうちらしく」と伝えても変わりません
「らしさ」が渡せる形になっていません。既存の文書と使わない言葉の一覧を渡し、直近の文面を一通一緒に直して、直す理由を言葉にしてください。それでも変わらないなら、担当者の型が固いか、社内で「らしさ」が割れているかのどちらかです。
文面は自社で書いて、送信だけ任せたほうがよいですか
材料と構造を渡しても直らないなら、一時的にはそれも選択肢です。ただし、文面を自社で書き続けると、代行に出した意味の一部が失われます。まず材料の渡し方と指摘の仕方を見直し、それでも変わらないなら担当者の交代を検討してください。自社で書くのは、その後の判断です。
返信率は良いのに「らしくない」と感じます。直す必要がありますか
実態と違う文面なら、直してください。返信率が良くても、面談で「聞いていた話と違う」を生み、入社後のずれにつながります。言葉や構造の違和感だけで実態は合っているなら、緊急度は低いですが、会社の印象が「どこにでもある会社」で固まる前に、材料を渡して寄せておくことをすすめます。
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