面談してみると要件と違う|書類で見えない「ずれ」を、送る前と面談で減らす
経歴には「〇〇の経験あり」と書いてある。担当者もそれを見て送っている。面談すると、経験はあるが想定していた深さや範囲ではない。「要件と違う」と面談者が言い、担当者は「経歴には書いてあります」と言う。どちらも間違っていません。結論を先に書くと、経歴に書かれた経験と、要件が求める経験の間には、書類では見えないずれがあります。ずれの型を知り、送る前の判断材料と面談の前半の質問で、ずれを早く見つけてください。質の問題全般は来る候補者の質が合わないに、要件の作り方は要件シートの作り方にまとめています。
ずれの三つの型
「要件と違う」の中身は、たいてい次の三つのどれかです。
一.深さのずれ。 経歴に「〇〇を担当」とあるが、自分で設計したのか、決まったものを運用したのか、一部を手伝ったのか。同じ「担当」でも深さが違います。要件が「自分で設計した経験」を求めていて、候補者が「運用した経験」なら、ずれます。
二.範囲のずれ。 経歴に「〇〇のマネジメント」とあるが、何人を見ていたのか、予算を持っていたのか、採用や評価をしていたのか。同じ「マネジメント」でも範囲が違います。要件が「採用と評価を含む」を求めていて、候補者が「日常の進行管理」なら、ずれます。
三.文脈のずれ。 経験の深さも範囲も合うが、それを行った環境が違う。大企業で整った仕組みの中で行った経験と、小さな組織で仕組みを作りながら行った経験は、同じ名前でも中身が違います。要件が後者を求めていて、候補者が前者なら、ずれます。
三つとも、経歴の文面だけでは判断できません。「〇〇の経験」という言葉は同じで、中身が違うからです。だから、書類の段階で完全に防ぐことはできません。できるのは、ずれる確率を下げることと、面談の早い段階で見つけることです。
送る前にずれを減らす:判断材料の渡し方
担当者は、経歴の言葉で対象を選びます。深さ・範囲・文脈を読み分けるには、そのための材料が要ります。
要件を「経歴のどこに、どう書かれていれば合うか」の形にする。 「〇〇の経験」ではなく、「〇〇を自分で設計したことが、職務経歴に具体的に書かれている。設計の内容(何を、どういう理由で)まで書かれていればなお良い」。ここまで書けば、担当者は経歴の記述の深さで判断できます。
対象外の線を書く。 「〇〇に関わった、〇〇を支援した、という表現だけの場合は対象外」。深さが読み取れない経歴を、対象から外す線です。母数は減りますが、面談後のずれも減ります。
合った人・合わなかった人の例を渡す。 個人が特定できない形で、「この書き方の経歴の人は面談で深さが足りなかった」「この書き方の人は合った」を例示します。担当者は、抽象的な基準より、実例のほうが判断に使えます。面談のたびに一行足していけば、基準は運用の中で育ちます。
文脈の条件を伝える。 「整った仕組みの中での経験ではなく、仕組みを作った経験を求めている」のように、環境の条件を伝えます。担当者は、企業規模や組織の段階から、文脈を推測できます。
返信のやり取りで確かめる
送る前に判断しきれないことは、返信のやり取りで確かめられます。
候補者から返信が来たら、面談の前に、担当者が一つか二つ質問を入れます。「〇〇のご経験について、ご自身で設計されたのか、既存の仕組みを運用されたのか、差し支えなければ教えてください」。候補者にとっても、面談の前に役割のずれが分かるのは、時間の無駄を防ぐことになります。
この質問は、要件の中で「深さ」「範囲」「文脈」のどこが最も重要かに合わせて、一つに絞ります。三つ全部を聞くと、尋問になります。
返信の内容で、明らかにずれていれば、面談の前に丁寧に見送ります。「今回の役割とは少し異なるようですので」と伝え、関係は切らずに残します。ずれていなければ、面談に進みます。この一手で、面談後の「要件と違う」はかなり減ります。
面談の前半で確かめる質問
面談まで進んだら、前半で深さ・範囲・文脈を確かめます。後半まで確かめないと、時間を使ってから「違った」となります。
確かめ方は、経験の「場面」を聞くことです。「〇〇を設計した経験」を確かめるなら、「設計したときに、何を、どういう理由で、どう決めましたか。意見が割れた場面があれば、それも」。場面を語れる人は、自分で決めた経験があります。場面を語れず、一般論になる人は、深さが足りない可能性があります。
範囲を確かめるなら、「そのとき、誰と決めましたか。予算や人の判断はどこまでご自身でしましたか」。文脈を確かめるなら、「そのときの組織の規模と、仕組みはどれくらい整っていましたか」。
質問は、面談者の間で揃えます。面談者ごとに聞くことが違えば、判定も揃いません。担当者が要件から質問の案を作り、面談者が確認して使う、という形にすると、質問の質が保てます。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、「経歴に書いてあるのだから、担当者が見抜けなかったのは担当者の責任」というものです。経歴の「〇〇の経験」という言葉は、深さも範囲も文脈も含んでいません。同じ言葉で、まったく違う中身が書かれています。担当者が見抜けなかったのではなく、書類では見抜けないものです。
見ていて差がつくのは、担当者が「経歴の書き方」から深さを推測しているかどうかです。「設計した」「立ち上げた」「決めた」という動詞があるか、「関わった」「支援した」「担当した」だけか。成果が数字や具体で書かれているか、抽象的か。こうした読み方を持つ担当者は、ずれを減らせます。持たない担当者は、キーワードの有無で選びます。
発注側にできるのは、要件を「経歴のどこを、どう読むか」の形で渡し、面談後に「深さが足りなかった」「範囲が違った」と一行で伝えることです。それを続けると、担当者の読み方が、この会社の要件に合っていきます。
ずれが続くなら、要件を見直す
判断材料を渡し、返信で確かめ、面談の前半で質問しても、ずれが続くなら、要件の側を疑います。
要件が市場に無い。 「自分で設計し、採用と評価まで持ち、仕組みを作った経験」を全部満たす人は、少ないかもしれません。該当者がほとんどいない要件を置けば、近い人が来て「違う」となります。必須を絞り、それ以外を歓迎に回します。
要件が実態より高い。 入社後の仕事が「既存の仕組みの運用」なのに、要件が「設計した経験」なら、面談で「うちの仕事とは違う」と面談者が感じます。逆に候補者も「聞いていた役割と違う」と感じます。要件は、入社後三か月の仕事から逆算します。
面談者の判断が割れている。 ある面談者は「合う」、別の面談者は「違う」。これは候補者のずれではなく、面談者の基準のずれです。何を確認し、どうなら通すかを、面談者の間で揃えます。
ずれを候補者や担当者のせいにしている間は、要件は見直されません。ずれが続くこと自体が、要件の側に問題があるという信号です。
担当者と面談者の間で回す
ずれを減らす仕組みは、担当者と面談者の間の情報の往復です。
担当者は、要件をもとに対象を選び、返信で確かめ、面談者に「この候補者はここまで確認済み、ここは面談で確かめてほしい」と渡します。面談者は、渡された点を前半で確かめ、面談後に「合った」「深さが足りなかった」「範囲が違った」「文脈が違った」を一行で担当者に戻します。担当者は、それを次の抽出に反映します。
この往復が無いと、担当者は同じ基準で送り続け、面談者は同じずれに出会い続けます。往復があれば、月を追うごとにずれは減ります。
往復の窓口は、社内で一人に決めます。面談者が複数いても、担当者への戻しはその一人が集約します。担当者が複数の面談者から違うことを言われると、基準が揺れます。
エラベルの見解
担当する側から見ると、「要件と違う」と言われて最も困るのは、「何が違ったか」が伝わらないことです。「違った」だけでは、深さなのか範囲なのか文脈なのか分からず、次の抽出で何を変えればよいか分かりません。同じ基準で送り続けるしかなく、また「違った」と言われます。
一行で足ります。「設計の経験が想定より浅かった」「マネジメントの範囲が進行管理までだった」「大企業の整った環境での経験だった」。この一行があれば、担当者は経歴の読み方を変えられます。
発注側にできるのは、面談後の一行を、担当者への戻しとして仕組みにすることです。面談者に「面談後、担当者に一行戻す」を頼み、窓口の一人が集約する。手間は面談ごとに一分で、それがずれを減らす最も効く方法です。
まとめ
- ずれは深さ・範囲・文脈の三つの型。書類の言葉は同じで中身が違う
- 送る前に減らすには、要件を「経歴のどこに、どう書かれていれば合うか」の形で渡す。対象外の線と実例も
- 返信のやり取りで、最も重要な一点を一つだけ質問する
- 面談の前半で、経験の「場面」を聞いて確かめる。質問は面談者の間で揃える
- ずれが続くなら要件の側を疑う。市場に無い・実態より高い・面談者の基準が割れている
- 担当者と面談者の往復を仕組みにする。面談後の一行を、窓口の一人が集約して戻す
よくある質問
担当者が経歴をよく読んでいないのではないですか
そうかもしれませんが、要件が「〇〇の経験」の形で渡されていれば、担当者はキーワードで選ぶしかありません。「経歴のどこに、どう書かれていれば合うか」の形で渡し、面談後に何が違ったかを一行で戻してください。それでも読み方が変わらないなら、担当者の問題です。
返信のやり取りで質問すると、候補者に嫌がられませんか
一つに絞れば、嫌がられることは少ないです。候補者にとっても、面談の前に役割のずれが分かるのは無駄を防ぐことです。「面談の前に確認させてください」と丁寧に添えれば、多くの候補者は答えます。三つも四つも聞くと、尋問になります。
面談者によって「合う」「違う」の判断が割れます
候補者のずれではなく、面談者の基準のずれです。何を確認し、どう確かめ、どうなら通すかを面談者の間で揃えてください。担当者が要件から質問の案を作り、面談者全員が同じ質問を使う形にすると、判定が揃いやすくなります。
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