引き抜きと見なされない線引き|スカウトで問題になるのは「声をかけること」ではなく「やり方」

返信率の改善スカウト運用 更新日 2026-10-16

スカウトは、他社で働いている人に声をかけて、自社への転職を勧める仕組みです。そのため、スカウトを始める会社から「これは引き抜きにならないのか」「競合他社の社員に送って問題にならないか」と聞かれることがあります。結論から書くと、転職を考えるかどうかを本人に問いかけること自体は、通常の採用活動として広く行われています。問題になりやすいのは、声をかけることではなく、どのような立場の人が、どのような情報を使って、どのような規模とやり方で勧誘したか、です。

以下は一般的な整理です。個別の勧誘が違法・不当とされるかどうかは、具体的な事情に基づいて判断されます。判断が必要な場合は弁護士にご相談ください。

声をかけること自体と、問題になりやすいやり方

スカウト媒体に登録している人は、多くの場合、転職の可能性があることを前提に、企業からの連絡を受け取る設定にしています。その人に、自社の求人を案内し、話を聞かないかと問いかけることは、採用活動として一般的に行われています。転職するかどうかを決めるのは本人です。

一方で、勧誘のやり方によっては、勧誘された人が今勤めている会社との間で問題が生じることがあります。問題になりやすいのは、次のような場面です。

場面問題になりやすい理由
自社に転職してきた元社員を通じて、前の職場の同僚をまとめて勧誘する元社員が在職中の立場や情報を使って勧誘していると、前の会社に対する義務との関係が問われうる
前の会社の顧客や社員の情報を持ち出してもらい、それを使って勧誘する営業秘密の扱いの問題になりうる
特定の部署やチームの社員を、短期間に集中して勧誘する前の会社の事業に大きな影響を与える態様と見られうる
事実と異なる情報(前の会社の経営が危ない等)を伝えて勧誘する勧誘の内容そのものが不当と見られうる

この表の多くは、スカウト媒体の検索機能を使って、本人の公開しているプロフィールをもとに声をかける通常の運用とは違う場面です。通常のスカウトでは起きにくいことですが、運用が広がると、知らないうちにこうした場面に近づいていることがあります。

元社員を通じた勧誘で気をつけること

引き抜きの問題で注意が必要なのは、勧誘する人が、勧誘される人の会社と、どういう関係にあるかです。労働契約法第3条第4項は、労働者と使用者は労働契約を遵守するとともに、信義に従い誠実に権利を行使し、義務を履行しなければならないと定めています。厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」でも、労働者は一般に、在職中、使用者と競合する業務を行わない義務を負っていると解されていると説明されています。

つまり、ある会社にまだ在籍している人が、別の会社の採用のために同僚を勧誘すると、在籍中の会社に対する義務との関係が問われることがあります。自社に転職が決まった人が、退職前に前の職場の同僚に声をかけて回る、といった場合です。スカウトの運用で元社員の人脈を使うときは、勧誘のタイミングと方法に気をつけてください。

エラベルの見解

スカウトの相談を受けていて気をつけてほしいと感じるのは、「リファラル」のつもりが、元の会社からの集団での移籍になっているケースです。入社した社員に「前の職場で良い人がいたら紹介して」と頼むのは自然なことですが、同じ部署から何人も続けて移ってくると、前の会社から見ると組織的な引き抜きに見えます。

対策は難しくありません。紹介を頼むときに、在籍中の会社に迷惑がかかるやり方はしないこと、前の会社の資料や名簿を使わないことを、社内のルールとして伝えておくことです。紹介された人には、通常のスカウトと同じように、本人の意思を確かめながら選考を進めます。同じ部署からの応募が重なったときは、一度立ち止まって進め方を確認してください。

営業秘密を使わない

勧誘に使う情報にも注意が必要です。不正競争防止法第2条第6項は、「営業秘密」を、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないものと定めています。他社の社員名簿や組織図、給与の情報などが、その会社で秘密として管理されていれば、営業秘密に当たる可能性があります。

スカウトで使ってよいのは、スカウト媒体に本人が登録・公開している情報です。転職してきた社員に前の会社の名簿を見せてもらう、前の会社の組織図をもとに候補者を探す、といったやり方は避けてください。代行会社に運用を任せる場合も、どの情報を使ってよいかを契約で決めておく必要があります。

競合他社の社員に送るとき

競合他社の社員にスカウトを送ること自体は、多くの会社で行われています。同じ業界の経験を持つ人は即戦力になりやすいからです。そのうえで、次の点に気をつけると、問題になりにくくなります。

面談で前の会社の情報を聞き出さないことは、候補者を守ることにもつながります。候補者が前の会社の秘密を話してしまうと、その候補者自身が前の会社との間で問題を抱えることになりかねません。

エラベルの見解

スカウトを代行に出すとき、発注側が決めておくべきことの一つが、送ってはいけない相手のリストです。取引先、資本関係のある会社、業務提携先などの社員には、スカウトを送らないほうがよい場合があります。取引関係が壊れると、採用で得るもの以上のものを失います。

代行の担当者は、発注側の取引関係までは知りません。同じ料金・同じ業務範囲でも、最初の打ち合わせで「送ってはいけない会社はありますか」と聞いてくる担当者と、聞かずに送り始める担当者がいます。前者を選んでください。聞かれなくても、発注側からリストを渡しておくと安心です。

まとめ

よくある質問

競合他社の社員にスカウトを送ってもよいですか

スカウト媒体で本人が公開しているプロフィールをもとに声をかけることは、一般的な採用活動として行われています。ただし、同じ部署に集中して送る、前の会社の情報を使う、事実と異なる情報で勧誘するといったやり方は避けてください。個別の判断が必要な場合は弁護士にご相談ください。

入社した社員に、前の職場の人を紹介してもらうのは問題ですか

紹介自体は広く行われていますが、紹介する社員が前の会社に在籍している間に勧誘したり、前の会社の名簿を使ったりすると問題になりうるので注意が必要です。紹介を頼むときは、前の会社に迷惑がかかるやり方をしないことを伝えておくと安心です。

代行会社に任せた場合、責任は誰にありますか

勧誘のやり方が問題になった場合、代行会社だけでなく、発注した会社も関わることになりえます。契約で使ってよい情報や送ってはいけない相手を決め、運用の報告を受けて確認する仕組みを作っておくことが大切です。責任の範囲の判断が必要な場合は、弁護士にご確認ください。

出典

本記事は 2026-10-16 時点の公開情報にもとづいて作成しています。

関連記事

「返信率の改善」の他の記事

「返信率の改善」の記事一覧を見る →