管理職候補へのスカウト|「マネジメント経験」の中身を分解してから、対象と文面を作る
管理職を採りたい。「マネジメント経験あり」で抽出して送る。返信は来るが、面談で「思っていたマネジメントと違う」となる。三名の進行管理をしていた人と、三十名の組織で採用と評価と予算を持っていた人は、同じ「マネジメント経験あり」です。結論を先に書くと、管理職候補のスカウトは、「マネジメント経験」を四つの軸——何を管理するか・人数と構成・決める範囲・上との関係——に分解し、自社の管理職の役割をその軸で定義してから、経歴の記述で対象を選んでください。分解しないと、対象も文面も面談も曖昧なままです。幹部・役員クラスは幹部・役員クラスへのアプローチに、要件のずれは面談してみると要件と違うにまとめています。
「マネジメント経験」が曖昧な理由
「マネジメント」という言葉は、会社によって指すものが違います。
進行の管理。 タスクの割り振り、進捗の確認、納期の管理。人を評価する権限は無い。
人の管理。 採用、評価、育成、配置。部下のキャリアに責任を持つ。
数字の管理。 予算、売上、利益。事業の数字に責任を持つ。
組織の管理。 組織の設計、方針の決定、他部門との調整。組織そのものを作る。
一人の管理職が、これらのどれを、どこまで担うかは、会社と役職で違います。「マネジメント経験あり」の経歴は、どれを指しているのか分かりません。
さらに、人数と構成も違います。三名の直属の部下と、三十名の階層のある組織では、求められる力が違います。上との関係も違います。経営に直接報告する管理職と、部長の下の課長では、決める範囲が違います。
分解しないまま「管理職候補」と括ると、対象は広く、合う確率は低くなります。
管理職の役割を四つの軸で定義する
自社の管理職の役割を、文面を書く前に、四つの軸で定義します。
一.何を管理するか。 進行か、人か、数字か、組織か。複数なら、どれが主か。「人の管理が主で、数字は上司が持つ」「数字と組織の両方を持つ」。
二.人数と構成。 直属の部下は何名か、その下に階層があるか、部下の職種は同じか異なるか。「直属五名、全員同じ職種」「直属三名の下に各五名、職種は三種類」。
三.決める範囲。 採用を決められるか、評価を決められるか、予算を決められるか、方針を決められるか。「採用と評価は決める、予算は上司と、方針は経営で」。
四.上との関係。 誰に報告し、誰と決めるか。経営に直接か、部長の下か。報告の頻度、決裁の範囲。
四つの軸で定義すると、自社の管理職の役割が具体的になります。「管理職」という言葉では伝わらなかったことが、「人の管理が主で、直属五名、採用と評価を決め、経営に直接報告する」と伝わります。
この定義が、対象の選定、文面の一段落目、面談の質問の全部の土台になります。
経歴から中身を読む
四つの軸で定義したら、経歴の記述から、それに近い人を選びます。
何を管理していたかの手がかり。 「採用・評価・育成を担当」なら人の管理。「予算〇〇を管理」「売上目標に責任」なら数字の管理。「組織を再編」「新部門を設計」なら組織の管理。「進捗管理」「タスク管理」だけなら、進行の管理の可能性。
人数と構成の手がかり。 「〇名のチームを率いた」「〇名の部門を統括」。数字が書かれていることが多いですが、直属か、階層を含むかは読み取りにくい。「マネージャー〇名を通じて」の記述があれば、階層があった可能性。
決める範囲の手がかり。 「採用を主導」「評価制度を設計」「予算を策定」。動詞で、決めていたか、関わっていただけかを推測します。「関わった」「支援した」は、決めていなかった可能性。
上との関係の手がかり。 「経営陣に直接報告」「役員直下」「CEOと」。経営との距離が読める記述。無ければ、役職名と会社の規模から推測します。
規模の文脈。 大企業の課長と、スタートアップの部門責任者では、同じ「〇名を管理」でも、決める範囲が違います。在籍企業の規模と段階から、文脈を読みます。
経歴からの読み取りは、推測を含みます。返信のやり取りと面談で確かめます。
管理職候補に届く文面
管理職候補への文面は、一段落目で「何を管理する役割か」を書きます。
一段落目:管理する対象と、決める範囲。 「〇〇名のチームの、採用・評価・育成を担い、経営に直接報告する役割です」。「管理職を募集」ではなく、四つの軸の中身で。加えて、「なぜあなたに」を経歴の記述で。「〇〇名の組織で採用と評価を担われたご経歴を拝見し」。
二段落目:いまの組織の状態と、詰まっていること。 「いま〇〇名の組織で、〇〇が課題」。管理職候補が最も知りたいのは、「どんな組織を、どういう状態から引き受けるか」です。
三段落目:上との関係と、既存の組織との関係。 誰に報告し、誰と決めるか。既存のメンバーはどういう人たちか。外から管理職として入る候補者にとって、既存の組織との関係は大きな関心事です。
四段落目:会社の話。
五段落目:次の一歩。 「まず、組織の現状と役割の中身をお話しする場を」。管理職候補は、いきなり選考より、組織の実態を聞く場を求めます。
「マネジメント経験を活かして」「リーダーシップを発揮」といった抽象的な言葉は、管理職候補に響きません。四つの軸の具体で書きます。
エラベルの見解
相談で最も多い失敗は、「マネジメント経験あり」で抽出して、「管理職募集」の文面を送ることです。返信は来ます。面談で、進行管理だけの経験の人に「採用と評価を担ってほしい」と伝えると、ずれます。逆に、三十名の組織を率いた人に「五名のチームを」と伝えると、「小さすぎる」と離れます。どちらも、「マネジメント経験」を分解していれば、送る前に分かっていました。
見ていて差がつくのは、担当者が「御社の管理職は、何を、何名、どこまで決めて、誰に報告する役割ですか」と最初に聞くかどうかです。「管理職候補ですね」で抽出する担当者と、四つの軸を聞き出してから経歴を読む担当者がいます。後者は、経歴の「〇名を管理」の裏にある中身を読み分けます。
発注側にできるのは、自社の管理職の役割を、四つの軸で言葉にしてから担当者に渡すことです。言葉にする過程で、社内でも「管理職に何を求めているか」が揃います。揃っていない会社は多く、面談者ごとに「管理職像」が違って、判定が割れます。
面談での確かめ方
管理職候補との面談では、四つの軸を、場面で確かめます。
何を管理していたか。 「採用の場面で、何をどう決めましたか」「評価で、意見が割れたときにどうしましたか」。場面を語れる人は、決めていた人。一般論になる人は、関わっていただけの可能性。
人数と構成。 「直属は何名で、その下はどうなっていましたか」「異なる職種の部下を、どう見ていましたか」。
決める範囲。 「予算はご自身で決めていましたか、上司と決めていましたか」「方針を変えた場面はありますか」。
上との関係。 「上司とは、どのくらいの頻度で、何を話していましたか」「上司と意見が割れたとき、どうしましたか」。
既存の組織への入り方。 「外から管理職として入った経験はありますか。最初の三か月で何をしましたか」。外から入った経験が無い候補者は、既存の組織との関係で苦労することがあります。
自社の四つの軸への理解。 自社の管理職の役割(四つの軸)を伝え、「この役割で、ご自身の経験のどこが活き、どこが新しいですか」と聞きます。ずれがあれば、ここで分かります。
面談者には、四つの軸と、それぞれの確認の質問を、事前に渡します。
既存の組織との関係の設計
外から管理職を迎えるとき、既存の組織との関係を設計しておかないと、入社後に機能しません。
既存のメンバーへの説明。 「外から管理職が来る」ことを、いつ、どう伝えるか。伝え方によっては、「自分たちは評価されていない」と受け取られます。管理職を外から採る理由(新しい経験を入れる、組織の段階が変わった)を、率直に説明します。
内部の昇格候補との関係。 内部に昇格を期待していた人がいる場合、その人への説明と、その人の役割の設計。放置すると、離職につながります。
最初の三か月の権限。 入社直後から全部を決めさせるか、最初は既存の上司と一緒に決めるか。段階的に権限を渡す設計が、既存の組織との摩擦を減らします。
上司の支援。 外から入った管理職を、上司がどう支えるか。既存の組織との間に立つ、判断を後押しする、情報を渡す。上司の支援が無いと、孤立します。
評価の見方。 外から入った管理職の成果を、いつ、何で見るか。最初の三か月は組織の把握、半年で改善の着手、一年で結果、といった段階を決めます。
これらは、文面を書く前に社内で決めます。決まっていないと、面談で「既存の組織との関係はどうなりますか」と聞かれて答えられず、管理職候補は不安を持ちます。
エラベルの見解
担当する側から見ると、管理職の案件で最も困るのは「管理職に何を求めているかが、社内で揃っていない」ことです。経営は「組織を変えてほしい」、既存の部長は「今の組織を守ってほしい」、現場は「自分たちを理解してほしい」。三つの期待を同時に満たす人はおらず、面談者ごとに判定が割れ、決まりません。
四つの軸で役割を定義する作業は、社内の期待を揃える作業でもあります。「人の管理が主で、直属五名、採用と評価を決め、経営に直接報告する」と定義すれば、経営も部長も現場も、同じ役割を見ることになります。
発注側にできるのは、管理職の役割を四つの軸で定義し、それを社内の関係者全員で確認することです。確認された定義があれば、担当者は対象を選べ、面談者は同じ観点で見られ、候補者は自分の役割を想像できます。
まとめ
- 「マネジメント経験」は進行・人・数字・組織のどれか、人数と構成、決める範囲、上との関係で、会社ごとに違う
- 自社の管理職の役割を四つの軸(何を管理するか・人数と構成・決める範囲・上との関係)で定義する
- 経歴からは動詞と数字と役職名と会社の規模で中身を推測し、返信と面談で確かめる
- 文面の一段落目は管理する対象と決める範囲、二段落目は組織の状態と詰まっていること、三段落目は上との関係と既存の組織
- 面談では四つの軸を場面で確かめ、外から入った経験と自社の役割への理解を聞く
- 既存の組織との関係はメンバーへの説明・内部の昇格候補・最初の三か月の権限・上司の支援・評価の見方を、文面の前に設計
- 四つの軸の定義は、社内の期待を揃える作業でもある
よくある質問
「マネジメント経験〇年以上」で抽出してもらっています
年数では、経験の中身が分かりません。三名の進行管理を五年した人と、三十名の組織で採用と評価を二年担った人では、自社の管理職の役割に合うかどうかが違います。年数ではなく、四つの軸(何を・何名・どこまで・誰に報告)の記述で抽出してもらってください。
管理職候補の返信率が、一般の職種より低いです
管理職候補は、「管理職募集」という抽象的な文面には反応しません。一段落目に、管理する対象と決める範囲と上との関係を具体的に書き、経歴のどこを見たかを添えてください。また、管理職候補は転職活動を積極的にしていないことが多く、返信率が低いのは自然です。返信率より、返信をくれた候補者の質と、面談への進み方で見てください。
内部に昇格候補がいるのに、外から採る理由を説明できません
理由を言葉にできないなら、外から採る判断そのものを見直す機会です。「新しい経験を入れたい」「組織の段階が変わり、経験の無い領域が要る」など、理由があるなら、内部の昇格候補に率直に説明し、その人の役割も設計してください。説明なしに外から採ると、昇格候補が離職し、外から来た管理職は既存の組織に受け入れられません。
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