スカウト代行 / 研究開発
研究開発へのスカウト文面|開封される件名と本文の型
研究開発にスカウトを送っても返信が来ない。文面を見せていただくと、件名が「最先端の研究開発、修士以上歓迎」で、本文に「革新的な技術で世界を変える」「自由に研究できる環境」と書いてあり、候補者の論文や研究のどこを読んだのか、自社のテーマは何か(守秘の範囲でも対象と目的は書けるはず)、研究の自由度はどこまでか、成果はどう評価され、発表はできるのか、事業化までどのくらいの距離かが、どこにも書かれていません。研究者は、自分の論文や研究を読んで送っているかを一行目で判断し、読んでいない文面はそれだけで閉じます。加えて、「最先端」「革新的」「世界初」を信じておらず、「自由に研究できる」を「テーマが決まっていない会社」の印と読みます。結論を先に書くと、件名は「相手の研究の一点+自社のテーマの対象」、本文は「一行目に研究所長が論文を確認して研究の一点に触れる→自社のテーマ(守秘の範囲で)と目的→研究の自由度(実態どおりに)→評価と発表の扱いと例→事業化までの距離→環境と学位の扱い→研究所長がどういう人か→条件の幅→任期や学位の区切りに合わせた研究室見学への短い締め」の順で、会社の紹介は後ろに回すか短くします。刺さる訴求と外す訴求の中身は研究開発向けスカウト文面の型に書いていますので、ここでは「研究開発向けの件名と本文の型」に絞って、そのまま使える形にします。
先に決めるのは「テーマの対象と目的」「自由度」「評価と発表」
文面の前に、三つを決めます。一つは、自社のテーマの対象と目的。守秘で詳細は書けなくても、「何の分野の、何を目的にした研究か」は書けます。書けない会社に研究者は来ません。二つは、研究の自由度。テーマの選び方(会社が決めるか、提案できるか)、進め方の裁量、期間の区切り。実態どおりに。三つは、評価と発表の扱い。成果はどう評価されるか(論文か、特許か、事業への貢献か)、学会や論文での発表はできるか、その例。
| 決めること | 文面での書き方の例 |
|---|---|
| テーマの対象と目的 | 「〇〇(分野)で、〇〇(目的:材料の〇〇の性能向上など)を目指す研究。詳細は面談で守秘のもとで」 |
| 自由度 | 「テーマの大枠は会社が決め、進め方と手法は研究者が決める。年に一度、提案の場がある」 |
| 評価と発表 | 「評価は事業への貢献と特許。論文の発表は事業に支障が無い範囲で可。昨年は〇件の学会発表」 |
止まりやすいのは、「最先端の研究」「自由に研究できる」と書くときです。研究者は「テーマが決まっていない」「実態が無い」と読みます。
件名の型
研究者が件名で見るのは、「自分の研究を読んでいるか」「何の分野のテーマか」の二つです。
| 型 | 例 | なぜ開かれるか |
|---|---|---|
| 相手の研究の一点+自社のテーマの対象 | 〇〇(論文の対象・手法)のご研究を拝読|当社の〇〇(分野)の研究について | 論文を読んだと分かる |
| 相手の手法+自社の目的 | 〇〇(手法)を〇〇に応用されたご研究へ|当社は〇〇(目的)にその手法を | 手法で重なると分かる |
| 相手の区切り+自社の研究室 | 〇〇(任期・学位)の区切りをお考えの方へ|〇〇(分野)の研究室の見学を | 区切りに合わせている |
書いてはいけない件名は、「研究開発募集」「最先端」「革新的」「世界初」「修士以上歓迎」「自由に研究」のように、論文を読んでいないことが分かるか、信じられない形容詞です。件名の失敗の型は件名でやりがちな失敗に書いています。
本文の型
本文は、研究者が「確かめる順」に並べます。一行目は、研究所長が論文を確認して書きます。担当者だけで書くと、読んでいないことが伝わります。
| 順 | 書くこと | 長さ | 注意 |
|---|---|---|---|
| 一行目 | 研究の具体の一点。「〇〇(論文名や対象)で〇〇(手法・結果)を示された点を拝読しました」 | 一文 | 研究所長が論文を確認して一言添える |
| 二 | 自社のテーマの対象と目的。何の分野で、何を目指すか。詳細は守秘のもとで面談で | 二、三行 | 対象と目的は書く。「最先端」を使わない |
| 三 | 研究の自由度。テーマの選び方、進め方の裁量、期間の区切り | 二、三行 | 実態どおりに。「自由に」を使わない |
| 四 | 評価と発表の扱いと例。何で評価され、発表はできるか、昨年の例 | 二、三行 | 例を事実で |
| 五 | 事業化までの距離。基礎か応用か、事業に入るまでの年数の感覚、事業に入ったときの研究者の関わり | 二行 | 正直に |
| 六 | 環境と学位の扱い。設備、予算の考え方、学位の扱い(手当、取得の支援、社会人博士) | 二行 | 事実を |
| 七 | 研究所長がどういう人か。研究の経歴、どう任せる人か | 二行 | 名前は出さず、研究と進め方を |
| 八 | 条件の幅 | 一、二行 | 幅で書く |
| 九 | 会社の紹介 | 一、二行 | 短く |
| 十 | 短い締め。「任期や学位の区切りに合わせて、研究室を見ていただきながら研究所長と研究の話を」 | 一文 | 区切りに合わせることと、研究室を見せることを |
長さは、スマートフォンで二度スクロールする程度に収めます。項目が多いので、各項目を短くします。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、「研究者には『最先端』『革新的』と伝えれば、研究への情熱に響く」というものです。実際には、研究者はこれらの言葉を「研究を知らない人の言葉」と読み、論文を読んでいない文面をそれだけで閉じます。ある会社では、「革新的な技術、最先端の研究環境、修士以上歓迎」と書いた文面で返信が無く、担当者が候補者の視点で読むと、論文に触れておらず、テーマの対象も無く、「自由に研究できる」だけで、候補者は「研究を分かっていない会社が、研究者の肩書だけを集めている」と読んでいました。研究所長が候補者の論文を読んで「〇〇の手法で〇〇を示された点を拝読し」と一言添え、「当社は〇〇(分野)で〇〇(目的)を目指す研究。テーマの大枠は会社、手法は研究者。評価は特許と事業への貢献。昨年は〇件の学会発表」と書き直したところ、返信が来ました。研究者への文面で効くのは、「最先端」ではなく、論文を読んだことと、テーマと自由度と評価の実態です。
書いてはいけないこと
一つ目は、「最先端」「革新的」「世界初」「自由に研究できる」のような、信じられない言葉です。テーマの対象と目的、自由度の実態で書きます。
二つ目は、論文を読まずに送ることです。一行目で分かります。研究所長が確認して一言添えます。担当者だけで「ご研究を拝見しました」と書くと、読んでいないと伝わります。
三つ目は、「修士以上歓迎」「博士歓迎」を前面に出すことです。研究者は「学位だけを見ている」と読みます。学位の扱い(手当、取得の支援)は事実で書き、前面には出しません。
四つ目は、テーマを守秘で全部隠すことです。詳細は隠せても、分野と目的は書けます。書けないなら、研究者は判断できません。
五つ目は、自由度を実態より広く書くことです。「自由に研究できる」と書いて実際はテーマも手法も会社が決めていると、面談で分かって辞退されます。
六つ目は、締めを「すぐに面談を」とすることです。研究者は任期や学位の区切りまで動けません。区切りに合わせ、研究室を見せる姿勢を書きます。
送る前の確認
| 確認 | 見ること |
|---|---|
| 一行目に相手の研究の具体の一点があり、研究所長が確認したか | 「ご研究を拝見」だけになっていないか |
| テーマの対象と目的が書いてあるか | 守秘で全部隠していないか |
| 自由度が実態どおりか | 「自由に」で広く見せていないか |
| 評価と発表の扱いと例が事実で書いてあるか | 例が無いのに「発表可」と書いていないか |
| 事業化までの距離が書いてあるか | 基礎か応用かが分かるか |
| 締めが区切りに合わせる形で、研究室を見せると書いたか | 「すぐに」になっていないか |
返信が来ないときの直す順番
| 症状 | 直すところ |
|---|---|
| 開かれない | 件名。研究の一点があるか。「最先端」「修士以上」になっていないか |
| 開かれるが返信が無い | 一行目(論文を読んだと分かるか)。テーマの対象。自由度と評価の実態 |
| 返信は来るが面談で辞退 | 研究所長が論文を読んで面談に出たか。研究室を見せたか。文面の自由度と面談の実態が合っていたか |
| 面談後に辞退 | 自由度と評価の実態。「手法は研究者が決める」と書きながら実際は全部会社の構造が無いか |
一箇所ずつ変えます。変え方はスカウト文面のABテストのやり方に書いています。
エラベルの見解
担当する側から見ると、研究開発向けの文面で会社ごとに差がつくのは、「研究所長が一通ごとに論文を確認する時間を取っているか」です。研究者へのスカウトは、他の職種と違い、担当者だけでは一行目が書けません。論文の中身を読んで「この手法でこれを示した点が、当社のテーマに近い」と言えるのは研究所長で、その一言が無い文面は研究者に見抜かれます。研究所長が一通に数分でも論文を確認する会社では、送信数は少なくても返信が来ます。取れない会社では、担当者がどれだけ工夫しても定型になります。エラベルでスカウト文面を担当する人には、候補者の一覧と論文の要点を整理して研究所長に渡し、研究所長が一言添える形を作り、研究室見学と面談の予定を確保してもらっています。刺さる訴求と外す訴求は研究開発向けスカウト文面の型に書いています。
代行に出す場合の範囲
担当者が持つのは、候補者の一覧の作成と論文の要点の整理、研究所長の一言を受けて件名と一行目を仕上げること、研究所長に聞いたテーマの対象と目的・自由度・評価と発表・事業化までの距離・環境・学位の扱いを本文にすること、送る前の確認、当日中の返信と研究概要の案内、区切りに合わせた日程の調整、研究所長の予定の確保、返信の記録と直す順番の提案、です。会社が持つのは、テーマの対象と目的の決定(守秘の範囲の判断)、自由度と評価と発表の実態を正直に書くことの合意、研究所長が論文を確認して一言添え、面談に出て研究室を見せること、条件の幅、です。研究所長が論文を確認する時間を取れない状態では、研究者へのスカウトは成立しません。出す前に確保します。
まとめ
- 先にテーマの対象と目的(守秘の範囲で書ける形)・自由度の実態・評価と発表の扱いを決める。「最先端」「自由に研究」は研究者に信じられない
- 件名は「相手の研究の一点+自社のテーマの対象」。「修士以上歓迎」は学位だけを見ていると読まれる
- 本文は一行目に研究所長が論文を確認して研究の一点→テーマの対象と目的→自由度→評価と発表と例→事業化までの距離→環境と学位の扱い→研究所長→条件の幅→区切りに合わせた研究室見学への締め
- 一行目は研究所長が論文を確認して書く。担当者だけの「拝見しました」は見抜かれる
- 自由度を実態どおりに書く。「自由に」と書いて実際は会社が全部決める、は面談で分かる
- 返信が来ないときは件名→一行目とテーマと自由度→研究所長が出て研究室を見せたか→実態の一致の順に直す
よくある質問
守秘でテーマを書けません
分野と目的は書けます。「〇〇(分野)で、〇〇(目的の方向)を目指す研究。詳細は面談で秘密保持のもとで」のように。研究者は分野と目的が分かれば、自分の研究と近いかを判断できます。全部を隠した文面は判断できず、返信が来ません。書ける範囲を研究所長と決め、「面談で守秘のもとで」と明示することが、むしろ「機微な情報の扱いを分かっている会社」と伝わります。
研究所長が忙しく、一通ごとに論文を確認する時間が取れません
その状態で研究者にスカウトを送ることはお勧めしません。論文を読んでいない一行目は研究者に見抜かれ、送っても返信が来ないうえ、「研究を分かっていない会社」という印象が残ります。担当者が候補者の一覧と論文の要点を整理し、研究所長は一通に数分で一言添える形にすると、時間は短くて済みます。送信数を減らして、研究所長が確認できる数だけ送ります。
学位の扱いをどう書けばよいですか
「修士以上歓迎」と前面に出すのではなく、学位の扱いを事実で書きます。学位による手当の違い、社会人博士の取得の支援(時間、費用)、学位が無い場合の扱い。研究者は「学位だけを見ている会社」を避け、「学位の扱いを事実で示す会社」を信頼します。対象の絞り方は研究開発向けスカウト文面の型に書いています。