募集条件の明示義務とスカウト文面|短い文面で全部書けないとき、いつまでに何を示すか
スカウトの文面は、候補者に最初に届く会社からのメッセージです。読んでもらうために短くまとめたい一方で、年収や勤務地、働き方などの条件をどこまで書くべきか迷う会社は多いです。条件を全部並べると長くなり、書かなければ後で「聞いていた話と違う」と言われるかもしれない。結論から書くと、職業安定法は、労働者の募集を行う者に、従事すべき業務の内容や賃金、労働時間などの労働条件を明示することと、募集の情報について虚偽や誤解を生じさせる表示をしないことを求めています。スカウトの文面ですべてを書き切れなくても、求人票などで全体を示し、遅くとも面接など最初に接触する時点までに全ての労働条件を示す、という形で整えるのが基本です。
以下は条文と厚生労働省のリーフレットに沿った一般的な整理です。個別の運用が法令に沿っているかの判断が必要な場合は、都道府県労働局や社会保険労務士にご確認ください。
職業安定法が求めていること
職業安定法第5条の3第1項は、労働者の募集を行う者などは、募集に当たり、募集に応じて労働者になろうとする者に対し、その者が従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならないと定めています。また、労働契約を結ぼうとする際に、最初に明示した条件を変更する場合などは、その変更内容を明示しなければならないとされています。
第5条の4第1項は、労働者の募集を行う者などは、広告等により労働者の募集に関する情報を提供するときは、虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならないと定めています。第2項は、労働者の募集を行う者は、広告等により提供する情報を正確かつ最新の内容に保たなければならないとしています。
| 条文 | 求めていること | スカウトで気をつけること |
|---|---|---|
| 第5条の3 | 業務の内容、賃金、労働時間その他の労働条件を明示する | 文面と求人票を合わせて、必要な条件を示す |
| 第5条の4 第1項 | 虚偽の表示、誤解を生じさせる表示をしない | 条件の一部だけを強調して誤解させない |
| 第5条の4 第2項 | 情報を正確かつ最新の内容に保つ | 古い求人票や古い年収のまま送らない |
2024年4月に追加された明示事項
厚生労働省のリーフレットによると、2024年4月1日施行の改正職業安定法施行規則により、求職者等に明示しなければならない労働条件に、次の事項が追加されました。
- 従事すべき業務の変更の範囲:雇入れ直後の業務に加えて、将来どこまで業務が変わりうるか
- 就業場所の変更の範囲:雇入れ直後の勤務地に加えて、将来どこまで勤務地が変わりうるか
- 有期労働契約を更新する場合の基準:更新の上限(通算契約期間や更新回数の上限)を含む
リーフレットの記載例では、業務内容は「(雇入れ直後)法人営業(変更の範囲)製造業務を除く当社業務全般」、就業場所は「(雇入れ直後)大阪支社(変更の範囲)本社および全国の支社、営業所」のように、雇入れ直後と変更の範囲を並べて書く形が示されています。スカウトの文面で「大阪勤務」とだけ書き、将来の転勤の可能性に触れていない場合は、求人票など他の場所で変更の範囲を示しておく必要があります。
エラベルの見解
スカウトの運用を見ていて多いのは、文面に書いた年収や勤務地が、求人票と食い違っているケースです。求人票を更新したのに、スカウトのテンプレートが古いまま残っている。代行会社が独自に文面を作っていて、条件の表現が求人票と微妙に違う。候補者は文面を見て返信し、求人票を見て違和感を持ちます。
対策は、条件の数字は文面に直接書かず、求人票へのリンクと合わせて「詳しい条件はこちら」と示すか、文面に書く場合はテンプレートの条件部分を求人票と同時に更新する仕組みを作ることです。代行に出すときは、条件の表現を変えてよい範囲と、発注側の確認を経ずに変えてはいけない部分を、最初に決めておいてください。同じ料金・同じ業務範囲でも、ここを確認してから送り始める担当者のほうが、後のトラブルが少なくなります。
一部を後で示すときの期限
スカウトの文面は短いので、すべての労働条件を書き切れないことがあります。厚生労働省のリーフレットでは、求人広告のスペースが足りないなどやむを得ない場合には、「詳細は面談時にお伝えします」などと付したうえで、労働条件の一部を別のタイミングで明示することも可能とされています。ただし、この場合、原則として、面接などで求職者と最初に接触する時点までに、全ての労働条件を明示する必要があるとされています。
スカウトでいえば、次のような流れが考えられます。
- スカウトの文面:仕事の内容、年収の幅、勤務地など、判断に欠かせない条件を簡潔に書き、求人票へのリンクを付ける
- 求人票:業務の内容と変更の範囲、就業場所と変更の範囲、契約期間、試用期間、労働時間、休日、賃金など、明示が必要な条件を示す
- カジュアル面談や面接の前:求人票を見ていない候補者には、面談の前に条件を送る
カジュアル面談であっても、候補者と最初に接触する場になるので、それまでに条件を示しておくのが安全です。また、面接などの過程で最初に示した条件が変わる場合は、その変更内容を速やかに明示する必要があるとされています。
誤解を生じさせない書き方
第5条の4が求める「誤解を生じさせる表示をしない」ことも、スカウトの文面では大切です。たとえば、次のような書き方は避けてください。
- 年収の上限だけを書き、下限や、上限に届く条件を書かない
- 固定残業代を含む年収を、含むことを示さずに書く
- 「リモート可」と書きながら、実際には入社後の一定期間は出社が前提になっている
- 募集を終えた職種や、条件を変えた求人の古い文面のまま送る
固定残業代について、厚生労働省のリーフレットでは、採用する場合に基本給や固定残業代の額、何時間分か、超過分を追加で支払うことなどを記載する例が示されています。スカウトの文面で年収を書くなら、こうした内訳を求人票で示し、文面ではその存在を誤解なく伝えるようにしてください。
エラベルの見解
条件を正確に書くことは、法律の要請であると同時に、返信の質を上げることにもつながります。条件をぼかしたスカウトは、返信は来ても、面談で条件を知った候補者が辞退することが多くなります。面談に使った時間が無駄になり、候補者からの印象も悪くなります。
最初から年収の幅、勤務地、働き方の前提を正直に書いた文面は、返信の数は減ることがあっても、返信してきた人が選考に進む割合は高くなります。スカウトの効果は返信の数ではなく、その先の選考に進んだ数で見てください。
まとめ
- 職業安定法第5条の3は、募集の際に業務の内容、賃金、労働時間その他の労働条件の明示を求めている
- 第5条の4は、虚偽・誤解を生じさせる表示をしないこと、情報を正確かつ最新に保つことを求めている
- 2024年4月から、業務と就業場所の変更の範囲、有期契約の更新の基準が明示事項に加わった
- 文面で書き切れない場合でも、原則として最初に接触する時点までに全ての労働条件を明示する
- 文面の条件は求人票と同時に更新し、代行に出す場合は変えてよい範囲を決めておく
よくある質問
スカウトの文面に年収を書かなくてもよいですか
文面にすべての条件を書く必要はありませんが、求人票などで条件を示し、原則として面接など最初に接触する時点までに全ての労働条件を明示する必要があります。判断に欠かせない年収の幅などは、文面か求人票へのリンクで分かるようにしておくと、候補者も判断しやすくなります。
カジュアル面談の前にも条件を示す必要がありますか
カジュアル面談も候補者と最初に接触する場になりうるため、それまでに条件を示しておくのが安全です。求人票へのリンクを送るか、面談の案内と一緒に条件をまとめて送る形がおすすめです。個別の判断が必要な場合は、都道府県労働局などにご確認ください。
選考の途中で条件が変わったらどうすればよいですか
職業安定法では、最初に明示した条件を変更する場合などに、その変更内容を明示することが求められています。厚生労働省のリーフレットでも、変更内容の明示は速やかに行うよう示されています。変更が生じたら、候補者に書面やメールで変更点を伝えてください。
本記事は 2026-10-16 時点の公開情報にもとづいて作成しています。
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