採用代行 / デザイナー
デザイナーの母集団形成|応募が集まらないときに見直す順番
デザイナーの募集で起きる母集団の問題は、応募がまったく来ない場合と、応募は来るが領域が違う(UIデザイナーが欲しいのにグラフィックの人が来る、その逆)場合、ポートフォリオを見ても判断できず選考が止まる場合に分かれます。どれも、原因の多くは求人票と評価の体制にあります。結論を先に書くと、デザイナーの母集団形成は、「求人票で領域・作るもの・位置づけ・環境を示す」「出し先をデザイナーのいる場所にする」「スカウトをポートフォリオを見て個別化する」「選考にポートフォリオを評価する人が出る」の順に見直し、前の段階が直る前に次に進まないことが要です。デザイナーは、求人票で「何を作るか」「デザインがどう扱われるか」を読んで応募を決め、面接で「デザインの話が通じるか」を確かめます。代行に出す工程の線はデザイナー採用を代行に出す判断基準に、開発エンジニアの母集団形成はエンジニアの母集団形成にまとめています。
三つの症状を分ける
最初に、どの症状かを分けます。
応募がほとんど無い場合は、求人がデザイナーに届いていないか、届いても「何を作るか分からない」「デザインが軽く扱われそう」と読まれて見送られているかのどちらかです。前者は出し先、後者は求人票の問題です。
応募はあるが領域が違う場合は、求人票が領域を示していないことが原因です。「デザイナー募集」だけだと、UI・UX、グラフィック、ブランド、動画と、全部の領域の人が応募します。
ポートフォリオを見ても判断できず選考が止まる場合は、評価する人がいないことが原因です。応募はあるのに、誰も良し悪しを判断できず、面接に進めないか、進めても何を聞けばよいか分からない。
どの症状かは、応募者を領域で分類し、選考の各段階で何日かかっているかを見れば分かります。
見直す順番の一番目:求人票に「領域・作るもの・位置づけ・環境」があるか
求人票を開いて、次の六つが読み取れるかを確認します。
- 領域。 UI・UXか、グラフィックか、ブランドか、プロダクトか。一行目で分かる形に
- 作るもの。 入社後に最初に作るもの。「自社サービスの管理画面の改善」「広告とSNSの素材」「新サービスのブランド」のように具体的に
- デザインの位置づけ。 企画から関わって意思決定に加わるのか、決まったものを作るのか。最終判断を誰が持つか
- 環境と進め方。 ツール、開発やマーケティングとの関係、レビューの仕組み、リモートの可否
- チームの体制。 一人目か、チームに加わるか。デザインの分かる上司がいるか
- いまのデザインの状態。 整っているのか、これから作るのか。正直に
六つのうち、二つ目と三つ目が最も抜けます。作るものが無い求人票には「何をさせられるか分からない」と読まれ、位置づけが無い求人票には「作るだけの役かもしれない」と読まれます。
位置づけが「作る役」であることや、デザインの状態が整っていないことを隠さないことが要点です。「決まったものを高い品質で作ってほしい」「デザインの仕組みを一から作ってほしい」と書けば、それに合う人が応募します。隠すと、面接か入社後に離れます。
エラベルの見解
相談で多いのは、「デザイナーを募集して、応募は来るのに、ポートフォリオを見ても誰を面接に呼べばよいか分からない」というご相談です。応募者のポートフォリオを見ると、UIの人も、グラフィックの人も、動画の人も混ざっていて、求人票は「デザイナー募集。自社サービスのデザイン全般」。領域が示されておらず、評価する人もいない。応募が来ても、母集団形成としては機能していません。
見ていて差がつくのは、「一行目で領域と作るものを言えるか」です。「自社サービスの管理画面のUIを改善するデザイナー」と一行目に書けば、グラフィックの人は自分向けでないと分かり、UIの人は自分向けだと分かります。応募の総数は減りますが、UIの人の応募は増え、ポートフォリオの評価も領域が揃っているので比べやすくなります。エラベルでは、デザイナーの担当者に、求人票の一行目で領域と作るものを依頼側と決めるところから始めてもらっています。
見直す順番の二番目:出し先がデザイナーのいる場所か
求人票が整ったら、出し先を見ます。デザイナーは、ポートフォリオを公開する場や、デザインのコミュニティにいて、一般の求人媒体だけでは届きにくい。
| 出し先 | 向く状況 | 注意 |
|---|---|---|
| デザイナー向けの求人媒体 | 領域で探す候補者に届けたい | 媒体によって領域の登録者の多さが違う。公式情報で確認 |
| ポートフォリオを公開する場 | 作品を見て、こちらから声をかけたい | 作品を見て個別化したスカウトが前提。公開の場の規約を確認 |
| ダイレクトリクルーティングの媒体 | 領域に合う経歴の人に届けたい | 領域で検索を分ける。ポートフォリオを見て一行目を書く |
| デザインのコミュニティ・勉強会・発信 | 特定の領域の実践者と接点を作る | 採用の場ではない。関係を作ってから。自社のデザインの取り組みを発信する経路もある |
| 社員の紹介 | 社内にデザイナーやデザインに近い人がいる | 求人票の六つを社員に渡す。リファラルが進まない理由 |
| 制作会社からの転向層 | 事業会社で一つのサービスに長く関わりたい人 | 「自分で判断して育てたい」動機を訴求に。働き方の違いを面接で伝える |
| 業務委託・フリーランス | 一人目の前に、まず委託で | 正社員の前に委託で関係を作り、合えば正社員に、という経路。フリーランスへの委託 |
| 紹介会社 | 急ぎ | デザイナーの領域の区別が付く紹介会社か |
出し先の要点は、「ポートフォリオを公開する場から、作品を見てこちらから声をかける」経路が、デザイナーに特有だという点です。作品を見て「この作品のこの点が、自社の課題に合う」と一行目に書けるので、返信が来やすい。
見直す順番の三番目:スカウトがポートフォリオを見て個別化されているか
ダイレクトリクルーティングやポートフォリオの場で返信が来ない場合、文面を見ます。デザイナーへのスカウトで最も多い失敗は、ポートフォリオを見ずに、経歴の肩書だけで定型文を送ることです。
デザイナーは、スカウトの一行目で「自分の作品を見たか」を判断します。見ていないと分かれば、以降は読みません。一行目で、ポートフォリオの具体的な一点(どの作品の、どの点)に触れ、それが自社の課題とどう重なるかを書く。「〇〇のサービスの管理画面の設計で、〇〇の課題を〇〇の方法で解決されていた点を拝見しました。当社の管理画面でも、同じ課題があります」。その後に、領域、作るもの、位置づけ、環境、チームを書きます。文面の型はデザイナー向けスカウト文面の型に詳しく書きます。
送信数より、ポートフォリオを見て一行目を書いた通数を見ます。一通あたりの時間は定型文の数倍かかりますが、返信は増えます。
見直す順番の四番目:選考にポートフォリオを評価する人が出ているか
応募も返信もあるのに、選考で止まる、または面接で辞退される場合、評価の体制を見ます。デザイナーの候補者は、面接で「デザインの話が通じるか」「デザインがどう扱われるか」を確かめます。人事と経営者だけの面接では、作品の話ができず、「デザインを分かっていない会社」と判断されます。
選考には、ポートフォリオを評価する人(社内のデザイナー、いなければ外部のデザインの分かる人)が出ます。評価の型(目的に合っているか、制約の中で設計しているか、説明できるか)を作り、面接で「このデザインの目的と制約と判断の理由」を聞く。候補者は、この質問で「分かっている会社」と判断します。
評価する人の時間は、採用の前に確保しておきます。外部の人に頼む場合は、とくに先に。
社内で持つ工程と、外に出せる工程
| 段階 | 社内で持つ | 外に出せる |
|---|---|---|
| 求人票の中身 | 領域、作るもの、位置づけ、環境、チーム、デザインの状態を社内が出す | 聞き取って候補者に伝わる言葉にする。一行目の案 |
| 出し先 | 予算と契約の判断 | 領域に合わせた経路の提案、ポートフォリオの場の運用、数の整理 |
| スカウト | 領域と作るものの確定 | 領域で分けた検索、ポートフォリオを見た一行目の個別化、送信、一次対応 |
| 選考 | 評価する人の確保、評価の型の確定、ポートフォリオと実技の評価 | 一次返信、日程調整、領域の分類、進捗の管理 |
分け方の要点は、「ポートフォリオの評価は社内(か外部の評価者)、ポートフォリオを見た個別化は代行に出せる」ことです。評価と個別化は別の作業で、後者はデザインの質の判断ではなく、作品の一点と自社の課題の重なりを見つける作業です。
エラベルの見解
担当する側から見ると、デザイナーの母集団形成で最も効くのは、求人票の一行目で領域と作るものを示すことと、スカウトでポートフォリオの一点に触れることです。この二つで、応募の総数は減りますが、領域が合う応募が増え、返信の率が上がります。依頼側から「応募が減った」と言われることがあるので、報告では応募の総数ではなく、領域が合う応募の数と、ポートフォリオを見て送った通数の返信率を並べて示しています。
エラベルでは、デザイナーの案件で担当者を紹介するとき、最初の一か月は求人票の六つの項目を社内と一緒に埋め、評価する人と評価の型を用意することに使うようお伝えしています。評価の体制が無いまま母集団を作っても、選考が止まります。順番を守ることが、採用まで進む最短の道です。
まとめ
- デザイナーの母集団の問題は応募が来ない・領域が違う人が来る・評価できず選考が止まるの三つ
- 見直す順番は求人票の領域・作るもの・位置づけ・環境→出し先→スカウトのポートフォリオを見た個別化→選考に評価する人。前の段階が直る前に次に進まない
- 求人票には領域(一行目)・作るもの(具体的に)・位置づけ(正直に)・環境と進め方・チーム・デザインの状態の六つ
- 出し先はポートフォリオを公開する場から作品を見て声をかける経路がデザイナーに特有。制作会社からの転向層も
- スカウトはポートフォリオの一点に触れる。送信数より、見て書いた通数の返信率
- 選考にはポートフォリオを評価する人が出て、目的・制約・判断の理由を聞く
よくある質問
位置づけが「決まったものを作る役」です。正直に書くと応募が減りませんか
減るのは、企画から関わりたい人で、その人は入社後に「作るだけ」と分かって離れる人です。「決まったものを、高い品質で作ってほしい」「企画は事業側が決め、デザイナーは実現の質を担う」と正直に書くと、作ることに集中したい人、品質にこだわりたい人が応募します。この層は、意思決定に関わることより、良いものを作ることに動機がある人で、作る役に合います。位置づけを隠して「幅広く関われる」と書くと、企画に関わりたい人が来て離れ、作ることに集中したい人は「自分には向かない」と見送ります。
ポートフォリオを公開する場で、どう声をかければよいですか
作品を見て、具体的な一点に触れます。「〇〇の作品で、〇〇の課題を〇〇の方法で解決されている点を拝見しました。当社の〇〇でも同じ課題があり、ご一緒できないかと思いご連絡しました」。作品の一点と自社の課題の重なりが一行目にあれば、候補者は「見ている」と分かります。公開の場ごとに、採用目的の連絡に関する規約があるので、確認してから送ります。返信が来たら、作るものと位置づけと環境を伝え、評価する人が出る短い面談を提案します。
一人目のデザイナーを、いきなり正社員で採るのが不安です
業務委託やフリーランスで、まず一つの案件を一緒にやってから、合えば正社員に、という経路があります。デザイナーは、作品と実際の仕事の進め方を見て判断する職種で、一つの案件を一緒にやれば、ポートフォリオでは分からない部分(制約への対応、関係者との調整、説明の仕方)が見えます。候補者にとっても、社内のデザインの位置づけを実際に確かめられます。最初から正社員で募集するより、委託から始める形を求人票やスカウトに書くと、慎重な候補者にも届きます。雇用の形の判断は、専門家にご確認ください。