採用代行 / デザイナー

デザイナーの採用要件の作り方|必須と歓迎を分ける基準

公開 2026-09-16

デザイナーの求人票の必須要件には、「UI・UXデザインの経験」「グラフィックデザインの経験」「特定のツールの習熟」「大手や有名なサービスでの実績」「センスのある方」「経験五年以上」が並びがちです。全部を満たす人は市場に少なく、「センス」は要件として確かめようがありません。結論を先に書くと、デザイナーの採用要件は、先に領域(UI・UX、グラフィック、ブランド、プロダクト)と位置づけ(企画から関わるか、作る役か)を決め、必須を「入社初日に自社で作るものが成り立つか」で三つ以内に絞り、ツール・実績の華やかさ・センス・年数は必須にせず、ポートフォリオで確かめられる経験の中身(何を、誰のために、どんな制約で、どう作ったか)で書くと、母集団が生まれ、評価の基準も定まります。領域と位置づけを決めずに要件を積むと、全部の領域の要件が混ざり、誰にも当てはまらなくなります。代行に出す工程の線はデザイナー採用を代行に出す判断基準に、開発エンジニアの要件はエンジニアの採用要件の作り方にまとめています。

デザイナーで要件が膨らむ理由

他の職種と共通する理由(現場の希望を全部書く、前任者を基準にする、失敗を避けたい)に加えて、デザイナーに特有の理由があります。

一つ目は、領域を全部求めることです。UI・UX、グラフィック、ブランド、動画、3D。一人で全部を高い水準でこなす人は少なく、求人票に全部を並べると、全部を経験した人を探すことになります。

二つ目は、ツールを必須にすることです。デザインのツールは、同種のものを使っていれば数週間で移行できます。ツールを必須にすると、別のツールで同じ仕事をしてきた人を弾きます。

三つ目は、実績の華やかさを求めることです。大手や有名なサービスでの実績は、経歴として目立ちますが、自社で作るものと関係しません。有名な案件の一部を担当した人と、無名の案件を一人で設計から担った人では、後者のほうが自社に合うこともあります。

四つ目は、「センス」を要件にすることです。センスは、確かめようがなく、評価する人の好みで判断することになります。要件に書くと、評価の基準が無いことの表れになります。

五つ目は、年数です。年数と、自社で作るものを作れるかは一致しません。

必須と歓迎を分ける基準

基準は「入社初日に、自社で作るものが成り立つか」です。デザイナーでは「自社で作るもの」を先に決めます。管理画面の改善なら、管理画面や業務システムの設計の経験。広告の素材なら、広告の制作の経験。ブランドの刷新なら、ブランドの設計の経験。

項目の例必須になる場合歓迎になる場合
領域の経験自社で作るものと同じ領域の経験は必須他の領域は歓迎
作るものの種類の経験管理画面、広告、ブランドなど、自社で最初に作るものと近い種類近くない種類は歓迎
制約の中で設計した経験納期・技術・予算の制約があるものを作った経験(実務の経験)制約の緩い自主制作だけなら歓迎
開発やマーケティングと協働した経験UI・UXで開発と一緒に作る役割、グラフィックでマーケティングと一緒に作る役割一人で完結する制作なら歓迎
企画から関わった経験位置づけが「企画から関わる」場合位置づけが「作る役」なら歓迎
目的を説明できること作ったものの目的と判断の理由を説明できる(ポートフォリオと面接で確かめる)
特定のツール必須にしない。同種のツールの経験を歓迎に
実績の華やかさ必須にしない。「一人で設計から担った経験」を歓迎に
センス要件にしない。評価の基準を型にする
経験年数必須にしない

基準の要点は、「制約の中で設計した経験を必須にし、実績の華やかさを必須にしない」ことです。自社で作るものには、納期・技術・予算の制約があります。制約の中で設計した経験がある人は、自社でも作れます。有名な案件の実績は、制約の中で設計した経験の証明にはなりません。

エラベルの見解

相談で多いのは、「有名なサービスのデザインをした経験があって、UIもグラフィックもできて、センスのある人」というご要望です。この要件で来る人は少なく、来ても、自社の管理画面の改善という地味な仕事を「物足りない」と感じることがあります。要件を「自社で最初に作るものが成り立つか」で問うと、有名な実績もセンスも要らず、「管理画面の設計を、開発の制約の中で、目的を説明しながら作った経験」だけが残ります。

見ていて差がつくのは、「自社で最初に作るものから、必須を逆算しているか」です。「管理画面の改善」なら、管理画面か業務システムの設計の経験、開発と協働した経験、目的を説明できること、の三つ。ツールも実績もセンスも、歓迎か不要です。エラベルでは、デザイナーの要件を整理するとき、依頼側に「最初に作るもの」を先に決めていただき、そこから必須を逆算しています。作るものが決まっていない会社は、要件の前に、作るものを決める打ち合わせから始めています。

必須を三つに絞る手順

デザイナー向けに、絞る手順を番号付きで整理します。

  1. 領域を決める。 UI・UX、グラフィック、ブランド、プロダクトのどれか。
  2. 最初に作るものを決める。 入社後に最初に手を付けるもの。具体的に。
  3. 位置づけを決める。 企画から関わるか、作る役か。最終判断を誰が持つか。
  4. 現場(作るものを使う事業側、開発やマーケティング)の希望を全部書き出す。 ここでは絞らない。
  5. 一つずつ、「初日に自社で作るものが成り立つか」を問う。 成り立たないものだけ残す。
  6. 残ったものが三つを超えたら、「入社後に覚えられるか」「別の担当や委託先が持てるか」を問う。 ツール、他の領域は歓迎へ。
  7. ツール・実績・センス・年数を、ポートフォリオで確かめられる経験の中身に書き換える。 「センスのある方」ではなく「目的と制約を踏まえて設計し、判断の理由を説明できる方」。
  8. 歓迎に回したものを、優先順位を付けて三〜五つ書く。 面接で見る点になる。
  9. 評価の型を作る。 目的に合っているか、制約の中で設計しているか、説明できるか。ポートフォリオと面接で使う。
  10. 事業側・開発やマーケティングの責任者・評価する人・人事で確認する。 「この三つがあれば、他は入社後に補える」と言えるか。

手順の要点は、「九で、評価の型を要件と一緒に作る」ことです。デザイナーは、要件を決めても、評価の型が無いと「センス」で判断することになります。要件と評価の型は、同時に作ります。

ポートフォリオで確かめられる要件と、面接でしか分からない要件

デザイナーでは、ポートフォリオが評価の中心ですが、ポートフォリオだけでは分からないこともあります。確かめ方を区別します。

確かめる方法要件の例見方
ポートフォリオで確かめられる領域、作ったものの種類、完成度、一貫性、量書類の一次絞りで。領域と種類が自社と合うか。見た目の好みではなく、種類と完成度
ポートフォリオでは分からない目的と制約と判断の理由、協働の仕方、修正への対応、自分の担当範囲(チームで作ったものの、どこを担ったか)面接で、評価する人が聞く。「この作品の目的は、制約は、なぜこの判断を」。構造化面接
ポートフォリオでも面接でも分かりにくい実際の作業の速さ、制約の中での品質の保ち方短い実技の課題(自社の課題を題材に、負担の小さい範囲で)や、業務委託での試行

分け方の要点は、「ポートフォリオで自分の担当範囲を確かめる」ことです。チームで作ったものを、全部自分が作ったように見せるポートフォリオがあります。面接で「この作品で、あなたが担当したのはどこですか」と聞き、担当範囲を確かめます。

転向層を母集団に入れる要件の書き方

デザイナーの経験者は領域ごとに分かれ、自社の領域の経験者だけを待つと母集団が狭くなります。転向層を入れる書き方を整理します。

転向元持っているもの要件の書き方
隣接する領域のデザイナー別の領域の設計の経験、ツールの習熟、目的を考える力「〇〇(自社の領域)に近い領域での設計の経験」。自社の領域そのものは歓迎に。入社後に自社の領域を覚える前提
制作会社のデザイナー多くの案件を制約の中で回した経験、幅広い種類「制約の中で多様な案件を完成させた経験」。事業会社の働き方は面接で確認
フロントエンドのエンジニア(UI・UXの場合)実装の理解、開発との協働「画面の設計と実装の両方に関わった経験」。デザインの手法は歓迎に
マーケティングの担当(グラフィックの場合)目的(何を伝えるか)から考える力「目的から素材を企画・制作した経験」。制作の技術は歓迎に
デザイナーの経験者領域による上の書き方で、経験者も当然に入る

書き方の要点は、「隣接する領域からの転向を、必須の書き方で受け入れる」ことです。「UI・UXの経験」を必須にすると、グラフィックからUIに移りたい人を弾きます。「画面や業務の設計に近い領域の経験」と書けば、隣接する領域の人が応募でき、入社後に自社の領域を覚えてもらう前提で採れます。

要件が決まらないときの原因

原因起きていること直し方
領域が決まっていない「デザインができる人」領域を一つ決める
最初に作るものが決まっていない「デザインを良くしたい」最初に作るものを具体的に
位置づけが決まっていない「幅広く関わってほしい」企画から関わるか、作る役かを決める
領域を全部書いている「UIもグラフィックもブランドも」最初に作るものの領域だけを必須に
センスを要件にしている評価の基準が無い評価の型(目的・制約・説明)を作る
実績の華やかさで書いている有名な案件を求める「一人で設計から担った経験」に書き換える
評価する人が要件の議論にいない人事と経営だけで決めている社内のデザイナーか外部のデザインの分かる人を要件の整理に入れる
市場の実態を知らない「この要件で普通にいるはず」代行や媒体に、その要件での人数を聞く

原因の要点は、「センスを要件にしている」ことがデザイナーに特有だという点です。センスを要件にすると、評価が好みになり、要件が定まりません。評価の型を作ると、センスという言葉が要らなくなります。

代行に出せる工程

工程社内で持つ代行に出せる
領域・作るもの・位置づけの決定判断決める打ち合わせの進行
必須と歓迎の分離「初日に成り立つか」の判断は社内問いを立て、一つずつ確認する進行
ツール・実績・センス・年数の書き換え中身は社内が出すポートフォリオで確かめられる経験の中身の言葉に直す
評価の型の作成評価する人が決める型の案を出す
転向層を入れる要件の設計判断隣接する領域からの書き方の提案
市場の実態の確認判断その要件での人数を示す
求人票への反映確認書く
ポートフォリオの一次絞り完成度と質の妥当性領域と種類の分類
面接で見る点の整理評価する人が使う歓迎の要件と、評価の型に沿った質問の案

分け方の要点は、「評価の型は、評価する人が決める」ことです。代行は型の案を出せますが、自社で何を良いデザインとするかは、社内か外部の評価者が決めます。

エラベルの見解

担当する側から見ると、デザイナーの要件で最も時間がかかるのは、依頼側が「センス」という言葉を手放すことです。「センスのある人が欲しい」は、評価の基準が無いことの言い換えで、この言葉を要件から外し、「目的に合っているか、制約の中で設計しているか、説明できるか」という評価の型に置き換えると、要件が定まります。

エラベルでは、デザイナーの案件で要件が整理されていない場合、担当者の最初の仕事を「作るものを決め、評価の型を作る打ち合わせの進行」にすることをお勧めしています。募集が始まるのは数週間遅れますが、作るものから逆算した要件と評価の型があれば、ポートフォリオの一次絞りも面接も、好みではなく型で進められます。

まとめ

よくある質問

「センス」を要件にしないと、見た目の良し悪しを判断できなくなりませんか

「センス」を要件にすると、判断の基準が評価する人の好みになり、人によって評価が変わります。「目的に合っているか」「制約の中で設計しているか」「判断の理由を説明できるか」の三つを評価の型にすると、見た目の好みではなく、実務の力で判断できます。見た目の良し悪しは、この三つの結果として表れるもので、目的に合い、制約を踏まえ、理由を説明できるデザインは、見た目も整っていることが多い。センスという言葉を使わずに、型で見るほうが、評価が安定します。

有名なサービスのデザインをした人のほうが、安心して任せられませんか

有名なサービスでの実績は、その人がどこを担当したか、どんな制約だったかが分からないと、自社で作れるかの証明になりません。チームで作ったものの一部を担当した人と、無名のサービスを一人で設計から担った人では、自社の一人目や少人数の体制では後者のほうが合うことがあります。実績の華やかさは歓迎にとどめ、面接で「この作品で、あなたが担当したのはどこか」「制約は何だったか」を聞き、担当範囲と制約の中での設計を確かめます。

自社のツールを使える人を必須にしてよいですか

歓迎にとどめます。デザインのツールは、同種のものを使っていれば数週間で移行できます。必須にすると、別のツールで同じ仕事をしてきた人を弾き、市場が狭くなります。「同種のデザインツールの経験」と種類で書き、自社のツールは「使用しているのは〇〇」と情報として求人票に書きます。候補者は、自分の経験で移行できるかを判断できます。ツールの習熟より、目的と制約を踏まえて設計できるかのほうが、自社で作れるかを決めます。