採用代行 / デザイナー
デザイナー向けスカウト文面の型|刺さる訴求と外す訴求
デザイナーにスカウトを送っても返信が来ない会社の文面には、共通点があります。ポートフォリオを見ずに、経歴の肩書で「デザイナーを募集しています」から始まり、会社の紹介が続き、「ぜひお話を」で終わる。デザイナーは、一行目で「自分の作品を見たか」を判断し、見ていないと分かれば閉じます。結論を先に書くと、デザイナーへのスカウトは、領域とポートフォリオで対象を絞り、一行目でポートフォリオの具体的な作品の一点と自社の課題の重なりに触れ、領域・作るもの・デザインの位置づけ・環境を先に書き、会社の紹介は後ろに回す型にすると、同じ送信数で返信が変わります。母集団形成の全体はデザイナーの母集団形成に、開発エンジニア向けの文面はエンジニア向けスカウト文面の型にまとめています。
デザイナーがスカウトを読まない理由
他の職種と共通する理由(定型文は読まれない)に加えて、デザイナーに特有の理由があります。
一つ目は、作品を見たかどうかが一行目で分かることです。デザイナーは、ポートフォリオを公開していることが多く、見ようと思えば見られる。見ていないスカウトは、「自分に興味が無い会社」と読まれます。経歴の肩書に触れるだけでは、見たことにはなりません。
二つ目は、「何を作るか」が最初の関心事だということです。デザイナーは、会社の事業より、入社後に何を作るかで判断します。作るものが書かれていないスカウトは、判断ができません。
三つ目は、デザインの位置づけを見ることです。企画から関わって意思決定に加わるのか、決まったものを作るのか。位置づけが書かれていないと、「作るだけの役かもしれない」または「自分には荷が重いかもしれない」と、どちらにも読まれます。
四つ目は、見た目の言葉に敏感なことです。「センスのある方」「おしゃれなデザイン」といった言葉は、デザインを見た目でしか捉えていない会社の合図として読まれます。
この四つから、文面の型が決まります。作品の一点、作るもの、位置づけ、見た目の言葉を使わない。
先に決めるのは対象:領域とポートフォリオで絞る
文面の前に、誰に送るかを決めます。デザイナーでは、「領域」の決定と、「ポートフォリオを見て自社の課題と重なる一点があるか」の確認が、対象の絞り込みです。
領域で絞ります。UI・UXなら、画面やサービスの設計の作品がある人。グラフィックなら、広告や印刷物やSNSの素材の作品がある人。ブランドなら、ロゴやアイデンティティの設計の作品がある人。「デザイナー」の肩書だけで検索すると、全部が混ざります。
領域の中で、ポートフォリオを見て、自社の課題と重なる一点がある人に絞ります。自社の管理画面の改善が課題なら、管理画面や業務システムの設計の作品がある人。自社のブランドの刷新が課題なら、ブランドの設計の作品がある人。重なる一点が見つからない人には、一行目が書けないので、送りません。
対象を決めると送信数は減りますが、一通あたりポートフォリオを見る時間がかかるので、送信数が減ることは自然です。減った分は、一行目が書けない人で、送っても返信は来ません。スカウトの対象の絞り方も参考になります。
エラベルの見解
相談で多いのは、「デザイナーに月に数十通送っているが、返信がほとんど無い」というご相談です。文面を見ると、一行目が「デザイナーを募集しております」、二行目が会社の紹介、ポートフォリオには触れておらず、「センスを活かせる環境です」と書かれています。デザイナーから見ると、作品を見ていない、何を作るか分からない、見た目でしか捉えていない、の三つがそろっています。
見ていて差がつくのは、「一行目で、ポートフォリオの作品の一点と自社の課題の重なりを言えるか」です。「〇〇のサービスの設定画面で、項目が多い中で優先順位を整理されていた点を拝見しました。当社の管理画面でも、同じ課題があります」。この一行で、候補者は「見ている」「何を作るか分かる」と判断します。エラベルでは、デザイナーの担当者に、送信数の目標を置かず、「ポートフォリオを見て一行目を書いた通数」を報告してもらっています。この通数と返信数は、ほぼ連動します。
文面の型:一行目は作品の一点、次に作るものと位置づけ
| 順 | 中身 | 書き方 |
|---|---|---|
| 一 ポートフォリオの作品の一点 | どの作品の、どの点が、自社の課題と重なるか | 「〇〇の作品で、〇〇の課題を〇〇の方法で解決されていた点を拝見しました」 |
| 二 自社の課題との重なり | その一点が、自社の何と重なるか | 「当社の〇〇でも、同じ課題があり、ご一緒できないかと思いました」 |
| 三 領域と作るもの | どの領域で、入社後に最初に何を作るか | 「自社サービスの管理画面のUIの改善から始めていただきたい」 |
| 四 デザインの位置づけ | 企画から関わるか、作る役か。最終判断を誰が持つか | 「企画の段階からデザイナーが入り、UIの最終判断はデザイナーが持つ体制です」または「決まった仕様を高い品質で実現する役です」 |
| 五 環境と進め方 | ツール、開発やマーケティングとの関係、レビュー、リモート | 具体的に |
| 六 チームの体制 | 一人目か、チームに加わるか。デザインの分かる上司がいるか | 一人目なら、一人目ならではの範囲 |
| 七 いまのデザインの状態 | 整っているか、これから作るか | 正直に |
| 八 会社の紹介 | 事業と規模を短く | 三行以内 |
| 九 次の一歩 | 作品の話ができる人が出る短い面談 | 「デザインの分かる者と一緒に、作品の話をさせてください」 |
型の要点は、「一で作品の一点、三で作るもの、四で位置づけを、会社の紹介より前に書く」ことです。デザイナーは、会社の事業より、作品を見たか、何を作るか、どう扱われるかで判断します。
刺さる訴求と、外す訴求
| 刺さる訴求 | 外す訴求 |
|---|---|
| ポートフォリオの具体的な作品の一点 | 「素晴らしい作品を拝見しました」。どの作品のどこかが無い |
| 入社後に最初に作るものの具体 | 「自社サービスのデザイン全般」 |
| デザインの位置づけの具体(企画から、または作る役。最終判断は誰か) | 「幅広く関われます」「裁量があります」 |
| いまのデザインの課題の正直な記述 | 良いことだけ |
| 開発やマーケティングとの関係、レビューの仕組み | 「風通しが良い」「アットホーム」 |
| 一人目なら、デザインの仕組みを作る裁量 | 「一人目として活躍」だけ |
| デザインの分かる人がいる(いるなら)、いないなら外部の相談相手がいる | 「優秀なメンバー」 |
| デザインの成果がどう使われ、どう評価されるか | 「センスを活かせる」「おしゃれな」「クリエイティブな」 |
| ユーザーや顧客に触れる機会(UI・UXなら) | 「ユーザーファースト」だけ |
訴求の要点は、「見た目の言葉を使わない」ことです。「センス」「おしゃれ」「クリエイティブ」は、デザインを見た目でしか捉えていない会社の合図として読まれます。作るもの、位置づけ、課題、進め方の具体で書きます。
送った後の運用
返信が来たあとの運用で、デザイナーに特有の注意を整理します。
一つ目は、面談に作品の話ができる人が出ることです。デザイナーの候補者は、面談で「デザインの話が通じるか」を確かめます。人事だけの面談では、作品の話ができず、「分かっていない会社」と判断されます。社内のデザイナーか、外部のデザインの分かる人が出て、作品の目的・制約・判断の理由を聞きます。
二つ目は、面談で位置づけと状態を隠さないことです。「最終判断は事業側が持つ」「デザインの仕組みはこれから」。隠して入社してもらっても、すぐに分かります。
三つ目は、返信が来た候補者に、作品の話を先にすることです。いきなり応募書類や実技の課題を求めると止まります。まず作品の話をする面談を提案し、互いに合うかを見てから、次の段階に進みます。
四つ目は、返信の速さと記録です。他の職種と同じく、返信にはその日か翌日、送った記録は依頼側の環境に。スカウトの重複防止も参考になります。
代行に出せる範囲
| 工程 | 代行に出せる | 社内で持つ |
|---|---|---|
| 対象の決定 | 領域で絞る検索の条件の提案 | 領域と作るものの確定 |
| 検索と一覧化 | 出せる。領域で | — |
| ポートフォリオを見て重なる一点を見つける | 出せる。自社の課題を理解していれば | 自社の課題を代行に伝える |
| 文面の型作り | 出せる | 作るもの・位置づけ・環境・状態の中身を社内が出す |
| 一行目の個別化 | 出せる。作品の一点を書く | — |
| 送信 | 出せる | 名義と時間帯 |
| 返信の一次対応 | 出せる | — |
| 面談の設定 | 出せる | 作品の話ができる人の面談の枠の確保 |
| 面談 | — | 作品の話ができる人が出る |
| 記録と数の整理 | 出せる | — |
分け方の要点は、「ポートフォリオを見て重なる一点を見つける作業は、デザインの質の評価ではなく、自社の課題との重なりを見つける作業なので、代行に出せる」ことです。ただし、自社の課題(管理画面の項目が多い、ブランドの統一が無い、など)を代行に具体的に伝えておく必要があります。評価は社内か外部の評価者です。
エラベルの見解
担当する側から見ると、デザイナーのスカウトで最も時間がかかるのは、ポートフォリオを一つずつ見て、自社の課題と重なる一点を見つける作業です。一通あたり、定型文の何倍もの時間がかかります。送信数は減りますが、返信は増えます。依頼側から「送信数が少ない」と言われることがあるので、報告では送信数と返信数を並べ、ポートフォリオを見て送った通数の返信率を示しています。
エラベルでは、デザイナーの案件で担当者を紹介するとき、依頼側に「自社のデザインの課題」を具体的に伝えていただき、それが担当者に渡ってからポートフォリオを見る作業に入るようお伝えしています。課題が具体的なら、担当者は重なる一点を見つけられます。「デザインを良くしたい」だけでは、重なる一点が見つからず、定型文に戻ります。
まとめ
- デザイナーがスカウトを読まない理由は作品を見たかが一行目で分かる・何を作るかが最初の関心事・位置づけを見る・見た目の言葉に敏感
- 先に決めるのは対象。領域と、ポートフォリオに自社の課題と重なる一点があるかで絞る
- 文面の型は一行目に作品の一点→自社の課題との重なり→領域と作るもの→位置づけ→環境→体制→状態→会社の紹介(短く)→作品の話ができる人が出る面談
- 刺さる訴求は作品の一点・作るもの・位置づけ・課題・進め方の具体。外す訴求は「センス」「おしゃれ」「クリエイティブ」などの見た目の言葉
- 面談には作品の話ができる人が出て、位置づけと状態を隠さない。作品の話を先に
- 代行に出せるのは領域で絞った検索・ポートフォリオを見た重なりの発見・個別化・送信・一次対応・面談の設定・記録。自社の課題を代行に具体的に伝える
よくある質問
ポートフォリオを見る時間が取れません。肩書と経歴で送ってはいけませんか
肩書と経歴だけで送ると、デザイナーには「見ていない」と分かり、返信は来ません。送っても返信が来ない通数を増やすより、ポートフォリオを見て一行目を書ける通数を、時間の範囲で送るほうが、返信の数は増えます。時間が足りないなら、対象をさらに絞り(領域を狭く、自社の課題に近い作品がある人だけ)、通数を減らします。ポートフォリオを見る作業は、自社の課題を具体的に伝えれば、代行に出せます。
「センスのある方」と書かないと、デザイナーには伝わらない気がします
逆です。「センス」は、デザインを見た目でしか捉えていない会社の合図として読まれ、経験のあるデザイナーほど見送ります。デザイナーが知りたいのは、何を作るか、どう扱われるか、どんな課題があるか、誰と働くかです。「センスを活かせる」の代わりに、「管理画面の項目が多く、優先順位の整理が課題です。この課題を設計で解く方を探しています」と書けば、課題に反応するデザイナーが返信します。見た目の言葉を消して、具体を足します。
デザインの分かる人が社内におらず、面談で作品の話ができません
外部のデザインの分かる人(デザインを委託している会社の担当、知人のデザイナー、顧問)に、面談の同席だけを頼みます。採用の前に、その人の時間を確保しておきます。それも難しい場合は、面談で「このデザインの目的は何か」「制約は何だったか」「なぜこの判断をしたか」の三つを聞き、答え方(目的を言えるか、制約を踏まえているか、判断の理由を説明できるか)で見ます。この三つは、デザインの分からない人でも、答えの筋道で一定の判断ができます。ただし、一人目の採用で評価がまったく無いのは危ういので、外部の評価を一度は入れることをお勧めします。