採用代行 / 比較・選び方
引き継ぎ資料に含める内容
採用代行の担当者が交代するとき、あるいは契約が終わるとき。引き継ぎ資料に何が含まれているかで、次の立ち上がりが変わります。成果物だけを受け取っても、なぜそうしたかが分からなければ、次の担当者は触れません。この記事では、資料に含める項目と、選定の段階で確認しておく観点を整理します。切り替え全体の手順は切り替えるときの引き継ぎ項目にまとめています。
三つの層で構成する
一.成果物。形のあるもの。求人原稿、スカウト文面、検索条件、テンプレート。受け取れば残ります。
二.判断の理由。なぜその条件にしたか、なぜこの層を外したか、なぜ文面を変えたか。書いてもらわないと消えます。
三.状況。進行中の候補者、直近の数字、いま試していること。引き継ぎの時点でしか記録できません。
多くの引き継ぎ資料は、一番目だけで作られます。二番目と三番目が入っているかで、資料の価値が決まります。
一.成果物として含めるもの
- 求人原稿(媒体ごとの入稿内容を含む)
- スカウト文面(職種別、送信タイミング別)
- 候補者の検索条件
- 応募者への連絡テンプレート(受付、日程案内、不採用、辞退への返信)
- 選考フローと面接の案内文
- 採用要件の整理(必須と歓迎、落とす理由)
編集できる形式で受け取ることが条件です。閲覧しかできない形だと、次の担当者が改稿できません。
二.判断の理由として含めるもの
- 検索条件の設計意図(なぜこの条件か、どの層を外したか、その理由)
- 文面の設計意図(何を訴求しているか、なぜその順番か)
- 落とす基準の運用(実際にどう判断してきたか、迷った事例)
- 経路ごとの傾向(どの媒体からどんな候補者が来るか)
- 条件を変えた履歴(いつ、何を、なぜ変えたか)
このうち、一番目が最も重要です。条件そのものは受け取れても、意図が分からないと次の担当者は変更できません。触れない条件は、そのまま使われ続けます。
三.状況として含めるもの
- 進行中の候補者の一覧(誰が、どの段階で、次に何をする予定か)
- 接触中だが選考に至っていない候補者
- 直近の数字(送信、返信、面談設定、書類通過)
- いま試していること(変更したばかりで結果が出ていない施策)
- 保留になっている論点(決まっていないこと、相談中のこと)
四番目と五番目が抜けやすい。引き継ぎの時点で進行中のものは、記録に残っていないことがあります。
エラベルの見解
引き継ぎ資料に、「うまくいかなかった試み」の欄を作ってもらってください。ここが最も価値のある部分です。
試したが反応が薄かった文面。合わなかった媒体。検索条件から外したが迷った層。断られた候補者の理由。これらは、成功した施策の記録より役に立ちます。
理由は単純で、次の担当者が同じことを繰り返さずに済むからです。引き継ぎ資料に成功の記録だけが並んでいると、失敗はまた繰り返されます。そして、その試行にかかる時間は発注側の稼働です。
ところが、この欄は依頼しないと作られません。引き継ぎ資料は普通、うまくいっている運用の説明として作られるからです。
だから、明示的に求めてください。「試したが効果が薄かった施策も含めて」と一言添えるだけで、資料の中身が変わります。
そして、この記録は自社の資産として残ります。代行会社が三社目に替わっても、一社目と二社目で試したことが分かっていれば、四社分の時間を使わずに済みます。
引き継ぎは、次の担当者のためだけの作業ではありません。自社に採用の履歴を残す作業です。
担当者交代のときと契約終了のときの違い
担当者が交代する場合
- 会社は同じなので、社内の記録は残っています
- 資料に加えて、重複期間を置けると精度が上がります
- 引き継ぎの稼働は、発注側の契約時間から消費しない建て付けにしておきます
- 交代後の担当者に、同じ条件を満たしてもらうことを確認します
契約が終わる場合
- 会社が変わるので、すべてを自社に受け取る必要があります
- 候補者データ、稼働報告の履歴、権限の整理も含まれます
- 受け取った後に確認してから、削除を依頼します
- 次の依頼先に渡す形に整理してから渡します
後者のほうが範囲が広くなります。データの扱いは契約終了時に返してもらうデータにまとめています。
選定の段階で確認する
引き継ぎ資料の質は、契約前に確認できます。
引き継ぎ資料の様式はありますか
決まった様式がある会社は、交代を想定した運用をしています。
含まれる項目を教えてください
成果物だけか、判断の理由まで入るか。
うまくいかなかった試みも記録されますか
この質問への答えで、記録の文化が分かります。
担当者が交代する場合、重複期間は置けますか
資料だけの引き継ぎと、並走しての引き継ぎでは伝わる内容が違います。
引き継ぎの稼働はどちらが持ちますか
交代は受託者側の事情で起きるため、発注側の稼働を消費しない建て付けが自然です。
この五つに答えられる会社は、終わり方が整っています。終わり方が整っている会社は、始め方も整っていることが多い。
資料を受け取った後
内容を確認する。項目が揃っているか、形式が使えるか。確認してから削除を依頼します。
整理してから次に渡す。現行のものと過去のものを分け、職種ごとにまとめる。そのまま渡すと、次の担当者は判断から始めます。
現状を一枚にまとめる。募集中の職種、これまでの実績、進行中の候補者、うまくいっている部分といない部分。
自社の環境に保管する。共有のドライブか、採用管理システム。次の交代のときにも使います。
更新の担当を決める。受け取った資料は、運用の中で古くなります。誰が更新するかを決めておきます。
エラベルの見解
引き継ぎ資料を、「交代のときに作るもの」から「日々の運用で溜まるもの」に変えてください。ここが変わると、質が大きく上がります。
交代が決まってから作る資料は、思い出しながら書くことになります。判断の理由は忘れられていますし、うまくいかなかった試みも記録に残っていません。結果として、成果物の一覧に近いものになります。
一方、稼働報告に判断の理由と失敗の記録を毎月書いてもらっていれば、その蓄積がそのまま引き継ぎ資料になります。交代のときにやるのは、まとめる作業だけです。
だから、契約の段階で報告の項目を決めておいてください。工程ごとの内訳、成果物の量、判断の理由、うまくいかなかったこと、担当者名。
この設計をしておくと、交代の負担が下がるだけでなく、日々の運用も見えるようになります。二重の効果があります。
そして、報告が蓄積されていれば、契約が終わるときの回収も軽くなります。すでに手元にあるからです。
引き継ぎの準備は、交代が決まってからでは遅い。契約の最初に決めておく項目です。項目の設計はレポートに入れてもらう項目にまとめています。
まとめ
- 資料は成果物・判断の理由・状況の三層で構成する
- 多くの資料は成果物だけ。二番目と三番目が入っているかで価値が決まる
- 成果物は編集できる形式で受け取る
- 判断の理由で最も重要なのは検索条件の設計意図
- 「うまくいかなかった試み」の欄を明示的に求める
- 担当者交代と契約終了では、範囲が違う
- 選定の段階で、様式・項目・失敗の記録・重複期間・稼働の負担を確認する
- 引き継ぎ資料は「日々の運用で溜まるもの」にする
よくある質問
引き継ぎ資料を作ってもらえない場合はどうしますか
契約の条項を確認してください。定めがない場合でも、関係が続いているうちに依頼すれば応じてもらえることがあります。あわせて、自社の環境に残っているものから回収してください。次の契約では、引き渡しの範囲を明記しておきます。
資料の分量はどのくらいが適切ですか
分量より、判断の理由が入っているかです。成果物の一覧が何十ページあっても、なぜそうしたかが書かれていなければ使えません。逆に、要点がまとまった数枚でも、意図が書かれていれば次の担当者は動けます。
交代のたびに資料を作ってもらうべきですか
稼働報告に判断の理由と失敗の記録を含めてもらっていれば、交代のたびに新しく作る必要は減ります。まとめる作業だけで済みます。契約の段階で報告の項目を決めておくと、この形になります。