採用代行 / 費用・契約・法務

採用代行の価格交渉でやってよいこと

公開 2026-09-07

採用代行の見積もりを受け取った後、価格の相談をすることはあります。ただ、単価を下げる交渉は、下げた分がどこかで吸収されることが多い。範囲が狭まるか、稼働が減るか、担当者の経験が下がる。見えない形で調整されると、結果的に高い買い物になります。この記事では、単価以外に使える交換材料と、交渉の進め方を整理します。

単価を下げる交渉が難しい理由

採用代行の原価の大半は、担当者の人件費です。単価を下げるということは、原価を下げるということになります。

下げ方は三つしかありません。経験の浅い担当者を充てる、掛け持ち社数を増やす、稼働時間を減らす。どれも実務に影響します

そして、これらは見積もりの数字には出ません。月額が下がったことだけが見え、体制が変わったことは契約後に分かる。だから、単価だけを動かす交渉は勧められません

代わりに、条件を交換する交渉をします。相手の原価に効く条件を渡し、その分を価格や範囲で受け取る形です。

使える交換材料

渡せるもの相手にとっての意味
契約期間を長くする稼働枠が読める。立ち上げ費用を回収しやすい
支払いサイトを短くする資金繰りが楽になる
開始時期を相手の都合に合わせる人員の配置がしやすい
稼働を平準化する月ごとの波が減り、体制が組みやすい
範囲を絞る稼働量が読める
判断を速く返すことを約束する手戻りと待ち時間が減る
事例として名前を出す営業の材料になる

このうち、判断を速く返す約束は費用がかかりません。書類の合否を何営業日以内、面接の候補日を何営業日以内。代行側にとっては稼働の効率が上がるので、交換材料として成立します。

事例としての掲載は、慎重に判断してください。採用の状況を外部に出すことになるので、社内の合意が要ります。

エラベルの見解

交渉で最も効くのは、自社側の判断速度を約束することだと考えています。理由は、これが代行側の原価に直接効くからです。

担当する側から見ると、案件の難易度は要件の固まり具合と判断の速さで決まります。書類の合否が数日で返る案件と、二週間止まる案件では、同じ稼働時間で進む量がまったく違います。止まっている間も、進捗の確認や催促に時間が使われます。

だから、「書類の合否は二営業日以内に返します」「面接の候補日はまとめて渡します」と伝えると、相手の見積もりの前提が変わることがあります。そして、この約束は自社にとっても得です。判断が速く返る運用は、候補者の辞退も減らします。

つまり、交換材料として渡しているように見えて、実は自社の採用も良くなる。こういう条件が交渉には向きます。

逆に、渡すと自社が困る条件を交換材料にすると、後で負担になります。長すぎる契約期間、広すぎる範囲。目先の値引きと引き換えに柔軟性を失うのは、採用のように状況が変わる領域では割に合わないことがあります

交渉のタイミング

最初の見積もりを受け取った後。範囲と条件が見えた段階で相談します。ここが最も動きます。

契約更新の前。実績が出ているので、根拠を持って話せます。稼働の実態と契約の想定がずれているなら、そこを示します。更新の扱いは自動更新条項で気をつけることにまとめています。

範囲を変えるとき。職種が増えた、工程を減らした。範囲が変わるタイミングは、条件を見直す機会になります。

避けたほうがよいのは、運用が始まった直後です。立ち上げの作業に入っている段階で条件を変えると、進行中の作業に影響します。

避けたほうがよい進め方

相見積もりを交渉の道具にする。他社の金額を示して下げさせる形は、短期的には効きますが、関係が対等でなくなります。採用代行は継続的な協働なので、始まりの関係が後に響きます

無償の作業を求める。契約前に文面を書いてもらう、要件の整理を無償でやってもらう。稼働が発生する作業を無償で求めると、その分は他で回収されます。

根拠のない値引きを求める。「予算がこれだけなので」と伝えるのは構いませんが、その予算で何ができるかを聞く形にします。金額だけを示して詰めると、範囲が黙って狭まります。

担当者の目の前で価格を叩く。実務を担う人がいる場での価格交渉は、その後の関係に影響します。価格の話は営業の窓口と、実務の話は担当者と、と分けるほうが円滑です。

予算が合わないとき

交渉しても予算に届かない場合の選択肢です。

範囲を絞る。全工程を任せず、量のある定型業務だけに絞る。社内で持つ工程を増やします。

稼働量を下げる。週あたりの想定時間を減らし、その分は自社で補います。

開始を分割する。まず一職種で始め、成果を見てから広げる。初期の支出を抑えられます。

時期をずらす。予算の期が変わるまで待つ。ただし、採用が遅れることの損失も置いて判断します。

内製と組み合わせる。設計は自社で行い、実行だけを外に出す。設計の工程が外れると費用は下がります。

いずれの場合も、外した工程を誰が持つかを決めてから減らします。決めずに減らすと、その工程が空白になります。

エラベルの見解

交渉で合意した内容は、契約か別紙に残してください。口頭の合意は、担当者が交代すると消えます。

よくあるのは、商談で「この稼働時間で入ります」「担当はこの経歴の者です」と聞き、それを判断の理由として契約したのに、契約書にはその記載がない、という状態です。半年後に運用が変わっても、話し合いの土台がありません。

残すのは四つで足ります。担当者の稼働時間の目安。同時に担当する社数の上限。交代する場合の事前通知。報告の頻度と粒度。この四つが別紙にあれば、交渉で得たものが形として残ります

そして、これを書けるかどうかを聞くこと自体が交渉になります。書けると答える会社は、社内で稼働を管理しています。書けないと言われたら理由を聞く。体制が流動的で約束できない、という答えなら、それも判断材料です。

値引きは一度きりですが、条件を書面に残すことは契約期間中ずっと効きます。交渉に使える時間が限られているなら、後者に使うほうが価値があります。契約書の確認項目は業務委託契約書で確認する10項目にまとめています。

まとめ

よくある質問

相見積もりを取っていることは伝えるべきですか

伝えること自体は一般的です。ただし、他社の金額を示して下げさせる使い方は、関係に影響します。「比較のために条件をそろえたい」という形で伝え、範囲と稼働量を同じ前提で出してもらうほうが、比較としても正確になります。

値引きに応じない会社は避けるべきですか

応じないこと自体は判断材料になりません。原価の構造上、下げられない会社もあります。むしろ、簡単に下げる会社のほうが、当初の見積もりに余裕があったということです。応じない場合は、範囲や稼働量での調整が可能かを聞いてみてください。

契約後に価格を見直せますか

契約更新のタイミングが基本です。期間中でも、範囲が大きく変わる場合は協議の対象になります。「協議のうえ変更できる」という条項があるかを確認しておくと、話を持ち出しやすくなります。見直すときは、稼働の実態と契約の想定のずれを示すと具体的な話になります。