採用代行 / 費用・契約・法務
採用代行の価格交渉でやってよいこと
採用代行の見積もりを受け取った後、価格の相談をすることはあります。ただ、単価を下げる交渉は、下げた分がどこかで吸収されることが多い。範囲が狭まるか、稼働が減るか、担当者の経験が下がる。見えない形で調整されると、結果的に高い買い物になります。この記事では、単価以外に使える交換材料と、交渉の進め方を整理します。
単価を下げる交渉が難しい理由
採用代行の原価の大半は、担当者の人件費です。単価を下げるということは、原価を下げるということになります。
下げ方は三つしかありません。経験の浅い担当者を充てる、掛け持ち社数を増やす、稼働時間を減らす。どれも実務に影響します。
そして、これらは見積もりの数字には出ません。月額が下がったことだけが見え、体制が変わったことは契約後に分かる。だから、単価だけを動かす交渉は勧められません。
代わりに、条件を交換する交渉をします。相手の原価に効く条件を渡し、その分を価格や範囲で受け取る形です。
使える交換材料
| 渡せるもの | 相手にとっての意味 |
|---|---|
| 契約期間を長くする | 稼働枠が読める。立ち上げ費用を回収しやすい |
| 支払いサイトを短くする | 資金繰りが楽になる |
| 開始時期を相手の都合に合わせる | 人員の配置がしやすい |
| 稼働を平準化する | 月ごとの波が減り、体制が組みやすい |
| 範囲を絞る | 稼働量が読める |
| 判断を速く返すことを約束する | 手戻りと待ち時間が減る |
| 事例として名前を出す | 営業の材料になる |
このうち、判断を速く返す約束は費用がかかりません。書類の合否を何営業日以内、面接の候補日を何営業日以内。代行側にとっては稼働の効率が上がるので、交換材料として成立します。
事例としての掲載は、慎重に判断してください。採用の状況を外部に出すことになるので、社内の合意が要ります。
エラベルの見解
交渉で最も効くのは、自社側の判断速度を約束することだと考えています。理由は、これが代行側の原価に直接効くからです。
担当する側から見ると、案件の難易度は要件の固まり具合と判断の速さで決まります。書類の合否が数日で返る案件と、二週間止まる案件では、同じ稼働時間で進む量がまったく違います。止まっている間も、進捗の確認や催促に時間が使われます。
だから、「書類の合否は二営業日以内に返します」「面接の候補日はまとめて渡します」と伝えると、相手の見積もりの前提が変わることがあります。そして、この約束は自社にとっても得です。判断が速く返る運用は、候補者の辞退も減らします。
つまり、交換材料として渡しているように見えて、実は自社の採用も良くなる。こういう条件が交渉には向きます。
逆に、渡すと自社が困る条件を交換材料にすると、後で負担になります。長すぎる契約期間、広すぎる範囲。目先の値引きと引き換えに柔軟性を失うのは、採用のように状況が変わる領域では割に合わないことがあります。
交渉のタイミング
最初の見積もりを受け取った後。範囲と条件が見えた段階で相談します。ここが最も動きます。
契約更新の前。実績が出ているので、根拠を持って話せます。稼働の実態と契約の想定がずれているなら、そこを示します。更新の扱いは自動更新条項で気をつけることにまとめています。
範囲を変えるとき。職種が増えた、工程を減らした。範囲が変わるタイミングは、条件を見直す機会になります。
避けたほうがよいのは、運用が始まった直後です。立ち上げの作業に入っている段階で条件を変えると、進行中の作業に影響します。
避けたほうがよい進め方
相見積もりを交渉の道具にする。他社の金額を示して下げさせる形は、短期的には効きますが、関係が対等でなくなります。採用代行は継続的な協働なので、始まりの関係が後に響きます。
無償の作業を求める。契約前に文面を書いてもらう、要件の整理を無償でやってもらう。稼働が発生する作業を無償で求めると、その分は他で回収されます。
根拠のない値引きを求める。「予算がこれだけなので」と伝えるのは構いませんが、その予算で何ができるかを聞く形にします。金額だけを示して詰めると、範囲が黙って狭まります。
担当者の目の前で価格を叩く。実務を担う人がいる場での価格交渉は、その後の関係に影響します。価格の話は営業の窓口と、実務の話は担当者と、と分けるほうが円滑です。
予算が合わないとき
交渉しても予算に届かない場合の選択肢です。
範囲を絞る。全工程を任せず、量のある定型業務だけに絞る。社内で持つ工程を増やします。
稼働量を下げる。週あたりの想定時間を減らし、その分は自社で補います。
開始を分割する。まず一職種で始め、成果を見てから広げる。初期の支出を抑えられます。
時期をずらす。予算の期が変わるまで待つ。ただし、採用が遅れることの損失も置いて判断します。
内製と組み合わせる。設計は自社で行い、実行だけを外に出す。設計の工程が外れると費用は下がります。
いずれの場合も、外した工程を誰が持つかを決めてから減らします。決めずに減らすと、その工程が空白になります。
エラベルの見解
交渉で合意した内容は、契約か別紙に残してください。口頭の合意は、担当者が交代すると消えます。
よくあるのは、商談で「この稼働時間で入ります」「担当はこの経歴の者です」と聞き、それを判断の理由として契約したのに、契約書にはその記載がない、という状態です。半年後に運用が変わっても、話し合いの土台がありません。
残すのは四つで足ります。担当者の稼働時間の目安。同時に担当する社数の上限。交代する場合の事前通知。報告の頻度と粒度。この四つが別紙にあれば、交渉で得たものが形として残ります。
そして、これを書けるかどうかを聞くこと自体が交渉になります。書けると答える会社は、社内で稼働を管理しています。書けないと言われたら理由を聞く。体制が流動的で約束できない、という答えなら、それも判断材料です。
値引きは一度きりですが、条件を書面に残すことは契約期間中ずっと効きます。交渉に使える時間が限られているなら、後者に使うほうが価値があります。契約書の確認項目は業務委託契約書で確認する10項目にまとめています。
まとめ
- 単価を下げる交渉は、経験・掛け持ち・稼働時間のどれかで吸収される
- 代わりに条件を交換する。期間・支払いサイト・開始時期・稼働の平準化・範囲
- 最も効くのは自社側の判断速度を約束すること。費用がかからず、自社の採用も良くなる
- タイミングは、最初の見積もり後・契約更新の前・範囲を変えるとき
- 避けるのは、相見積もりを道具にする・無償作業を求める・根拠のない値引き
- 予算が合わないなら、範囲・稼働量・開始時期・時期・内製との組み合わせで調整する
- 減らすときは、外した工程を誰が持つかを決めてから
- 合意した内容は別紙に残す。値引きは一度きり、書面は期間中ずっと効く
よくある質問
相見積もりを取っていることは伝えるべきですか
伝えること自体は一般的です。ただし、他社の金額を示して下げさせる使い方は、関係に影響します。「比較のために条件をそろえたい」という形で伝え、範囲と稼働量を同じ前提で出してもらうほうが、比較としても正確になります。
値引きに応じない会社は避けるべきですか
応じないこと自体は判断材料になりません。原価の構造上、下げられない会社もあります。むしろ、簡単に下げる会社のほうが、当初の見積もりに余裕があったということです。応じない場合は、範囲や稼働量での調整が可能かを聞いてみてください。
契約後に価格を見直せますか
契約更新のタイミングが基本です。期間中でも、範囲が大きく変わる場合は協議の対象になります。「協議のうえ変更できる」という条項があるかを確認しておくと、話を持ち出しやすくなります。見直すときは、稼働の実態と契約の想定のずれを示すと具体的な話になります。