採用代行 / 採用の課題

経営者に採用の状況が伝わらない|「頑張っています」ではなく、経営者が判断できる形で状況を出す

公開 2026-09-13

月に一度、経営者に採用の状況を報告する。「応募は来ています」「面接を進めています」と伝えると、「で、いつ採れるの」「何が問題なの」と返される。人事は動いているのに、経営者には止まって見えている。結論を先に書くと、経営者に伝わらないのは、報告が「人事の活動」の報告になっていて、「経営者が判断すべきこと」が出ていないからです。経営者が知りたいのは、採れるのか、いつか、止まっているなら何が原因で、自分は何を決めればよいのか、の四つです。この四つに答える型で出せば、伝わります。経営者への説明の場面は経営者への説明に、現場との連携は現場が採用に協力してくれないにまとめています。

伝わらない構造

経営者に採用の状況が伝わらないのは、次の構造で起きます。

構造経営者から見えている景色
活動の報告になっている「スカウトを送りました」「面接をしました」。動いているのは分かるが、採れるかどうかは分からない
数字が並ぶだけで、意味が無い応募の数、面接の数が並ぶ。多いのか少ないのか、順調なのか遅れているのか、判断できない
止まっている理由が出ていない「難航しています」。何が原因で止まっているのか、自分が何を決めれば動くのかが分からない
経営者に頼むことが無い報告を聞いて「頑張って」と言うしかない。経営者は、自分の出番が無い報告を聞き流す
前回との比較が無い今月の数字だけ。先月からどう変わったか、計画に対してどうかが無い
悪い知らせが遅い辞退が続いている、応募が止まっている。伝わるのが、手遅れになってから

経営者は、判断する人です。判断の材料が無い報告は、経営者にとって「聞く意味の無い報告」になります。

経営者が知りたいこと

報告の前に、経営者が知りたいことを整理します。

採れるのか。 今の進め方で、採れる見込みがあるのか。見込みが無いなら、何を変えるのか。

いつか。 内定の見込みの時期。遅れるなら、いつまで遅れるのか。事業の計画とどうつながるのか。

止まっているなら、何が原因か。 応募が来ないのか、面接で落ちるのか、内定を辞退されるのか。原因によって、打ち手が違います。

自分は、何を決めればよいのか。 条件を上げるか、要件を緩めるか、媒体を増やすか、面接に出るか。経営者が決めることがあるなら、それを出します。

事業への影響。 採れないと、どの事業のどの計画が遅れるのか。採用の数字ではなく、事業の言葉で。

費用。 かけた費用と、採れた場合の費用対効果。数字を出す場合、社内の記録を元にします。

この六つに答える形で報告を組み立てれば、経営者は判断できます。「頑張っています」は、六つのどれにも答えていません。

月次の報告の型

経営者への月次の報告を、一枚の型にします。

項目書き方
結論「〇〇職は来月内定の見込み。△△職は応募が止まっており、要件の見直しが必要」。一行目に結論
求人ごとの進み具合求人ごとに、応募・面接・内定の数と、先月からの変化。順調/遅れ/止まっている、の三択で印
止まっている理由止まっている求人について、どの段階で止まっているか、原因は何かを一〜二行
経営者に決めてほしいこと「〇〇職の年収の上限を見直してよいか」「△△職の要件から□□を外してよいか」。決めてほしいことを明示
次の月の打ち手人事が次の月に何を変えるか。「媒体を一つ足す」「面接を三十分に短縮」
事業への影響採れない場合、どの計画に影響するか。事業の言葉で一行

一枚に収めます。長い資料は、経営者が読みません。数字は、多いか少ないかの判断が付く形で出します。「応募十件」ではなく「応募十件、先月の五件から増加、この職種なら面接に進むのは二〜三件が通常」のように、比較と読み方を添えます。

報告の場は、月に一度、十五分。読めば分かる形にしておけば、場では「決めてほしいこと」の話だけで済みます。

止まっている理由の伝え方

経営者に最も伝わらないのが、「止まっている理由」です。伝え方を型にします。

段階で言う。 「応募が来ない」「書類で落ちる」「面接で落ちる」「内定を辞退される」。どの段階で止まっているかを先に言います。段階が分かれば、経営者は原因の見当が付きます。

原因を、事実で言う。 「応募が来ない。求人票の年収が、同じ職種の他社の求人より低い」「辞退される。辞退の理由を聞くと、三件中二件が他社の条件」。推測ではなく、聞いた事実、見た事実で言います。数字を出す場合は、社内の記録の数字だけを使います。

打ち手を、選択肢で出す。 「年収の上限を上げる」「要件を緩める」「媒体を変える」「面接を早くする」。それぞれの効果と負担を一行ずつ添え、経営者が選べる形にします。

人事の側の反省も言う。 「日程調整に時間がかかり、辞退を招いた。来月から面接の枠を先に押さえる」。人事の側の問題を隠すと、経営者は「原因は全部外にある」と受け取り、信用を失います。

「難航している」を使わない。 何も伝えていません。段階と原因と打ち手で言います。

止まっている理由が伝われば、経営者は「じゃあこう決める」と言えます。伝わらなければ、「頑張って」で終わります。

エラベルの見解

相談で最も多い失敗は、「経営者に悪い知らせを伝えるのを先延ばしにして、三か月後に『実は止まっていました』と伝えた」というものです。経営者は、止まっていた事実より、三か月伝えなかったことに怒ります。事業の計画は採用を前提に組まれていて、三か月の遅れは事業の遅れです。止まった月に「止まっています。原因は〇〇。打ち手は△△か□□、決めてください」と伝えていれば、経営者は一か月で決められました。

見ていて差がつくのは、担当者が「経営者に決めてほしいこと」を書けるかどうかです。「状況を報告します」で終わる担当者と、「年収の上限か、要件か、どちらを動かすか決めてください」と、経営者の判断に落とす担当者がいます。後者は、経営者が報告を待つようになります。

発注側にできるのは、担当者に「経営者が決めることを、毎月一つは出してほしい」と伝えることです。決めることが無い月は、順調な月です。

経営者の判断を引き出す聞き方

報告しても判断が出ないことがあります。聞き方を変えます。

「どうしましょう」と聞かない。 丸投げの問いには、経営者は「任せる」か「考えておいて」と返します。判断が出ません。

選択肢を二〜三個にして、推奨を付けて聞く。 「年収の上限を上げるか、要件を緩めるか。人事としては、要件の見直しを勧めます。理由は〇〇」。推奨があれば、経営者は「それでいい」か「いや、こっち」と答えられます。

期限を付ける。 「今週中に決めていただければ、来月の求人票に反映できます」。期限が無い判断は、後回しになります。

決めないことの影響を言う。 「決めないと、今の要件のまま来月も応募が止まります」。決めない選択にも結果があることを示します。

決めた後の動きを言う。 「決めていただいたら、人事が求人票を直し、媒体に反映し、二週間後に応募の変化を報告します」。決めた後に何が起きるかが見えれば、経営者は決めやすくなります。

一度に聞くことは一つ。 三つ聞くと、一つも決まりません。最も重要な一つを、その月に聞きます。

判断を引き出すのは、人事の技術です。経営者が決められないのは、決められる形で聞かれていないことが多いです。

経営者に動いてもらう場面

報告と判断のほかに、経営者に動いてもらう場面があります。

最終面接に出てもらう。 経営者が最終面接に出れば、候補者への訴求になり、社内への「採用が最優先」の合図にもなります。三十分、月に数件。時間を先に押さえます。

候補者に会ってもらう。 内定を迷っている候補者に、経営者が三十分話す。辞退が減る場面です。「経営者が時間を使う会社」は、候補者に伝わります。

現場に優先順位を示してもらう。 現場が採用に協力しない場合、経営者の言葉が要ります。「今期は〇〇の採用が最優先」と、経営者から現場に。

採用の場に、経営者の言葉を出してもらう。 求人票や採用のページに、経営者の言葉を載せる。人事が書いた文より、経営者の言葉のほうが、候補者に届きます。

条件と要件の判断を、早く出してもらう。 止まっている求人の打ち手は、経営者の判断で決まります。判断が早いほど、止まる期間が短くなります。

経営者に動いてもらうときも、「お願い」ではなく、「この場面で三十分いただければ、辞退が減ります」と、効果と負担で頼みます。

外注する場合の範囲

経営者への報告の問題を、採用代行に出す場合の範囲です。

出せる工程。 月次の報告の一枚の作成、求人ごとの進み具合の集計と読み方の添え書き、止まっている理由の整理と打ち手の選択肢の作成、経営者に決めてほしいことの明文化、報告の場への同席と説明、決めた後の実行と変化の報告。

社内に残す判断。 経営者の判断そのもの、条件と要件の決定、事業への影響の評価、経営者の動く場面の決定。

外注の効きどころ。 報告の一枚は、担当者が毎月まとめられます。止まっている理由の整理と打ち手の選択肢は、担当者が他社の例も踏まえて出せます。報告の場に担当者が同席すると、経営者は「外部の目で見た状況」として受け取り、人事の報告より聞くことがあります。

外注しても動かない場合。 経営者が報告を読まない、判断を先送りし続ける、採用を経営の課題と見ていない。社内の判断で、代行を替えても直りません。

経営者への報告は、人事の技術の問題です。外注できるのは、報告の型と、整理と、同席までです。

エラベルの見解

担当する側から見ると、経営者に伝わらない相談で最も多いのは、「人事が経営者に叱られるのを恐れて、報告を薄くしている」ことです。止まっている求人を「進行中」と書き、辞退を「調整中」と書く。経営者は薄い報告に「順調なのか」と安心し、後で止まっていたと分かって、人事への信用を失います。

担当者が報告に入ると、悪い知らせを「外部の担当者の整理」として出せるので、人事が叱られる形になりにくく、事実が経営者に届きやすくなります。人事と経営者の間に、事実を運ぶ役です。

発注側にできるのは、担当者に「悪い知らせを、止まった月に、事実と打ち手で出してほしい」と伝えることです。良い知らせは、誰が出しても伝わります。

まとめ

よくある質問

経営者が採用の報告に興味を持ってくれません

報告が「人事の活動」の報告になっていて、経営者が判断する材料が無いことが多いです。「決めてほしいこと」を一つ入れ、事業への影響を事業の言葉で一行書きます。経営者は、自分の出番がある報告と、事業に関わる報告には向き合います。それでも興味を持たないなら、採用を経営の課題と見ていないので、採用の遅れが事業の計画をどう遅らせるかを、計画の数字で示します。

悪い知らせを、どのタイミングで伝えればよいですか

止まった月に、伝えます。「応募が二週間止まっている」「辞退が続いている」と分かった時点で、月次を待たずに伝える場合もあります。伝えるときは、事実と原因と打ち手の選択肢を添えます。悪い知らせだけを伝えると、経営者は「で、どうするの」と返すので、打ち手まで用意します。先延ばしにすると、止まっていた事実より、伝えなかったことで信用を失います。

経営者が判断を先送りします

「どうしましょう」と聞いていないか、選択肢が多すぎないか、期限が無いかを確認します。選択肢を二〜三個にし、推奨を付け、期限を付け、決めない場合の影響を言い、決めた後の動きを言います。一度に聞くことは一つにします。それでも先送りされる場合、その判断が経営者にとって大きい(費用や方針に関わる)ことが多いので、判断を小さく分けます。「年収の上限を上げるか」ではなく「この一件だけ、上限を超えて提示してよいか」のように。