採用代行 / 採用の課題
どこまで外注してよいか分からない|「判断」は残し、「作業」は出し、「判断の材料を作る作業」は一緒にやる、の三分割で線を引く
採用代行に頼みたい。ただ、どこまで任せてよいのか分からない。求人票は任せてよいのか。面接は。内定の判断は。全部任せると、社内に何も残らず、契約が終わったら一からになる気がする。逆に、社内でやる範囲を広げると、外注の意味が無い。線が引けない。結論を先に書くと、外注の線は、「判断」「作業」「判断の材料を作る作業」の三つに分けると引けます。判断(誰を採るか、通すか、いくらで、誰が面接官か)は社内に残します。作業(受付、返信、日程、記録、集計、文面の作成)は出します。判断の材料を作る作業(要件の案、基準の案、候補者の整理、報告の一枚)は、一緒にやります。三分割で工程ごとに線を引けば、任せすぎも任せなさすぎも防げます。スカウト代行の範囲はスカウト代行に任せる範囲の決め方に、人事が一人で回らない場合は人事が一人で回らないにまとめています。
線が引けない構造
外注の線が引けないのは、次の構造で起きます。
| 構造 | 起きていること |
|---|---|
| 「全部か、何もか」で考えている | 「丸投げ」か「自社でやる」の二択。中間の線を考えていない |
| 工程を分けていない | 採用を一つの塊として見ていて、工程ごとに任せる・任せないを分けていない |
| 「判断」と「作業」を分けていない | 「面接」の中に、日程調整(作業)と判定(判断)が混ざっている。一括りで「任せる・任せない」を決めようとする |
| 任せすぎの怖さ | 「全部任せると、社内に何も残らない」「代行が辞めたら止まる」 |
| 任せなさすぎの怖さ | 「社内でやる範囲を広げると、費用の意味が無い」 |
| 会社の段階を見ていない | 人事がいない会社と、人事が三人いる会社で、線は違う。他社の線をそのまま使おうとする |
| 代行の側に線を決めさせている | 「御社にお任せします」で、代行の得意な範囲に線が引かれる |
| 線を一度決めたら固定と思っている | 段階が変われば線は動くのに、最初の線のまま |
構造の大半は、「判断と作業を分けていない」ことです。分ければ、線は引けます。
三分割の考え方
外注の線を、三つに分けて考えます。
| 区分 | 中身 | 誰が |
|---|---|---|
| 判断 | 誰を採るか(役割と要件の決定)、通すか通さないか(書類と面接の判定)、いくらで(条件の決定)、誰が面接官か、内定を出すか、契約の可否 | 社内。外に出さない |
| 作業 | 応募の受付、返信、日程調整、案内、記録、集計、連絡の文面の作成と送信、媒体の管理、紹介会社との連絡、面接の同席(進行として) | 外に出せる。判断を含まない工程 |
| 判断の材料を作る作業 | 要件の案、基準の案、求人票の案、候補者の絞り込み(基準に沿って)、面接の観点と質問の案、報告の一枚、市場の情報の整理、経路の提案 | 一緒にやる。担当者が案を作り、社内が決める |
三分割の要点は、「判断は残す」ことと「材料を作る作業は一緒に」です。
「判断」を外に出すと、社内に何も残らず、契約が終わると一からになります。「作業」を社内で抱えると、人事が作業に埋もれ、判断ができなくなります。「材料を作る作業」を一緒にやると、社内は判断の経験を積み、担当者は社内の実態を知り、両方に残ります。
「面接」は、日程調整(作業)、観点と質問の案(材料)、判定(判断)に分かれます。「面接を任せるか」ではなく、「面接の中の、どれを任せるか」です。
工程ごとの線の引き方
採用の工程ごとに、三分割で線を引きます。
| 工程 | 判断(社内) | 材料(一緒に) | 作業(外に出せる) |
|---|---|---|---|
| 役割と要件 | 役割と必須の決定 | 役割の記述の案、要件の案、市場との合いの確認 | 役割の記述の書面化 |
| 求人票 | 内容の承認、公開する事実の範囲 | 求人票の案、経路ごとの調整の案 | 媒体への掲載と更新、原本の管理 |
| 経路 | 予算、契約の可否、切る判断 | 経路の提案、小さく試す設計、記録と比較 | 媒体の運用、スカウトの送信、紹介会社との連絡 |
| 応募の対応 | — | 一次の絞り込み(基準に沿って) | 受付、返信、表の更新、日程調整、案内 |
| 書類の判断 | 通す・通さないの決定 | 基準の案、絞り込み後の候補者の整理 | 書類の整理、判断する人への回付、結果の連絡 |
| 面接 | 面接官の指名、判定 | 観点と質問の案、面接官向けの一枚、記録の型 | 日程、同席(進行)、記録の整理、結果の連絡 |
| 内定と条件 | 内定を出すか、条件の決定、上げられる余地 | 条件のすり合わせの型、市場の情報、内定の書面の案 | 連絡、書面の送付、内定後の接点の運用 |
| 受け入れ | 教える人の指名、役割の決定 | 最初の三か月の型の案 | 初日の準備の手配、接点の予定の管理 |
| 記録と報告 | 数字に基づく判断 | 月次の一枚、詰まりの読み、打ち手の案 | 表の更新、集計 |
| 紹介会社 | 契約、絞る判断、判定 | 求人の説明の資料、推薦の理由の整理 | 連絡、推薦の受付、結果の連絡 |
線の引き方の要点は、「一つの工程を三つに割る」ことです。「求人票を任せる」ではなく、「求人票の案は担当者、承認は社内、掲載は担当者」。
「判断」の列に、社内の人が実際に時間を出せるかを確認します。出せなければ、判断が止まり、外注しても採用は進みません。
会社の段階で変わる線
外注の線は、会社の段階で変わります。
| 段階 | 線の傾向 |
|---|---|
| 人事がいない(経営者か兼務者) | 判断は経営者か兼務者に絞り、材料と作業の大半を担当者に。「判断の時間を週に二〜三時間」に収める線 |
| 人事が一人 | 人事は判断と、材料の一部(要件、基準)。作業と材料の残りは担当者。人事が作業に埋もれない線 |
| 人事が複数、採用の型がある | 判断と材料は社内、作業の一部(受付、日程、媒体の運用、集計)を担当者に。社内の型を活かす線 |
| 人事がいるが、採用の経験が浅い | 材料を一緒にやることで、社内に型を残す線。契約の範囲に「型を書面で残す」を入れる |
| 急な増員や欠員 | 一時的に、作業と材料の大半を担当者に。落ち着いたら線を戻す |
| 特定の職種だけ採れない | その職種の経路と求人票と観点の材料を担当者に。他の職種の線はそのまま |
段階の要点は、「社内に何が残るか」で線を決めることです。人事がいない会社は、判断だけを残す線。人事が育っている会社は、材料まで社内に残す線。
段階が変われば、線も変わります。人事が育ったら、材料を社内に戻します。
エラベルの見解
相談で最も多い失敗は、「どこまで任せてよいか分からず、『全部お任せします』で始めて、半年後に契約を終えたら、社内に求人票の型も面接の基準も残っておらず、次の採用がまた一からだった」というものです。判断も材料も、担当者に出していました。三分割で線を引き直し、判断は社内、材料は一緒に(担当者が案を作り、社内が決めて書面に残す)、作業は担当者、にしたら、次の契約が終わったとき、社内に型が残っていました。「全部お任せ」は、線を引いていないのと同じでした。
見ていて差がつくのは、担当者が「判断は残してください」と言うかどうかです。「全部お任せください」と言う担当者と、「判断(誰を採るか、通すか、いくらで)は御社に残してください。材料は一緒に作り、書面に残します。作業はこちらで」と、線を提案する担当者がいます。後者は、契約が終わっても社内に残る形で進めます。
発注側にできるのは、契約の前に、「判断・材料・作業の三つで、線を引いてほしい」と依頼することです。
任せすぎの兆候と任せなさすぎの兆候
線が合っているかを、兆候で確認します。
| 任せすぎの兆候 | 任せなさすぎの兆候 |
|---|---|
| 社内の誰も、求人票の中身を説明できない | 人事が応募の返信と日程調整に一日を使い、判断の時間が無い |
| 面接の判定を、担当者の意見で決めている | 担当者が「待ち」の状態で、社内の判断待ちで工程が止まっている |
| 条件を、担当者が候補者と決めている | 担当者の提案(要件、経路、基準)を社内が全部作り直し、担当者の材料が使われていない |
| 契約が終わると、何も残らない不安がある | 費用に対して、担当者がやっていることが「連絡だけ」に見える |
| 候補者が、社内の人と話さずに内定を受けている | 社内の人が、担当者にできる作業を自分でやり続けている |
| 社内の人が、採用の記録を見ていない | 担当者が、社内の判断の材料(要件、基準)を持たされていない |
| 「採用は代行がやっている」と社内が思っている | 「採用は人事がやっている」と担当者が思っている |
兆候の要点は、「判断が社内にあるか」と「作業が担当者にあるか」の両方を見ることです。片方だけ見ると、線が偏ります。
任せすぎの兆候が出たら、判断を社内に戻します。任せなさすぎの兆候が出たら、作業を担当者に出します。
線を見直す運用
線は、固定しません。見直す運用です。
三か月ごとに、工程ごとの線を見直す。 「この工程は、判断・材料・作業のどれが、誰にあるか」。兆候が出ていれば、動かす。
社内の人が育ったら、材料を社内に戻す。 「要件の案を、人事が自分で作れるようになった」なら、担当者は確認の役に。
社内の負担が増えたら、作業を担当者に出す。 繁忙期、急な増員。一時的に線を動かし、落ち着いたら戻す。
契約の範囲に、「型を書面で残す」を入れる。 材料を一緒に作った結果(求人票の型、基準、観点、記録の型)を、書面で社内に残す。契約が終わっても、社内に残る形。
担当者が替わっても、線が引き継がれる形に。 線を書面にしておく。「この工程は社内、この工程は担当者」。口頭の合意は、担当者の交代で消える。
「判断の時間」を、社内で確保する。 線を引いても、社内の判断の時間が無ければ、工程は止まる。「週に二〜三時間、判断の時間」を、責任者が確保する。
線の変更を、記録する。 「〇月に、要件の案を社内に戻した」。
運用の要点は、「線は動く」ことと「型は書面で残す」ことです。
外注する場合の範囲
外注の線を引く問題そのものを、採用代行に出す場合の範囲です。
出せる工程。 採用の工程の書き出し、工程ごとの判断・材料・作業への分解、会社の段階に合わせた線の案、線の書面化、任せすぎと任せなさすぎの兆候の点検の型、三か月ごとの見直しの材料、型を書面で残す運用(求人票の型、基準、観点、記録の型)、担当者の交代時の引き継ぎの書面。
社内に残す判断。 線の決定、判断の時間の確保、契約の範囲の決定、材料を社内に戻す時期の判断、費用の判断。
外注の効きどころ。 線を引く作業は、担当者と社内が「一緒に」やる材料の作業の典型です。担当者は複数の会社で線を引いているので、「この段階の会社は、この線から」の型を持ち込めます。ただし、線を決めるのは社内です。「御社にお任せします」で担当者に線を決めさせると、担当者の得意な範囲に線が引かれます。
外注しても動かない場合。 社内が判断の時間を確保しない、「全部お任せ」を譲らない、型を書面に残すことを契約に入れない。社内の判断で、代行を替えても直りません。
外注の線は、三分割で引けば、任せすぎも任せなさすぎも防げます。外注は、線を引く材料を持ち込む手段であり、線を決めるのは社内です。
エラベルの見解
担当する側から見ると、外注の範囲の相談で最も多いのは、「判断の時間を、社内が確保していない」ことです。線を引いて、判断は社内に残した。ただ、社内の人が判断の時間を取れず、担当者が用意した材料が、一週間、二週間と社内で止まる。候補者は待ち、流れる。
判断を社内に残すなら、判断の時間を確保する。週に二〜三時間、責任者が「この時間は採用の判断」と決める。時間が確保できないなら、判断の一部(書類の一次の判断など)を、基準を書面にして担当者に委ねる線も検討します。
発注側にできるのは、線を引くときに、「社内の判断の時間は、週に何時間確保できるか」を先に決めることです。
まとめ
- 線が引けないのは全部か何もか・工程を分けない・判断と作業を分けない・任せすぎの怖さ・任せなさすぎの怖さ・段階を見ない・代行に決めさせる・固定と思う構造
- 三分割は判断(社内に残す)・作業(外に出す)・判断の材料を作る作業(一緒にやる)。一つの工程を三つに割る
- 工程ごとに役割と要件・求人票・経路・応募の対応・書類・面接・内定と条件・受け入れ・記録と報告・紹介会社で線を引く。判断の列に社内の時間があるか確認
- 段階で線は変わる。人事がいないなら判断だけ・一人なら判断と材料の一部・複数で型があれば作業の一部だけ・経験が浅いなら材料を一緒に・急ぎは一時的に・特定の職種はその職種だけ
- 兆候は任せすぎ(説明できない・判定を担当者が・条件を担当者が・残らない不安・社内の人と話さず内定)と任せなさすぎ(人事が作業に埋もれる・担当者が待ち・材料が使われない・連絡だけに見える)の両方を見る
- 運用は三か月ごと・育ったら材料を戻す・負担が増えたら作業を出す・型を書面で残す・線を書面に・判断の時間を確保・変更を記録
- 外注できるのは工程の書き出し・分解・線の案・書面化・兆候の点検・見直しの材料・型を残す運用・引き継ぎの書面。社内に残るのは線の決定・判断の時間・契約の範囲・戻す時期・費用
よくある質問
面接は、外注してよいですか
「面接」を三つに割ります。日程調整と同席(進行)と記録の整理は「作業」で、出せます。観点と質問の案と面接官向けの一枚は「材料」で、担当者が案を作り、社内が決めます。判定は「判断」で、社内に残します。「面接を任せるか」ではなく「面接の中のどれを任せるか」です。一次面接の判定を担当者に委ねる線もありますが、その場合は基準を書面にし、二次以降は社内で判定します。判定を全部担当者に出すと、社内に見極めの経験が残りません。
全部任せたほうが、楽ではないですか
「全部任せる」と、判断(誰を採るか、通すか、いくらで)まで担当者に出ることになり、社内に何も残りません。契約が終わると、次の採用は一からです。候補者も、社内の人と話さずに内定を受ける形になり、入社後にずれます。楽になるのは、作業を出すことで、判断を出すことではありません。判断の時間(週に二〜三時間)は社内で確保し、材料は一緒に作って書面に残し、作業は出す。この形が、楽で、残ります。
人事がいないので、判断もできる人がいません
判断を、経営者か兼務者に絞ります。「誰を採るか」「通すか」「いくらで」の三つだけを、週に二〜三時間で。材料(要件の案、基準の案、候補者の絞り込み、報告の一枚)は担当者が作り、経営者は材料を見て決めるだけにします。判断の一部(書類の一次の判断)は、基準を書面にして担当者に委ねる線も検討します。ただし、「誰を採るか」と「内定」は、経営者に残します。人事がいない会社の線は人事担当そのものが採用できないにも書いています。