採用代行 / 費用・契約・法務
採用代行のROIをどう測るか
採用代行を続けるかどうかを判断するとき、「効果があったか」を数字で示したい場面があります。ただ、採用人数だけを見ると、代行の効果はほとんど測れません。採用は多くの要素で決まり、代行が担っているのはその一部だからです。この記事では、三つの軸で効果を見る方法と、代行の貢献をどう切り分けるかを整理します。
三つの軸で見る
代行を入れたことの効果は、次の三つに現れます。どれか一つではなく、三つを並べて見ます。
一.社内の時間が減ったか。日程調整、応募者への連絡、データ入力。これらに使っていた時間が減っていれば、その分は効果です。金額に換算できるので、いちばん比較しやすい軸になります。
二.採用までの期間が短くなったか。応募から内定までの日数、あるいは募集開始から採用決定までの日数。返信が速くなり、日程調整が滞らなくなれば、期間は短くなります。
三.母集団の量と質が変わったか。スカウトの送信件数と返信率、応募件数、書類の通過率。運用の質が上がれば、ここに出ます。
このうち一番が、いちばん素直に測れる効果です。二番と三番は自社側の要素も絡むので、切り分けが要ります。
社内の時間を測る
効果測定の起点は、代行を入れる前の時間を記録しておくことです。入れてから測ろうとすると、比較対象がありません。
測り方は粗くて構いません。
- 採用に関わる人を挙げる(採用担当、面接官、意思決定者、アシスタント)
- 工程ごとに、週あたりの時間を聞く(日程調整、応募対応、書類確認、面接、定例)
- 時間あたりの人件費を掛ける
この作業を、代行を入れる前と、入れて数か月経った時点で行います。差が効果です。注意点として、代行を入れると増える時間もあります。定例会と、確認事項への回答です。増える分も記録します。
差し引きで社内の時間が減っていて、その金額が代行費用を下回るなら、時間の観点では効果が出ています。上回るなら、範囲か稼働量の見直しを検討します。
エラベルの見解
効果測定でよく起きるのは、空いた時間が何に使われたか分からないという問題です。日程調整の時間が減ったのは確かなのに、社内の忙しさは変わっていない。これでは効果を説明できません。
原因は、空いた時間が自然に他の業務で埋まるからです。採用担当が日程調整から解放されると、その時間は別の業務に流れます。それ自体は悪いことではありませんが、効果としては見えなくなります。
だから、外注を決めるときに空いた時間を何に使うかを先に決めておくことをおすすめします。要件の見直しに使う、面接の質を上げる準備に使う、現場との面談に使う。決めておけば、効果を「時間が減った」ではなく「この業務ができるようになった」と説明できます。
そして、その業務が採用の結果に効いているなら、二番目と三番目の軸にも現れます。時間の削減は入り口で、その時間で何をしたかが本当の効果です。ここを設計していないと、代行は単なる支出に見えてしまいます。
期間と質の変化を見る
二番目と三番目の軸は、自社側の要素も絡むため、切り分けが要ります。
期間の切り分け。応募から内定までを工程に分け、それぞれの所要日数を出します。一次連絡までの日数、書類の合否までの日数、面談設定までの日数、面接から次の面接までの日数。このうち代行が担っている工程だけを見れば、代行の効果が分かります。自社が担う工程が遅いまま全体の期間が縮まらないなら、原因は代行ではありません。
質の切り分け。スカウトの返信率や書類の通過率は、文面や候補者選定の質を反映します。ただし、自社の知名度、提示条件、募集職種の市場環境にも左右されます。同じ職種で、担当者が替わった前後を比べると、代行側の要素が見えやすくなります。
いずれの軸でも、担当者が交代した時点を記録しておくことが役に立ちます。数字の変化と体制の変化を重ねると、原因の特定が進みます。
測れないものをどう扱うか
すべてが数字になるわけではありません。次のようなものは、数字にしにくいけれど価値があります。
- 候補者への対応が丁寧になったことによる、自社の印象の向上
- 選考プロセスが標準化されたことによる、判断のばらつきの減少
- 求人原稿や文面が資産として残ったこと
- 採用の状況が可視化され、経営が判断できるようになったこと
- 採用担当が一人で抱えなくなったことによる、属人化の解消
これらは「効果がない」のではなく「数字にしにくい」だけです。判断の材料からは外さず、定性的な記録として残します。定例会で気づいたこと、社内から出た声、候補者からのフィードバック。四半期に一度まとめておけば、更新の判断のときに使えます。
数字だけで判断すると、こうした効果が切り捨てられます。逆に定性的な話だけだと、費用の議論に耐えません。両方を並べるのが実務的な形です。
期間の取り方
効果測定は、いつ行うかで結果が変わります。
立ち上げ期に測らない。契約から最初の数か月は、要件の整理や文面の作成に時間が使われます。この時期に採用人数で測ると、効果はゼロに見えます。
一巡してから測る。スカウトを送り、返信が来て、面談が組まれ、選考が進み、内定が出る。この一連が一度回ってから、初めて全体の数字が出ます。
契約更新の手前に測る。更新の判断に使うなら、予告期限より前に測っておきます。測ってから交渉する時間が要ります。自動更新の予告期限については自動更新条項で気をつけることにまとめています。
エラベルの見解
効果を測るときに、代行の貢献と自社の貢献を分けようとしすぎないほうがよい場面があります。
採用は共同作業です。代行がスカウトを送り、自社が書類を見て、代行が日程を調整し、自社が面接をする。どちらか一方の貢献を取り出そうとすると、切り分けの作業自体に時間がかかり、しかも正確には出ません。
実務的には、全体の数字を並べて、悪い工程を一緒に直すという使い方のほうが価値が出ます。書類の合否が遅いなら、それは自社の問題ですが、代行側から改善の提案が出るかもしれません。返信率が低いなら代行側の問題ですが、条件面の情報が足りていないことが原因かもしれない。
だから、効果測定の資料は代行会社と共有する前提で作ることをおすすめします。評価のための資料ではなく、次に何を変えるかを決めるための資料として使う。この形にすると、定例会が判断の場になり、数字が改善する速度も上がります。
評価のためだけの測定は、相手に見せられない資料になります。見せられる資料のほうが、結果的に役に立ちます。
まとめ
- 効果は社内の時間・採用までの期間・母集団の量と質の三つの軸で見る
- いちばん素直に測れるのは社内の時間。入れる前に記録しておく
- 代行を入れると定例会と確認対応の時間は増える。増える分も記録する
- 空いた時間を何に使うかを先に決めておく。決めていないと効果が見えなくなる
- 期間と質は工程に分けて切り分ける。担当者交代の時点を記録しておく
- 数字にしにくい効果は定性的に残す。数字と両方を並べる
- 立ち上げ期には測らない。一巡してから、更新の予告期限より前に測る
- 測定の資料は代行会社と共有する前提で作る
よくある質問
採用人数で効果を測ってはいけませんか
最終的な結果として見る意味はあります。ただ、採用人数は面接の内容や条件提示、競合の状況にも左右されるため、代行の効果だけを表す数字ではありません。人数は結果として置きつつ、工程ごとの数字と社内の時間を並べて見るほうが、次に何を変えるかの判断ができます。
効果が出ていないと判断するのはいつですか
一巡してからです。スカウトを送って内定が出るまでの流れが一度回るまでは、途中の数字で判断します。一巡した後に、工程ごとの数字が動いておらず、社内の時間も減っていないなら、範囲か体制の見直しを相談する時期です。まず原因を工程で切り分けてから判断します。
代行会社に効果測定の資料を作ってもらえますか
稼働報告の中に含めてもらえることが多いところです。ただし、社内の時間の変化は自社でしか測れません。代行側の稼働報告と、自社側の時間の記録を合わせて一つの資料にすると、判断に使える形になります。報告の粒度は契約時に決めておくと、後から依頼する手間が省けます。