採用代行 / 費用・契約・法務
タレントプールを代行に持たせるリスク
すぐには採用に至らなかったが、将来の候補になりそうな人。こうした候補者をためておく仕組みをタレントプールと呼びます。運用を採用代行に任せている場合、このプールがどこに溜まっているかを確認してください。代行会社の環境にしかない状態だと、契約が終わったときに失われます。この記事では、置き場所の設計と、運用で決めることを整理します。なお、個人データの取り扱いは取得時の説明や自社の管理体制によって判断が変わるため、専門家にご確認ください。
どこに溜まっているか
プールと呼ばれるものは、実際には複数の場所に散らばっていることがあります。
自社の採用管理システム。応募者として登録され、選考のステータスで管理されている状態。ここにあれば自社に残ります。
媒体の管理画面。媒体の機能として、気になる候補者を保存できるものがあります。媒体の契約が続く限り残りますが、契約や名義に依存します。
代行会社の環境。代行が独自に管理している一覧やツール。契約が終わると失われる可能性があります。
担当者の手元。表計算やメモに残っている状態。担当者が替わると消えます。
この四つのうち、後ろの二つに溜まっている状態が問題です。自社の資産として扱えず、把握もできません。
自社に置く設計
プールを自社に残すには、置き場所を決めます。
採用管理システムに集約する。選考に進まなかった候補者も、区分を分けて登録します。将来の候補として扱うステータスを作る形です。
代行にはアクセス権を渡す。代行が候補者を追加できるようにし、記録は自社の環境に残る形にします。
媒体の保存機能は補助として使う。媒体内での作業効率のために使いますが、そこだけに情報を置かない。
担当者の手元に残さない運用にする。表計算での管理をやめ、システムに記録するルールにします。
この設計にしておくと、契約が終わっても権限の削除だけで済みます。返還や削除の作業も発生しません。設計の考え方は情報漏えいを防ぐ設計にまとめています。
エラベルの見解
タレントプールで見落とされやすいのが、「プールに入れた人が、何を知らされているか」です。
自社に応募してきて選考に進まなかった人。スカウトを送って返信をもらったが、そのときは転職の意思がなかった人。イベントで名刺を交換した人。それぞれ、取得の経緯も、こちらが伝えた内容も違います。
にもかかわらず、プールという一つの箱にまとめてしまうと、扱いの違いが見えなくなります。半年後に一斉に連絡を送るとき、その人たちが同じ説明を受けているとは限りません。
だから、プールに入れるときは取得の経路を記録してください。応募経由、スカウト返信経由、イベント経由。経路が分かれば、それぞれに何を伝えたかが追えます。
そして、再アプローチのときは経路ごとに扱いを分けます。応募のあった人には前回の選考に触れた文面が自然ですし、イベントで会った人には別の書き方になります。
一斉送信で同じ文面を送ると、この違いが無視されます。候補者から見れば、扱われ方の雑さとして伝わります。経路の記録は、情報管理としても候補者体験としても効きます。
再アプローチの運用
プールに入れた候補者に、後から連絡するときの運用です。
取得時の説明の範囲を確認します。将来の募集について連絡することが、説明した利用目的の範囲に収まっているか。ここが出発点になります。
誰が連絡するかを決めます。代行会社が自社の窓口として送るのか、自社の担当者が送るのか。
頻度を決めます。同じ人に何度も送ると、印象が下がります。前回の連絡からの期間を条件に入れます。
連絡を望まない意思の記録を残せるようにします。今後の連絡を希望しないと伝えられた場合、その記録が残り、送信対象から外れる仕組みが要ります。
四番目が仕組みになっていないと、事故が起きます。断られた人にまた連絡が届く。この状態は、記録が一箇所にまとまっていないと防げません。
代行に任せる範囲
プールの運用を代行に任せる場合、範囲を分けます。
| 業務 | 任せやすさ |
|---|---|
| プールへの登録作業 | 任せやすい(判断が少ない) |
| 情報の整理・重複の解消 | 任せやすい |
| 再アプローチの文面作成 | 任せやすい |
| 送信対象の抽出 | 条件を決めれば任せられる |
| 誰をプールに入れるかの判断 | 基準を渡せば任せられる |
| 連絡を望まない意思の管理 | 自社が仕組みを持つ |
最後の項目は、自社の仕組みとして持つべきものです。代行会社が替わっても引き継がれる必要があります。
そして、プールに入れる基準は自社が決めます。「今回は縁がなかったが、経験を積めば候補になる」という判断は、要件の理解が前提になります。基準を文書にして渡せば、登録の作業自体は任せられます。
契約が終わるとき
代行との契約が終わるときに確認することです。
- プールのデータが自社の環境にあるか
- 代行会社の環境にある分の書き出しと削除
- 媒体の保存機能にあるものの扱い(名義によっては失われます)
- 連絡を望まない意思の記録が引き継がれるか
- 次の依頼先への渡し方
四番目を忘れると事故につながります。前の代行が管理していた「連絡不可」の記録が引き継がれないと、次の依頼先が同じ人に連絡します。
回収の手順は契約終了時に返してもらうデータ、切り替え全体は切り替えるときの引き継ぎ項目にまとめています。
エラベルの見解
タレントプールは、作ること自体より、使う仕組みがあるかどうかで価値が決まります。
登録だけが続いて、誰も連絡しないプールは、ただのデータの山です。しかも、保管しているだけでリスクは発生します。使う予定がないなら、期間を決めて削除するほうが筋が通ります。
使うなら、きっかけを設計してください。新しい職種の募集が立ったとき、条件が変わったとき、事業のフェーズが変わったとき。そのときにプールを見る、という運用を決めておきます。
そして、見る担当を決めます。代行会社に「新規の募集が立ったら、まずプールから該当者を抽出する」という手順を渡しておけば、運用に乗ります。手順がないと、代行側は媒体の検索から始めます。プールがあることを知らないまま、外部にスカウトを送ることになります。
プールの価値は、新しい募集が立ったときに最初に見る場所になっているかで決まります。そうなっていないなら、作る前に運用を設計してください。データを溜めるだけなら、リスクだけが残ります。
まとめ
- プールは複数の場所に散らばりやすい。代行の環境と担当者の手元にあるのが問題
- 自社の採用管理システムに集約し、代行にはアクセス権を渡す
- プールに入れるときは取得の経路を記録する。再アプローチの扱いが変わる
- 再アプローチは、説明の範囲・送る人・頻度・連絡を望まない意思の記録を決める
- 代行に任せられるのは登録・整理・文面・抽出。連絡不可の管理は自社の仕組みで持つ
- 契約終了時は、連絡不可の記録が引き継がれるかを確認する
- プールは使う仕組みがあるかどうかで価値が決まる
- 新しい募集が立ったときに最初に見る場所になっているかを確認する
よくある質問
プールに入れることを候補者に伝える必要はありますか
取得時に示した利用目的の範囲に収まっているかを確認してください。将来の募集について連絡する可能性があるなら、その旨が説明に含まれている必要があります。運用を始めるときに、自社の記載と実態が合っているかを見直します。判断に迷う点は専門家にご確認ください。
代行会社が独自に集めた候補者はプールに入りますか
代行が業務の中で接触した候補者の扱いは、契約の定めによります。委託の範囲で得た情報を他の目的に使わないことを取り決めておくのが一般的です。あわせて、その情報が自社のプールとして残るのか、代行会社に残るのかも決めておきます。扱いは候補者情報とNDAの範囲にまとめています。
プールの候補者に一斉送信してもよいですか
技術的には可能ですが、取得の経路によって説明した内容が違う可能性があります。経路ごとに分けて、それぞれに合う文面で送るほうが実務にも候補者の受け取り方にも合います。あわせて、連絡を望まない意思が記録されている人が対象から外れる仕組みを確認してください。