採用代行 / 費用・契約・法務
フリーランスの採用担当に直接委託する場合の契約
採用業務を、代行会社ではなく個人に直接委託する形があります。人事経験のあるフリーランスに、スカウトの運用や応募者対応を任せる。費用を抑えられ、担当者が固定されるという利点があります。一方で、会社と契約する場合には相手が担っていたことを、自社が引き受けることになります。この記事では、契約で決めることの違いを整理します。なお、契約の形式や取り扱いは事情によって変わるため、締結前に専門家にご確認ください。
会社と契約する場合との違い
| 代行会社 | 個人に直接 | |
|---|---|---|
| 担当者 | 会社が決める。交代あり | 契約の相手がそのまま担当 |
| 稼働が止まったとき | 会社が代替を立てる | 止まる |
| 品質の管理 | 会社が担う | 自社が確認する |
| 引き継ぎ | 会社の責任範囲 | 取り決めが要る |
| 費用 | 会社の運営費が乗る | 抑えられることが多い |
| 契約・支払いの手続き | 法人間の取引 | 確認事項が増える |
利点と負担が表裏になっています。担当者が替わらないのは大きな利点ですが、その人が動けなくなったときの代替がありません。費用が抑えられる代わりに、品質の確認は自社が担います。
だから、個人に委託するかどうかは自社に確認できる人がいるかで判断が分かれます。成果物を見て良し悪しを判断できる人がいれば成立し、いなければ品質が下がっても気づきません。
指揮命令の整理
個人に委託する場合、指揮命令の整理はより慎重になります。会社との契約以上に、実態が雇用に近づきやすいためです。
確認する点です。
- 作業の進め方を受託者が決められる建て付けになっているか
- 稼働の時間帯や場所を指定していないか
- 自社の朝会や定例に、参加を義務づけていないか
- 他社の業務を受けることを、不合理に制限していないか
- 報酬が、時間の拘束ではなく業務や成果に対して支払われる形か
これらは、契約書の文言だけでなく実際の運用も見られます。契約書で整理していても、日々のやりとりで細かく指示を出していれば、実態はそちらで判断されます。線引きの考え方は採用代行が偽装請負になる境界線にまとめています。個別の判断は専門家にご確認ください。
エラベルの見解
個人に委託する形で、実務上いちばん大きいリスクは稼働が止まることです。体調、本業の繁忙、他の案件との重なり。個人である以上、避けられません。
契約でできることは限られています。だから、業務の設計で備えます。
一つは、業務を文書に残す運用にすること。検索条件、文面、判断の基準を、その人の頭の中ではなく共有の場所に置く。止まったときに、他の人が引き継げる状態を作ります。
もう一つは、止まってはいけない工程を切り分けること。候補者への一次連絡や日程調整は、遅れると辞退につながります。この工程は、止まったときに自社が引き取れる形にしておくか、複数の担い手で分担します。
そして、契約に「稼働が難しくなった場合の連絡」を書いておきます。何日前に伝えるか、その間の対応をどうするか。決めておけば、実際に起きたときに慌てません。
個人に委託する形は、担当者が固定されるという大きな利点があります。その利点を活かすには、止まる前提の設計を先に置くことです。
秘密保持と個人情報
会社と契約する場合と同じ項目が必要ですが、確認の仕方が変わります。
- 秘密保持の取り決めを、個人と直接交わす
- 個人データの取り扱いについて、同等の取り決めを置く
- 使用する端末と環境(個人の端末を使うことが多いため、取り決めが要ります)
- 情報の置き場所(自社の採用管理システムに集約し、アクセス権を渡す形が管理しやすい)
- さらに他の人に手伝わせることがあるか(再委託の可否)
三番目が実務上の要点です。会社と契約する場合は、会社の管理下にある端末が前提になります。個人に委託する場合は、そうとは限りません。二段階認証の設定、情報を端末に保存しない運用、作業する場所についての取り決めを確認します。
個人データの取り扱いを委託する場合、委託元には委託先を監督する立場が生じると一般に整理されています。相手が個人であっても、この整理は変わりません。取り扱いの整理は個人情報保護法と委託先の監督にまとめています。
成果物と引き継ぎ
- 求人原稿、文面、検索条件の権利が自社に帰属する建て付けか
- 契約終了時の引き渡し範囲と形式
- 稼働が止まった場合の引き継ぎの手順
- 作業の記録をどこに残すか
会社と契約する場合、引き継ぎは会社の責任範囲です。個人に委託する場合は、取り決めがなければ引き継ぎの主体がいません。だから、日々の運用で記録が残る形にしておくことが、そのまま備えになります。
支払いまわりの確認
個人への委託では、法人間の取引とは確認する事項が変わります。
- 源泉徴収の要否(業務の内容によって扱いが変わります)
- 消費税の取り扱い
- 支払いのタイミングと方法
- 稼働の報告と、請求の根拠
これらは経理部門と税理士に確認する領域です。金額の多寡にかかわらず、開始前に確認しておくと後の処理が単純になります。経費の扱いの一般的な整理は採用代行費用は経費でどう処理するかにまとめています。
あわせて、契約書の形式も確認します。書面を交わさずに口頭で始めると、範囲も報酬も曖昧なまま進みます。個人が相手でも、書面で範囲と報酬を定めておきます。
エラベルの見解
個人に委託する形が成立するかどうかは、任せる範囲の広さで決まります。
範囲が狭い場合、成立しやすい。スカウトの送信、日程調整、応募者対応。手順が決まっていて、成果が件数で見える業務です。品質の確認も自社でできます。
範囲が広い場合、難しくなります。要件の整理から母集団の設計、運用の改善まで任せると、その人の判断に依存する部分が大きくなります。判断の質を確認できる人が社内にいなければ、良し悪しが分かりません。
だから、個人に委託するなら範囲を狭く始めることをおすすめします。成果が測れる工程から始め、質を確認しながら広げる。いきなり広く任せると、うまくいかなかったときに原因の切り分けもできません。
そして、範囲を広げる判断ができるようになった頃には、自社側にも採用の理解が蓄積しています。外注の範囲を広げる作業と、自社の理解が深まる作業は並行するのが健全な形です。
まとめ
- 個人に委託すると、担当者が固定される代わりに、代替がない
- 判断は「自社に品質を確認できる人がいるか」で分かれる
- 指揮命令の整理はより慎重に。契約書だけでなく運用も見られる
- 稼働が止まる前提で設計する。業務を文書に残し、止まってはいけない工程を切り分ける
- 秘密保持と個人データは同等の取り決めを置く。端末と環境の取り決めが要る
- 引き継ぎの主体がいないため、日々の記録が備えになる
- 源泉徴収など支払いまわりは経理部門と税理士に確認する
- 範囲を狭く始める。成果が測れる工程から広げる
よくある質問
個人に委託すると費用はどのくらい抑えられますか
会社の運営費が乗らない分、抑えられることが多い形です。ただし、品質の確認や引き継ぎの備えを自社が担うため、その時間を金額に換算して比べてください。範囲が狭く、確認できる人が社内にいるなら、総額でも下がります。
契約書は簡易なもので足りますか
範囲、報酬、期間、秘密保持、個人データの取り扱い、成果物の帰属は、少なくとも書面にしておきます。相手が個人でも、必要な項目は変わりません。ひな型を使う場合も、指揮命令の整理と情報の取り扱いは自社の運用に合わせて確認してください。判断に迷う点は専門家にご確認ください。
複数のフリーランスに分けて委託してもよいですか
分けられますが、業務の切り分けと情報の置き場所を先に決めます。同じ工程を複数人が担うと、作業が重複します。職種で分けるか、工程で分けるか。あわせて、情報を自社の環境に集約し、全体を見る人を社内に置いてください。分散の設計は複数社に同時発注してよいかにまとめています。