複数拠点で使うときの設計|共通にするものと、拠点ごとに分けるもの
本社と支社、あるいは複数の事業部で、それぞれがスカウト代行を使い始めると、同じ会社から違うトーンの文面が届き、同じ候補者に別々の拠点から声がかかる、ということが起きます。結論を先に書くと、会社として共通に持つものと、拠点ごとに分けるものを最初に線引きし、記録だけは一本にしてください。全部を共通にすると拠点の実情に合わず、全部を分けると会社として見たときに崩れます。担当者の人数の考え方は担当者の人数と体制に、複数の媒体を使う場合は複数媒体の使い分けにまとめています。
拠点ごとに始めると何が起きるか
各拠点が別々に代行を契約し、別々に運用を始めると、次のことが起きます。
文面のトーンがばらつきます。 拠点Aは丁寧、拠点Bは軽め。候補者から見ると同じ会社なのに、別の会社のように読めます。同じ職種の候補者は横でつながっていることが多く、比べられます。
同じ候補者に重ねて届きます。 拠点AとBが同じ職種を募集していれば、対象は重なります。同じ人に、同じ会社から、別の担当者の名前で二通届く。候補者から見れば「社内で連携が取れていない会社」です。
媒体の契約が重複します。 拠点ごとに同じ媒体を別契約すると、費用が二重になります。媒体によっては一つの契約で複数の拠点を扱えることがあり、契約の形は媒体の公式情報で確認が要ります。
数字が比べられません。 拠点ごとに集計の仕方が違うと、どの拠点の運用がうまくいっているかが分かりません。良い運用を横に広げることもできません。
これらは、始めてから直すより、始める前に線引きするほうがはるかに楽です。すでに別々に始めている場合は、記録の一本化から手をつけます。
共通に持つもの
会社として一本にするのは、次の四つです。
一.言葉づかいの土台。 敬称、会社の呼び方、使わない表現の一覧。トーンの指定で作る文面のルールのうち、「会社として」の部分です。拠点によって表面の堅さが違うのは構いませんが、土台は揃えます。
二.媒体の契約と管理。 同じ媒体を使うなら、契約は会社で一本にし、拠点ごとにアカウントや権限を分けます。契約の形が媒体によって違うので、公式の案内で確認してください。
三.送信の記録。 誰に、いつ、どの拠点から、どの文面を送ったか。これを一つの台帳にします。拠点同士の重複を防ぐ唯一の手段です。媒体の管理画面で拠点をまたいで見られるならそれでよく、見られないなら共有のスプレッドシートでも構いません。
四.評価の指標。 段階ごとの数字(抽出・送信・返信・面談設定・面談実施)の定義と集計の周期を揃えます。定義が揃って初めて、拠点同士を比べられます。
この四つは、拠点に任せず、会社側で一人が持ちます。人事の本部か、採用を統括する立場の人です。
拠点ごとに分けるもの
拠点に任せるのは、拠点の実情が要るものです。
対象の条件。 拠点の職種、必要な経験、勤務地の条件は、拠点ごとに違います。本部が一律に決めると、実情に合わなくなります。
求人票と役割の記述。 同じ職種名でも、拠点によって担う範囲は違います。役割の記述は拠点が書き、本部は言葉づかいの土台に照らして確認するだけにします。
面談の体制。 誰が面談に出るか、日程の枠をどう確保するか。拠点の中で決めないと動きません。
文面の表面。 土台は共通でも、話題の順番や堅さの度合いは、拠点の職種と層に合わせて変えて構いません。
返信対応の担当。 返信に当日中に対応する人は、拠点の実情を知っている人であるほうが、面談に進みやすくなります。
拠点に分けるものは、拠点が決め、本部は結果を見るだけにします。本部が細部まで口を出すと、拠点は本部の承認待ちで止まります。
担当者を一人にするか、拠点ごとに分けるか
代行の担当者を、会社で一人にするか、拠点ごとに置くかは、規模と職種の重なりで決めます。
一人にする場合。 拠点が少なく、募集の職種が重なっているときに向きます。トーンは自然に揃い、重複の管理も一人の頭の中でできます。ただし、拠点ごとの実情を一人で把握するには限界があり、稼働時間も分散します。
拠点ごとに分ける場合。 拠点が多い、職種が拠点で大きく違う、拠点ごとに面談の体制が違うときに向きます。実情に合わせた運用ができる一方、トーンと記録を揃える仕組みが無いとばらつきます。
分ける場合でも、担当者同士が同じルール(言葉づかいの土台、記録の台帳、指標の定義)に沿う形にします。代行会社が同じなら、社内で揃えてもらえます。代行会社が拠点ごとに違うなら、揃えるのは発注側の本部の仕事です。
中間の形として、「本部に一人の主担当、拠点ごとに副担当」という置き方もあります。主担当が土台と記録を持ち、副担当が拠点の運用を回します。拠点が三つ以上あるなら、この形が安定しやすいです。
エラベルの見解
相談で最も多い思い込みは、「拠点ごとに任せたほうが、現場に合うから良い」というものです。現場に合うのは事実ですが、任せた結果として、同じ候補者に二つの拠点から届く、拠点ごとに文面の質が違う、どこがうまくいっているか分からない、という状態になっている会社が多くあります。
拠点に任せてよいのは、対象・求人票・面談体制・返信対応です。任せてはいけないのは、記録です。記録が拠点ごとに分かれた瞬間に、重複は防げなくなり、比較もできなくなります。他の全部を分けても、記録だけは会社で一本にしてください。
差がつくのは、担当者が「他の拠点の動きを聞いてくるか」です。拠点Aを担当していて、「拠点Bでも同じ職種を募集していますか。対象が重なるなら送る前に照合します」と言える担当者は、会社全体を見ています。自分の拠点だけを見る担当者は、重複に気づきません。商談で「他の拠点と対象が重なったらどうしますか」と聞いてみてください。
拠点同士で候補者が重なるとき
対象が重なる職種では、同じ候補者に複数の拠点が声をかけたくなります。事前に扱いを決めておきます。
原則は、一人の候補者に、会社から届く声は一つです。送る前に共通の台帳を照合し、すでに他の拠点から送っていれば、送りません。送りたい場合は、先に送った拠点に断りを入れ、文面の中で「別の拠点でも募集がある」と伝える形にします。
候補者から見て良い形は、一通の中で「この会社には、拠点Aと拠点Bにこういう募集がある。ご希望に近いほうで話ができる」と示すことです。候補者が選べます。二つの拠点が別々に送るより、会社として一つの窓口から選択肢を示すほうが、印象も返信率も落ちにくくなります。
重なりが多い職種なら、その職種だけは本部が一括で送り、返信があった段階で拠点に振り分ける形にします。拠点が競い合って同じ人を取り合う状態は、会社にとって何も生みません。
数字の比べ方と、良い運用の横展開
指標の定義が揃っていれば、拠点同士を比べられます。ただし、比べるときは条件の違いを見ます。職種の母数、地域の候補者層、面談の体制。返信率が高い拠点は、運用が良いのか、母数が多い職種なのかを分けて考えます。
比べる目的は、順位をつけることではなく、良い運用を横に広げることです。ある拠点の文面の一段落目が効いているなら、他の拠点にも試してもらう。ある拠点の返信対応が速いなら、その手順を共有する。定例会を拠点合同で行うか、本部が拠点をまたいで結果を共有する場を持てば、広がります。
拠点ごとの定例会は拠点で行い、それとは別に、月に一度ほど本部が拠点横断で数字と学びを共有する場を持つ、という二段の形が安定します。
エラベルの見解
担当する側から見ると、複数拠点の案件で最も難しいのは「本部と拠点のどちらの指示に従うか」が決まっていないときです。本部は「トーンを揃えろ」と言い、拠点は「うちの職種にはこの書き方が合う」と言う。どちらも正しいので、担当者はどちらにも寄せられず、中間の無難な形に落ちます。
これを避けるには、「何を本部が決め、何を拠点が決めるか」の線引きを、担当者にも書面で渡してください。土台(言葉づかい・記録・指標)は本部、実情(対象・求人票・面談体制・文面の表面)は拠点。線が引かれていれば、担当者は指示の食い違いを「これは本部の領域なので本部に確認します」と整理できます。
線引きが無い会社では、担当者がどれだけ優秀でも、指示の板挟みで動きが鈍ります。担当者を選ぶ前に、社内の線引きを済ませておいてください。担当者の質より先に、社内の設計が結果を決めます。
まとめ
- 拠点ごとに別々に始めるとトーンのばらつき・候補者の重複・契約の重複・数字の不一致が起きる
- 共通に持つのは言葉づかいの土台・媒体の契約・送信の記録・指標の定義の四つ。本部で一人が持つ
- 拠点に任せるのは対象・求人票・面談体制・文面の表面・返信対応
- 担当者は規模と職種の重なりで一人か拠点ごとかを決める。拠点が多いなら主担当+副担当
- 記録だけは会社で一本にする。重複を防ぐ唯一の手段
- 候補者が重なるときは一人に届く声は一つ。一通の中で選択肢を示す
- 数字は条件の違いを見て比べ、順位ではなく良い運用の横展開に使う
- 本部と拠点の線引きを書面で担当者に渡す
よくある質問
すでに拠点ごとに別の代行会社と契約しています。どこから直せばよいですか
送信の記録の一本化からです。各拠点の代行から送信の記録を出してもらい、共有の台帳にまとめます。これで重複だけは防げます。次に、言葉づかいの土台を本部で作り、各代行に渡します。契約の統合は、更新のタイミングで検討すれば十分です。
拠点によって職種がまったく違います。それでも共通にするものはありますか
あります。言葉づかいの土台、送信の記録、指標の定義は、職種に関係なく会社として一本にします。対象と文面の表面は職種ごとに違って構いません。職種が重ならないなら候補者の重複は起きにくいですが、記録を分けておくと、後で重なる職種が出たときに困ります。
本部が細かく口を出すと、拠点の動きが止まると言われました
本部が持つのは土台(言葉づかい・記録・指標)だけにし、対象・求人票・面談体制・文面の表面は拠点に任せてください。本部は拠点の文面を事前に承認するのではなく、記録と数字を後から見る形にします。線引きを書面にして拠点と担当者に渡せば、口を出す範囲が明確になります。
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