採用代行 / 費用・契約・法務
採用担当を1人雇うのと採用代行はどちらが安いか
採用の手が足りないとき、採用担当を一人雇うか、採用代行に出すかで迷うことがあります。この比較を月額の見積もりと想定年収だけで行うと、判断を誤ります。採用担当を雇うことには、給与以外の費用と、立ち上がるまでの時間が伴うからです。この記事では、比べるために並べる項目と、判断が分かれる境目を整理します。
雇う側の費用を並べる
採用担当を一人採ると、次の費用が発生します。
- 給与(月給、賞与)
- 社会保険料の会社負担分
- 採用そのものにかかる費用(媒体費または紹介手数料)
- 採用にかかる社内の時間(募集、面接、意思決定)
- 入社後の教育と立ち上げの時間(既存メンバーの時間も含む)
- 設備とツール(席、端末、採用管理システムのアカウント)
- 管理の時間(評価、一対一、労務対応)
このうち、比較のときに落とされやすいのが下の四つです。給与と社会保険料までは計算しますが、採用担当を採るための採用費用、教育の時間、設備、管理の時間は入らないことが多い。実際にはこれらも支出です。
代行側の費用は、月額(または時間単価・成果報酬)に、初期費用と実費を足したものになります。費用の内訳の考え方は採用代行の費用の内訳にまとめています。
立ち上がるまでの時間を入れる
もう一つ、費用と同じくらい効いてくるのが時間です。
採用担当を雇う場合、募集を始めてから入社までに時間がかかり、入社してから戦力になるまでにさらに時間がかかります。自社の事業を理解し、現場と関係を作り、媒体の運用を覚える。この期間、給与は発生していますが、採用は進んでいません。
代行を使う場合、契約から立ち上げまでの期間は比較的短くなります。ただしゼロではありません。要件のヒアリング、文面の作成、媒体の設定に時間がかかります。
比較のときは、同じ期間で並べることが大事です。半年で比べるなら、採用担当を雇う側は募集期間と立ち上げ期間を含めた実働月数で計算します。この調整をすると、短い期間ほど代行が有利に出やすくなります。
エラベルの見解
この比較でいちばん見落とされるのは、採用担当を採るのも採用だという点です。
採用の手が足りないから採用担当を採りたい。しかし採用担当を採るには、募集をかけ、書類を見て、面接をして、条件を決める必要があります。その手が足りていないから困っているのに、その手を使って採用担当を採ろうとしている。ここに構造の矛盾があります。
だから実務では、代行で当座を回しながら採用担当を採るという順番が現実的なことがあります。日程調整や応募対応を外に出して手を空け、その時間で採用担当の選考を進める。採用担当が入社したら、代行の範囲を絞るか、運用を引き継ぐ。
この順番なら、どちらが安いかという二択ではなくなります。代行は、内製に移行するまでの橋としても使えます。そのときは、成果物が自社に残る契約にしておくことが条件になります。文面も検索条件も残っていれば、新しい担当者は途中から始められます。
業務の幅が違う
費用と時間のほかに、担える業務の幅も違います。
採用担当を雇う場合、業務の範囲を柔軟に決められます。採用以外の人事業務、社内の調整、現場との関係づくり。契約の範囲という制約がないので、必要に応じて動いてもらえます。合否の判断にも関われます。
代行を使う場合、範囲は契約で決まります。範囲外の業務は追加の相談になり、合否の決定や条件提示は自社に残します。そのかわり、専門性の高い工程を経験のある人に任せられます。
現場との関係づくりが重要な採用では、社内の担当者のほうが動きやすいという差があります。配属先の責任者と日常的に話せる立場は、外部からは作りにくいためです。逆に、媒体の運用やスカウトの設計のように、経験がそのまま質になる工程は外部の担当者のほうが速いことがあります。
判断が分かれる境目
次の観点で見ると、どちらに寄るかが決まります。
| 観点 | 内製に寄る | 代行に寄る |
|---|---|---|
| 採用の継続性 | 恒常的に採り続ける | 一時的に増える |
| 職種の幅 | 多岐にわたる | 限られている |
| 現場との調整 | 頻繁で深い | 定型的 |
| 業務の波 | 安定している | 大きい |
| 求める専門性 | 自社理解が中心 | 媒体運用など技術的 |
| 時間の猶予 | ある | 急いでいる |
| 人事以外の業務 | 兼任させたい | 採用に限定 |
恒常的に採り続けるなら、いずれ内製に寄せるほうが総額では下がります。ただし、その状態に至るまでの立ち上げをどう埋めるかという問題は残ります。
退職と稼働停止のリスク
内製には、担当者が退職するリスクがあります。採用のノウハウが一人に集中していると、退職とともに運用が止まります。引き継ぎの期間も要ります。
代行には、担当者が交代するリスクがあります。ただし会社として業務を受けているため、交代しても運用そのものは続きます。引き継ぎは受託者側の責任範囲です。
どちらのリスクも消せませんが、どちらの場合も、運用が文書として残っているかどうかで影響の大きさが変わります。求人原稿、検索条件、判断の基準、連絡テンプレート。これらが残っていれば、人が替わっても再開できます。内製でも代行でも、この点は同じです。
エラベルの見解
比較の結論として一つだけ言えるのは、「どちらか」ではなく「どの工程を」で考えると答えが出やすいということです。
採用は工程の集まりです。要件を決める、母集団を作る、応募に対応する、日程を調整する、選考する、条件を決める。このうち、社内の人でなければできない工程と、外部の人のほうが速い工程が混ざっています。
社内でなければできないのは、現場と要件を詰める工程と、合否や条件を決める工程です。ここは自社理解と権限が要ります。外部のほうが速いのは、媒体の運用と、量のある事務です。経験と処理量がそのまま質になります。
だから、採用担当を一人雇うかどうかを考えるときも、その人にどの工程を持ってほしいのかを先に決めるほうが判断が速い。全工程を一人に持たせる前提だと、比較が大雑把になります。工程で分ければ、内製と外注の組み合わせも見えてきます。一人雇って全部持たせるより、社内の人が要件と判断を持ち、量のある工程を外に出すほうが、総額でも速さでも収まることがあります。
まとめ
- 雇う側の費用は、給与と社会保険料だけでなく、採用費用・教育の時間・設備・管理の時間まで並べる
- 立ち上がるまでの時間を入れて、同じ期間で比べる
- 採用の手が足りない状態で採用担当を採るのは構造的に難しい。代行を橋として使う選択がある
- 現場との調整が深い採用は内製、媒体運用など技術的な工程は外部が速いことがある
- 恒常的に採り続けるなら、いずれ内製に寄せるほうが総額では下がりやすい
- どちらにも人が抜けるリスクがある。運用が文書として残っているかで影響が変わる
- 「どちらか」ではなく「どの工程を」で考えると判断が速い
よくある質問
採用担当を採るまでの間だけ代行を使うことはできますか
できます。むしろ、この使い方は現実的な選択です。その場合、契約期間を採用担当の入社時期に合わせられるか、成果物を引き渡してもらえるかを契約時に確認します。最低契約期間があると、入社後も費用が続くことがあります。期間の考え方は最低契約期間はなぜ設定されるのかにまとめています。
採用担当が入社した後も代行を続ける意味はありますか
範囲を絞れば意味が出ることがあります。社内の担当者が要件の詰めと現場調整、選考の進行を持ち、量のある事務やスカウトの送信を外に残す形です。担当者が一人だと、募集職種が増えたときに処理が滞ります。波を吸収する部分として外部を残しておく、という設計は珍しくありません。
業務委託の個人に直接お願いするのはどうですか
人事経験のある個人に業務委託で依頼する形もあります。会社に頼むより費用が抑えられることがある一方、稼働が個人の状況に左右される点や、交代時の引き継ぎが自社の負担になる点は考慮に入れます。あわせて、直接指示を出す形にならないよう、契約と運用の整理が要ります。判断に迷う場合は専門家にご確認ください。