採用代行 / アルムナイ採用の設計

アルムナイ採用の設計の進め方|自社でやる場合の手順

公開 2026-09-20

アルムナイ採用を自社で設計しようとして、「募集が出たら辞めた人に声をかける」から始めると、連絡の同意も、辞めた理由の記録も、その後の関係も無い相手に一斉送信することになり、返事は来ず、来ても「人手が足りないのか」と受け取られ、たまに戻った人がいても「知っているから」で受け入れを省き、既存社員は「なぜ戻ったのか」が分からず、再び辞めます。アルムナイ採用で最初にやるべきは、辞めた人のリストを作ることではなく、「これから辞める人をどう送り出すか」と「誰に戻ってきてほしいか、なぜその人は辞めたか」を決めることです。結論を先に書くと、進め方は、経営者の方針を決める→退職時の面談の型と理由の記録と連絡の同意を作る→戻ってきてほしい人を判断して記録する→辞めた理由が直っているかを確かめる→関係を続ける運用を作る→戻る形と処遇の選択肢を整理する→個別に連絡する人と伝えることを準備する→受け入れの型と既存社員への説明を作り、記録を続ける、の八つの手順です。代行に出す場合の切り分けはアルムナイ採用の設計は代行に出せるかに、考え方の全体は退職者を再雇用につなげたいときに書いていますので、ここでは自社で進める手順に絞ります。再雇用の処遇や契約の法令上の扱いは専門家にご確認ください。

手順の全体

手順やること誰が頻度
経営者の方針を決める経営者最初に一度
退職時の面談の型と理由の記録と連絡の同意を作る人事最初に一度、以後退職者ごと
戻ってきてほしい人を判断して記録する責任者退職者ごと
辞めた理由が直っているかを確かめる責任者と経営者半年に一度
関係を続ける運用を作る人事最初に一度、以後年に数回
戻る形と処遇の選択肢を整理する人事と経営者最初に一度
個別に連絡する人と伝えることを準備する元の上司と人事戻ってきてほしい人ごと
受け入れの型と既存社員への説明を作り、記録を続ける人事と責任者最初に一度、以後戻る人ごと

手順の要点は、二が「これから辞める人」に向いていることです。過去の退職者は同意も記録も無いことが多く、そこから始めると進みません。これから辞める人から型を作り、過去の退職者は手順七の個別の関係で扱います。

手順一:経営者の方針を決める

「辞めた人が戻る」ことを会社として肯定するか、どの範囲で(全職種か、特定の職種か)、誰が「戻ってきてほしい」を判断するか、戻る人の処遇を既存社員とどう整合させるか、「辞めやすい会社」にならないための線引きをどう持つかを、経営者が決めます。

決めること考え方
肯定するか「一度辞めた人は不要」の空気があれば、まずそこを変える
範囲経験者の採用が難しい職種から
判断する人元の上司と責任者
処遇の整合役割で決め、既存社員にも同じ基準
線引き選考は省かない。辞めた理由を確認する

止まりやすいのは、経営者が「戻りたいなら戻ればよい」と方針を曖昧にするときです。責任者は判断できず、既存社員には説明できません。方針を言葉にします。

手順二:退職時の面談の型と理由の記録と連絡の同意を作る

これから辞める人に、退職の面談で、辞める理由を聞き、記録し、「また一緒に働く可能性がある」と本気で伝え、退職後に会社から連絡してよいかの同意を得て、丁寧に引き継ぎと送り出しをします。面談で話すのは上司か人事で、型と記録の様式と同意の管理は人事が持ちます。

面談で聞くこと・伝えること記録
辞める理由(本音に近いもの)分類して記録
会社に残っていたら何が変われば続けたか直す先の材料
また一緒に働く可能性本気で伝えた記録
退職後の連絡の同意同意の有無と連絡先
戻ってきてほしい人か上司と責任者の判断(手順三)

止まりやすいのは、面談が「手続きの説明」で終わるときです。理由を聞かず、同意も取らず、関係が切れます。個人情報に関わる部分は専門家にご確認ください。

手順三:戻ってきてほしい人を判断して記録する

退職者ごとに、元の上司と責任者が「戻ってきてほしいか」を判断し、記録に残します。全員に戻ってほしいわけではなく、判断が要ります。判断の基準は、仕事の中身と、チームでの振る舞いと、辞めた理由が会社側で直せるものかどうかです。

止まりやすいのは、「辞めた人のことは考えたくない」で判断を先送りするときです。辞めて数か月のうちに判断しておくと、手順七の連絡が自然になります。

エラベルの見解

これをやる前に、先に手順四の「辞めた理由が直っているか」を確かめておかないと、手順七の連絡は空振りします。相談で多いのは、「戻ってきてほしい人に声をかけたが、断られた」というご相談です。聞くと、その人が辞めた理由は上司との関係で、その上司はまだ同じ役職にいました。声をかけても、辞めた理由がそのままなら戻る理由はありません。別の会社では、辞めた理由が「役割が固定されて成長できない」で、その後に役割を変える制度ができていたので、元の上司が「あのとき言っていたことが変わった」と伝えたところ、面談に来ました。アルムナイ採用は、辞めた理由を直した会社にだけ開かれる経路です。エラベルでアルムナイ採用の設計を担当する人には、連絡の前に、辞めた理由と会社の変化を責任者と突き合わせてもらっています。

手順四:辞めた理由が直っているかを確かめる

手順二で記録した辞めた理由を集計し、「戻ってきてほしい人」が辞めた理由が、いまの会社で直っているかを確かめます。直っていなければ、声をかける前に直します。直せないものなら、その人には声をかけません。

辞めた理由直っているか連絡
上司との関係上司が替わった/変わっていない替わっていれば可
役割が固定役割を変える制度ができた/無いできていれば可
処遇基準が変わった/変わっていない変わっていれば可
家庭の事情・転居会社側の問題ではない状況が変われば可

止まりやすいのは、理由を確かめずに「戻ってきてほしい」だけで声をかけるときです。断られるだけでなく、「何も変わっていないのに呼び戻そうとしている」と受け取られます。

手順五:関係を続ける運用を作る

同意を得た退職者に、年に数回、会社の近況(事業の変化、人の動き、制度の変化)を送り、集まる場があれば案内し、募集が出たら案内します。事務的な一斉送信にせず、「あなたがいた頃と変わったこと」が伝わる形にします。責任者は、戻ってきてほしい人の近況を、個人の関係の中で知っておきます。

止まりやすいのは、連絡が「募集の案内」だけになるときです。人手が足りないときだけ連絡が来る会社に、戻る気は起きません。近況を先に、募集は後に。

手順六:戻る形と処遇の選択肢を整理する

戻る形(正社員か、業務委託か、副業からか)、役割(元の役割か、新しい役割か)、処遇(既存社員との整合、他社での経験の評価)、選考(省かない。辞めた理由と期待の確認は行う)を、選択肢として整理しておきます。人ごとに一から考えると遅くなります。法令上の扱いは専門家にご確認ください。

選択肢向く場面
正社員で元の役割に近い形辞めた理由が直っていて、本人も戻る意思が明確
正社員で新しい役割他社で得た経験を活かす。役割で処遇を決める
業務委託・副業から本人が迷っている。まず関わりを再開する

止まりやすいのは、戻る人だけ高い処遇にするときです。辞めなかった社員の不満になります。役割で決め、既存社員にも同じ基準を適用できる状態にします。

手順七:個別に連絡する人と伝えることを準備する

戻ってきてほしい人には、元の上司か、当時の同僚が、個人の関係の中で近況を聞く連絡をします。会社からの一斉送信ではなく、「元気にしていますか。会社ではあのとき言っていたことがこう変わりました」と伝える形です。伝えることは、手順四の「辞めた理由に関わる変化」と、手順六の「戻る形の選択肢」を、人事が整理して連絡する人に渡します。

止まりやすいのは、人事や外の人が連絡するときです。退職者にとって、人事からの連絡は「会社の都合」に見えます。元の上司からの連絡は「個人として気にかけてくれている」に見えます。

手順八:受け入れの型と既存社員への説明を作り、記録を続ける

戻る人には、「知っているから」で放置せず、辞めてから変わったことの一覧、役割の書面、相談の相手、入社後の面談を、新規の入社者と同じように用意します。既存社員には、戻る理由と役割を先に説明し、「辞めたほうが得」という受け止めにならないよう、処遇の基準を伝えます。記録(誰が辞め、理由、同意、戻ってきてほしいか、連絡、戻ったか、その後)を続けます。受け入れの考え方は入社後のオンボーディングの進め方と同じです。

止まりやすいのは、既存社員への説明を省くときです。「なぜ戻ったのか」が分からないと、歓迎されず、戻った人が居づらくなります。

外の人に頼む場合の境目

八つの手順のうち、一の方針、三の判断、四の直すこと、六の決定、七の連絡そのもの、八の説明そのものは会社が持ちます。二の型と記録と同意の管理、四の集計、五の運用、六の選択肢の整理、七の伝えることの準備、八の型と文面と記録は、外の人に出せます。切り分けの詳しい話はアルムナイ採用の設計は代行に出せるかに書いています。

外に出す判断の目安は、「方針と戻ってきてほしい人は決まっているが、型と運用と記録に人事の時間が取れない」ときです。方針が無いまま外に出しても、戻る形も処遇も決まりません。

エラベルの見解

担当する側から見ると、アルムナイ採用で会社ごとに差がつくのは、手順二の「退職時の面談で同意を得ているか」です。過去の退職者への連絡は、同意が無く、記録も無く、関係も切れているので、どの会社も苦労します。差がつくのは、これから辞める人を丁寧に送り出し、同意を得て、理由を記録している会社です。一年後には、同意を得た退職者が数人でき、二年後には、その中から戻る人が出ます。エラベルでは、アルムナイ採用の設計を担当する人に、最初の一週間で方針を経営者と確認し、退職時の面談の型と同意の取り方を作り、戻ってきてほしい人の候補と辞めた理由を責任者と整理し、戻る形の選択肢を一枚にするところまでをお願いしています。ここまでできると、担当者は型と運用と記録を回し、会社は判断と連絡と説明だけになります。過去の退職者への連絡は、元の上司の個人の関係の中で、辞めた理由が直っていることを伝える形から始めます。

まとめ

よくある質問

過去の退職者には同意も記録もありません。何から始めればよいですか

これから辞める人から手順二の型を始め、過去の退職者は、元の上司や同僚が個人の関係の中で近況を聞く形にとどめます。会社としての一斉送信は避けます。過去の退職者のうち「戻ってきてほしい人」を責任者が挙げ、その人が辞めた理由を思い出して記録し、直っているかを確かめてから、元の上司が個人として連絡します。個人情報の扱いは専門家にご確認ください。

戻る人の選考は省いてよいですか

省かないことをお勧めします。辞めた理由の確認、いまの期待の確認、役割と処遇の合意は、面談の形で行います。「知っているから」で省くと、辞めた理由が残っていることや、期待のずれに気づかず、再び辞めます。選考の形は簡略にしても、確認の面談は置きます。

「辞めても戻れる」と社内に伝わると、辞めやすくなりませんか

方針の中に、線引きを持ちます。「戻る人は選考を経る」「辞めた理由と期待を確認する」「処遇は役割で決まり、辞めたことで有利にはならない」を明言し、既存社員に説明します。辞めやすくなるのは、線引きが無く、戻った人が高い処遇を得たときです。線引きがあれば、「辞めた人と関係を切らない会社」として、辞めなかった社員にも安心につながります。