採用代行 / ATS(採用管理システム)の運用
ATS(採用管理システム)の運用の進め方|自社でやる場合の手順
ATSを自社で運用しようとして、「導入して、使いながら覚える」から始めると、選考の段階の名前は既定のままで自社の流れと合わず、面接官はログインせずメールで判定を送り、人事はスプレッドシートを残したまま二重に管理し、数か月後には「ATSとスプレッドシートのどちらが正か」を誰も答えられなくなります。ATSの運用で最初にやるべきは、機能を覚えることではなく、「どの情報をATSに集約し、誰がどの画面を使うか」を決めることです。それが決まれば、設定は最初に一度で済み、毎日の更新は型になり、面接官は一つの画面だけを使えばよくなります。結論を先に書くと、進め方は、集約する情報と残さない情報を決める→選考の段階の名前と記録する項目を決める→誰がどの画面を使うかを決めて権限を設定する→毎日の更新の担当と時刻を決める→面接官向けの一枚の手順書を作る→連絡のテンプレートを作る→併用しているスプレッドシートを止める日を決める→週に一度、段階ごとの人数と止まっている候補者を見る、の八つの手順です。代行に出す場合の切り分けはATSの運用は代行に出せるかに、使いこなせていないときの直し方はATSを入れたが使いこなせていないときに書いていますので、ここでは自社で進める手順に絞ります。製品の比較や機能の説明はしません。仕様は提供元の公式情報でご確認ください。
手順の全体
| 手順 | やること | 誰が | 頻度 |
|---|---|---|---|
| 一 | 集約する情報と残さない情報を決める | 人事の責任者 | 最初に一度 |
| 二 | 選考の段階の名前と記録する項目を決める | 人事 | 最初に一度 |
| 三 | 誰がどの画面を使うかを決めて権限を設定する | 人事の責任者 | 最初に一度、人が替わるたび |
| 四 | 毎日の更新の担当と時刻を決める | 人事 | 最初に一度 |
| 五 | 面接官向けの一枚の手順書を作る | 人事 | 最初に一度 |
| 六 | 連絡のテンプレートを作る | 人事 | 最初に一度 |
| 七 | 併用しているスプレッドシートを止める日を決める | 人事の責任者 | 最初に一度 |
| 八 | 段階ごとの人数と止まっている候補者を見る | 人事 | 週に一度 |
手順の要点は、一から七が「最初に一度」で、八だけが「回す」ことです。ATSは、最初に一度決めて設定すれば、あとは毎日の更新と週に一度の確認だけで回ります。「使いながら覚える」は、この最初の一度をやらないことです。
手順一:集約する情報と残さない情報を決める
応募者の情報、選考の段階、面接の記録、連絡の履歴、書類のうち、何をATSに入れ、何を入れないかを決めます。原則はATSに一本化で、入れないものがあるなら理由を書きます。
| 情報 | ATSに入れる | 残さない・別に置く |
|---|---|---|
| 応募者の基本情報と経歴書 | 入れる | ― |
| 選考の段階 | 入れる | ― |
| 面接の判定と記録 | 入れる | ― |
| 候補者への連絡の履歴 | 入れる(ATSから送る) | 個人のメールで送らない |
| 年収などの条件の記録 | 入れるか、権限を絞って入れる | 見せる範囲を手順三で決める |
止まりやすいのは、「念のため」でスプレッドシートを残すときです。残すと二重管理になります。残すなら期限を決め、手順七で止めます。
手順二:選考の段階の名前と記録する項目を決める
自社の選考の流れ(書類→一次→二次→最終→内定→入社)に合わせて、段階の名前を付け直します。既定の名前のままだと、面接官が「いまどこか」を読めません。記録する項目は、各段階で「次に進めるかの判断に要るもの」だけに絞ります。項目が多いと入力されません。
止まりやすいのは、項目を増やしすぎるときです。「あとで分析に使うかも」で足した項目は入力されず、空欄が並びます。最初は判断に要るものだけにし、足すのは運用が回ってからです。
手順三:誰がどの画面を使うかを決めて権限を設定する
人事、面接官、責任者、代行を使うなら代行、それぞれが使う画面を決め、権限を設定します。面接官は「自分が担当する候補者の詳細と、判定を書く画面」だけで足ります。全機能を渡すと、面接官は迷って使わなくなります。
| 使う人 | 使う画面 | 権限 |
|---|---|---|
| 人事 | 応募者の一覧、候補者の詳細、連絡の送信、集計 | 登録、更新、送信、閲覧 |
| 面接官 | 担当する候補者の詳細、判定の入力 | 担当分の閲覧と判定の入力 |
| 責任者 | 集計、候補者の詳細 | 閲覧、承認 |
| 代行 | 業務に応じて人事と同じか一部 | 会社が決めた範囲。ユーザー追加は不可 |
止まりやすいのは、権限を「とりあえず全員に全部」で設定するときです。候補者の個人情報を見られる人が増え、把握できなくなります。人が替わるたびに追加と削除を行い、四半期に一度、誰が使えるかを棚卸しします。権限の考え方は採用代行に渡すATSの権限範囲に書いています。法令に関わる部分は専門家にご確認ください。
エラベルの見解
これをやる前に、先に手順一の「集約先」を決めておかないと、手順二以降の設定は使われません。相談で多いのは、「段階も項目も設定したのに、更新が止まっている」というご相談です。聞くと、人事はスプレッドシートも並行して更新していて、忙しくなるとスプレッドシートだけが更新され、ATSは遅れて転記されるか、されないままになっていました。「ATSに一本化する。スプレッドシートは〇日で止める」を責任者が決めてからは、更新先が一つになり、遅れが消えました。ATSが止まるのは設定の問題ではなく、集約先が二つあることの問題です。エラベルでATSの運用を担当する人には、設定を触る前に、集約先を一つにすることを責任者と決めてもらっています。
手順四:毎日の更新の担当と時刻を決める
毎朝、決まった時刻に、新しい応募者を登録し、段階を更新し、面接官の判定が入っているかを確認し、止まっている候補者を確認する。担当を一人決め、時刻を決めます。「気づいたときに」では止まります。
| 毎朝やること | 所要 |
|---|---|
| 新しい応募者の登録 | 件数による |
| 段階の更新(面接が終わった人、判定が出た人) | 数分 |
| 面接官の判定の未入力の確認と催促 | 数分 |
| 止まっている候補者(数日動いていない人)の確認 | 数分 |
止まりやすいのは、担当が兼務で、忙しい日に飛ぶときです。飛んだ日の代わりの人を決めるか、飛んでも翌朝にまとめて行う決まりにします。
手順五:面接官向けの一枚の手順書を作る
面接官が使う画面(担当する候補者の詳細と、判定の入力)へのリンク、開き方、書く内容、期限(面接の翌日まで)を一枚にまとめます。機能の説明はしません。面接の案内にこの一枚のリンクを添え、最初の数回は人事が隣で操作を見せます。
止まりやすいのは、面接官に全機能の説明会をするときです。面接官は覚えません。一枚と、最初の数回の同席で足ります。それでも入力しない面接官がいれば、メールで受けた判定を人事が転記して、記録が揃う状態を優先します。
手順六:連絡のテンプレートを作る
書類通過、面接の案内、日程の確認、不合格、内定、のように、候補者への連絡をテンプレートにし、ATSから送る形にします。個人のメールで送ると履歴がATSに残りません。
止まりやすいのは、テンプレートが定型すぎて候補者に冷たく読まれるときです。宛名と、面接官の名前と、候補者ごとの一文を差し込む欄を作ります。
手順七:併用しているスプレッドシートを止める日を決める
スプレッドシートに残っている情報をATSに移し、止める日を決め、関係者に伝えます。止めた後も「念のため」で更新する人が出るので、止めた日にスプレッドシートを閲覧のみにします。
止まりやすいのは、止める日を決めずに「移行中」が続くときです。日を決め、責任者が伝えます。移行の手順は応募者管理がスプレッドシートのままのときに書いています。
手順八:週に一度、段階ごとの人数と止まっている候補者を見る
週に一度、集計の画面で、段階ごとの人数、段階ごとの通過率、経路ごとの結果、数日以上動いていない候補者を見ます。止まっている候補者は、誰の手元で止まっているか(面接官の判定待ちか、日程調整か、決裁か)を確かめ、動かします。
止まりやすいのは、集計を見るだけで動かさないときです。「止まっている候補者を動かす」まで含めて週に一度の作業にします。
外の人に頼む場合の境目
八つの手順のうち、一の集約先、三の権限の決定とユーザーの追加削除、七の止める判断は会社が持ちます。二の設定の案、三の設定作業、四の毎日の更新、五の手順書と同席、六のテンプレート、七の移行作業、八の集計と止まっている候補者の確認は、外の人に出せます。切り分けの詳しい話はATSの運用は代行に出せるかに書いています。
外に出す判断の目安は、「集約先と権限は決めたが、毎日の更新と面接官への依頼が回っていない」ときです。集約先を決めないまま外に出すと、二重管理を外の人が引き継ぐだけになります。
エラベルの見解
担当する側から見ると、ATSの運用で会社ごとに差がつくのは、手順五の「面接官向けの一枚」があるかどうかです。人事の更新は人事の努力で回せますが、面接官の判定は人事には書けません。一枚が無い会社では、面接官は「どこに何を書けばよいか分からない」でメールに戻り、人事は転記に追われます。一枚があり、最初の数回だけ隣で見せた会社では、面接官の多くは自分で入力するようになり、人事の転記が消えます。エラベルでは、ATSの運用を担当する人に、最初の一週間で集約先と権限を会社と確認し、段階と項目の案を作って承認を受け、面接官向けの一枚を作り、毎日の更新の時刻を決めるところまでをお願いしています。ユーザーの追加と削除、設定の承認、スプレッドシートを止める判断は会社の役割であり、担当者はそれを求める立場にとどめています。
まとめ
- ATSの運用は「使いながら覚える」ではなく、集約先と使う画面を最初に決めるところから始める
- 手順は集約先→段階と項目→権限→毎日の更新→面接官向けの一枚→テンプレート→スプレッドシートを止める日→週に一度見るの八つ
- 項目は判断に要るものだけ。「あとで分析に」は入力されない
- 面接官には担当する候補者の詳細と判定の画面だけを一枚で。全機能の説明会はしない
- ユーザーの追加と削除は会社が持ち、四半期に一度棚卸しする
- スプレッドシートは止める日を決めて閲覧のみに。「移行中」を続けない
よくある質問
段階や項目を後から変えたくなったら、どうすればよいですか
変えられますが、変えるたびに面接官の一枚と毎日の更新の型も直す必要があります。最初は判断に要る最小の設定で始め、運用が一か月回ってから、足りないものを足します。変えるときは、変える日を決めて関係者に伝え、変える前の記録が読めなくならないように、段階の名前の対応を残します。
面接官が多く、全員に一枚を渡しても使われません
面接官が多い会社ほど、「判定を書く一つの画面」に絞ることが効きます。それでも使われない場合は、面接の案内メールの中に「判定はこのリンクから、面接の翌日までに」と毎回書き、最初の数回は人事が隣で見せ、それでも入力しない面接官の判定は人事が転記します。全員が使うことより、記録が揃うことを優先します。使われない原因が「面接官がATSを使う」ことに会社として合意していないことにあるなら、責任者から伝えてもらいます。
応募が少ないので、ATSは要らないのではないですか
応募が月に数件で、使う機能が段階の管理だけなら、スプレッドシートで足りることがあります。判断の材料は、「使っている機能」「応募の件数」「選考の流れとATSの段階が合っているか」の三つです。やめるなら、記録を出力し、契約を確認し、戻す先の運用(一つの表、列、更新の担当)を決めてから止めます。戻す先の作り方は応募者管理がスプレッドシートのままのときに書いています。