採用代行 / 採用の課題

ATSを入れたが使いこなせていない|機能を覚えるのをやめて、「毎日使う三つの画面」と「更新の担当」に絞る

公開 2026-09-13

ATS(採用管理システム)を導入して半年。応募は入ってくるが、その後の更新がされていない。面接官は「使い方が分からない」と、判定をメールで返してくる。人事はATSとスプレッドシートを併用し、二重に入力している。機能は多いが、何をどう使えばよいか分からず、費用だけ出ている。結論を先に書くと、ATSは「使いこなす」ものではありません。機能の大半は使わなくてよく、「毎日使う三つの画面」と「更新の担当」に絞れば回ります。使えていないのは、機能を覚えていないからではなく、運用(誰が、いつ、何を更新するか)が無いからです。運用を決め、画面を三つに絞り、面接官には最小の形だけ渡します。スプレッドシート管理からの移行は応募者管理がスプレッドシートのままに、ATSの選び方はATSの選び方にまとめています。

使いこなせない構造

ATSを入れたのに使えていないのは、次の構造で起きます。

構造起きていること
運用を決めずに導入した「誰が、いつ、何を更新するか」が無いまま、道具だけ入れた
機能を全部使おうとした設定の画面が多く、全部を理解してから使おうとして、使い始められない
面接官に、全部の画面を渡した面接官は「複雑」と感じ、使わずにメールに戻る
スプレッドシートを残した「念のため」で残し、二重の入力になり、どちらも古くなる
導入時の設定が、自社の選考の流れと合っていない段階の名前、項目、通知の設定が既定のまま。自社の流れに合わず、使いにくい
更新の担当がいない応募は自動で入るが、その後の更新をする人が決まっていない
導入の担当者が、異動や退職でいなくなった設定を知っている人がいなくなり、触れなくなった
「使いこなせていない」ことを、誰も問題にしていない費用は出ているが、責任者は「入れた」で満足している

構造の大半は、「運用が無い」に集約されます。道具を入れることと、運用を作ることは、別の仕事です。

使いこなす必要が無い理由

ATSの機能の大半は、使わなくてよいものです。

ATSの機能は、多くの会社の要望を集めたもの。 自社に要る機能は、その一部です。全部を使う会社はありません。

毎日使うのは、三つの画面。 応募者の一覧、候補者ごとの詳細(段階と記録)、連絡の送信。この三つで、応募者管理は回ります(次の章)。

分析や自動化は、運用が回ってから。 経路ごとの集計、自動の通知、面接官への自動の依頼。便利ですが、基本の運用が回っていなければ、意味がありません。

設定は、最初に一度、自社の流れに合わせるだけ。 段階の名前を自社の選考の流れに合わせ、不要な項目を隠し、通知先を決める。一度設定すれば、日々は触りません。

「使いこなす」を目標にすると、始まらない。 「全部を理解してから」は、いつまでも来ません。三つの画面で始めます。

ATSの導入で失敗する会社の多くは、「せっかく入れたのだから全部使おう」と考えます。逆です。「三つだけ使う」と決めれば、回ります。

毎日使う三つの画面

ATSで、毎日使う画面を三つに絞ります。

画面使い方誰が
応募者の一覧毎朝、新しい応募を確認。段階ごとの人数を見る。空欄(未対応)を見つける更新の担当
候補者ごとの詳細段階を進める、面接の判定と根拠を記録する、次の予定を入れる更新の担当(判定は面接官)
連絡の送信受付、面接の案内、結果、内定、不合格の連絡を、テンプレートから送る更新の担当

三つの画面の使い方を、一枚の手順書にします。「毎朝:一覧を開く→新しい応募に受付の連絡を送る→書類の判断を回す。判定が来たら:詳細で段階を進めて記録→結果の連絡を送る」。

三つ以外の画面(設定、分析、連携、権限)は、最初の設定のときと、月に一度の集計のときだけ触ります。日々は開きません。

設定の画面で、自社の選考の流れに合わせて直すのは、「段階の名前」「使わない項目を隠す」「通知の設定」の三つです。設定の方法は、ATSの公式の案内で確認します。

面接官に使ってもらう最小の形

面接官がATSを使わない問題への対処です。

面接官が触るのは、一つの画面だけ。 候補者ごとの詳細の「判定と根拠」の欄だけ。一覧も、連絡も、設定も、触りません。

面接官には、その画面への行き方と、書く内容だけ渡す。 「面接の後、このリンクを開いて、観点ごとの判定(通す・通さない・判断できず)と根拠を一〜二行書いてください。五分で終わります」。一枚で。

面接の案内に、その画面へのリンクを入れる。 面接官が探さなくて済むように。

最初の数回は、担当者が横で一緒に入力する。 一度やれば、覚えます。研修は要りません。

それでも書かない面接官には、メールで受けて担当者が転記する。 全員に強要するより、転記のほうが速い場合があります。ただし、面接官が五人以上なら、直接入力を基本にします。

面接官が書きやすい形に、項目を絞る。 観点ごとの三択と根拠の欄だけ。十項目の五段階評価は、書かれません。項目の設定はATSの公式の案内で確認します。

面接官に「ATSを使ってください」と言うと、抵抗されます。「この画面に、五分で判定を書いてください」と言えば、書きます。

エラベルの見解

相談で最も多い失敗は、「ATSを入れて、面接官全員に一時間の研修をしたが、誰も使わず、判定はメールで返ってきた」というものです。研修で見せたのは、一覧、詳細、連絡、分析、設定の全部でした。面接官が要るのは、「判定を書く一つの画面」だけです。その画面へのリンクと、書く内容を一枚で渡し、最初の一回だけ横で一緒に入力したら、翌週から面接官が直接書き始めました。研修より、一枚と一回の同席でした。

見ていて差がつくのは、担当者が「ATSの機能」ではなく「運用の三つの画面」で話すかどうかです。「ATSにはこういう機能があります」と説明する担当者と、「毎朝この画面で応募を見て、判定はこの画面に、連絡はこの画面から。他は触りません」と、三つに絞る担当者がいます。後者なら、ATSは回ります。

発注側にできるのは、担当者に「ATSを使いこなしてほしい」ではなく、「ATSで応募者管理を回してほしい。使う画面は絞ってよい」と依頼することです。

スプレッドシートとの併用をやめる手順

ATSとスプレッドシートの併用は、二重の入力になり、どちらも古くなります。やめる手順です。

スプレッドシートに残っている理由を、確認する。 「ATSに無い列がある」「面接官がATSに書かない」「集計がスプレッドシートのほうが楽」「念のため」。理由ごとに対処します。

ATSに無い列は、ATSの自由項目か備考に移す。 大半の列は、ATSの項目で代替できます。できないものは、自由項目に。設定はATSの公式の案内で確認します。

面接官の判定は、ATSに直接か、担当者が転記する形に統一する。 前の章の最小の形で。

集計は、ATSの集計の機能か、ATSから出力してスプレッドシートで行う。 ATSを元の記録にして、集計だけスプレッドシートに出す形なら、二重の入力にはなりません。

「念のため」は、期限を決めてやめる。 「一か月、ATSだけで運用して問題が無ければ、スプレッドシートを止める」。期限が無いと、いつまでも残ります。

スプレッドシートを止めた日を、社内に伝える。 「今日から、応募者の記録はATSだけです。スプレッドシートは更新しません」。伝えないと、誰かが更新を続けます。

併用をやめる要点は、「元の記録を一つにする」ことです。二つあれば、両方が古くなります。

ATSをやめる判断

運用を絞っても回らない場合、ATSをやめる判断もあります。

やめる判断の目安。 応募が月に数件で、スプレッドシートで足りる。自社の選考の流れとATSの設計が根本的に合わない。費用に対して、使う機能が一つも無い。

やめる前に、確認すること。 「運用(更新の担当、三つの画面、面接官の最小の形)を試したか」。試していないなら、ATSの問題ではなく運用の問題で、やめても同じことが起きます。

やめるなら、記録を出力してから。 応募者の記録を、ATSから出力し、スプレッドシートに移します。出力の方法と、ATS側のデータの削除は、ATSの公式の案内と契約で確認します。個人情報の扱いは専門家に確認します。

契約の解約の条件を確認する。 期間、解約の予告、データの扱い。契約書で確認します。

別のATSに乗り換えるなら、同じ失敗をしない。 運用を決めてから、選びます。選び方はATSの選び方に書いています。

やめた後の運用を、先に決める。 スプレッドシートに戻すなら、一つの表と列と更新の担当。応募者管理がスプレッドシートのままに書いています。

やめることは、失敗ではありません。応募の数と体制に合わない道具を、合う道具に戻すことです。ただし、運用を試してからです。

外注する場合の範囲

ATSを使いこなせない問題を、採用代行に出す場合の範囲です。

出せる工程。 使えていない構造の確認、三つの画面に絞った運用の設計、手順書の作成、設定の見直し(段階の名前、項目の絞り込み、通知)の支援、毎日の更新(担当者がATSの更新の担当を務める)、面接官向けの一枚と最初の同席、面接官の判定の転記(必要な場合)、連絡のテンプレートの登録、スプレッドシートとの併用をやめる手順の実行、月に一度の集計と報告、やめる判断の材料、乗り換える場合の選定と移行の支援。

社内に残す判断。 運用の承認、面接官への依頼(直接入力か転記か)、設定の変更の承認、ATSをやめるか続けるかの決定、契約の判断、個人情報の扱いの方針(専門家との連携)。

外注の効きどころ。 ATSが使えていない会社は、「更新の担当がいない」ことが根本です。担当者が更新の担当になり、三つの画面で毎日回し、面接官には一枚と同席で最小の形を渡せば、ATSは機能します。担当者は複数の会社でATSを触っているので、設定の見直しと絞り込みも進められます。

外注しても動かない場合。 面接官が判定を出さない、社内がスプレッドシートを手放さない、責任者が「入れた」で満足して運用を問わない。社内の判断で、代行を替えても直りません。

ATSは、運用があれば回ります。外注は、運用を作り、回す人を置く手段です。

エラベルの見解

担当する側から見ると、ATSの相談で最も多いのは、「導入時の設定が既定のままで、自社の選考の流れと合っていない」ことです。段階の名前が「一次面接・二次面接・最終面接」の既定のまま、自社は「書類→面談→面接→最終」の流れ。合わないので、人事が段階を読み替えながら使い、面接官は混乱し、使われなくなる。

設定の画面で、段階の名前を自社の流れに合わせ、使わない項目を隠す。一時間の作業です。それだけで、「使いにくい」の半分は消えます。導入時にやっていなかっただけです。

発注側にできるのは、ATSの設定を「自社の選考の流れ」に合わせ直す一時間を、担当者に渡すことです。

まとめ

よくある質問

ATSの機能を、全部覚えないといけませんか

要りません。毎日使うのは、応募者の一覧、候補者の詳細、連絡の送信の三つの画面です。分析や自動化や連携は、基本の運用が回ってから、必要なものだけ足します。「全部を理解してから使う」と考えると、いつまでも使い始められません。三つの画面の手順を一枚にして、明日から回します。設定の見直し(段階の名前、項目の絞り込み、通知)は、最初に一時間で行い、日々は触りません。

面接官がATSに入力してくれません

面接官に渡すのは、「判定を書く一つの画面」だけにします。その画面へのリンクと、書く内容(観点ごとの三択と根拠を一〜二行、五分)を一枚で渡し、面接の案内にリンクを入れ、最初の一回だけ横で一緒に入力します。「ATSを使ってください」ではなく、「この画面に五分で書いてください」と伝えます。それでも書かない面接官には、メールで受けて担当者が転記します。面接官が五人以上なら、直接入力を基本にします。

スプレッドシートとATSを、両方使っています

二重の入力になり、どちらも古くなります。スプレッドシートに残っている理由(ATSに無い列、面接官が書かない、集計が楽、念のため)を確認し、理由ごとに対処します。列はATSの自由項目に、判定は統一、集計はATSから出力して行う形に、「念のため」は一か月の期限を決めて止めます。元の記録を一つにし、止めた日を社内に伝えます。伝えないと、誰かが更新を続けます。